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テラカオスバトルロワイアル外伝
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不完全な二人

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不完全な二人 ◆f8Yk34E5wE


開けっ放しにされた扉から外に出ると、喫茶店で数十分過ごしただけなのにやけに太陽が眩しく感じた。
(俺の生活……俺の本名……俺の家族……)
彼は何一つとして思い出せない。◆02は俺と家が近所だと記していた。
だが今の彼にはそれすらも分からない。

そもそも、自分は本当に存在しているのだろうか?
そう思うと6/は形容しがたい無い恐怖を感じた。
まるで広い宇宙へ一人放り出されて漂うような、そんな不安。
気温は高いはずなのに、不安という冷気が彼を震えさせた。
手と足どころか、眼が凍り視界が暗転する。湿気のある喉や肺などはあっという間に機能を停止する。
動けない、息ができない。誰でもいい、自分を肯定して欲しい。
お前の存在は現実だと言って欲しい。

きいいいいいいっ!
6/が我にかえったのは耳障りな音を聞いたからだ。
赤いボディのオープンカーが、こちらを目掛けて突っ込んでくる。
ハンドルを握っている少年は目を瞑ったまま動かない。
(───居眠り運転だな)
驚愕も、動揺も無い。ただ運転手の顔を見て呆れていた。
オープンカーは速度を緩める事無く、6/の前方へと迫ってくる。
やがて数百キロの重量を持つ車体の、ボンネットに彼は叩きつけられる。
そのまま親友との待ち合わせ場所『だった』喫茶店へ、その車体を叩き込ませた。
痛いと感じた。口から血の塊を噴出し、一瞬だけ気を失ったような気がする。

「いて~、何があった……」

頭を押さえながら、運転手が呟く。

「くわぁあ、眼が覚めちまった。頭がクワンクワンするぜぇ、死ぬぅ」
「こっちも喫茶店のカウンターとお前のポンコツ車に挟まれた腹がネトネトするんだ。
早く下がってくれ」

こちらから声をかけると、運転手の男──と言うにはまだ若い少年がこちらを振り向いた。
金髪でサングラス、パンクなスタイルだが自分より体躯の小さい少年が……。

「よう692。元気そうだな。早くどいてくれ」
「692様だ。あるいは692先輩と呼べ。まぁ俺の方が7つ下だけど」
「アホの692君、さっさとノいてくれないかな? お兄さん怒っちゃうよ」
「おお、呼び方グレードダウン。 そうでーす、私がアホの692です。
本名は神之里輝秋君でーす。靴下だけ残して全部脱がすとかマジ邪道、むしろ素足であれば
他全部着ててもいいよ派代表の意外な足フェチでー」
「死ね」

6/がバンパーを思い切り殴りつけると、692を乗せたままオープンカーは喫茶店の数メートル先へと吹っ飛ばされた。
マヌケな悲鳴が聞こえたが、それどころでは無い。
解放された事によって、更なる嘔吐感が6/を襲った。
「ケホ、ケホ!」
どうやら、身体もそうとうタフになったらしい。
自動車から正面衝突してこの程度で済んでいるのだ。
外に視線を向けると、見事に裏返しになった車体の下で、692は懸命に脱出しようともがいていた。
アレを見てかつてはゴキブリ並の生命力だと笑ったものだ。その時は他人ごとだったから。

「それにしても随分久々に顔を見た気がするぜー? 元気だったかー?」
下半身を下敷きにしながら、692はいつもの間延びした口調で語りかけてくる。
どうやらハイテンションタイムは終了したようだ。

「元気だな、おかげさまで」
「そりゃ災難だな。相変わらず死にたがってそうで」

完全にスクラップと化した車体に背中を預ける形で、6/は腰掛ける。
流石に少し休まないと、この負傷は治りそうに無い。
すぐ横では髪の毛も顔も赤く染めた692がムカデのようにもがいている。

「なぁ、一言いいか」
「どうぞ」
「死にたい」

何で彼に話しかけようと思ったのか、6/は理解できなかった。
だがそれは確かに本心だった。

「そりゃまた何で?」
「パロロワで苦しむのはもうイヤだ」
「もう少しプラスに考えろよ6/、生きているってのは素晴らしいぜ?
 俺なんて死んでも生き返るおかげでレイプも殺しも色々できるんだ」

6/はズボンに生暖かい物が広がるのを感じた。
失禁では無い、692から溢れた血がこっちにも広がっているのだ。

「レイプと、殺しのどこが楽しいんだ?」
「何って……お前がそういう風に『設定した』んだろ」
「そういや……そうだな。昔、カオスロワにこんなキャラが居たら面白いなと、
 まぁバカみたいなチートキャラを作ったんだよな、俺が」
「案外、俺を作った罰じゃねーの?」
「かもな」

本当はそんな訳無いだろうと言いたくなったが、反論が面倒くさいので止めた。
だがやっぱ納得いかない。確かに692を作ったのは自分だが、やれ2トンを持ち上げる怪力だの、
口からビームだのの魔改造を施したのは他の連中だ。
報いだったらむしろそいつ等に受けさせるべきだろうに。

「この世界も小説だったりしてな。お前が俺を作ったみたいに、お前を作った誰かが
『あーもう6/とかオワコンだわー』と思わない限り、新しいお前が出来上がるんじゃないか?
どこぞのゴキブリ食わされてお袋に殺された女子高生みたいにさー」
「だとすると、今モニターの前の連中はこう思うだろうな。
『いきなりメタネタとかウゼーよ、寒いんだよ』ってな」

冗談のようで、リアルな会話だった。
カオスロワのキャラが完全に死ぬには、そいつの作者が飽きるなり、不要と見なされなければならない。
いや、そいつが不要と見なした所で、別の書き手がまた自分を必要としたら……。
二人の間に、同じ種類の恐怖が生まれた。

会話が途絶える。
そのまま692は地面にうつぶせに伏せ、6/は日光浴をする。
そんな時間がしばらく続いた。


「なぁ、6/?」
「何だよ」

数十分後、再び声をかけてきたのは692だった。
少し首を動かすと、ある程度自然回復してきた自分とはあべこべに、692はぐったりと地面に付している。
すでに彼は口だけを動かしてか細い声を絞り出すのが精一杯なのだった。

「死にたい」
「そうか」
「驚かないんだな……」
「お前のお父さんだからな、分かるんだよ」

嘘では無い。何度も何度も生き返る。
普段書き手達が面白半分でやっているだが、それを受ける方はたまった物では無い。
まして彼は、自分は作られた存在だと自覚しているのだ。
それが一番の原因か、それとも何か消滅したいと思う理由があったのか、彼の創造主にもそこまでは読み取れなかった。

「消してくれ……」
「分かった」
「もう、居なくなりたい……」

名残惜しいと思ったのは、自分が作ったからでは無く、自分と同じ境遇だったからだ。
同じ気持ちを分かり合える存在を、6/はどこかで必要としていたのだと、彼はどこかで思っていた。
だがもう必要無い。
この境遇は自分の力で抜け出せるはずだ。

そう思って692の方を見やると、そこにはもう何も居ないのだった。

6/は立ち上がり、空を見上げる。
もしかしたら、太陽が嫌いになったかもしれない。
相変わらず天気は雲一つ無い快晴の下で、彼はそう思った。

【品川区・喫茶店/一日目・午後】
【◆6/WWxs9O1s@カオスロワ書き手
[状態]:腰打身(軽度 回復中) 内蔵損傷(回復中)
[装備]: 上下二連式散弾銃 (2)
[道具]: 基本支給品一式、ランダム支給品1~3(本人未確認)
    ショットガンシェル(12)
[思考]基本:死ぬ。
0:………………。
1:自分を殺すものを探す。
【備考】
※8度のロワ(内3度主催打破、内5回優勝)を経験しております。
※ロワの間には、インターバルはありました。
※度重なるロワ経験で狂っていますが、本来は相等な人格者だった模様。
※再生能力、怪力を持っています。


【692@カオスロワレスアンカー 消滅】
[補足]元々は現実の人物では無く、飽く迄カオスロワ書き手である6/が作った架空の存在。
   幸いにも6/以外には誰にも必要とされなかった不人気キャラのために、消滅できた模様。

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