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テラカオスバトルロワイアル外伝
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叶えられた祈り

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叶えられた祈り ID:/CVMhs/K


まるで地獄のような夕焼けだ。
それが、病院の窓から外を眺めた織田信長の感想だった。
没しようとする太陽が東京を染め上げる
その景色に信長は、過去に幾度も見た戦場の夕焼けを思い出していた。


(さて、どうしようかな)

そんな織田信長の姿を見ながら、ルカは自由な右手で
胸元のカードデッキを撫でた。

KAITOとの戦いで変身してから、既に2時間が経過している。
すでに変身不能は解除されているはずだ。

(その気になれば、信長さんを殺せるけど)

しかしここで信長を殺すのは得策ではない。それはルカにもわかっていた。
ただでさえ左手が使えない上に、変身できる時間は10分
変身が解ければまた変身できるようになるまで2時間かかる。
それでもドラグブラッカーが使えるならば平気だろうと思っていたが
その見通しが甘かったのは、あの怪物との戦いで思い知らされている。

所詮自分は戦闘経験の乏しい小娘。ならば信長に
この戦国武将を自称している奇妙な男に守ってもらえばよい。

それが正しい考えだと、彼女もわかっていた。

(でも、信長さんはいい人だから)

だから、これ以上戦いの中で苦しませたくない。
悲惨と苦痛に満ちた最期を遂げさせたくない。

(だから早く、ボクがこの手で……なんてね)

それはルカなりの、極めて歪んだ感謝の気持ちだった。

「この催事を破壊するためには、第一にこの首輪を外すことが肝要じゃな。
 次にこの街を脱出する方法を探して……それと平行して人助けもせねばならん」
そう言いながら信長は地図を広げ、ルカに人の集まりそうな場所を聞いて
今後の活動方針を立てていた。

「わしには首輪の機巧を解くことなどできぬし、土地勘もない。
 ならば今できることは民を保護することだけじゃ。
 とりあえずこの近くの盛り場の位置はわかったが……」
そう言って信長はまた窓の外を見る。

「夜が近い。一刻も早く戦いに巻き込まれた民草を助けねば……。
 それにお主の兄であるKAITOという若人、探し出して必ず止めなければならん」
「……ボクは兄さんに会ったら、今度こそ殺すよ」
「そのような事は許さん。お主にはもう誰一人殺させはせぬ」
「いまさらだよ。ボクはもう姉を殺した家族殺しなんだから」
「だとしても、これ以上の殺生はさせん。
 たとえ彼の邪神が許そうと、この織田信長が許さぬ」
(やれやれ、頑固なおじさんだね、まったく)



準備を済ませ、二人がいざ発たんとしていた時だった。
その遠くから響く破砕の音が聞こえてきたのは。

「なんだろう、この音……だんだん近づいてくるみたいだ」
「うむ、高所から外の様子を見てみよう」
「じゃあエレベーターで最上階に行こうよ」
「えれべーたー? なんじゃこの部屋は……って動いた!?」

こうして二人は最上階の窓から、轟音のする方角を眺めた。

「な、なんじゃありゃあ……」

目を凝らす信長に見えたのは、夕焼けの中、建物を破壊しながら進んでくる
筋骨隆々の半裸の少女だった。

『ドォーーーーピングコンソメスーーーーープ!!!』
その少女と筋肉の融合体は、謎の言葉を叫びながら身の回りにある全てを破壊しつつ
この病院の方向に突っ走ってきていた。
しかもその片手で、かつて人であったらしきメガネをかけた屍を振り回している。
一目で危険な存在だとわかった。
「あれは妖怪変化か?」
非科学的なことはあまり信じていない信長も、ついそんな台詞を言ってしまう。

「あれ……知ってるかもしれない」
「なんじゃと!?」
ルカの口から思いもよらない言葉が漏れた。
「ドーピングコンソメスープって言葉で思い出した……。
 ボクの親戚にネルちゃんって子がいるんだけど、その子があんな風になったことがあったんだ」
「あんなって、あんな筋肉ダルマにか!?
 いったいどうしてじゃ!?」
「ネルちゃんの行きつけだったレストランのシェフに、食べると筋肉ムキムキになるスープを食べさせられたんだよ。
 あの時は本当に驚いた……いきなりマッチョになった半裸のネルちゃんが壁を破って家に飛び込んできて
 レンくんを追いかけ回すわ、KAITO兄さんを弾き飛ばすわ……ハクちゃんとがくぽくんが居たから何とか取り押さえられたけど。
 でも流石にあんなにおかしくなることはなかったよ。そのシェフだって、その後すぐに逮捕されたし……」
「……おそらく主催者とやらがその汁物を更に強化したんじゃろう」


そうこうしている間に、DCSに侵された少女は病院の前まで到達していた。
「ドォーーーーピングコンソメスーーーーープ!!!」
夕焼けに照らされて、少女の顔が確認できる距離になった時、
「夏奈……ちゃん?」
ルカの口から言葉が漏れた。

「あ、あの女子を知っておるのか!?」
だが信長の問いにルカが答えるよりも先に
少女の目が、最上階から覗く二つの顔を捉えた。



(あれ……)
DCSによって限界以上に引き上げられた視覚で、夏奈はルカの顔を見てとった。
(あいつは……)
DCSに汚染された脳内で、恐怖の記憶がフラッシュバックする。

夏奈の手から、野比玉子の死体が落ちた。

あいつは危険だ
あいつは人殺しだ
あいつに殺される
あいつはハルカやチアキを殺すかもしれない

その思考がDCS下の頭脳を駆け巡り
次の瞬間、凶暴性は放たれていた。



「ドォォォーーーピングコンソメスゥゥゥーーーーープ!!!!!」
病院が揺れた。
信長とルカは思わず窓を離れ、尻餅をつく。
「何事じゃあ!?」
慌てて窓から外を見た信長の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。
病院の壁を筋肉モリモリの少女が歩いてくる。
それは一切比喩ではない。一歩進むごとに壁に足を突き刺して、少女が垂直に病院の壁を登って来る。
自分たちのいる窓を目指して。

「夏奈ちゃん……嘘でしょ」
「ルカ!逃げるぞ!階段を使え!」
エレベーターでは危険だ。あの箱の中にドーピングコンソメ少女が飛び込んできたら他に逃げようがない。
銃器やドラグブラッカーで反撃しつつ逃げる。それが信長の考えた作戦だった。

二人が全力で階段を駆け下りている、その上からDCS少女が最上階の窓を突き破る音が聞こえてきた。

「ルカ!あの姿を元に戻す方法はないのか!」
「知らないよ!ネルちゃんも元に戻るまで一ヶ月近く入院してたし、その間にどんな治療受けたのかまでは……」
それを聞いて信長の心に暗雲が立ちこめる。
それでは、今の自分には、あの少女を助ける手立ては何も無いのか――。


息を切らしながら、二人はなんとか一回までたどり着いた。
「あ、あれ、ドラグブラッカーで勝てるかな?」
「今は逃げることが最優先じゃ。このまま街に逃げ込めば、流石に追ってはこれ……」
ドスン、ドスン、という音とともに天井が揺れた。
「……ねえ、信長さん」
「いや、まさかいくらなんでも……」
ボゴオという音とともに、ちょうど信長たちと病院の玄関の間にあるロビーの天井が抜けて
そこからDCS人間と化した南夏奈が降ってきた。

「ドォーーーーピングコンソメスーーーーープ!!!」
最上階から一回まで床をブチ抜いてきた夏奈が吼えた。
それはまるで、逃げることなどできないと言っているように信長には聞こえた。


「信長さん、ボクが戦う」
「ルカ!」
ルカは素早く仮面ライダーリュウガに変身すると夏奈に飛び掛った。

「ドォーピングコンソメスーーープ!!!」
夏奈のパンチをかわすと、リュウガは夏奈の腹にキックを叩き込む。
「ドォォォォォーーーーーーーーー!!!!」
一蹴り450AP(1APは約0.05トン)の蹴りはその分厚い筋肉にも食いこんだ。
夏奈が血交じりの吐瀉物を吐き出す。
「!?」
しかしそんなダメージを受けながらも、夏奈はリュウガの足を捕まえていた。

「ドォォォォォピングコンソメスゥゥゥゥゥゥプ!!!!!」
足を掴んだまま、夏奈はリュウガの身体を振り回す。
リュウガは床に、壁に、ロビー中のありとあらゆる所に叩きつけられた。

(まずい……!!)
全身に走る激痛の中でルカが懸念したのは、これ以上ダメージをくらい続けると変身が
強制解除されるかもしれないということだった。
そうなったら自分も信長も、確実にこの少女に殺されるだろう。

夏奈を止めたのは一発の銃弾だった。
リュウガの身体を落とす夏奈。その筋肉で覆われた腕の一部が抉られたように消えていた。
「ドォーーーーピングコンソメスーーーーープ!!?」
その原因となった銃弾は、信長の構えるデザートイーグルから撃ち出されていた。
「な、なんちゅう反動の火縄じゃ……」
「ドォーーーーピングコンソメスーーーーープ!!!」
「サンキュー信長さん」
夏奈の気が信長に逸れた隙に、ルカはドラグブラッカーを召喚する。
ドラグブラッカーの尾が夏奈に叩きつけられ、夏奈は病院の壁を突き破って吹き飛んだ。

「ドォォォォォ……」
立ち上がろうとする夏奈に、ドラグブラッカーは黒い火炎「ドラグブレス」を吐きつける。
「スゥゥゥゥゥゥプ!!!!!」
「苦しめちゃってごめんね夏奈ちゃん。
 これで楽にしてあげるから」

≪FINAL VENT≫

満身創痍の夏奈に止めを刺すべく、リュウガは黒龍をバックに空に浮き上がった。
「いかんルカ、お主は――――」
背後から聞こえる信長の声を省みることもなく、ルカはファイナルベントを放つ



だがそれよりも早く
銃声が轟き、南夏奈の頭部が砕け散った。

「え――――?」
思わず変身を解除してルカは振り返る。
信長は、硝煙のたなびくデザートイーグルを構えて立ちつくしていた。

いかに穏やかでお人よしとはいえ、信長は乱世に生まれ戦で育った男である。
放って置けば必ず被害を出す、現状では救うことはおろか、行動を封じることもできない相手
そんな相手を殺す決断を、彼は躊躇わなかった。

「信長さん、どうして……」
「言ったはずだ。お主にもう人殺しはさせぬと」
「だから自分で殺したの?
 そんなことしたって意味ないのに」
「殺すのはわしの仕事じゃ」
無表情でそう言いながら、信長は頭部が原形を留めていない夏奈の死体に近づいた。

「ルカ、この乙女の名は……」
「夏奈、南夏奈ちゃんだよ」
神仏はあまり信じていない信長だが、この時は夏奈の冥福を祈らずにはいられなかった。
(南夏奈、その名、決して忘れるまい)



信長の提案で、夏奈の死体は病院の中に運ばれ
白いシーツで包まれて安置された。

その後、夏奈の持ち物を調べていた際の事。
信長はDCSと書かれた魔法瓶をパックから取り出した。
「これは……」
「DCSって、doping consomme soupのことかな」
「これが……これのせいで」
信長は厳しい顔で魔法瓶を掴むと、近くにある便所へと歩いていった。
そして手洗い所に瓶の中身をぶちまけ、瓶は便所の床に投げ捨てた。


「DCS棄てちゃったんだ」
「あれは災いの種だ。残しておいてはいかん。
 他の支給品は……無しか」


急に沈黙が二人を襲った。
ルカは天井の欠片を払うと、待ち合いの椅子に座りこむ。


(あの時逃がした夏奈ちゃんとこんな形でまた会うなんて、変な運命だね。
 それにしても、また変身しちゃったな。これで2時間変身不能か)


最上階まで続く天井の大穴を見ながら、ルカは呟いた。

「ねえ、信長さん」
「……なんじゃ」
「もう少しここで休んでいかない?」
「いや、この騒ぎで危険な者が寄ってくるかもしれん。今すぐ別の場所に移動するぞ」
「えぇ~……」

【港区・渋谷区との境界の病院/一日目・夕方】

【織田信長@歴史上の人物
[状態]疲労(大)
[装備]天羽々斬(無印)、デザートイーグル(残4弾)
[道具]支給品一式
[思考]
基本:後世に悪名を残さないようにするため、参加者を助ける
 0:安全な場所に移動した後、自分とルカの体力が回復するまで休む。
 1:バトルロワイアルを打破する方法を探す。
 2:ルカを真っ当な道に戻す。そのために彼女に誰も殺させない
 3:危険な参加者は、他に手の打ちようがない場合は自分が殺す。

巡音ルカVOCALOID
【状態】疲労(大)、ダメージ(中)、左腕粉砕骨折(固定・治療済み)
【装備】リュウガのカードデッキ@仮面ライダーディケイド(2時間使用不可)
【道具】支給品一式×2、詳細名簿(MEIKOの支給品)、
【思考】基本:皆殺し
     0:安全な場所に移動して休む
     1:家族を探して殺す
     2:しばらくは信長に保護してもらう。

【南夏奈@みなみけ】死亡確認――死因:射殺
……残り参加者44/XX

【野比玉子@ドラえもん 死亡】

※病院とその一帯の家屋が破壊されています。

067:ただ栄光のためでなく 投下順 069:CROSS FIRE
067:ただ栄光のためでなく 時系列順 069:CROSS FIRE
046:それぞれの救い方 織田信長 [[]]
046:それぞれの救い方 巡音ルカ [[]]
062:本日のスープ 南夏奈 死亡確認

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