退魔師ユキちゃんシリーズ設定置き場@ ウィキ
聖ベルナデッタ修道会
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ユキちゃん世界の舞白市などにその教会を有する、キリスト教カトリック系女子修道会。ユキちゃん世界における、キリスト教系の退魔師を有する組織の一つ。旧名は「ベルナデッタ修道会」。
聖ベルナデッタ修道会は、明治時代にお雇い外国人として日本を訪れたとあるフランス人と、彼と現地で結ばれた日本人の妻との間に生まれた日系フランス人神父、伊東 ・ベルナール・アンジロウの手により興された。
明治時代前期に生を受けたベルナールは、幼少期に日清戦争が、長じた時期に日露戦争が、それぞれ勃発した結果を見て、その心を痛ませた。ベルナールの友人であったとある少女は、戦争に父親が駆り出され、そして非業の死を遂げたことにより、孤児となった。当時はよく行われていた娘の身売りにより、彼女は親元を離れることとなり、よってベルナールも彼女とは二度と会えないさだめを強いられたのである。
悲しみに暮れるベルナールは、敬虔なキリスト教徒でもあった父の勧めもあって、痛む心への救いを、信仰の道に求めた。それゆえに彼はある時、「戦争によって身寄りを亡くした子どもたち、特に立場の弱い少女たちを救うことこそが、主であるイエス・キリストから自らに託された召命 である」と確信。キリスト教の洗礼を受けて神父の座に就き、それをもって修道会を組織した。
なお、彼の組織した修道会の名は、父の故郷であるフランスにおいて有名となっていた、ルルドの泉の奇跡における主役と言うべき少女、ベルナデッタ・スビルーにちなんでいる。ベルナール自身の弁によれば、「私が主であるイエス・キリストの御声 を聞いたとき、強き風が吹き、そして清らかな水が私の足元に湧いた。これこそ父の故郷であるフランスに主が為されたように、この国においてもルルドの泉のごとき奇跡を成せ、というキリストの導きであると確信した。その確信を生涯忘れぬために、この名を私の修道会に付けたのだ」とのこと。
なお、ベルナデッタ・スビルーは、35年の短い生涯を終えたのち、昭和時代初期には異例の速度でカトリック教会により聖人として認定された。ベルナールはこの異例の速度での列聖を遂げたベルナデッタの偉業を称えることも兼ねて、彼女の列聖と同時期に、修道会名に「聖」の一文字を追加。この「聖ベルナデッタ修道会」という名が、ユキちゃん小説世界の現代に至るまで使われ続けている。
さて、ベルナールは自らの修道会を興したのちも、試練に立ち向かうことを強いられる。それは、ベルナールが修道会を興した舞白市は、龍脈の恵みの代償とでも言うべき、妖魔の出没に悩まされる土地でもあるという点に絡んでいた。
彼は自らの修道会の活動として、成人女性のシスターを集めると同時に、身寄りのない子どもたち――特に少女を保護し、育てていた。ある日、ベルナールは気付くことになる。自身の修道会にて保護した一人の少女は、強力な霊力を持って生まれていたことに。やがて、彼女の霊力は、舞白市の影に住まう妖魔によって狙われることになる。
ベルナールはそのとき、偶然にも父の祖国であるフランスから輸入した、とある書物を入手していた。その書は、彼の父の祖国においては、異端のものとみなされた術――すなわち、霊力を操る術を記したものだった。
ユキちゃん世界の欧米圏におけるエクソシストは、その母体であるキリスト教系組織のご多分に漏れず、成人男性の多い集団である。成人男性である彼らは基本的に霊力を持たず、その代わりに「天使」と呼ばれる「妖魔」を、自らの狂信的なまでの信仰心によって心服させ、そして心服させた天使の妖力をもって、妖魔と戦うことが一般的である。女性や子どもの持つ力である霊力を利用し、それをもって妖魔と戦うという戦術は、欧米圏の価値観からして、まさに異端のものであった。
確かに、この国においては、女性や子どもが霊力を振るって妖魔と戦うのは一般的なこと。また、ベルナール自身も、日本古来の退魔組織との面識もあるため、その少女に自衛のために退魔の術を教える、という発想にはすぐに行きついた。しかし、彼女は当時、キリスト教の洗礼を受けすらもしていないほどに幼かった(※)。そんな彼女に対し、霊力を用いたエクソシストとしての任を与えてしまうのは、あまりに酷ではあるまいか。ベルナールは苦悩した。
しかし、その少女はベルナールに、決然たる意志を持って告げる。「ベルナール様が私にエクソシストとしての術を教えてくださるというのであれば、そして私にエクソシストとして戦う力があるのならば、エクソシストとして妖魔と戦う事こそが、主が私にお与えになった召命 だと信じます」と。
彼女の瞳には、かつて若き日のベルナールが、戦争で身寄りを亡くした少女らを救うと決意したあの日に灯った火と、同じ火が燃えていた。それを悟ったベルナールは、主たるイエス・キリストの加護が彼女にあらんことを祈り、そして決意する。彼女に対し、霊力を利用したエクソシストの術を――欧米圏においては異端とされた術を教え、そして妖魔と戦う力を与えることを。
ユキちゃん世界の現在においては、ベルナールはすでに老衰により帰天しているが、彼の残した修道会と、そして霊力を用いたエクソシストの術は、いまだに舞白市に存在している。この修道会と退魔師連盟が力を合わせ、妖魔と戦いを繰り広げる日は、そう遠くない将来に訪れるのかもしれない。
(※)キリスト教における洗礼を受ける年齢は、その時代や社会などの価値観に左右されるが、聖ベルナデッタ修道会ではおおむね 7~8 歳の頃に、望む者に洗礼を受けさせていると考えられたい。