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あさのあいさつ <sister's pray>

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takugess

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861 名前:らむねといのりととあるなつのひ 投稿日:2008/03/07(金) 10:30:12 ID:???
あさのあいさつ <sister's pray>


「うるっさい」
「ぐっはぁっ!?」

腹に突然襲いかかった衝撃と圧力に、布団に包まって貪っていた眠りの中から強引に引きずり出される。
なんとか酸素を取り入れようとしばらく悶絶した後、彼はがばっと布団を跳ね上げ暴行犯に叫んだ。

「なにすんだバカ姉貴っ!あんたは弟の命日を今日にしたいのかよっ!?」
「なに言ってんのバカ、あんたあのくらいじゃ間違っても死なないでしょ」
「弟を起こす時の対応としてはこれ以上なく間違ってるっつーのっ!?そんな信頼地面に埋めろっ!」
「ん?優しく起こしてほしかったわけあんた。あたしに何求めてんの、バカ?」

あー言うまでもなくバカか、とさらっと酷いことを吐く学生服の少女。
少女の名は柊京子、先ほどまで布団に入っていて彼女に殺されかけた少年、柊蓮司の姉である。
京子は、いつもの通りの茫洋さのある無愛想な表情で弟に告げる。

「ともかく、あんた今日は用事があるんでしょうが。
 だから寝坊するようなら起こせって言っといてその姉に礼の一つもないってのはどうなわけ?」

そう言われては柊としても黙るしかない。
苦虫を噛み潰すような表情で彼は答える。

「……アリガトウゴザイマシタ姉上さま。
 っつーかなんでせいふくなんだよ。今日は日曜だろ?」
「ちょっと学校の方に用があんの、仕方ないでしょ。
 ほら、あんたも時間ないんじゃないの?」

言われて時計を見ると、待ち合わせまで確かに時間がない。これから走って間に合うかどうか、微妙なところだ。
あわてて服を着替える柊を見て、京子がたずねる。


862 名前:らむねといのりととあるなつのひ 投稿日:2008/03/07(金) 10:30:38 ID:???
「朝は?いるのいらないの?」
「いらね。食べてるヒマもないし食欲ねぇ―――いってきますっ!」

言うが早いか着替え終えた彼は、姉の前を通過し自分の部屋を出て、最短距離で廊下を駆け抜け玄関から外にとびだす。
玄関のドアがけたたましい音を立てて閉じる音を聞きながら、京子は一人呟く。

「……ったく。ご近所迷惑な叫び声聞かされる方の身にもなれってのよ」

その声には、どこか寂しさの欠片のようなものが混じっていた。

彼女は知っている。
たまに、彼女のいない時間帯にこっそり傷だらけで帰ってくることも。
まれに夜になり眠った後、夢にうなされることがあることも。
そしてそれについて彼女に話す気がないだろうことも。

真っ向から乗り越えるしかできない、不器用で損な性格のバカ。
そういう弟だ。
それを少し嬉しく思うこともあるが、もう少し家族に甘えてもいい気もする。
けれどそういう弟だからこそ、いつか真っ向から自身の苦しみを乗り越えるだろうこともわかる。
その『なにか』を自分(かぞく)に吐き出すことをよしとしないのなら、それを乗り越えるまで見守ってやるのが姉としてのつとめだと、京子は思う。

あーあ、とため息を吐き出して、彼女は自身の用事のために準備をはじめた。
―――結局は。彼女自身も、損な性格をしている弟の姉なのだったりした。

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