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テラカオスバトルロワイアル外伝
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てんじょーおーとのそうぐう

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桃色の髪の少女は、ひたすらに震えていた。
両腕で体を抱いてもおさまらず、歯はかちかちと音を鳴らし続けてしまう。

「――っ!――っ!!」

止め処なく溢れる涙と嗚咽をどうにかする方法を、少女はまだ持ちえない。
ほんの、ほんの少し前まで少女はがむしゃらに疾走していた。
都心だとか、人の集まる場所に向かおうだとか、そういう考えは持たずにただ走った。
最初のうちだけは、まだ考えもあるにはあった。
しかし今となっては、脳から発せられるただひとつの信号に阻害され、思い出すことも叶わない。

この少女は……不幸だ。
時間の概念が変わっていないのであれば、前日までは彼女は幸福だったはずなのに。
争いのない平和な日常……それは既に過去の出来事となってしまった。
今現在は、これまでの幸福全てを塗り潰してしまいかねないほどの不幸の真っ只中。
そしてそれは容易には払えない。このままいけば、間違いなく少女の未来も不幸一色に染まりきる。
何をもって幸福と感じ、また不幸と感じるかは人それぞれだろう。
ただ、一部の例外さえ除けば……
普通の人間は、生きることを幸福とし、死ぬことを不幸と感じるはずだ。
古の時代より不老不死の研究は行われてきた。
それが不可能と理解された現代でさえも、人間の寿命を限界まで延ばそうとする研究が行われている。
人間というものは、生への執着心が強い生き物なのだ。

そして、それはこの少女も同じ。
死にたくない、死にたくない。それが何よりも強い願いだった。
寿命なら仕方がない。事故や病気だったら嫌だけれど、誰かに殺されるよりは幾分ましだと思える。
ここは殺し合いの会場。互いに命のやり取りをしなければ生き残ることはできない。
しかしこの少女、高良みゆきは知識を除けば普通の人間。
戦場に立てばすべてを薙ぎ倒す忍者でもなければ、強力な氷や炎を操れる能力者でもない。
戦う力を持たない、戦ったこともない、普通の学生なのだ。
戦いに身を置くものであれば、その強さから生き残る自信、或いは死への覚悟を持てるだろう。
それが持てない。生き残る自信も死への覚悟もないから、彼女は逃げ惑い、助けを求める。

ここが隔離された会場であり、首輪がある以上どこへ逃げても何も変わらない。
助けを求めたところで、出会う人物は全て首輪に……主催者に捕らわれている。
結局、この首輪をどうにかしないことには、死の運命から逃れることができない。
それは、わかっている。それでも、逃げる。



首輪は確かに冷たく、恐ろしいまでの存在感を持っている。
だが禁止エリアとやらに入るか、強引に外そうとしない限り爆発することはない。
あくまでもしもの話だが、どこかの家に篭城して、そこが最後まで禁止エリアに指定されなかった場合。
それだけで、3日を生き延びることができるのだ。




首輪は、すぐに参加者を殺したりはしない。見せしめとなった参加者だけが例外。
いずれ殺されるにしても、猶予をくれているだけ十二分に有情なのではないだろうか?



少なくとも、あのバケモノよりは、遥かに、ずっと。

あれはいつだったか。何かの資料で見たものに似ていた気がする。
旧支配者の一柱、水の象徴たる邪神クトゥルー……
あのバケモノは、その邪神をさらにおぞましい姿に変えた感じだろうか。
その邪神も当然に恐ろしい存在ではあるが、一応は人の型に近い。
それだというのにあのバケモノは、もはや全身が触手そのもの。
あまりに巨大で威圧的で、人語まで理解していたバケモノ。
一部意味のわからない言葉も発していたが、あの触手に嬲られたら精神崩壊は確定だったであろう。

そんなバケモノから、みゆきはなんとか逃げ出すことには成功した。
人間、頑張れば大抵のことはなんとかなる?

今、みゆきが言葉を発することができたなら、彼女はそれを全力で否定するだろう。

確かに、みゆきはバケモノから逃げ切った。
だがそれは、攻撃がなかったためである。
気まぐれか、それとももしかしたら本当に、あの時点では危害を加えるつもりがなかったのか。
いかなる理由にせよ、攻撃がなかったのは事実。
相手が手加減をしていたからこそ、逃げることができた。

だから、もう。
次は、ない。
次に出会ったら……いや相手から見つかったら、おしまいだ。
徹底的に蹂躙され、長時間の責めに耐え続けなくてはいけないのか、それとも言葉を発する前に塵にされるのか。
それはわからない。わかるのは、おそらく再びあのバケモノに出会う=自分の死ということだけ。

そもそもみゆきをここまで怯えさせる原因となったのは、バケモノの凄まじい咆哮だった。
そしてその少し前に響いた、巨大な建造物が崩れ落ちる轟音。
かなり距離をとった筈なのに、今でもしっかりとその咆哮が耳に焼き付いてしまっている。
何があったかはわからないが……いや、おそらくはあの男と一悶着あったのだろう。
そして男は今頃、ぐずぐずの肉片に変わり果てているのだろう。
あの叫びが、ビルをなんなく崩壊させる力が、目覚めたバケモノの本来の力なのだとしたら……
とても人間が太刀打ちできる相手ではない。作り物ではない、信じられないが本物の邪神かそれ相当の相手。
あの触手全てが、敵を滅するためだけに動いたとしたら、対峙することさえもはや不可能。
空から地上全てを焼き払う覚悟で爆撃でもしない限り、人間は対等に戦うことはできないだろう。
バケモノの背にあった、異形の翼が飛行目的だったとしたら、それさえできない。

あのバケモノは、もはや歩く『死』そのもの。
仮に首輪を外せたり、総理大臣の法案が白紙に戻ったとして。
あのバケモノがいたのでは、平和な日常など戻ってくるわけがない。

少女は逃げる。目前の死から。
首輪による死も恐ろしい。だがあれは本来、出会うこと自体が死そのものだったのだ。
奇跡的に自分はその絶対の死から逃げることに成功している。
一人の名前も知らない男の犠牲の上に成り立っているとはいえ、自分は生きている。
少女は願う。二度目の奇跡を。
確かにあのバケモノ相手にどう足掻いても、ろくな準備もしていない人間の群れなど一撃で蹴散らされる。
それなら、あのバケモノに対抗できるような、不可思議な力をもった人ならどうだろうか。
国会議事堂で、聞きなれない単語に常ならざる力とやらを耳にした。その力ならもしかしたら……
どうか。
どうかその常ならざる力を持った人たち。

「助けて――」



みゆきの視界に、白いなにかが映った。



「……え?」



白く美しい、しなやかな、かつ無駄のないシャープなデザイン。
何時如何なる時も、主役を影で支え続けてきた存在。
煮るなり焼くなり生なり好きにして構わないと言ってくれているであろう心の広い存在。



人はそれを……ネギと呼んだ。


なぜ、ネギが?
そう考える間もなく。



2本のネギが、少女の両肩を刺し貫いた。

「――――――!!?」

悲鳴をあげるよりも、激痛に顔を歪めるよりも前に。
頭はまだ混乱している。

なぜ ネギが ここに どこから なんで どうして

痛い どうして 刺さってる どうして 野菜が ネギが

抜かなきゃ 抜いたら駄目 余計に血がでる 痛い 抜かなきゃ どうして 

ネギが わたしの 体から 生えて 痛い どうして 痛い 

痛い 痛い 痛い イタイ イタイ イタイ ドウシテ?

状況が、理解できない。しかし時が止まることはない。
「ぁ、ぇ……?」
ぼんやりとした思考の中。

みゆきは、自分の額めがけて飛来する3本目のネギを確かに見た。


……





「ふむ……刺さったのは2本……手数勝負の双剣ならば、まあこの程度といったところか。
 この私が投げたにもかかわらず、貫通傷を与えることすらできないとなると、あれがハズレ。
 ならば、最後に残ったこの1本が……」

天に浮かぶ金髪の男が、支給品に付属された説明書を握り潰す。
何かを呟きながら、男は再び自身の荷物からネギを取り出した。
端整な顔立ちの男が、まるで抜刀するかのようにネギを出すさまは、滑稽だ。
だが、地に這い蹲った状態のみゆきに、それを笑う余裕など微塵もない。
両肩を貫かれ、焼けるような痛みがひろがる。
額は、なぜか肩とは違い貫かれることがなかったとはいえ、肉を抉られて血が止まらない。
自分の支給品に武器はあるが、非力な少女がこの傷で振り回せる代物ではない。
他にあるものは、自分のそばに転がって拉げている、血のべったりついたネギのみ。
ネギを投げてきたのがこの男なのは間違いない。
勝てる相手ではない。逃げなくては、殺される。
「ふん、逃がすものか」
だが、男がネギを振り上げると同時に、みゆきの前方から紫色の業火が噴き出した。
触れた者を瞬時に捕らえ、焼き尽くす『王』の技のひとつ――シジュアード。
熟練の戦士でさえ、下手に手を出せばたちまち炭にされてしまう紫炎。
非力な者に、回避も突破もできようはずがない。

「私が、こんなふざけきった剣を使うことになろうとは……実に不愉快だ。
 人間、『まともな』剣を持っているのならおとなしく私に寄越せ。礼に一瞬でその首を飛ばしてやろう。
 もっていないか、あるいは抵抗するのであれば……
 仕方がない。この不快な剣を使うしかあるまい。――貴様の身体で斬れ味を試してからな」

ネギが空を一閃し、男は本当に剣を構えるかのようにネギを構えた。
それは、何もしらない者が見たらコントかなにかに見えるだろう。
それがコントでないことは、転がり逃げ場も無くした少女と……
くしくも少女の待ち望んでいた『常ならざる力』の持ち主――
「喜べ、人間。この天上王ミクトランの剣技を特等席で見られるのだ。これ以上の幸福は、あるまい……?」
何をもって幸福と感じ、また不幸と感じるかは人それぞれだろう。
――アァ コノヒトナラ アノバケモノニモ タイコウデキルカモ……?
望む参加者に会えたことは?
必死に生き延びるのと一瞬で楽になるのは?
幸せなのは、どっち?

【目黒区・公園/一日目・午後】
【ミクトラン@テイルズ オブ デスティニー】
【状態】:健康
【装備】:伝説の首領パッチソード
【道具】:基本支給品一式
【思考】基本:主催者を殺し、自分の手で価値ある国民を選ぶ
1:人間(高良みゆき)を実験台にする
2:参加者を殺害し、武器を奪う。利用価値がありそうなら手駒化も考える
3:二騎士(混沌の騎士ブロント)を警戒。いずれ倒す
4:可能であれば、一刻も早くまともな剣が欲しい
※制限によりワープの連続使用で疲労していきます
※実践により、支給品のネギの識別に成功しました

【高良みゆき@らき☆すた
【状態】:両肩ネギ貫通、額から出血、恐怖、混乱、精神・肉体疲労(極大)
【装備】:無し
【道具】:基本支給品一式、スターゲイザー、アマゾネスの服
【思考】基本:生きて元の生活に戻る
1:―――
※禍神を危険人物と判断しました。また、品川区に響いた禍神の咆哮を聞きました
※男(クライシス皇帝)は死んだと判断しました
※近くにネギ@現実が転がっています


053:そしてIは交差する/響く不協和音 投下順 055:ぼのぐらしのなく頃に~秋葉原編~
053:そしてIは交差する/響く不協和音 時系列順 055:ぼのぐらしのなく頃に~秋葉原編~
008:それぞれの光と闇 ミクトラン 079:天上の王は少女の救いとなり得るか?
040:類は友を呼ぶ? 高良みゆき 079:天上の王は少女の救いとなり得るか?

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