退魔師ユキちゃんシリーズ設定置き場@ ウィキ
終之術「混沌廻帰」
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読みは「終之術 『混沌 廻帰 』」。退魔師連盟に属する退魔師が、一人前になったことを認められた際にその連盟長から伝授される、禁断の術である。
この術は、舞白の大火の後に舞白村へと迷い込み、そして村に定住することとなった医師の家系、南部家がその由来となっている。南部家の一族は、代々妖魔の幻術などを打ち破り、その真の姿を見抜くとされる、「浄眼 」の能力を有している。その力の事を知った当時の退魔師は、退魔の術にてこの浄眼の力を再現できないか、と研究を始めた。
南部家の浄眼は、強力なものであれば、その視線だけで妖力や霊力を消し去る力を有する。退魔師は研究の末、この妖力や霊力を消し去る力を、退魔の術にて再現することには成功した。だが、その再現された術は、術者に対してあまりにも大きな代償を強いるものであった。
この妖力や霊力を完全に消滅させる力は極めて強力であり、結界内に存在する者や物の内部にまで浸透する。すなわち、この結界に呑み込まれた妖魔は、妖術として放った体外の妖力はおろか、体内に存在する妖力までを完全に失うこととなる。それが妖魔にもたらすのは、速やかにして確実なる死である。
しかしながら、この漆黒の結界の持つ力は、この術を発動した術者にも平等に襲いかかる。術者もまた、この術を発動させれば、漆黒の結界により体内まで侵され、全身に秘めた霊力を完全に消滅させることとなる。これにより、終之術 「混沌 廻帰 」を発動させた術者は、その身に秘めた霊力を、素養まで含めて完全に失うこととなる。
この術の発動が終われば、後に残るのは霊力も妖力も等しく消え失せた、あまりにも静かで虚ろな場所と、すべての力を失った術者のみ。その虚ろな場こそ、かの記紀神話に語られる、国生みがなされる前の大八洲 の姿――すなわち混沌 のごとし、と記した退魔師の記述にちなみ、この術には「混沌 廻帰 」の名が与えられたとされる。
仮にこの術を使えば、術者は退魔師にとっては必須である霊力の素養を確実に失う。加えて、万一この術の発動をもってしてもなお、敵対する妖魔を倒すことができなければ、その退魔師はあらゆる術を使えなくなった、丸腰の状態で妖魔の前に立たされることになる。あまつさえ、この術が退魔師らの間で乱用されることとなれば、事実上退魔師をある種の特攻兵器として運用することにすらなりかねず、よって退魔師という貴重な人材が、たちまちのうちに払底してしまうおそれまであった。
一時期は、このようなあまりの危険さゆえに、終之術 「混沌 廻帰 」もまた禁術として封じられるべき、と主張する退魔師の一派も存在していた。だが同時に、何が起こるか分からない妖魔との戦いにおいて、この術を最後の切り札として用いねばならない状況は、想定されるべきものである――このように考える退魔師もまた多かった。
往時の退魔師連盟は、協議の末に、「この術を用いる以外に生還の道は無い、というほどの絶体絶命の窮地を除いては、決して利用してはならない」と厳命することを条件として、一人前と認められた退魔師に対してのみ、この術の伝授を許すと決めた。
幸いにも、現代に至るまで、この終之術 「混沌 廻帰 」が、退魔師によって発動される事態は、極めて希少なままである。そして、その希少な事態の一つが、当代退魔師連盟連盟長、鵠野シロガネの、現役の退魔士としての最後の戦いである。若かりし日のシロガネは、妖魔「シンカさま」との戦いの際、そのあまりの桁外れの力ゆえに万策尽き、最後の切り札としてこの術を発動し、辛うじてシンカさまを倒し去ったという。