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  • 虹

虹

最終更新:2012年06月05日 04:41

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だれでも歓迎! 編集

虹 ◆d4asqdtPw2



 気に食わない。
 ジャン・ジャックモンドの抱える不満が舌打ちとなって現れた。
 彼が怒りの矛先を向けるのは、キース・ブラックと名乗った男。
 この悪趣味極まりない殺し合いの主催者だ。

「あの野郎……ただじゃおかねぇ……」
 ポケットに突っ込んだ両手を握り締める。
 それでも怒りが収まらないので、右足で大地を思いっきり蹴り上げた。
 土くれが宙を舞い、数メートル先にべチャリと落下する。
 その様は、先ほど繰り広げられた悲劇……少女の死体が落下する光景を思い起こさせた。
 本当に、胸糞が悪い。

「しかし、コレ……どうにかなんねぇのか」
 首輪を乱暴に引っ張ってみる。
 当然ながら、忌々しい銀のリングは外れてくれるわけもなかった。
 中に爆発物が詰め込まれているらしいのだが、それにしては彼の扱いは雑である。
 それも当然のこと。
 彼の怒りを最も買っているのが、この首輪なのだ。
 主催者は、こんな陳腐なオモチャなどでジャン・ジャックモンドを縛り付けた気でいる。
 そのことが、不愉快で仕方がなかった。

 とはいえ、彼が首輪をぞんざいに扱う理由は、単に頭に血が上っているからというだけではない。
 キースは参加者に殺し合いをしろと言ったのだ。
 ちょっとやそっとのことで首輪が爆発してしまっては、殺し合いなど成立しないではないか。
 あの会場に集められた顔ぶれを見る限りでは、相当な実力者が揃えられている。
 首輪の強度も、それらの猛者による激戦を想定してつくられているはずだ。
 ……と、ジャンは冷静に考えていた。
 事実、首輪は彼の想定したとおり、頑丈なつくりになっている。
 朧に敗北したことが、ジャンをスプリガンとして一回り成長させたようだ。

「さて、これからどうするか、だな」
 支給されたリュックサックを地面に降ろし、中から名簿を取り出す。
 御神苗優や朧といったスプリガンの他に、暁巌とボー・ブランシェのお笑いコンビ、そして染井芳乃の名前までもが記されていた。
 死んでしまったはずの人間の名まで記載されていることは気になったが、それは考えても仕方のないこと。
 本当に彼が蘇生しているとしても、実際に目で見て確かめる他ないのだから。
 つまらなそうに鼻を鳴らすと、名簿をリュックに突っ込む。
 続いて、支給品の確認をしようとした、その手が止まった。

「出てこい。やるんなら遠慮はしないぜ」
 感じた気配を目で確認することなく、警告する。
 とはいえ、相手から発せられる殺気は宣戦布告には充分すぎるものだ。
 ジャンはリュックを背負ってゆっくりと立ち上がり、敵を見据える。
 そこにいたのは、銀髪の少年。
 見た目こそ子供ではあるが、ジャンが警戒を解くことはない。
 この少年は明らかにジャンと戦う気でいたのだから。

「随分と余裕じゃないか」
 紫に光る両目をギラつかせ。
 尖った歯をむき出しにして。
 少年は笑った。これでもかと悪意を込めて。
 ジャンに睨みつけられても、少しも怯むことはない。
 幼い見てくれに反して、それなりに修羅場はくぐっているようだ。
 少年が身に着けている白いマントが風にはためく。
 それが、開戦の合図となった。

「遠慮などしたら……死ぬぞッ!」
 この時点で、両者の距離は五十メートルばかり。
 少年は、それを一瞬で詰める。
 もちろんそれは、ただの無策な突進ではない。
 相手に接近しながら、攻撃の予備動作も同時に完了させていた。
 少年は既に、ジャンの背後。
 ジャンの頭の高さにまで跳躍して、右脚を振りかぶっている。
 後頭部で束ねられた金色の髪の毛に向けて、全力で蹴りぬいた。

「…………ッ!」
 短い脚で繰り出されたキックながら、その威力は凄まじい。
 受け止めたジャンの左腕に、鈍い痛みが走った。
 しかし、その程度のことなど、命のやり取りを毎日のようにしているジャンにとっては何のことはない。
 逆に相手の脚を捕まえ、反撃に転じようとする。

「ふん……」
 ジャンの太い指が、相手の細足を絡めとらんと動く。
 だが大人しく捕らえられてくれるほど、甘くはない。
 銀髪の少年は蹴りの勢いそのままに回転し、彼の手から逃れた。
 大地へ着地すると同時にバックステップをして距離を確保する。

(このガキ……速ぇ……)
 ジャンのこめかみから汗が流れ落ち、白い頬を伝って大地で弾けた。
 数メートル離れて対峙している敵と繰り広げた戦いは、まだせいぜい数秒程度。
 だが、相手の実力を思い知るには充分すぎた。
 この少年は、かなり強い。
 打撃の威力や瞬間的な判断力など、大したものだ。
 中でもスピードは、ジャンの得意分野であるにもかかわらず、彼の上をいっている。
 純粋な速さで負けたことなど、彼にとって初めての経験であった。

「…………?」
 少年が、スッと片手を掲げた。
 手の平をジャンの方へ向けて。
 武器を持っているわけでも、朧のような気孔を放つわけでもないようだ。
 しかし、何かあるはずだと、ジャンは警戒を強める。
 それは正しい判断であったと言っていいだろう。
 事実、その集中のおかげで、次に来たるまさかの攻撃に対処することがかなったのだから。

 紫に怪しく光る両目の下で、尖った歯をむき出しにした口が三日月の形に歪む。
 ジャンを見つめる手の平でパチパチと放電現象が発生。
 少年のおぞましき笑顔が崩れ、開いた三日月が呪文を紡いだ。

「ザケル」
 電撃が少年の右手に充填し、ジャンに放たれる。
 詠唱から発動まで、時間にすれば一秒にも満たない。
 獣人ジャン・ジャックモンドにとっては、充分なタイムラグだった。
 迅雷に飲み込まれる前に、横に飛び退き地面を転がる。
 まったく未知の攻撃をやり過ごすことが出来たのは、スプリガンとしての数々の経験の賜物だろう。

「後ろだ」
 ジャンが声のした方向に振り向くよりも早く、衝撃が彼の背中を襲った。
 突然のいかずちを避けるのに精一杯であった獣人。
 それに対して、少年は『ザケル』が回避される可能性までもを想定していた。
 蹴りを食らって吹き飛ぶジャンに、追撃の紫電を見舞う。

「ザケル」
「……ぐおッ!」
 今度は避けることは出来なかった。
 衝撃がジャンの全身を駆け抜ける。
 電撃により筋肉が弛緩するその絶対なる隙を少年が見逃すはずもない。
 我に返ったジャンの目が捕らえた少年は、既に次の魔法を放とうとしていた。

「残念だったな」
 先ほどとは段違いの量の電撃。
 それが、ジャンに照準を定めている。

「…………くそったれ……」
 ジャンは月並みなセリフと共に、赤みの混じったつばを吐き捨てた。
 なんとか立ち上がり、退避しようとする。
 最後まで諦めることはない。
 たとえ、もう間に合わないだろうことに気がついていたとしても。

「テオザケ…………ッ!」
 少年が絶望を宣言しようとした。
 その魔法が妨害される。
 音速で飛来した乱入者が、紫電の少年にタックルしたのだ。
 その衝撃のままに、ジャンを殺そうとしていた少年は遥か遠くへ吹き飛ばされた。


◆     ◆     ◆


「おい……」
「…………あ……」
 声のした方へ武士が振り返ると、金髪の青年が睨み付けていた。
 かけるべき言葉を捜している武士に先んじて、彼がへの字に結ばれた口を開く。

「助けられちまったようだな」
「…………いえ……あの……」
 悔しそうな素振りをみせながらも、青年は素直に礼を述べる。
 荒っぽくはあるが、悪い人間ではないらしい。
 武士は、友人である隼人に抱いたのと同じような印象を受けた。

「おれはジャン。ジャン・ジャックモンドだ」
「……と、巴……武士です」
「そうか。巴、あのガキ……かなり強いぜ
 おれひとりじゃあ、ちょっと骨が折れるくらいな……」
 会話しながらも、ジャンは少年が吹き飛んだ方向を警戒している。
 彼は意地を張ることなく、敵の実力が自分より高いことを認めた。
 強がりが勝利に繋がることはないと知っているのだろう。

 武士もまた、敵の少年の底知れぬ強さを感じ取っていた。
 先ほど彼が突進したときだ。
 猛スピードの奇襲にもかかわらず、あの少年はその襲来を知覚し防御までしてみせた。
 その反射神経たるや、彼の知る誰よりも凄まじい。
 弾き飛ばされた距離こそ大きいものの、少年本人へのダメージは殆どないはずだ。

「だったら、僕が彼を食い止めます。
 その間にジャンさんは隙を見て、あの子を…………」
「…………」
 逃げるという選択肢も存在した。
 本来ならば、それが正解だろう。
 敵がここへ戻ってくるまでに、まだ少しの猶予だってある。
 だがしかし、武士が選んだのは戦う道だ。
 ジャンも同じ思いであるようで、反論はしない。
 とはいえ、両者の望む決着は全く別のものだ。

「……あの子を、気絶させてください」
「本気で言ってんのか?」
 ここで初めて、ジャンが武士の言に反発する。
 彼は、少年の息の根を止めるつもりでいたらしい。
 主催者の思惑通りに殺し合いに乗じる気はないみたいだが、自らを殺そうとしている相手に容赦できる人物でもないようだ。

「……お願いします」
 武士の考えは違う。
 今回の敵は強力だが、少年だ。
 しかも、彼はエグリゴリの一員ではなく、キースに殺し合いを強制されている被害者に過ぎない。
 説得が通じないと決まったわけじゃないのだ。

 彼の純粋な思いを前に、ジャン・ジャックモンドがゆっくりと口を開いた。
 その回答は、やはり……。


◆     ◆     ◆


「甘いぜ、巴」
 やはり、ジャンは賛成できなかった。
 あまりにも危険すぎる。
 戦闘経験が豊富なジャンは、相手を殺さずに制することの難しさをよく知っている。
 同格以上の相手なら、なおさらだ。
 その制限を設けるだけで、戦いは命をベットしなくてはならない分の悪い賭けと化す。

「ジャンさん……」
「…………」
 こちらを見据える武士を、睨み返す。
 それでも武士は気圧されることなく、ジャンを見つめ続けた。
 その真っ直ぐな瞳が、スプリガンの心を着実に動かしてゆく。

 ジャンが抱いていた武士の第一印象は、気弱な子供。
 戦士とは対極にある人物像だった。
 戦う力を持ちながらも、それを扱う精神は未熟であると。
 はじめは、そう思っていた。

「お願いします」
 だが、この目は戦うもののソレだ。
 ジャンを射抜いているのは戦場で生きる覚悟を決めた人間の眼光。
 そんな風に、巴武士のイメージは変化していた。。

 もっとも、その印象すらも間違いではあったのだけれど……。
 ジャンがその勘違いに気づくことは、ついになかった。

「……オマエがいなけりゃ、おれは一回は死んでたわけだ」
 ジャンは諦めたように手をヒラヒラと振る。
 降参、の合図だ。

「一度だけ、だぞ」
「ありがとうございます……!」
 ジャンの答えを受けて、武士の顔が明るくなる。
 こうして見るとやはり子供なんだなと、ジャンは感じていた。

「だが、巴……オマエで大丈夫なのか?」
「大丈夫だと、思います」
「…………」
 武士の頼りない返事に、ジャンは心配になる。
 それも仕方のないこと。武士の戦闘スキルも能力も分からないのだから。
 危険な役回りを任せて、本当にいいものか。ジャンは迷っていた。

「……信じるかどうかは勝手にしろ。
 おれはライカンスロープ……分かりやすく言えば、狼男だ」
「…………そうなんですか」
 意外とアッサリ信じてしまう武士。
 多くの修羅場をくぐり、沢山の人間に接してきたという証だろう。
 見た目によらず肝が据わっている彼に、ジャンも心うちで感心する。

「本当ならおれが獣人化できれば一番なんだが……あの状態になっちまうと自制がきかねぇ。
 敵味方関係なく暴れ回っちまうんだ。だから……」
「はい。僕が必ず食い止めます」
 武士が腕に自信がないようなら、ジャンが獣人化して敵の動きを止めるしかない。
 そう提案しようとした言葉を、武士が凛と遮った。
 背筋を伸ばした彼の笑顔は、うって変わって頼もしい。
 彼になら任せても大丈夫なんじゃないか。
 そう思わせてしまうほどに。


◆     ◆     ◆


「探すまでもなく、お前の方から来てくれるとはな」
 銀髪の少年が笑う。
 同時に展開されたのは、おぞましいほどの殺意。
 弱きものは腰が砕け。
 強きものですら身構え。
 狂ったものは歓喜する。
 この場に漂うものは、それほどの重圧であった。

「もう、やめにしないかい?」
 ならば、こうして和解を提案する巴武士は、優しきもの。
 ぶつけられた敵意に臆することなく。
 かといって、同調して昂ぶることもない。
 だれよりもあたたかき心を秘めた少年だ。

「フン。何を言うかと思えば……」
 その慈愛も、この少年には通用しなかった。
 まるで彼は乱世を力で纏める王のよう。
 気高く、それでいて憎悪を秘めた悲しき王。
 だとすれば、何人も彼を動かすことはできないだろう。

「このゼオン・ベルをおちょくるなよッ!」
 雷帝。
 形容するならば、そんな言葉が相応しい。
 彼が怒りを露わにしたと同時に、今までよりもさらに重いプレッシャーが周囲を包み込む。

 それを受けて、武士も戦闘は避けられないと覚悟した。
 姿勢を低くして、臨戦態勢をとる。
 とても、悲しい顔で。

『巴武士。気をつけろ。敵は電気を使う』
(分かってる)
 武士は心の中で返事をする。
 その相手は自らに移植されたARMS、白兎だ。
 ARMSとはナノマシンの集合体であり、いわばそれは超精密な機械である。
 つまり電撃は、ARMSの数少ない弱点だということだ。
 かつて武士と白兎は、中性子爆弾の爆発に巻き込まれ、大量の電磁波を浴びたことがある。
 その経験とARMSの特性のおかげで、『ナノマシンを狂わせる攻撃』への耐性はある程度ついていた。
 だとしても、この少年の扱う電撃は桁違いだ。
 おそらく、まともに食らえばARMSを無効化されてしまう。

『あのひと……とても悲しい目……』
 武士の頭で響くもうひとつの声。
 ARMSの生みの親……少女アリスだ。
 なぜ、彼女が武士のARMSの中にいるのか……。

 その謎を解く話は、この殺し合いに参加させられる前まで遡る。
 武士は長い間眠っていた。
 コウ・カルナギに敗れ、死の淵を彷徨っていたのだ。
 その夢の世界でアリスと出会った武士は、彼女を外の世界へ連れ出した。
 そして、彼は目覚める。アリスと共に。
 眠りから覚めた二人は、一緒に空を進んだ。
 魔獣と化した高槻涼を救うために。
 だが、その意思は果たされることはなく。
 空を翔る彼がたどり着いたのは親友ではなく、この殺し合いであった。

(大丈夫だよ、アリス)
 両足に意識を集中。
 彼の運命を狂わせしARMSが目覚める。
 この両足が無ければ、彼は普通の人生を歩めたはず。
 苛められることも、戦いに苦しむことも、誰かの死に悲しむこともなかった。
 だのに、今の彼は何も恨むことはない。
 それどころか、この両足で誰かを救えることに感謝をしていた。

「ザケルッ!」
(僕が救う)
 異形と化した両足から、ジェットのように空気が噴出される。
 それが彼を音速へと導いた。
 音を置き去りにした証拠の衝撃波が、周囲をビリビリと震わせる。
 迫りくる雷を悠々とかわし、武士はゼオンの後ろへ回りこんだ。
 しかし、雷帝のスピードも魔物ではトップクラス。
 常人の目では捉えられないスピードで動く武士の位置を、彼は正確に読み取っていた。

(ゼオンも、君も、高槻くんも)
 振り返ったゼオンが放った蹴りを、武士は右脚のARMSで受け止める。
 ガァンと、鉄道事故でも起こったかのような爆音が響いた。
 反撃とばかりに、武士が空いている方の脚で相手を蹴り上げる。
 ゼオンはそのダメージを、特製の白いマントで防いだ。
 どうやら、あのマントは彼の意のままに動き、彼への攻撃を遮断するらしい。
 だが、すべての衝撃は殺しきれないようで、上方に勢いよく吹き飛ぶ。
 武士は空を舞う少年に一瞬で追いついて、今度は全力のかかと落しを見舞った。
 これくらいでは死なないだろうという算段に基づいての行動。
 その読みは正しく、クリーンヒットしたにも関わらず、相手は気絶すらしない。
 少年はダメージを受けて高速で降下しながらも、華麗に宙返りを決める。
 着地すると同時に大地を蹴り、落下の衝撃をジャンプのはずみに変換させた。

(すべて……救うんだ……)
 空を飛ぶ武士に、下方から雷撃が矢のように襲い掛かる。
 これだけはなんとしても避けなくてはならない。
 迫りくる稲妻は、とっさには数えきれないほどの量だ。
 だが、所詮は直線攻撃。
 最速のARMSをもってすれば、雷公の合間を縫って急降下する曲芸すらもわけない。
 紫の光の群れを、白い兎が突破する。
 その先の宙では、先ほど大ジャンプしたゼオンが待ち構えていた。
 下に向けて飛ぶ武士と、彼に向けて上昇していくゼオン。
 二人の距離はどんどん小さくなっていく。
 だが、両者がそのまま接近することはなかった。
 今しがたの下級魔法は目くらまし。
 武士がそれを回避した隙をついて、ゼオンが中級魔法を発動させる。

「テオザケルッ!」
 ゼオンの目論見は成功したと言っていい。
 今までとは比較にならない大きさの雷撃が、武士を襲う。
 絶対のタイミングだ。
 命中を確信した王者が笑みを零すほどに。
 されど、白兎のスピードは規格外。
 魔物すらも超越するほど。
 当たり前だ。
 彼は、魔獣に挑もうとしていた男なのだから。

「救うんだッ!」
「……なにッ!?」
 低空から空高く、一直線にテオザケルが夜空を裂いた。
 巴武士を射止めることなく。
 大技を回避した武士は、王者に肉薄していた。
 既に、攻撃の予備動作も済ませている。
 死神の鎌のような、大振りの蹴りが、ゼオンの顔面にめり込んだ。
 油断をついて繰り出された全力の攻撃だ。
 さすがの雷帝も、こればっかりは受身すらも取れないはず。

「ジャンさん、今だぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 武士の咆哮が、天から大地に突き刺さる。
 ゼオンとの高速空中戦で、彼の体力はもう尽きかけていた。
 それでも、最後の力をこめて叫ぶ。
 その絶叫の先に、彼はいた。


◆     ◆     ◆


「ジャンさん、今だぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「任せなッ!」
 戦場は、空から高度ゼロの陸地に移る。
 武士の声の先に、彼はいた。
 拳を握り、落下してくるゼオンを待ち構えて。
 来るべき瞬間を前にして、必死に精神を集中させる。
 武士が命を賭けて繋いでくれたチャンスを無駄にはしないと。

 勝負は一瞬。
 生きるも死ぬも、その瞬間がすべて。
 ついにゼオンが射程範囲に入った。
 この一撃で、決まる。
 ジャンが拳を振りかぶる。
 片足を踏み込んで、もう片方で大地を抉る。
 力は肩から肘……そして手首を通過して。

 何もかもを集めた拳を、突き出した。

「遅いんだよ……お前はッ!」
「……チィッ」
 勝負は、紙一重であった。
 だが、結果は結果。
 ジャンの全身全霊をこめた拳は、ゼオンの腕に受け止められてしまった。
 獣人の舌打ちが虚しく響く。

 ジャンは決して弱くはない。
 総合力なら、巴武士に劣るわけではないはずだ。
 ゼオンを殺すまいと手加減したのが災いしたか。
 それとも、先のダメージが残っていたせいか。
 落下していたゼオンの姿勢が、たまたま防御に都合がよいものだったのも一因だ。
 何にしても、ここで明らかな事実はたったひとつ。
 ジャンのスピードでは、ゼオンを殺すには足りなかった。
 それだけの話だ。

「ザケル」
「…………ぐ……」
 起き上がったゼオンの魔法が、ジャンを確実に捉える。
 よろめいた彼に接近すると、その顎に拳をうちつけた。
 ジャンの口と鼻から血が噴出し、意識が朦朧とする。
 さらに、腹部にも蹴りをもらって、獣人は情けなく地面に転がった。

(巴の野郎……凄いやつだ……)
 鉄の味を感じながら、ジャンは咳き込む。
 巴武士はこのゼオンとずっと戦い、押していたのだ。
 その実力たるや、計り知れない。
 スピードだけをとってみれば、ジャンよりも遥かな高みにいる。
 ジャンの脳裏で、数分前に武士に言い放った『お前で大丈夫か』という質問が再生された。
 今にして思えば、とんでもない笑い話だ。
 心配されるべきだったのは、自分の方であったのに。

(お荷物は、おれじゃねぇか……)
 武士がせっかく命がけで託したバトンを、取り落とした。
 唯一にして絶好の機会だったはずなのに。
 殺される絶望より、武士への申し訳なさが彼の心を締め付けた。
 力の入らない拳を握り締める。
 震えているのは、疲労からか。悔しさからか。
 恐怖でないのだけは確かだった。

「じゃあな、ゴミ」
「ちく……しょう……」
 ゼオンは口元の血液を拭う。
 武士に受けたダメージが回復しきっていないのだ。
 でもその程度では、ジャンを殺すのに何の支障もない。
 死を与えるいかずちが、ゼオンの右手に集まり。

「テオザケル」
 淡々と放たれた。
 紫の大蛇が狼を食らわんと奔る。
 今のジャンにこれを避ける体力は残っていない。
 ただ、屠られるのを待つのみだ。
 獣を前にした野ウサギのように。

 光は男を包んで、爆風が世界を揺らした。
 魔法の威力を表すように大量の土煙が発生したが、それはすぐに晴れる。
 荒々しき魔法が過ぎ去ったあと、そこに立っていたのはジャンではなく……。

「巴……お前……」
「だい、じょうぶ、です、か」
 巴武士は、その身に全ての雷を受けていた。
 ジャンを守って。
 体中が真っ黒に焼け焦げて、ただれているではないか。
 さらに全身から大量の血液が流れて落ちて、足元に赤い水溜りをつくっていた。
 もはや、いつ絶命してもおかしくない状態だ。
 それでも彼は体を奮い立たせ、立ち続けていた。
 追撃がジャンに及ばないように。

「なに……してん、だよ……」
「すいま……せん……」
 ようやく彼のなけなしの体力すらも底をつき、ドサリと大地に倒れ付した。
 さっきまで悠然と空を駆け回っていた少年。
 その彼が、今や力なく地べたに寝転がっている。
 全ては、ジャンが任務を失敗したからだ。

「クハハハハハハ!
 ゴミを殺そうとしたら、やっかいな方がくたばってくれるとはな」
 武士の決死の行動を見て、ゼオンが高らかに笑う。
 これは僥倖であると。
 口から流れ出る血もそのままにして。
 その気が済むまで、延々と巴武士を侮辱しつづけた。

 ジャンは唇をかみ締めて、ただ怒りを抑えることしかできない。
 感情のままに獣人化してしまえば、冷静な判断も不可能になってしまうからだ。
 しかし、こうなってしまってはその努力も無意味なもの。
 今の彼では、ゼオンから逃げることすらもままならないのだから。

「結局貴様も死ぬのだから同じことだがな」
 そして悪の王は、再びジャンに狙いを定めた。
 紫の光が、ゼオンの手の平を駆け巡る。
 ジャンも何とか立ち上がって応戦しようと試みるが、勝敗は火を見るより明らかだ。
 ゼオンのもとにたどり着くこともなく、彼は殺されてしまうだろう。

「すまない……巴……」
 それでもジャンは、ふらつく足取りで一歩一歩進む。
 ここで倒れてしまっては、後ろで眠る武士に顔向けできない。
 自分のせいで死んでしまった若者に、少しでも報いようと。
 敵わぬ相手に向けて、ジャンは進む。

 その背中を追い越す巨大な影がひとつ。

「な……お前……」
 ジャンが両の目をあらん限りに剥く。
 驚愕に、上手く言葉が紡げない。
 それは、まさしく化け物だった。
 全身を覆うのは、よろいの様に硬い皮膚。
 雄々しい巨躯には似つかわしくない、長い耳。
 そして、背中から生える二枚の大きな翼。
 そんな化け物が、突如として現れたのだ。
 見ると、ゼオンすらもがあまりの自体に唖然としていた。

「僕のワガママを聞いてくれて、ありがとうございました」
 振り返った異形に話しかけられ、ジャンはさらに戸惑ってしまう。
 しかし、その声に聞き覚えがあることに気づいて、我に返った。
 霞んだ目を必死に凝らすと、巨獣の腹部にあの少年の顔があるのが発見できた。

「お前……巴か……?」
 話しかけると、彼は返事の代わりに優しく笑う。
 どういうことかジャンには全く分からないが、この化け物は巴武士であった。
 何が起こったのか尋ねあぐねているジャンに、武士が穏やかな声で語りかけた。

「高槻くんに会ってください」
「高槻って……あのガキか……」
 その人物のことはジャンも知っている。
 この殺し合いの説明のときに、キース・ブラックと対峙していた少年だ。
 なぜ、武士がその少年のことを今伝えるのか。ジャンの混乱は深まるばかりだ。
 しかしジャンの理解を待つことなく、彼は勝手に言葉を続ける。
 ジャンの目には、彼が焦っているように見えた。

「はい。高槻くんもあなたと同じで、自分の中に眠る力を恐れていました。
 その力が暴走してしまうことを恐れて……」
「…………なに……言ってんだよ……」
「でも彼は、逃げずに魔獣と戦っています」
 ジャンの力。獣人化。
 身体能力こそ飛躍的に向上するものの、冷静な判断力を失ってしまう諸刃の剣。
 総合的に見れば、普段の状態よりも弱体化してしまう。
 朧に敗北してその弱点を知ってから、ジャンは獣人になることを避けてきた。
 ライカンスロープの力に頼ることなく、自分の能力だけで戦っていこうと。
 だが、今回の戦いでその決心の限界も見えてきたのも事実だ。
 このままでは、いつか足元を掬われる。
 その迷いを見透かしたのか、武士は彼なりの言葉でジャンを導こうとしていた。
 残り少ない時間を費やして。

「彼に会えば、必ず何か掴めるはずですから」
 それだけ言うと、武士はゼオンに向き直った。
 その背中を見ると、彼の表皮にはいくつもの亀裂が走っている。
 稲妻のようなひび割れは徐々に大きくなり、ついに武士の身体はボロボロと砕け始めた。
 今の武士の身体がどんな状態であるのかはジャンは知るよしもない。
 だけど、彼に死が迫っていることは、おぼろげながら理解できる。

「それじゃあ。僕は行きます」
「待てよ! まだ……オイッ! 待てよッ!」
 武士が羽を広げれば、突風が天地を揺らす。
 前傾姿勢になった彼を見て初めて、ジャンはその全貌を知る。
 これは、兎だ。
 空を翔る白兎だ、と。
 その姿に見とれる彼を置き去りにして、巴武士はゼオン・ベルに特攻した。
 慌てて防御姿勢をとるゼオン。
 だが、武士の狙いは突進ではない。
 ゼオンの小さな体を捕まえると、武士は彼を抱えてそのまま上昇。
 もがく少年を連れ去って、一瞬のうちに空の彼方に飛びさってしまった。

「……なんだよ、それ…………」
 白兎は、いつも誰かを置いてきぼりにするものだ。
 残されたのは、虚しいばかりの静寂と一人の狼男。
 去っていた武士の背中を追いかけようとするが、そこまでの体力もスピードも今の彼には存在しなかった。
 数十メートル走っただけで、つまずき、大地を這う。
 立ち上がろうとしたその脚から力が抜ける。
 地表には、異形と化した武士の外皮が散乱していた。
 その残骸たちが、次々に崩れていく。
 そしてそれらは光の粒となり夜空に舞って、やがて消滅した。

「っざけんな! おい!」
 拳を大地に打ち付け叫ぶ。
 返事は返ってこない。
 その代わりに、カランと。
 崩れ去った外殻の中から現れたそれは、槍のように、剣のように長く硬い物体。
 白兎が落としていった片耳だった。
 それだけは風化せずに、本来の形を残している。
 手を伸ばして掴むと、それは淡く温かい光りを帯びた。
 そのぬくもりは巴武士の心そのもの。

「……武士、そうか…………」
 ジャンは、武士のことを戦士であると思っていた。
 戦場で生きる覚悟を決めた人間だと。
 だけど、それが間違いであると今になってやっと気づいた。
 武士が戦うのは、戦場から日常へと帰るためだ。
 平和な日々を取り返すために、もがいていただけ。
 だからこそ彼は敵の少年を殺さないことに拘ったのだ。

「必ず、帰ってこいよ」
 縋るように、空に向かって呼びかける。
 やはり返事はない。
 空で光る月の中にも、兎の姿は見えなかった。


【B-6 南部 一日目黎明】

【ジャン・ジャックモンド】
[時間軸]:少なくともボー死亡後。
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)
[装備]:白兎の耳@ARMS
[道具]:ランダム支給品1~3(未確認)、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いには乗らない。高槻涼に会う。


【白兎の耳@ARMS】
巴武士のARMS・白兎の耳。
白兎の他に、アリスの意思が宿っている。



◆     ◆     ◆


 夜空を翔る巨大な影ひとつ。
 一羽の兎が、月を目指して飛んでいた。
 砕ける身体を奮い立たせて。

「チィ! 大人しく死んでおけば楽なものをッ!」
「ゴメンよ。そういうわけにはいかないんだ」
 抱えたゼオンが暴れている。
 彼が蹴りや魔法を放つたびに、武士の身体がボロボロと崩れていく。
 それでも武士は、絶対に彼を放さなかった。
 少しでもこの敵をジャンから引き離すために。
 どうあろうと説得には応じないだろうゼオンを改心させようとしたのは、武士の我が侭だ。
 ジャンはそれに付き合ったせいで傷ついた。
 最後まで武士と共に戦おうとしてくれたのだ。
 結局、ゼオンを悪の道から救うことはできなかった。
 せめて……せめてジャンの命だけは助けなくてはならない。
 それが、巴武士の最期のけじめだ。

「ソルド・ザケルガッ!」
 いつまでも自分を解放しない武士に業を煮やしたゼオンがついに上位魔法を放つ。
 巨大な剣が現れ、白兎の腹部を貫いた。
 さらに、その傷口から武士の全身に電流を流す。
 先の攻撃で電撃への耐性がついているとはいえ、今の死にかけた武士にこの攻撃は堪える。
 ゼオンではなくジャンを連れて逃げるという方法もあったが、傷ついた彼が音速のフライトに耐えられるとは思えなかった。
 結局のところ、こうしてこの危険な少年とともに空を翔るのが最良の選択肢なのだ。

「……ぐ、あ…………」
 うめき声と共に、顔をゆがめた。
 彼の苦しみを表すように、白兎の崩壊が加速する。
 ジャンを庇って電撃を受け、既に彼の身体はボロボロだった。
 ARMSの展開など到底不可能なほどに。

 それでも力を振り絞らねばならなかった彼は、無理をして、アリスの力まで借りてまで完全体になった。
 気が狂ってもおかしくないほどの苦痛が、彼の身体を駆けっている。
 身体も精神も、とうに限界は超えていた。

「まだ……しぶとく足掻くかッ!」
「ぐ、が……」
 実は、ジャンの元からゼオンを引き離すことには既に成功している。
 もう獣人は助かったのだ。
 ならば武士は眠りについてもいいはず。
 それでは、なぜ彼は飛び続けているのか。

 ゼオンを助けるためだ。
 今この上空で息絶えてしまえば、飛行能力のないだろうゼオンは地面に叩きつけられてしまう。
 さすがの彼も死んでしまうかもしれない。
 それを懸念していた武士は、海を目指して飛んでいた。
 このまま海に衝突すれば、彼を助けることが出来るから。
 着水時にも相当の衝撃はあるだろうが、地面への激突と比較すれば遥かに軽い。
 白兎の身体でガードしてやれば、ダメージの大部分は武士が肩代わりできる。
 ゼオンだったら耐えられるだろう。

(ホワイトラビット……これが……最後だ)
『巴武士。よいのだな』
 武士の心が決まっていることを知っていながらも、白兎が尋ねる。
 敵のために苦痛に耐える必要があるのかと。
 それが、ARMSのせいで不幸な運命に巻き込まれてきた少年に対する、白兎なりの気遣いだった。

(僕の勇気が感じられるかい?)
『我にも心はある』
 武士の答えは変わらない。
 苛められっ子だった少年とは思えないほど、強く、頼もしい声。
 白兎もそれ以上は聞かなかった。
 彼の意思に従い、全力で海を目指すことを報いとして。

(だったら……お前に心があるのなら……)
『了解した。巴武士……力が欲しいだろう……』

『ならば!』
(ならば!)
 白兎に篭められたアリスの勇気。
 巴武士が旅路で勝ち得た勇気。
 その二つが、冷たい星空でシンクロする。

『くれてやる!!』
「応えろォォォォォォォッ!!」
 武士が金色の光を帯びた。
 再び彼は音を超える。
 黒い空を裂く金色の軌跡は、まるで流星のようだった。
 その景色を見て、武士の中のアリスが目を輝かせる。

『すごい……これが虹なのね』
(これは違うよアリス。虹は、青空にかかるものなんだ)
『そうなの……私、見てみたいわ……』
(うん。今度、みんなで見よう!)
 地平の先に、海が見えた。
 もうゴールはすぐそこだ。
 少しずつ降下して、海面へ激突する準備に入る。

(雨上がりに、丘に登って……)
 そして、武士は暗い海に突撃した。
 ゼオンを強く抱いて、着水の衝撃から彼を守る。
 直後、すべてを果たした彼の身体がついに砕けた。
 塵よりも細かい光の粒になって、彼は海中に溶けてゆく。
 欠片すらも残さずに、巴武士は消滅した。
 湿った青空にかかる、七色の光に思いを馳せて。


【巴武士 死亡】
【残り73名】


※巴武士のリュックサック(ランダム支給品1~3、基本支給品一式)はB-6に放置されています。


◆     ◆     ◆


 暗い海の上。
 黒い水面に映る黄色い月が、ゆらりゆらりと歪んでいる。
 ゼオン・ベルは浮かんでいた。
 気絶しているわけではないのに、彼は動くことができない。
 ただただ夜空を睨んで、波に揺られている。

 海に衝突した瞬間のことを思い出す。
 巴と呼ばれていたあの少年は、ゼオンを助けたのだ。
 海面にぶつかる衝撃から、その身を挺してゼオンを守った。
 それで、彼はすべてを理解した。
 あの相手が、自分を殺すまいとしていたことに。
 最初から、ずっと。

「ふざけやがって……!」
 溢れた怒りは電撃となり、海中を駆け巡る。
 紫色の閃光が、海を奔って刹那に消えた。
 つまり、ゼオンは完全に嘗められていたのだ。
 苦しい修行の末に手に入れたその実力を、過小評価されていたということ。

 今にして思えば、戦っているときもそうだった。 
 巴とやらは、ずっとゼオンを殺さないように気を使って戦っていた。
 全力で戦ったとしても、彼らではゼオンに勝てるはずもないのに。
 この海面への衝突にしてもそうだ。
 ゼオンならば、遥か上空から落とされても魔法を駆使することで安全に着地することが出来る。
 しかし、少年は要らぬお節介を焼いた。
 ゼオンが地面にたたき付けられたら死ぬだろうと勘違いして。

 今までの全ての努力を否定された気分だった。
 こんな屈辱、初めてだ。
 悔しくて、腹立たしくて、彼は動く気になれなかった。

「これも全て、やつのせいだ……!」
 胸のうちで、憎しみの炎が燃え上がる。
 その憎悪の対象は、血を分けた双子の弟、ガッシュ・ベル。
 ゼオンからバオウを奪った張本人。

 すべては、バオウがこの手にないせいだ。
 だから、王者になるはずの自分がこれほどまでに侮辱される。
 バオウさえあれば、侮られることもない。
 あんな敵など、一瞬のうちに焼き尽くせる。

「必ず、生き残ってやる。バオウを……この手に……!」
 そのためには、まずは力を回復しなければならない。
 優勝までの道のりはまだ長いのだから。
 敵の能力を正確に見極めてくれるデュフォーは、ここにはいない。
 すべて自分の力で戦っていく必要がある。

 殺し合いの参加者数を考えれば、上級魔法は節約していかなくてはならない。
 今回のように苦戦することもあるだろう。
 この戦い、決して容易くはない。
 それでもゼオンは歩みを止めない。
 憎しみの日々と決別するために。
 栄光をこの手に掴むために。


【F-6 海上 一日目黎明】

【ゼオン・ベル】
[時間軸]:リオウ戦後、ガッシュの記憶を垣間見るより前
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:魔本、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いに優勝し、バオウをこの手に。



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GAME START ゼオン・ベル 060-a:どじふんじゃった!(前編)
GAME START 巴武士 GAME OVER
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