没OP・２ - 多ジャンルバトルロワイアル

没OP・２　 ◆.pKwLKR4oQ

男が目覚めると、そこは見知らぬ場所だった。
おそらくどこかの施設のホールだろうか。
暗がりで周囲の様子はよく分からないが、音の反響具合からそれなりに広い事は分かった。
そして気づいた事がもう一つ。
自分以外にもこのホールの中には人がいた。
正確な数は分からないが、40人以上はいるだろう。
暗闇、見知らぬホール、周りにいる人々。
何一つとして今の状況を説明してくれる要素はなかった。
それは周囲の人々も同じ事だ。
怒り、困惑、嘆き、不安、悲哀、人が持ち得る負の感情。
無知の空間に放り込まれた人々は、今まさに爆発しようとしていた。

「はじめまして、みんな」

あと少しで暴発しそうな張り詰めた雰囲気。
そこに言葉が掛けられた。
まさに絶妙なタイミングであった。
一瞬遅ければ間違いなく暴動が起きるところだった。
過ぎ去った危機を思いつつも、男は声のした方に目を向ける。
周りから照らされる光の中に浮かび上がるように設置されている壇上に声を発した張本人がいた。
それは少年だった。
後ろには黒服に身を包んだ集団が守護するように整列していた。

そしてまだ幼さを残す顔に浮かぶ笑みは見る人全てにその少年の不気味さを示していた。

「早速だけど君達には殺し合いをしてもらいたいんだ」

その言葉を理解するには僅かな時間が必要だった。
だが皆がその言葉を理解した瞬間、ホールは混乱の坩堝に叩きのめされた。
先程とは比べ物にならないほどホールには喧騒が満ちていた。
中には檀上の少年に呼びかけをしてる者もいたが、ここからは聞こえなかった。
男はその混乱の渦に巻き込まれている一人であった。
このままでは混乱から本格的なパニック状態に移行するのも時間の問題だろう。
そう思った時だった。

――パァン。

一発の乾いた音、銃声が辺りに響き渡った。

「え？」

続いて銃声により一瞬にして静まったホールに声が虚しく響いた。
声を発したのは刑事と思える格好をした男性だった。
その手の中には銃口から一筋の煙を立ち昇らせる拳銃が握られていた。

檀上の少年は呆気なく死んだ。
眉間を撃ち抜かれて、額から血を流して倒れ伏す。
どう見ても生きているようには見えない。

「お前、須藤なのか？」

そう言ったのは須藤と呼ばれた男の近くにいた青年――城戸真司だった。
城戸の顔には驚愕の表情が浮かんでいた。
それはまるでありえない光景を目にしているかのようだった。
しかし、次の瞬間その表情は更なる驚愕を浮かばせる事になった。

「焦らないでほしいな、須藤雅史刑事」

その声は檀上からかけられた。
その声は少し前に聞いた事のある幼い声だった。
その声の持ち主は2本の足で立っていた、だがそれはあり得ない事だ。
なぜなら――檀上の少年は先程須藤刑事によって頭を撃ち抜かれたはずだから。

「――罰だ」

そして少年がその言葉を発した直後――

――須藤雅史だったものは首と胴体を別れさせ、そこから赤い血を吹き出しながら糸の切れた人形のように倒れた。

須藤と呼びかける声。
女性が上がる悲鳴。
誰かがあげる恐怖の声。

それらがホールに満ち溢れた。

「静かにしてくれるかな。そうじゃないと――そこの須藤刑事みたいになるよ」

その言葉の効果は絶大だった。
あれほど喧騒で満ちていたホールが静まったのだ。
それも無理はない。
誰もがこんな所で死にたいなどとは思わない。
人間なら、そう思うのは当然の行為だ。

「気を取り直して自己紹介からするね。僕の名はV.V.」

そしてV.V.は今から始まる殺し合いについて説明を始めた。
ここにいる全員で最後の一人になるまで殺し合う事。
最後の一人になれば元いた場所に帰れる事。
皆の首には爆弾付きの首輪が付けられてあって、反抗しても無意味である事。
殺し合いのために、食料や地図、特別な道具などが入ったデイパックが皆に配られる事。
6時間毎に放送を行い、それまでに出た死者と禁止エリアを伝えること。
禁止エリアに入れば、首輪が爆発して須藤刑事のようになるという説明も付け加えられた。
大まかな内容はこのようなものだった。

「そうだ。最後の一人になったら願いを一つ叶えてあげてもいいよ。富、名声、力、不老不死、なんでもいいよ」

普通ならありえないような事を言っているが、あながち嘘だとは言い切れない。
なぜなら檀上の少年V.V.は自分達の目の前で生き返って見せたのだから。

「さあ、始めようか。バトルロワイアルを！」

V.V.が宣言をあげると、ホールにいる人々は皆一瞬で消えて行った。
男も例外ではなかった。
後に残ったのは一つの死体と一人の少年だけだった。

消えゆく中で男――東條悟は思う。

――英雄になるチャンスだ、と。

【須藤雅史＠仮面ライダー龍騎　死亡】
【残り65人】

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