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  • 非戦闘生命

非戦闘生命

最終更新:2012年10月22日 23:55

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だれでも歓迎! 編集

非戦闘生命 ◆hqLsjDR84w



 ◇ ◇ ◇


 エリアC-4の河原では、二つの戦闘が繰り広げられている。
 その片方――二メートルほどの長身の老人と、それ以上の巨躯を誇る高校生。
 すなわちドクターカオスと金剛晄の戦闘は、両者のスペックからは想像できぬ展開を見せていた。
 使いなれぬ道具を武器としているカオスが、間違いなく戦闘力で勝っている金剛を攻め続けているのだ。

 ドクターカオスが武器として用いているのは、純白のマリオネット。
 オリンピアという名を持つそれは、六本の腕や内蔵した注射機などの武器で戦うトリッキーな懸糸傀儡だ。
 とはいえ現状では、まだドクターカオスはオリンピアの性能をすべて引き出せているとは言い難い。
 説明書こそ付属していたが、内蔵武器などについて記すばかりでその操作方法についての奇妙は大してなかったのだ。
 十指すべてを用いねば動かすことすらままならないというのに、そういう初歩的な説明が書かれていない。
 つまるところプログラムにはこのようなマリオネットの扱いに長けたものが招かれており、その手の輩用に支給されたのであろう。
 そこまで予想することはできたものの、それで人形繰りが上手くなるワケでもない。
 結局のところ身もふたもない言い方をすれば、カオスはハズレ武器を引かされたのだろう。
 にもかかわらずこうして懸糸傀儡を操れているのは、彼の類稀なる明晰な頭脳のおかげである。
 それでも動かすのが精一杯であるので、カオスはこの戦闘に際して細かい操り方をマスターする心づもりであった。
 悠長なことをしている余裕は本来ないのだが、知的好奇心の前には身の危険なぞ些細な問題にすぎない。
 カオスのなかでは、知的好奇心はその他のすべてに勝る。
 千年以上の長き人生を経てボケてしまっていても、それだけは絶対だ。

「……ちいッ」

 華麗に飛び回るオリンピアに、金剛番長こと金剛晄は舌を鳴らす。
 あまりに動きが不可解すぎるのだ。
 人間の域を超越した身体能力を誇る敵ならば何人も下してきているが、さすがにここまで動きを予想できない相手はいなかった。
 生物ではあり得ぬ動きといえば、サイボーグ戦士のマシン番長がいる。
 金剛は二度目の戦いでどうにかマシン番長から勝ちを拾ったが、彼の動作はあくまで人間を模している。
 生物の動作を恐るべきパワーとスピードで行っているだけであり、動作自体は他の番長たちと変わらない。

 が――懸糸傀儡は、まったく違っていた。

 筋肉や骨格の都合上曲がれるはずのない角度に胴体を曲げるという、予想だにできぬ動き。
 どう足掻いても捻れぬはずの方向に腕を捻り、手から伸びた注射機を突き刺しにかかってくる。
 地面を蹴ることなくただ使い手が指を微かに動かしただけで、通常思い切り足に力を籠めねばできないほど跳び上がる。
 修羅場をくぐり抜けてきた金剛番長でさえ、このような相手を前にしたことはない。

 これが敵であるならば、思い切り殴ってやればいいだけだ。
 予想できぬ動きなど無意味なスピードで殴りつけ、その一撃でガラクタにしてやればいい。
 普段ならばとうに出ている行動自体は、当然金剛のなかにすでに浮かんでいる。
 ただし、その選択はできないのだ。
 殺し合いに乗っていない相手の武器を破壊するワケにはいかない。

「くッ」

 オリンピアが六本の腕から繰り出す連撃をかいくぐり、金剛はバックステップで距離を取る。
 たったの一跳びで二十メートルほど移動し、誤解を取るべく声を張り上げる。

「いいか、よく聞け。俺たちは、殺し合いには乗っていな――」

 しかし生憎、この呼びかけはカオスの耳に入っていない。
 興味深い研究対象を前にしているというのに、研究者の意識が他に向くはずもない。
 金剛がオリンピアの動きに思っているのと同様に、カオスも金剛の肉体に感心していたのだ。
 まず、反応速度が凄まじい。
 迫る攻撃を確認して、次の動作に移るまでのスピードがバケモノじみている。
 にもかかわらず、ただ反射神経に任せているだけではない。
 避ける必要のない繋ぎの攻撃と急所狙いの本命を見極め、後者以外は回避するそぶりすら見せないのだ。
 判断力もズバ抜けているということだ。肉体のスペックに胡座をかいているワケではない。
 かわすに値しないと認識した攻撃を微動だにせず受けきる肉体にも、目を見張らざるを得ない。
 オリンピアから糸を伝ってくる僅かな衝撃のはずなのに、十分に重いのだ。
 そしていざ回避行動をとる際の俊敏性にこそ、カオスは意図せず息を呑んでいた。
 アレほどにしなやかな筋肉は、カオスの長い人生においてさえ他にみたことがなかった。
 人間の域どころか、脊椎動物全体の域をも超越している。
 それどころか、魔族の筋肉をすら凌駕しているかもしれない。
 カオスは胸中で舌なめずりをした。
 もしもあの肉体を手に入れられたならば――
 もしもあの肉体の量産に成功したならば――
 想像するだけで、胸の高鳴りが抑えられない。

「ふ、ふははは!」

 隠しきれなくなった満面の笑みを浮かべて、カオスは十指を小刻みに動かす。
 それに応えて前に出たオリンピアに乗って、一気に金剛との距離を詰めていく。
 操作にもだいぶ慣れてきており、内蔵武器ごとにそれを扱うのに効率のよい戦闘スタイルを見いだしていた。
 そこでカオスは、オリンピアの踵に埋め込まれた刃がもっとも猛威を振るう攻撃を放たんとする。
 右の人差し指を引くと、オリンピアが刃を露出させた左脚を高く掲げた。

 すなわち、踵落としである。

 とうに、オリンピアは金剛に肉薄している。
 この距離であり、かつこれまで行っていなかった攻撃だ。
 いかに金剛晄とて、到底対処できるはずがないだろう。

 ――そんなカオスの予想は覆される。

「なん……じゃと……」

 降り下ろされたオリンピアの踵から伸びる刃は、金剛の両掌に挟み込まれていた。
 移動速度を乗せた神速の一撃だったというのに、カオスがどれだけ指を動かそうと微動だにしない。
 この戦闘において初めて見せる一撃にもかかわらず、見事に真剣白刃取りを決めて見せたのだ。

「ぬぅん!」

 かけ声とともに、金剛はオリンピアを優しく地面に転がす。
 オリンピアに乗っていたカオスもまた引きずられるように落下しかけたが、金剛の太い腕に抱えて受け止められる。

「いまのは失敗だぜ、ジイさん」

 これまで苦戦を強いられてきたのは、あくまでオリンピアが生物離れした予期せぬ動きを見せていたからである。
 しかし先ほどの踵落とし――アレは、人間でも放てる一撃であった。
 ならば、金剛番長は反応できるのだ。
 踵に内蔵された刃を効率的に用いようとするあまり、カオスは自らの優位を捨ててしまったのだ。

「今度こそ話を聞いてもらうぜ。
 俺と新宮は、キース・ブラックの言葉に従うつもりなどない」

 ようやく誤解を解けると安堵した金剛だったが、カオスの反応に眉をひそめることになる。

「そんなもん分かっとるわい」
「…………なに?」
「動きを観察しておれば、殺しにかかってきてないことくらい見て取れるわ」
「だったら、どうして攻撃を止めなかったんだ?」

 僅かに警戒心を強める金剛だったが、カオスはそんなことに気付かずしれっと言い放った。

「せっかく研究対象の力が分かる機会に恵まれたというのに、それをみすみす逃せるものか」


 ◇ ◇ ◇


 河原で繰り広げられている戦闘のもう片方。
 新宮隼人とマリリン・キャリーの戦いも、また一方的な展開になっていた。
 マリリンの『一秒を十秒に変える能力』に、隼人が対応しきれずにいるのだ。

(クソ! なんだこれは、オイ! どうなってんだ!)
『分からん』

 自身に埋め込まれたARMS『騎士(ナイト)』に問いかけても、返事はひどく簡潔なものだった。
 隼人は大きく舌を打とうとして、横合いから蹴り飛ばされた。
 受け身を取って体勢を立て直すことには成功したが、これは先ほどからと同じだ。
 『攻撃を受けたあと』の対処こそできるが、『攻撃を受ける前』に反応することはまったくできないでいるのだ

「ちッ」

 今度こそ本当に舌打ちを吐き捨ててから、隼人は神経を尖らせる。
 マリリンの加速は、あくまで十倍。
 いくら鍛錬を重ねてきたとはいえ、彼女自身はあくまで人間の域を超えてはいない。
 それを十倍にしたところで、隼人がこれまで戦ってきた相手から比べると決して早くはない。
 ARMS適正者や亜音速サイボーグと比べれば、むしろ遅いと言ってもいいだろう。
 マリリンの能力を細かく知らずとも、隼人はそこまでは判断できている。

 だというのに――反応できないでいる。

 自分の心のなかに『水面』を作り、そこに相手の意識を投影する――『水の心』。
 それを用いているからこそ、隼人はマリリンの加速に対応できないのだ。
 事前に相手の意識を読み取っているからこそ、『意識の上での速度』と『能力を発動させた速度』とのズレに苦しんでいる。
 ARMS適正者はすでにARMSが肉体と適合しているので、意識の上での速度と実際の速度は同一だ。
 亜音速サイボーグは同一ではないが、意識している以上の速度を出すには若干のラグを要するので、そこを突けばよい。
 しかしマリリンの能力には、加速しきるまでのラグなど存在しない。
 発動すればその瞬間、一気に十倍速まで身体を加速できるのだ。


「ふむ……」

 対するマリリンは一方的に攻めているというのに、険しい表情を浮かべた。
 というのも終始押しているというのに、隼人にダメージが見て取れないのだ。
 たしかにいいのが入っているはずなのに、痛がるそぶりすら見せない。
 巧みに受け身を取って立ち上がり、次の攻撃を待つばかりだ。
 マリリンが気になっているのは、それだけではない。
 苦戦を強いられているはずなのに、隼人は一向に左腕を変化させないのだ。
 メカニズムは不明だが、遭遇時はたしかに鉱物じみた外見になってブレードが生えていたはずなのに。
 戦闘が始まるや否や人間の腕へと姿を戻して、そのままだ。

(見くびられている……ということでしょうか)

 無意識のうちにマリリンのあごに力が入り、歯が軋んだ。
 だがすぐに普段と変わらぬ笑みを浮かべ、マリリンは白い歯を見せる。

「でしたら、能力を使わざるを得ないほど追い込むだけですわ」

 言って、マリリンは彼女の『レベル2』を発動させた。
 その能力は、『一秒を十秒にする』能力をさらに『二倍』にするというもの。
 つまり――現在の彼女の速度は『二十倍』。


 常人では掻き消えたと判断するであろうマリリンの姿も、ARMS適正者たる隼人には追えていた。
 水の心で事前に読み取っていた意識を遥かに超える速度で、こちらに飛びかかってきている。
 相手が到達するまで、僅かな時間しかないことは明白だ。
 レベル2を発動させてなお、マリリンは隼人がこれまで戦ってきた敵と比べれば決して速くない。
 ただ――『一瞬で最高速に到達する能力』に加えて、元より互いの距離が短かった。
 その二つが組み合わされば、やはり隼人とて対応できない。

「――がッ」

 くぐもった呻き声を漏らして、隼人が宙を舞う。
 矢のような軌道から放たれた右ストレートの勢いそのままに、背後へと吹き飛んでいく。
 もう受け身を取る余裕など与えないと、マリリンは隼人を追うように地面を蹴った。
 彼女のレベル2には制限時間がある。
 一日に現実時間で『一分』以上使うと、意識を失ってしまうのだ。
 一気に追い込まねばならない。

「『騎士』ッ!!」

 空中で体勢を立て直しきれない状態で、隼人は左腕をARMS化させた。
 思わず、マリリンは加速した世界のなかで口元を緩める。
 これこそが狙いであった。
 ARMSを使わせるためだけに、マリリンは制限時間のある能力を発動させた。
 力を出し惜しみさせず、使わせた上で倒したかったのだ。
 マリリンは地面を蹴って跳躍し、空中で身体を捻る。
 飛び回し蹴りを放つには、ほんの僅かな時間だが対象から目を離すことになる。
 ゆえに、マリリンは驚愕するはめになった。

 隼人は、ARMS化した左腕から伸びるブレードを――『地面』に突き刺していたのだ。

 そうやることで、隼人は強引に空中で静止する。
 吹き飛んでいく方向に峰が来るようにしているため、地面を斬って進むことはない。
 驚いたところで、放った蹴りが止まるはずもない。
 マリリン渾身の飛び回し蹴りが、隼人の右脇腹を抉りこむ。

 けれど、それだけだ。

 隼人は微動だにしない。
 自身の体重、吹き飛んでいた勢い、飛び回し蹴りの威力。
 すべてが左肩一点に集中しているというのに、隼人と『騎士』は揺れ動きすらしない。

「掴まえたぜ」

 そう告げられてから、マリリンは蹴りを放った右足が隼人の右腕に掴まれていることに気付いた。
 隼人が左腕のARMS化を解除すると、二人して重力に引っ張られて落下する。
 その間、マリリンはずっと残った左足で蹴りを放ち続けている。
 とはいえ片足を掴まれている以上、体重を乗せることもできない。
 ただ十倍速になっただけの蹴りでは、隼人には遅すぎる。
 左足のほうもたやすく捕らえられてしまう。

「いいか? よーく話聞けよ? 俺は、あのブラックのヤローの言うことなんざ――」

 と言いかけて、隼人は不意に気付く。
 隼人はマリリンの年齢を知らないが、とりあえず年下なのは見て取れる。
 高く見積もって高校一年生、せいぜい中学生程度だろうと、そんな風に判断した。
 また迷彩柄の軍服という泥臭い格好に反して、マリリンはかわいらしい容姿をしている。
 後ろで結っている長い金髪は細く、肌は白くてきめ細かく、瞳は大きい上に蒼く澄んでいる。
 おそらく、十人いれば十人が口を揃えて美少女と言うであろう。
 そんな美少女を、隼人はどうしているのか。
 反抗できぬように両足を掴んで、地べたに押さえつけているのだ。
 マリリンのほうはといえば、隼人を鋭く睨みつけて歯を噛み締めている。

「…………なんかこれ、とんでもねー絵面になってねえか?」

 誰にともなく呟いてから、隼人は凄まじい速度で現状を告げた。
 こんなに速く舌が回るのかと、自分でも驚くほどの速度で。
 さすがにこれ以上他人に誤解されてしまうのは、不良と思われがちな隼人でもカンベンして欲しかった。


 ◇ ◇ ◇


 隼人が誤解を解こうと四苦八苦しているうちに、金剛とカオスが隼人たちのほうへとやってきた。
 二人の様子を見てマリリンも納得し、こうなればパルコ・フォルゴレをつれ戻さねばならないという空気になったのだが――
 そんな空気を破ったのは、カオスであった。
 彼は、隼人の『騎士』をプログラムの説明の際に見た高槻涼の右腕と同種のものと見抜いていたのだ。
 そのことに触れられれば、隼人も自身を巻き込む運命について語るしかなかった。
 あくまであっさりとだが、一つの隕石と一人の少女から始まった数奇な運命を説明する。

「無機物の霊に……少女の霊……か。
 おそらく……怨霊化……いやしかし、ならば……?
 魔法科学……とは異な……じゃが、近い点も散見され……ARMSとは……?」

 なにやらぶつぶつと独り言を漏らすカオスをよそに、金剛も自身について語る。
 隼人が仲間に会わねばならないように、なんとしても会わねばならぬ兄がいるのである。
 しかしながら、隼人や金剛の期待が実ることはなかった。

「申し訳ありません。
 私たちはプログラム開始早々に三人で行動を始めて以降、アナタ方に会うまでずっと誰にも出くわしませんでしたわ」

 隼人が肩を落とし、金剛は僅かに眉根を寄せた。
 ともあれ落ち込んでもいられないのは、二人とも理解している。
 すぐに切り替えて、フォルゴレが去っていったほうへと向き直る。
 そこで、マリリンから声をかけられた。

「……自分のことは話しておいて、私たちにはなにも聞きませんの?」

 隼人と金剛が顔を見合わせる。
 言われてみればたしかにそうだ。
 通常、自分のことを話す前に相手の素性を聞くほうが正しいのかもしれない。
 そのように考えてから、両者ともに頷く。

「いや、とりあえずいまはいいわ。俺急いでアイツらに会わなきゃなんねーし」
「俺も兄貴に会わねばならねえからな」
「ええっ!?」

 当たり前のように言い放つ二人に、マリリンは目を丸くする。
 戦闘時の落ち着きっぷりが嘘のように、あたふたと両手をばたつかせる。

「アナタ方は気になりませんの!?
 私の人間では出せないはずのスピードも!? まだ中学生なのにこんな軍服を着ていることも!?」

 その様子があまりに必死だったので、隼人はこう返すことにした。

「…………じゃー聞くよ」

 そんなに聞いて欲しかったのかとは、思っていても口に出せなかった。
 新宮隼人、意外に空気を読む男である。

「ふふふ、でしたら特別に教えて差し上げますわ」
「…………」
「…………」
「ですが、さすがに『能力』については教えられませんわ!
 誰がどこで聞いているのかも分かりませんもの!
 いくら殺し合いに乗っていない方の前とはいえ、やすやすとは漏らせませんっ!」
「…………」
「…………」

 マリリンの思わせぶりな口調に、隼人と金剛はなにも返さない。
 聞くのに集中するためではなく、単に絶句しているだけである。
 あるいは、ドン引いていると言い換えてしまってもいい。

 ちなみに、この間もカオスはなにやら一人で呟いていた。
 ドクターカオス、フリーダムなジジィである。

「アナタ方が幼き頃から戦うことを宿命付けられていたように――私も幼き頃から『戦士』でした」

 ぴくりと、隼人と金剛の肩が跳ねる。
 それを見て、マリリンは誇らしげな笑みを浮かべた。

「ふふふ、気になりますか?
 『幼き頃から戦士』とははたしてどーゆーことなのかっ!?」
「いいから続けな」

 鼻高々といった様子のマリリンだったが、金剛が低い声で続きを促す。
 金剛晄、空気を読まない男である。

 僅かに残念そうな表情を浮かべてから、マリリンがようやく本題に入る。

「私がまだ幼き頃、私たちの国では戦争が絶えませんでしたの。
 私や周囲の子どもたちも将来戦場へ出るため、苦しい訓練を強いられてきました。
 戦いに勝つためのありとあらゆる戦闘技術を、まだ小さなかった身体に叩き込まれましたわ」

 話しているうちに、マリリンの顔面に微笑みが戻ってくる。
 しかしその内容は、決して笑って聞けるようなものではなかった。
 隼人と金剛は、渋い表情のまま息を呑み――

「でも私たちが戦場へ駆り出される前に、戦争は終わってしまいましたわ。
 そして戦後、父の始めた商売が当たって数年で富豪の仲間入り。
 戦争で両親を亡くした仲間の子どもたちを使用人として引き取り、いまに至るというワケです」

 ――思い切り、前につんのめりそうになった。

「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょーっと待て」

 まだ続いている言葉を遮って、隼人が前に出る。

「じゃあお前、いまは戦争とか関係ないのか?」

 マリリンが、怪訝そうに首を傾げた。

「そう言ったはずですわ」
「……幼い頃からの戦士ってなんだったんだよ」
「ですから、それについてはこれから話すところです!」
「ああ、そうだったのか。悪ィ、急展開すぎてつい……」

 気を取り直すように一つせきをしてから、マリリンは続きを語り始める。

「ですが、やはり染み付いてしまったものは取れません。
 だって幼い頃から戦場で生きる方法しか教えられてこなかったんですもの。
 いまさら富豪の娘としてなんの不自由もなく生きろと言われても、刺激があまりになさすぎますわ」

 隼人の眉が微かに動いた。
 マリリンはそんなことには気付かない。

「一言で言ってしまえば、退屈なんです。
 やはり私に相応しい場所は戦場しかないのです。
 戦場以外に、私が輝ける舞台なんて存在しませんわ」

 隼人が歯を軋ませる。
 マリリンは気付かない。

「ですからこの殺し合いに巻き込まれたとき、正直私は嬉しかったんです。
 あの苦しかった鍛錬の日々を無駄にせずに済む機会が、いきなり訪れたんですもの」

 『騎士』が、宿主にしか感じ取れぬ高音を鳴らす。
 隼人の全身にナノマシンが巡り、皮膚に奇妙なラインが入る。
 マリリンは気付かない。

「幼き頃から戦士である私は――戦場で唯一『生きている』と実感できるんですわ」

 言い切って、マリリンは満面の笑みを浮かべた。

 隼人はもう我慢の限界だった。
 なにも言わずに、マリリンに背を向けて歩き出す。
 フォルゴレが向かったのとは別方向にである。

「行こうぜ、金剛。こいつらとは一緒にいらんねー」
「そうだな」

 短く返して、金剛は隼人の後を追う。
 困惑するのは、残されたマリリンだった。

「ど、どうしてですの!? アナタ方もキース・ブラックに敵対しているんでしょう!?」

 返事はない。
 隼人と金剛は無言で離れていくだけだ。

「でしたら、ともに行動したほうがいいでしょう!?
 アナタ方の戦力が高いとはいえ、別行動をして戦力を分断するのは効率的とは言えません!」

 なにも返ってこない。
 マリリンは苛立ちを露に、声を張り上げた。

「理解できませんわ! 目的は同じでしょう!?」

 隼人と金剛が足を止める。
 静寂が辺りを包みかけたところで、隼人が振り向いた 

「勘違いしてるみてえだけどな、俺とお前の目的は全然ちげーんだよ」

 え――と。
 小さく呟いたマリリンに、隼人は静かに続けた。

「俺も俺のダチも、お前の言った『刺激のない日常』のために戦ってんだよ」

 隼人の傍らで、金剛も小さく頷く。

「いいか、二度と間違うんじゃねーぞ……ッ!」

 念を押そうとして、隼人は知らず語気が強くなっていた。
 これまでの日々が、フラッシュバックしたのだ。
 たった一人でエグリゴリの刺客を始末していた。
 あの頃は、日常などどうでもよかった。
 そんなものは、自分には手に入れられないと諦めていた。
 両親も友人もエグリゴリに奪われ、残されたのは祖父だけ。
 復讐以外に生きる道はないと、そんな風に思っていたのだ。
 だが高槻涼と出会ったのをきっかけに、別の生き方もあるのではないかと考えを改めた。
 オリジナルARMSを埋め込まれた三人は、血こそ繋がっていないが運命を分け合った兄弟だ。
 また他にも、自分を信じてくれる仲間たちができた。
 復讐しか頭になかったマヌケな男を、信用してくれるヤツらができたのだ。
 いつの間にか、彼らは隼人のなかで復讐よりも大事な存在となっていた。
 彼らを死なせないことのほうが、復讐なんかよりよっぽど重要だった。
 かつての自分が見たら甘ちゃんと笑うだろうが、別に構わない。

 現在の新宮隼人は『過去』の復讐のためではなく、仲間たちとの『未来』のために戦っているのだ。

 ゆえに――
 過去に誰かが定めた運命(プログラム)なんか、知ったことではない。
 アリスという少女の悲しみも怒りももっともだ。
 何せ、ずっと研究室に閉じ込められていて、初めて友人たちと外を出る機会を得た――そのときに殺されたのだ。
 もし自分が同じ立場であったのならば、さぞかし人間を憎んでいたことだろう。
 『仁愛』や『勇気』はもちろん『審判』さえ残さず、『憎悪』だけを生み出したかもしれない。
 しかし、そんなことは関係ない。
 過去の少女の感情には納得がいくが、それで自分たちの未来が潰えるというのなら――そのような運命は叩き切ってやる。

 そんなふうに思っている隼人だからこそ、マリリンとはともにいられない。
 自分たちの目指す何気ない日常を嘲笑われたのももちろんだが、何より『過去』に縛られるような輩とは共闘できない。

 そしてその思考は、金剛のほうも同じだった。
 過去の事件に縛られる兄を止めるために、なんとしても対面せねばならないのだ。

「俺たちは、てめえみてえに運命さまに従ってやる気はねえんだよ!
 戦場でしか生きられねえ? はッ、んなヤツらは腐るほど見てきたぜ。
 気にいらねえんだよ、そういうヤツらは! てめえらの基準なんか知らねえけど、戦争が生きがいとか納得いかねえ!
 俺はダチも両親も奪われて運命さまのレールにまんまと乗せられたけどな、これが生きがいだと!? ふざけんじゃねえ!!
 死んだり殺したりするのが戦争だろうがッ! そんなもん、本当に心から楽しいと思ってるヤツなんかいるかよ! いてたまるかッ!!」

 言ってから、隼人は髪をかきむしった。
 こんなに熱くなるつもりは、毛頭なかった。
 主義が合わない相手と話す気はなく、ただ静かに去るつもりだったのだ。
 隼人はばつが悪そうにしながらきびすを返して、一歩踏み出そうとした。

「がはッ!?」

 いきなりの背後からの攻撃に対処できず、隼人はそのまま吹っ飛ばされていく。
 驚いている間に次の攻撃が放たれた。
 軍靴の先端での掬い上げるような蹴りだ。
 まんまと蹴り上げられ、胸ぐらを掴まれる。
 そこまで来てようやく、隼人は攻撃を仕掛けてきているのがマリリンだと知った。

「戦争を生きがいとしているものがいない? いますわ、ここに」

 能力を発動させた拳が、隼人の頬に叩き込まれる。
 しばらく河原の石の上を転がってから、隼人はゆっくりと立ち上がった。

「行くぞ、金剛」
「ああ」

 言葉通りに、やり返すでもなく去っていく。
 その様子がマリリンは気に入らず、再び背後から蹴り飛ばす。

「……悪ィな、つまづいた」
「ああ」
「なあッ!?」

 結果は同じだった。
 まるでマリリンがその場にいないかのように振る舞っている。

「どうしてですの!?」

 三度目の攻撃。
 やはり隼人は無反応のまま立ち上がるだけだ。

「『レベル2』ッ!!」

 能力を二倍にさせても、隼人の行動は変わらなかった。
 それからさらに数回攻撃を続けているうちに、マリリンは不意に考えてしまった。
 そう、考えてしまった。
 考えて――しまったのだ。

(私……どうして、こんなに必死になっているんですの?)

 一度疑問に思ってしまえば、おかしな点しかなかった。
 能力を多用すれば疲弊するし、『レベル2』に至っては制限時間つきだ。
 ならば、新宮隼人なんかに酷使している場合ではない。
 ただ考えが違っているだけで、別に殺し合いに乗り気なワケではないのだ。
 だとすれば放っておけばいいではないか。構わなければいいだけではないか。
 これこそまさしく、先ほど隼人に言ったように効率的ではない行動だ。

 しかし――身体は、不思議と一向に止まる気配を見せない。

(なんで、私はこれほどまでに執着しているんでしょう)

 思考だけがやけに冷静だった。
 落ち着いた思考で、自身が仕掛けたきっかけを思い出す。
 間違いなく、生きがいである戦場を嘲笑われたのがきっかけである。
 だがその程度ならばよくある話だ。
 戦士の気持ちが分からぬ人間など五万といる。
 ならば、なぜ――
 マリリンは記憶を掘り起こしていく。

「……っ!?」

 唐突に、マリリンの頭に鈍痛が走った。
 なにか、開けてはいけない箱を開けてしまったような。
 そういう、奇妙な感覚があった。

 これが発端に過ぎないことを、マリリンはすぐに思い知った。
 厳しいけれどやりがいのあった訓練の日々。
 そのはずだった記憶が、どんどん塗り替えられていく。

 辛くて、いつも泣いていた――そんなありえぬはずの過去が蘇っていく。

 本当は戦争なんて怖かった。
 トレーニング中は、毎日のように泣いていた。
 それでも必死で鍛錬を重ねたのは、仲間がいてくれたからだ。

 そんな仲間たちは、戦争が終わる前にもう――

「あ……あぁぁぁぁ!!」

 流れ込んでくる記憶の奔流を止めるべく、マリリンは身体を激しく動かす。
 これまでの軍人らしい所作からは程遠い、大振りな攻撃ばかりを隼人へと放ち続ける。

 それでも、開けてしまった箱はもう閉じられない。

 一度嘘だと悟ってしまった嘘では――もう自分さえ騙せない。

(ようやく……分かりましたわ)

 自ら封印していた記憶に直面しても、マリリンの思考はどこか落ち着いていた。
 ひどく冷静に遠くから自分自身を眺めている自分がいるかのような、そんな感覚だった。

(私が、新宮隼人を許せなかったのは――)

 ひとえに、マリリンがずっと自分自身に言い聞かせてきた嘘を嘘だと明かしてしまったからだ。
 だから、頭で思うより早く咄嗟に仕掛けていたのだ。

「うああああああああああああああああっ!!」

 マリリンは二十倍速の世界のなかで、喉が削れるような絶叫をあげた。
 思い切り地面を蹴って、振りかざした拳を隼人の背中に叩きつける。
 地面を何度もバウンドして彼方まで飛んでいった隼人に、マリリンは声を荒げる。

「いまさら言われたところで……もう遅いんですわ! なにもかも!」

 言い放って、マリリンは倒れこむ隼人を見据える。
 立ち上がらないで――と、胸中で祈りながら。
 これまで積んだ研鑽に、神候補より得た能力。
 二つを重ね合わせた全力の一撃だ。

 これを食らって立ち上がるということがあれば、それは――

「……悪ィ悪ィ……金剛、さっきから……よろけてよ……」

 マリリンの祈りをよそに、隼人は時間をかけてだがたしかに立ち上がった。
 それを見て、マリリンは地面に両膝をついた。

 あの一撃で隼人を倒せないということは、つまり――

「あの苦しくて辛い十年間は、なんの意味もなかったんですわね」

 零れ落ちた声は、いつもの自信に溢れたものとは程遠かった
 いつの間にか溢れていた涙に、マリリンはようやく気付いた。
 なにもかもが遅かった。
 すべてを受け入れて涙を流すなんてことは、十年前にやっておくべきだったのだ。

「もう……いまさら普通の人生なんて……歩めるはずが…………」

 いまにも掻き消えそうな声を漏らしながら、マリリンはくずおれる。
 河原の石がどんどん近づいてくるが、別にどうでもよかった。

「はッ、ふざけんなよ」

 落下感は途中で消え、河原の石に倒れこむことはなかった。
 顔を上げると、朧気な視界の向こうに茶髪の目つきが悪い少年の姿がある。

「なにが十年だ。俺はもっと長ェこと間違ってきたんだぜ。
 そんくらいで諦められたら、俺はどうすりゃいいんだッつーの」

 そう言って軽口を叩く少年の腕が、マリリンにはとても温かく感じた。


 ◇ ◇ ◇


「おーい! 兄ちゃんたちー!」

 マリリンが落ち着くのを待っていると、河原に少年の声が響く。
 この声に、隼人と金剛は聞き覚えがあった。
 鉄刃のものである。

「誤解を解きに来たぜーって、遅かったみてぇだな」

 周囲を眺める刃に、隼人はげんこつを落とす。

「元はといえば、てめーが余計なことすっからこじれたんだろうがっ!」
「いやぁ……こんな小僧のみぞおちを思い切り殴ったおぬしも、誤解されて仕方ないと思うが……」

 割って入ったのは、ドクターカオスだ。
 この男、マリリンと隼人の間で一悶着あったにもかかわらず、その間ひたすらに考え事をしていた。
 一時になったことには目を離さない研究者の鑑といえるかもしれないが、決して人間の鑑とは言えないだろう。

「ところで、お前を抱えていったフォルゴレという男はどうした?」
「ああ、あの濃ゆい兄ちゃんならチェリッシュ任せ――」

 金剛の疑問への刃の返答は、半ばまでしか告げられなかった。
 途中で、第三者が割って入ってきたのだ。

「その男ならば、死んだぞ」

 いっせいに振り返ると、そちらには白髪の老人が立っていた。
 いや、老人ではない。
 老人型自動人形(オートマータ)・シルベストリだ。
 初見では分からぬ事実であるのだが、その場にいた誰もがシルベストリの正体を見破る。
 その胸元に刻まれた一文字の傷から、内部の空洞が見て取れるのだ。

「んだよ、アンタ――もしかしてフェイスレスさんの言ってた自動人形か?」

 視線を鋭くしながらの隼人の一言に、シルベストリは目を見開く。
 フェイスレスとは、シルベストリら自動人形の造物主だ。
 しかし同時に、人形破壊者(しろがね)の司令でもある。
 隼人の口振りから察するに、この場ではその立場で動いているのだろう。
 ゆえに、フェイスレスについては触れないことにした。

「そうだ。私は自動人形だ」

 短く答えて、シルベストリは腰を低く落とす。
 そうして携えている日本刀に手をやり、ほんの少しだけ親指で柄を押した。
 たったそれだけでおびただしい妖気が溢れ出し、大気に侵食する。
 妖気の存在を知らぬものたちでさえ、『あってはならぬもの』の存在に気付くほどだ。

「妖刀『八房』じゃと……? なぜ、おぬしがそれを」
「答える義務はない」

 シルベストリは、ドクターカオスの問いをぴしゃりと切り捨てる。
 一気に緊張感が辺りを支配する。
 いつシルベストリが動いても対応できるよう、全員が意識を集中させる。

 ――それがシルベストリの狙いとも知らずに。


 くい――と。
 少し離れた場所で、ギイ・クリストフ・レッシュが指を微かに動かす。
 たったそれだけの動作で、懸糸傀儡『ジャック・オー・ランターン』に内蔵されたロケットランチャーが火を噴いた。

 河原に向かう道中で、ギイとシルベストリはすでに鉄刃に追いついていたのだ
 それを見逃したのは、明らかに誰かの元へと向かう様子だったからだ。
 河原といっても、範囲はかなり広い。
 そのどこに参加者がいるのかは定かではなかったが、だったら案内してもらえばいいだけだった。
 刃に悟られぬよう足音をひそめつつ、小声で作戦を企てていたのだった。


 最初にミサイルに気付いたのは、隼人だった。
 距離があったので完全には特定できなかったが、近くにいる何者かの思考の存在自体は感じ取っていた。
 いざ仕掛けられれば、その思考の持ち主がなにをしたいかなど簡単に読み取れる。
 若干手荒い手段だと理解しつつ、すぐ前にいた刃を離れた場所に蹴り飛ばす。

 次が金剛だ。
 彼の人並みはずれた五感とて身を隠すギイは捉えられなかったが、隼人が動き出したのを見てすべてを理解する。
 僅かに離れた場所いるドクターカオスに飛びかかって、そのまま抱きかかえるようにして地面を転がる。
 金剛番長の肉体があれば、いかにミサイルとて直撃さえしなければ問題ない。

 最後にマリリン。
 隼人や金剛には遅れを取ったものの、戦場をよく知る彼女も直撃するより早くミサイルの接近を知る。
 そして、彼女は自身の能力を発動させた。
 レベル2の残り時間は短いが、レベル1ならば問題なく扱える。
 いざ能力さえ発動させれば、ミサイルなど恐るるに足らない。
 ゆうゆうと回避してから振り向いて――目に止まってしまう。
 反射的に刃を蹴り飛ばした隼人が、体勢を崩したままなのだ。
 もうミサイルは、すぐそこまで来ているというのに。
 それに気付いたときには、彼女は動いてしまっていた。
 残り時間の少ないレベル2を発動させ、先ほどまでいた地点に全速力で戻って突き飛ばす。
 加速した世界で、隼人がゆっくりと表情を変える。

「バッ――」

 なにやら隼人が口にしようとした言葉は、ミサイルの音に呑み込まれて最後まで聞き取ることができなかった。
 二十分の一の速度で、衝撃がマリリンへと襲い掛かる。
 まず最初に感じたのは、突風による浮遊感だった。
 次に閃光に思わず目を閉じると、すぐさま熱が来た。
 服が焼かれ、髪が引き千切れ、皮膚がめくり上がる感覚。
 それから痛みがやってきた。
 少し前ならば生を実感するための要素であったはずの存在が、いまではとても苦しかった。
 いや、違う。
 本当は、ずっと前から辛かったのだ。
 そのことに気付いてなかっただけで。
 それを教えてくれた少年の姿を思い返す。
 別れ際の表情は、なんとも言えなかった。
 驚いているようにも、怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。
 きっと、すべて正しいのだろう。
 そんな気がした。
 考えながら、マリリンは思う。
 神候補から能力を与えられる際、この能力を選んでよかった――と。
 この能力があるからこそ隼人を死なせずに済んだし、こうして死に行くなかでゆっくりと物思いにふけることができたのだ。
 しかしもう十分だ。
 ここまで思考を巡らすことができれば満足だ。
 目を閉じたままで、死を待つ。

 が――死ねない。

 ダメージが大きすぎて能力は解除できない。
 二十倍速の世界のなかで、死ぬまで待つしかないのだ。

(……まいりましたわ)

 痛みを味わい続けるのは構わない。
 とうに覚悟していたことだ。
 それよりも、思考が止まらないのが辛い。
 ついつい考えてしまうのだ。
 もう満足したはずなのに。
 意を決していたはずなのに。
 知らず知らずのうちに思ってしまうのだ。

(死にたくなんてありませんわ……)

 自分自身に吐いていた嘘。
 本当は戦いなんて嫌いな自分を塗り固めていた。
 それを教えてくれた隼人のためならば、死んでも構わない。
 そう思っていたはずなのに、なまじ時間があるせいで真実に気付いてしまう。
 なんとしても隼人を助けたかったための嘘に過ぎないのだ。
 またしても、自分自身に吐いた嘘を嘘だと知るはめになってしまった。
 本当は死にたくなんてない。
 もっと生きたい。
 これまでの十年を精算するくらいに、生きてやりたい。
 だけど、もう無理だ。
 隼人ではない他の誰かが残っていたならば、あんな行動には出なかった。
 この結末を選んでしまったのは――そういうことなのだ。
 くずおれる自分を抱き締めてくれた温かさの仕業なのだろう。
 あの温もりのなかで感じた心地よさのせいなのだろう。

 それは、もしかしたら――――

 ようやく朦朧としてきた意識のなかで、マリリンは自分の感情を理解した。
 理解してしまえば、やはり死にたくないと思ってしまう。
 けれど、それでも。
 死にたくなんてなくても。
 自分に嘘を吐いてまで助けてしまったのだ。
 そして嘘だと分かってなお、それについては後悔していない。
 残った力を振り絞って、マリリンは口を動かす。
 ひゅうひゅうと胸元から空気が零れていく。
 音は聞こえなくても、感覚で分かってしまう。
 どうなっているのか確認する力もない。
 それでも、言い切ってやる。
 どうにか――言い残しておきたかった。

「私を生き返らせてくれてありがとう」

 はたして、この声は届いたのだろうか。
 意識が薄れていくなかで、マリリンはそれだけが気がかりだった。



【マリリン・キャリー 死亡確認】
【残り55名】


【C-4 河原/一日目 午前】

【金剛晄(金剛番長)】
[時間軸]:王様番長戦直前、バンカラタワーに向かう途中。
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:スジを通す。


【新宮隼人】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にて招待状を受け取って以降、同話にてカリヨンタワーに乗り込む前。
[状態]:全身にダメージ(回復中)、共振波を放出中、水浸し
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(未確認)
[基本方針]:仲間たちと合流してブラックのプログラムを叩き斬る。高槻は暴走していないと確信。
※ある程度近づかなければ、ARMSの共振を感知できないようです。完全体となった場合は不明。


【ドクター・カオス】
[時間軸]:妙神山壊滅以降、南極での決戦前。
[状態]:健康。精神的に少し落ち込んでる。
[装備]:スクール水着@現地調達、ファイティングナイフ@スプリガン、オリンピア@カラクリサーカス
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:早くまともな服を着たい。知り合いには会いたくない。


【鉄刃】
[時間軸]:織田信長御前試合の直後
[状態]:健康
[装備]:超振動ナイフ@ARMS
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2、魔剣センサー『スパイダー』@YAIBA
[基本方針]:殺し合いには乗らない。チェリッシュを守る。市街地にある反応(雷神剣)へと向かう。


【ギイ・クリストフ・レッシュ】
[時間軸]:本編で死亡後
[状態]:健康
[装備]:ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス、殺鳥用ワイヤー×3@金剛番長
[道具]:基本支給品一式×3、拷問鞭@金剛番長、ランダム支給品0~6(うち0~2は小次郎から見て武器となるものなし)
[基本方針]:他者と組み、エレオノールを優勝させる。


【シルベストリ】
[時間軸]:34巻、勝戦直前
[状態]:健康、服の胸元に真一文字の傷
[装備]:妖刀『八房』@GS美神
[道具]:ランダム支給品2(刀剣類なし、確認済み)、菊一文字@YAIBA
[基本方針]:他者と組んでフェイスレスの優勝をサポートしつつ、人間が群れる理由を解き明かす。植木耕助に会う。





【備考】
※SIG-P220(6/9)@現実、マリリンのリュックサック(基本支給品一式、光界玉@烈火の炎、石板@金色のガッシュ!!、SIG-P220の予備弾薬(9/9)@現実)は、マリリンの死体の傍に放置されています。
※軍服@うえきの法則は、ずたずたになってマリリンの死体とともに放置されています。



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103:導火 鉄刃  : 
金剛晄(金剛番長)
新宮隼人
マリリン・キャリー GAMEOVER
ドクター・カオス  : 
ギイ・クリストフ・レッシュ
シルベストリ

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