母なる黄昏は、東方の大陸ムドラ(別名ルドラとも)の歴史における、組織化された吸血鬼のカルト教団である。彼らは大陸を集団で旅していたと言われ、犠牲者を専用の暗器で絞殺(または呪殺)し、それは母なる女神への崇拝の一形態だと信じられていた。群雄割拠していた各国の権力者は、彼等の犯罪行為と暗躍に手を焼いていた。
概要
教団のメンバーの多くは吸血鬼の永遠的指導者による独裁体制であり、教団の秘密と情報を秘匿するために仲間との意思疎通には独自の言語を用いていた。母なる女神を崇める一方で宗教や人種、思想には寛容で、様々な人種や種族が所属していた。
目標は貴賤貧富に関わりなく選ばれたが、旅の商人の一行に紛れ込み、仲間が気を逸らせている間に音も気配もなく血も流さず殺し、死体を含め現場から颯爽と後にすることを常套とした。
教団は母なる女神への供物として全ての信者に毎年1人以上の殺人を義務付けた。その教義では、「血」は「母なる女神」に捧げるものとされ、不要な流血を基本的に禁じていたため、殺害の際には絞殺や呪殺に限った。
彼等は「布施」と称して社会的弱者や貧困者、飢饉などの災害犠牲者に国よりも一早く支援物資、富、食料を届け、手厚く支援した事から、表向きは慈善的な教団として歓迎されていた。こうして、教団の実態を何も知らぬ富裕層や貴族、そして吸血鬼による永遠の生と力を欲する人間の「帰依者」から、多額の寄付と支援を得ており、こうして蓄えた富で組織の維持を図り、また各地の有力者に賄賂を送り、組織の安全を図っていた。
位階
教団内の階級や地位は、比較的単純明快である。
帰依者 - 吸血鬼に憧れ信奉する人間達の総称。彼らは世俗的支援を執り行う。
助祭 - 血僧を補佐する低位の聖職者。
血僧 - 教団の儀式の大部分を執り行う中位の聖職者。
天夜叉 - 神と教団の聖なる怒りを下す、精鋭戦闘員。その地位と立場は各々によって大きく異なるが、死教と同等の地位と権力を有する者もいる。
死教 - 血僧を監督する高位の聖職者。
教主 - 大陸中に散らばった教団と信徒を統括する最高指導者であり、母なる神の代行者。約数千年に亘って、黄昏の神父がこの地位にある。
助祭 - 血僧を補佐する低位の聖職者。
血僧 - 教団の儀式の大部分を執り行う中位の聖職者。
天夜叉 - 神と教団の聖なる怒りを下す、精鋭戦闘員。その地位と立場は各々によって大きく異なるが、死教と同等の地位と権力を有する者もいる。
死教 - 血僧を監督する高位の聖職者。
教主 - 大陸中に散らばった教団と信徒を統括する最高指導者であり、母なる神の代行者。約数千年に亘って、黄昏の神父がこの地位にある。
信仰
教団の崇める主神「母(マー)」は謎めいた神格であり、吸血鬼の間で伝わる土着の神の性質を習合してきたものと解される。
教団の寺院では毎朝、「家畜」を生贄にした供養が行われていたとされ、しばしば血生臭い儀式を伴ったとされる。
かの女神は暴食・不死・破壊・殺戮を司るとされ、6本の腕を生やした、この世のモノとは思えぬ美貌を有する黒髪の女性の形象を持つ。6本の腕の内5本には様々な刀剣型の武器を、一本には斬り取った生首を持っており、髑髏と生首を繋いだ首飾りをつけ、切り取った手足で腰を飾った姿でしばしば表される。
この女神はあらゆる存在の「飢え」と「渇望」を肯定し、自らの信徒に永遠の生──即ち、「吸血鬼化」による祝福と奇蹟を齎し、自身と信徒たる「我が子」に仇名す悉くを殺し、その血と魂を全て飲み干し、肉を貪り喰らい尽すという。
一見すると只の邪神・悪神の類いであるが、かの女神は旧き世界の大いなる破壊の後に、幸福なる楽土世界(ニルヴァーナ)を産み落とすとされ、教団はその理想の実現を目論んでいたとされる。
教義
教団の教義は比較的単純で、以下の3点に要約できる。
- 血は母の恵み:血は生命を齎すものであり、活力の器である。永遠なる魂の通貨にして、「母」への「供物」であり、あらゆる血液は恵み深き「母」を介して流れ出でる。全ての吸血鬼は「母」によって養われており、故に帰依し崇め奉るのである。
- 汝の飢えと痛みを養う:吸血鬼であれ人間であれ何であれ、新鮮な「食物」の吸収が肉体的および感情的な飢えと渇望を満たすための必須条件である事を大いに認識している。生者にせよ死者にせよ須らく飢えており、これらは彼らに対する飢えを慰める報酬として機能する。この文言は大抵、盛大な食事会や無料の炊き出しを開く切欠となるが、時折、彼女の司祭達は非人道的な食物の供給や提供、血生臭い儀式といった問題から世間の目を逸らすために、これらの文言を発する。
- 血と口において:かの女神に向けて偽証は大罪であり、想像を絶する神罰が下る。故にこの文言は宣誓と秘密を守るという約束であり、婚礼においては「母」の御名において夫婦の永遠の愛を誓うという事を意味する。通常それは、唇に二本の指をそっと置き、もう片方の手で自身の首を絞めるように置くジェスチャーを伴うが、結婚式においては新郎と新婦が互いの唇に二本の指を置き、互いの首を軽く絞めた後に盛大な愛の口付けと抱擁を交わすのが一種のお約束となっている。