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序章

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序章【因は果たして報いて応えん】


 それは、異様な光景だった。
 各々武器を手に、幾多の人間がたった一人を取り囲む。傍目には取り囲む者達が残虐な暴徒にしか見えぬ光景。だが、取り囲む者達からすれば、これは正当な処刑だった。

 ―――彼の男は、赦されざる大罪人なのだから。

「―――強く、なって…………戻、……てっ、くる……」

 荒い息の下、その男は切れ切れに言の葉を紡ぐ。己を囲う人々が手にした幾多の得物に、その身を貫かれながら。

「―――…………っ、にっ……負け、ない……二度、と……」

 言葉の頭は男の喉から溢れた赤いものに遮られ、取り囲む者達には届かない。それでも、彼らはそれを怨嗟の声と聞いた。

 ―――必ず、いつかお前達に報復する、と。

「―――裏切り者が……!」
 誰かが低く呻き、得物を握る手に力を込める。傷口を更に抉られ、男の口からは言葉の続きではなく、ごぽり、と赤いものが吐き出された。
 男は、自身の吐いた血に濡れながら―――目を細め、口の端を微かに持ち上げる。

 それは紛れもなく―――笑みの形で。

 それを見た者達が、その意味を測る暇も、問う間もなく、静かに。

 ―――“裏切りの飛竜”と後世に名を残す男は、息絶えた。

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