退魔師ユキちゃんシリーズ設定置き場@ ウィキ
禍魂緒「無銘」
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読みは「禍魂緒 『無銘 』」。青森県の下北半島は恐山の某所に存在する、旧藤宮邸に封印された装身具である。見た目は、首にかけられるほどの長さをもった百八珠の数珠のようであり、そこにいくつもの漆黒の勾玉が合わせて通されている。
「無銘」とは、書いて字のごとく「銘が無い」ことを意味するが、この装身具に関しては、その真の名が失伝してしまっており、仮の名で「無銘」と呼ばれていることを意味している。
「無銘」とは、書いて字のごとく「銘が無い」ことを意味するが、この装身具に関しては、その真の名が失伝してしまっており、仮の名で「無銘」と呼ばれていることを意味している。
遥か昔、かつて、恐山にはその名を知られた、藤宮家というイタコの名家が存在していた。通常のイタコであれば、死した人間の霊をその身に宿らせ、そしてイタコの肉体を介して死者の霊にものを語らせる能力を持つ。それに対し、藤宮家のイタコは、死した人間の霊のみならず、妖魔そのものを身に宿らせ、その意識や力を共有することすら可能であった。往時の藤宮家の一族は、この特異な力を、人のため、そして妖魔のために役立てていたという。
しかし、妖魔すらもその身に宿すことのできる藤宮家の血の力は、やがて藤宮家の一族自身に災いをもたらし始めた。藤宮家の力に惹かれた妖魔の妖力をその身に取り込み過ぎ、人でも妖魔でもない半妖と化してしまったイタコもいれば、もはや人でなくなってしまったイタコも、そして最悪の場合は妖力をその身に蓄えすぎて命を落とす者すらも出始めた。藤宮家のイタコの肉体を利用し、人間としての受肉を目指した妖魔すらも、現れたとされる。
力を使えば使うほど、妖魔を引き寄せてしまう強力な――強力過ぎるイタコの血統を持つ藤宮家は、時代が下るにつれて、その血統に苦しめられる頻度も増えてゆく。そしてあるとき、当時の藤宮家の宗主であった一人のイタコは、藤宮家のみならず他家のイタコも交えた話し合いの末に、一つの決断をすることとなった。
それは、イタコの家系としての藤宮家を、廃家にするという決断だった。イタコとしてなまじ優秀であるがゆえに、多くの妖魔と災いを引き寄せてしまうのであれば、藤宮家の一族はそのまま野に下り、イタコとは何らの関係もない市井の一家として未来を生きよう――藤宮家の宗主は、そう唱えたのだった。
当初は藤宮家の力を頼りとしてきた恐山付近の住民の一部は、この決定に当初は異を唱えた。しかし、それまで藤宮家が遭ってきた、そして引き金となった妖魔の事件の被害を鑑みれば、これもやむを得ないものと考え、この決断に消極的な賛成を示す。かくして、藤宮家の一族は、イタコとしての能力を封印する儀式を行い、めいめいが野に下って行った。
このイタコの能力を封印する儀式において利用されたのが、禍魂緒 である。それまでの妖魔を宿したことによって、藤宮家の一族の肉体には、多くの妖力が蓄積されていた。藤宮家は、その蓄積された妖力を吸収する呪具 を作成し、そこに一族の身に積もり積もった妖力を移し替えたのである。
当時の藤宮家の、最後の一人が妖力を禍魂緒 に移し替えた時点で、禍魂緒 に通された勾玉は、黒曜石のようにどす黒く染まり切っていた。同時に、それまで藤宮家のイタコの身を借りたあまたの妖魔の残留思念までもが禍魂緒 に込められ、もはや禍魂緒 は、それ自体が一体の妖魔だとすら言ってよいほどの、呪いの品へと変化していた。
藤宮家は、当時の退魔師らや呪具師らの力も借り受け、この禍魂緒 そのものも封印することには成功した。しかし、禍魂緒 に込められた妖魔の残留思念の最後の抵抗ゆえに、禍魂緒 に刻まれた銘は破損した状態で、封印されることとなる。
かくして、藤宮家はイタコとしての能力を失い、そして一般の人々として生きる道が開かれた。藤宮家の一族はそれぞれが、伴侶を見つけ子を成し、そしてそれがユキちゃん小説世界の現代にまで続くことになる。
しかしながら、イタコの血を引く藤宮家の末裔 となるある夫婦が、舞白市に住まい、一人の少女を生んだとき、運命の歯車は大きく回り始めた。「ひとみ」という名を両親から与えられたその少女は、母の胎内から舞白市の大霊脈による影響を受け、そして封印されていたはずのイタコとしての能力を、隔世遺伝として発現させていた。
誕生から十年後、わたあめという名を与えられた一頭の氷狐 をパートナーとした藤宮ひとみは、その血に秘められた数奇な運命を両親から知らされることで、藤宮家の発祥の地である青森県に向かうことになるだろう。仮に彼女が禍魂緒 「無銘 」を見つけ出し、その力を我が物とできれば、それにより解放される力は計り知れないものとなるはず。
かの九尾の狐にすら匹敵しうるほどの妖力を手にした時、彼女に待ち受ける運命とはいったい――?