「それじゃあかがみさん。僕は彼とコンタクトを取ってくる。
かがみさんは安全だとわかるまで、この建物で待機していてくれ」
「はい。……イチローさん、気をつけてください」
柊かがみを建物内に残したまま、イチローは単身真向かいにあるファミリーレストランへと向かう。
そこに逃げ込んだ少年・キョンと接触するために。
かがみさんは安全だとわかるまで、この建物で待機していてくれ」
「はい。……イチローさん、気をつけてください」
柊かがみを建物内に残したまま、イチローは単身真向かいにあるファミリーレストランへと向かう。
そこに逃げ込んだ少年・キョンと接触するために。
すでに日差しは弱まり、夕闇が近づいているのがわかる。
(もうすぐこのゲームが始まって4時間経つ……
まずいな。かがみさんも心配しているし、早く秋葉原に向かわなければ)
しかしファミレスにいる彼を放っておくことはできない。
(もうすぐこのゲームが始まって4時間経つ……
まずいな。かがみさんも心配しているし、早く秋葉原に向かわなければ)
しかしファミレスにいる彼を放っておくことはできない。
願わくば彼が殺し合いに乗っていないことを――そう願いながら店に入ろうとするイチローの歩みは
「誰かー!誰か助けてくれー!殺されるー!!」
突然聞こえてきた救いを求める声に止められた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「誰か助けてくれー!殺されるー!!シニタクナーイ!」
今、全力で走りながら拡声器で大声を上げている俺はバトルロワイアルに巻き込まれたごく一般的なパロロワ書き手。
強いて違うところをあげるとすれば現在進行で怪物に追いかけられてるってことカナ――名前は◆6/WWxs9O1s。
強いて違うところをあげるとすれば現在進行で怪物に追いかけられてるってことカナ――名前は◆6/WWxs9O1s。
「なんてネタやってる余裕無ぇーーー!!」
思わず拡声器を通して絶叫する6/。
そんな彼の背後を、最強の吸血鬼・アーカードはまるで影のように着かず離れず追ってくる。
この現状は数十分前に遭遇したときから変わっていなかった。
一緒にいたKAITOの奴は……支給品でも使ったのだろうか……うまいことこの怪物から逃れたらしい。
その結果、6/はたった一人でアーカードと命がけの鬼ごっこをするハメに陥っていた。
そんな彼の背後を、最強の吸血鬼・アーカードはまるで影のように着かず離れず追ってくる。
この現状は数十分前に遭遇したときから変わっていなかった。
一緒にいたKAITOの奴は……支給品でも使ったのだろうか……うまいことこの怪物から逃れたらしい。
その結果、6/はたった一人でアーカードと命がけの鬼ごっこをするハメに陥っていた。
そんな最悪の状況でも彼にとって幸運だったのは、「彼の支給品が拡声器だったこと」。
パロロワ書き手である6/は、ロワ会場での拡声器の使用が死を招くことを無論知っている。
しかし彼は今、拡声器の最大音量で助けを求める声を垂れ流している。
何故なら、拡声器を使い助けを呼ぶことこそが、アーカードに殺されずに済む唯一の手段だったからだ。
パロロワ書き手である6/は、ロワ会場での拡声器の使用が死を招くことを無論知っている。
しかし彼は今、拡声器の最大音量で助けを求める声を垂れ流している。
何故なら、拡声器を使い助けを呼ぶことこそが、アーカードに殺されずに済む唯一の手段だったからだ。
アーカードの狙いは、6/を助けにきた参加者と戦うこと。
自分で拡声器を使って呼びかけてもいいが、こんな殺し合いの中で他人を助けようとする人間を誘うためには6/にやらせたほうが都合がいい。
アーカードが求めているのはそんな参加者との戦いであり、6/はその広告塔として生かしてもらっているに過ぎない。
もし叫ぶのを止めれば、彼はすぐさまアーカードに殺されるだろう。
奴がその気になれば、追いついて6/を捻り殺すなどわけもないことだ。
自分で拡声器を使って呼びかけてもいいが、こんな殺し合いの中で他人を助けようとする人間を誘うためには6/にやらせたほうが都合がいい。
アーカードが求めているのはそんな参加者との戦いであり、6/はその広告塔として生かしてもらっているに過ぎない。
もし叫ぶのを止めれば、彼はすぐさまアーカードに殺されるだろう。
奴がその気になれば、追いついて6/を捻り殺すなどわけもないことだ。
(そうだ。あの怪物が求めてるのは殺戮というより闘争
それも人間との……って、何で俺はそんなことがわかるんだ?)
最初にあいつを見たときにも既知感を感じた。
(ひょっとして……これは書き手特有の「メタ知識」ってやつか?
ハッキリ思い出せないのは俺に制限が科せられているからなのか?)
それも人間との……って、何で俺はそんなことがわかるんだ?)
最初にあいつを見たときにも既知感を感じた。
(ひょっとして……これは書き手特有の「メタ知識」ってやつか?
ハッキリ思い出せないのは俺に制限が科せられているからなのか?)
そんな事を考えながら、6/は声を張り上げる。
「誰かー!助けてくれー!」
危険人物を呼び寄せるかもしれないがそれでもいい。
誰かが来れば状況が変化して、生き延びるチャンスが生まれるかもしれない。
すでに限界に近い疲労の中で彼は必死に助けを求める。
「助けて――――」
「君!大丈夫か!」
その声に応えたのは、背番号51を背負う男だった。
「誰かー!助けてくれー!」
危険人物を呼び寄せるかもしれないがそれでもいい。
誰かが来れば状況が変化して、生き延びるチャンスが生まれるかもしれない。
すでに限界に近い疲労の中で彼は必死に助けを求める。
「助けて――――」
「君!大丈夫か!」
その声に応えたのは、背番号51を背負う男だった。
◇
「あんた……ひょっとしてイチロー?」
「安心してくれ、僕は君に危害を加える気はない。
そちらのあなたも戦う気がないならそこで止まってくれ!」
6/に力強い笑顔を見せながら、イチローはアーカードを牽制する。
しかしアーカードは歩みを止めない。イチローを見据えたその瞳には喜悦の色が宿っている。
対するイチローの頬を冷や汗が伝う。彼は一目見て直感で理解したのだ。相手が人の理を外れた存在であることを。
「安心してくれ、僕は君に危害を加える気はない。
そちらのあなたも戦う気がないならそこで止まってくれ!」
6/に力強い笑顔を見せながら、イチローはアーカードを牽制する。
しかしアーカードは歩みを止めない。イチローを見据えたその瞳には喜悦の色が宿っている。
対するイチローの頬を冷や汗が伝う。彼は一目見て直感で理解したのだ。相手が人の理を外れた存在であることを。
「あなたは……殺し合いをするつもりなのか!?」
「答えはイエスだ。私からも一つ訊かせてもらおう。お前に時間制限は科せられているか?」
「時間制限……? 何のことだ?」
「無いのなら良い。今度こそ骨の髄まで灼けるような戦いを最期の最後まで楽しめる」
「答えはイエスだ。私からも一つ訊かせてもらおう。お前に時間制限は科せられているか?」
「時間制限……? 何のことだ?」
「無いのなら良い。今度こそ骨の髄まで灼けるような戦いを最期の最後まで楽しめる」
その僅かな会話の中で、彼らは互いに理解していた。これ以上の説得や交渉は無駄だと。
「ゼエ……ゼエ……」
走り疲れた6/は肩で息しながらイチローの背後に回る。
その間、アーカードは笑みを浮かべたまま、イチローはボールを握ったまま動くことなく対峙していた。
先に動いたほうが殺られる。そんな緊迫した空気は
走り疲れた6/は肩で息しながらイチローの背後に回る。
その間、アーカードは笑みを浮かべたまま、イチローはボールを握ったまま動くことなく対峙していた。
先に動いたほうが殺られる。そんな緊迫した空気は
「イチローさん!何かあったんですか!?」
駆けつけてきた柊かがみの声で引き裂かれた。
駆けつけてきた柊かがみの声で引き裂かれた。
かがみに悪気があったわけではない。
彼女はファミレスに入らず走り出したイチローを心配して、何かあったのか突き止めようと
6/の声を頼りにここまでやってきた。
しかし今、彼女は最悪のタイミングでこの場に現れてしまった。
彼女はファミレスに入らず走り出したイチローを心配して、何かあったのか突き止めようと
6/の声を頼りにここまでやってきた。
しかし今、彼女は最悪のタイミングでこの場に現れてしまった。
「!!? かがみさ――!」
かがみに気をとられたイチローに隙が生まれる。
僅かだが、決定的な隙が。
かがみに気をとられたイチローに隙が生まれる。
僅かだが、決定的な隙が。
その間にアーカードは一瞬でイチローとの距離を詰めると徒手で殴りかかる。
「クッ――!」
咄嗟にバットを取り出して防御するも、アーカードの一撃はバットを砕き
そのままイチローの腹部に突き刺さった。
「――――ッ!」
そのたった一撃でイチローの体が宙を舞い、近くの民家の中まで吹き飛ばされた。
「クッ――!」
咄嗟にバットを取り出して防御するも、アーカードの一撃はバットを砕き
そのままイチローの腹部に突き刺さった。
「――――ッ!」
そのたった一撃でイチローの体が宙を舞い、近くの民家の中まで吹き飛ばされた。
「イチロー!」
「イチローさん!」
6/とかがみの口から悲痛な叫びが漏れる。
その中でアーカードだけは笑いを崩さなかった。
「どうした? まだ終わりじゃあるまい。
闘争はまだ始まったばかりだろう!
さあ立て。立ち上がって私を打ち倒せ!HURY!HURY!HURY!HURY!」
「イチローさん!」
6/とかがみの口から悲痛な叫びが漏れる。
その中でアーカードだけは笑いを崩さなかった。
「どうした? まだ終わりじゃあるまい。
闘争はまだ始まったばかりだろう!
さあ立て。立ち上がって私を打ち倒せ!HURY!HURY!HURY!HURY!」
◇
(私の……私のせいなの……?
私が声をかけたりしたから……余計なことをしたから、だからイチローさんは……)
地に伏したままのイチローと笑うアーカードを見て、かがみは取り返しのつかない後悔に襲われる。
(このままじゃイチローさんが殺される……私のせいで……)
その時彼女は思い出した。自分に残されていた、たった一つの武器のことを。
「嘘だろイチロー……っておい!お前なにする気だよ!」
6/が止めるのも聞かず、かがみは走り出していた。
私が声をかけたりしたから……余計なことをしたから、だからイチローさんは……)
地に伏したままのイチローと笑うアーカードを見て、かがみは取り返しのつかない後悔に襲われる。
(このままじゃイチローさんが殺される……私のせいで……)
その時彼女は思い出した。自分に残されていた、たった一つの武器のことを。
「嘘だろイチロー……っておい!お前なにする気だよ!」
6/が止めるのも聞かず、かがみは走り出していた。
ドンッ
体に軽い衝撃を感じてアーカードは背後を振り返る。
彼の腰の辺りに、円柱のような奇妙な剣が突き刺さっていた。
そしてその剣を握っているのは、真っ青な顔で震えながらもアーカードを睨みつけるツインテールの少女だった。
彼の腰の辺りに、円柱のような奇妙な剣が突き刺さっていた。
そしてその剣を握っているのは、真っ青な顔で震えながらもアーカードを睨みつけるツインテールの少女だった。
「イチローさん!目を覚ましてください!」
アーカードに突き刺した乖離剣エアに力を込めつつ、かがみは叫ぶ。
この男に立ち向かうことも、人を傷つけることも恐かった。
しかし、自分の失敗の責任をとる方法を、彼女は他に思いつかなかった。
「このっ!化け物!」
返り血を浴びながら、かがみは祈るように更に力を込めてアーカードの肉を抉る。
その様子を、アーカードは微動だにせず見つめる。
アーカードに突き刺した乖離剣エアに力を込めつつ、かがみは叫ぶ。
この男に立ち向かうことも、人を傷つけることも恐かった。
しかし、自分の失敗の責任をとる方法を、彼女は他に思いつかなかった。
「このっ!化け物!」
返り血を浴びながら、かがみは祈るように更に力を込めてアーカードの肉を抉る。
その様子を、アーカードは微動だにせず見つめる。
「素晴らしい……」
「えっ……?」
アーカードの口から零れたのは、苦痛でも憤怒でもなく
かがみに対する賞賛だった。
突然の賛辞に、かがみは思わず力を緩める。
「えっ……?」
アーカードの口から零れたのは、苦痛でも憤怒でもなく
かがみに対する賞賛だった。
突然の賛辞に、かがみは思わず力を緩める。
「お前は私に戦いを挑んできた。
私を化け物(ミディアン)と知りながら、力の差を知りながらそれでも挑んできた。
そうでなければならない!化け物の敵は人間でなければならない!
お前は犬ではなかった!お前はあの連中と、あの素晴らしい連中と同じだ。
あの黒い戦士と、あのユニフォームの男と、あの教授たちと同じ、人間だ!」
だからこそ
と、アーカードはかがみの左手を掴むと
そのままかがみの体を宙吊りに持ち上げる。
「ひッ――」
メキリ、という嫌な音と同時に、かがみの左手が砕けて折れ曲がった。
「ひいッ!?がああああああああぁぁぁ!」
私を化け物(ミディアン)と知りながら、力の差を知りながらそれでも挑んできた。
そうでなければならない!化け物の敵は人間でなければならない!
お前は犬ではなかった!お前はあの連中と、あの素晴らしい連中と同じだ。
あの黒い戦士と、あのユニフォームの男と、あの教授たちと同じ、人間だ!」
だからこそ
と、アーカードはかがみの左手を掴むと
そのままかがみの体を宙吊りに持ち上げる。
「ひッ――」
メキリ、という嫌な音と同時に、かがみの左手が砕けて折れ曲がった。
「ひいッ!?がああああああああぁぁぁ!」
激痛で絶叫するかがみに、アーカードは顔を近づける。
「あ……ア……」
「だからこそ、お前は私の敵なのだ。人間(ヒューマン)」
かがみが最後に見たものは、アーカードの顔、そしてその口から覗く鋭い牙――――
「だからこそ、お前は私の敵なのだ。人間(ヒューマン)」
かがみが最後に見たものは、アーカードの顔、そしてその口から覗く鋭い牙――――
◇
イチロ―――目を覚―――――
「う…………」
誰かの声が、イチローの意識を気絶から呼び起こした。
(僕は……あの男にやられて気を失っていたのか……
ほぼ逝きかけていたな……)
誰かの声が、イチローの意識を気絶から呼び起こした。
(僕は……あの男にやられて気を失っていたのか……
ほぼ逝きかけていたな……)
「がはッ――!」
体を起こそうとすると激痛が走り、口から血が溢れる。
体を起こそうとすると激痛が走り、口から血が溢れる。
血を吐きながらもなんとか立ち上がるイチロー。
「か――」
その目に飛び込んできたのは
「かがみさん!!」
アーカードによって首筋に牙を突き立てられた柊かがみの姿だった。
「か――」
その目に飛び込んできたのは
「かがみさん!!」
アーカードによって首筋に牙を突き立てられた柊かがみの姿だった。
「うおおおおおおおおおおおお!」
傷ついた自分の体のことも忘れて、イチローはレーザービームを放つ。
正確無比の軌道で投げられたボールはかがみを傷つけることなく、アーカードの頭部・鼻から上だけを吹き飛ばした。
傷ついた自分の体のことも忘れて、イチローはレーザービームを放つ。
正確無比の軌道で投げられたボールはかがみを傷つけることなく、アーカードの頭部・鼻から上だけを吹き飛ばした。
「かがみさん!」
アーカードの体が倒れ、かがみが投げ出される。
痛んだ体を引きずりながら、イチローはかがみの元に駆け寄った。
「かがみさん!しっかりするんだ!目を開けてくれ!かがみさん!」
しかしかがみは動かない。その顔は紙のように白くなり、首筋の噛み跡からは血が流れ続けている。
アーカードの体が倒れ、かがみが投げ出される。
痛んだ体を引きずりながら、イチローはかがみの元に駆け寄った。
「かがみさん!しっかりするんだ!目を開けてくれ!かがみさん!」
しかしかがみは動かない。その顔は紙のように白くなり、首筋の噛み跡からは血が流れ続けている。
「……だけど、まだ心臓は止まっていない。微かだけど脈はある」
かがみを抱きかかえると、イチローは呆然としている6/に近づく。
「――君に頼みがある」
「えっ、あ、はい」
「この子を連れて、どこか安全な場所まで逃げてくれ」
その背後では、頭部を失ったアーカードがむくりと身を起こしていた。
かがみを抱きかかえると、イチローは呆然としている6/に近づく。
「――君に頼みがある」
「えっ、あ、はい」
「この子を連れて、どこか安全な場所まで逃げてくれ」
その背後では、頭部を失ったアーカードがむくりと身を起こしていた。
「僕は奴との決着をつける。だから出来るだけ、ここから遠ざかってほしい」
「わ、わかりました!」
意識のないかがみを背負うと、6/は一目散にその場から逃げる。
その背中を見送ると、イチローは怪物へと向き合った。
「わ、わかりました!」
意識のないかがみを背負うと、6/は一目散にその場から逃げる。
その背中を見送ると、イチローは怪物へと向き合った。
「素敵だ。人の身でよくぞここまで練り上げた」
「…………」
「だが私を殺すのに頭を狙ってはいけない。狙うべきは心臓(ココ)だ」
己の心臓を指差しながら、アーカードは頭部に唯一残された口だけで笑う。心底愉快そうに。
「……これ以上の暴虐は決して許されない」
それに対し、イチローは静かな怒りと闘志を込めてボールを握った。
「…………」
「だが私を殺すのに頭を狙ってはいけない。狙うべきは心臓(ココ)だ」
己の心臓を指差しながら、アーカードは頭部に唯一残された口だけで笑う。心底愉快そうに。
「……これ以上の暴虐は決して許されない」
それに対し、イチローは静かな怒りと闘志を込めてボールを握った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
レーザービームが乱れ飛び、ビルが崩れ、吸血鬼の笑いが木霊する。
台東区の一角はたった二人の戦闘者によって破壊され尽くしていた。
台東区の一角はたった二人の戦闘者によって破壊され尽くしていた。
夕焼けの中、永遠に続くように思われた戦いにも終わりの時が訪れる。
「ぐっ――――!」
地面に膝を屈するイチロー。彼の手元にレーザービームとして使える野球ボールはもう無い。
そして最初に受けたダメージに加え、その後負った傷とレーザービームを連発した疲労は確実に彼の命を蝕んでいた。
地面に膝を屈するイチロー。彼の手元にレーザービームとして使える野球ボールはもう無い。
そして最初に受けたダメージに加え、その後負った傷とレーザービームを連発した疲労は確実に彼の命を蝕んでいた。
「ああ、楽しい。実に楽しいな。
こんな時間を過ごすのは一体何時以来か」
そう言うアーカードは、もはや人の形を成していない。
幾度もレーザービームの直撃を受け、幾度も倒壊した建物の下敷きになったその身体は
両手は消し飛び、頭は吹き飛び、片足はどこかに消え、腹部には幾つもの大穴が空けられている。
しかしそのような動く肉塊になっても、心臓はまだ無傷のままだ。
こんな時間を過ごすのは一体何時以来か」
そう言うアーカードは、もはや人の形を成していない。
幾度もレーザービームの直撃を受け、幾度も倒壊した建物の下敷きになったその身体は
両手は消し飛び、頭は吹き飛び、片足はどこかに消え、腹部には幾つもの大穴が空けられている。
しかしそのような動く肉塊になっても、心臓はまだ無傷のままだ。
(僕の力が尽きるまでに奴を倒さなければ――)
しかし自分に残された武器はもう無い。
バットもボールも失い、酷使したグローブはすでに襤褸と化している。
バットもボールも失い、酷使したグローブはすでに襤褸と化している。
(だがここで奴を倒さなければ、これからも被害者は増える。かがみさんのような――)
その時、地を這う彼の目は瓦礫に埋もれた剣を見つけた。
かがみが彼を助けようと振るった、あの異様の剣を。
かがみが彼を助けようと振るった、あの異様の剣を。
(これを――使えば――!)
極限戦闘下の直感で、イチローはその剣…乖離剣エアを掴み取る。
そして残された最後の気力を振り絞り、再び立ち上がった。
そして残された最後の気力を振り絞り、再び立ち上がった。
「その剣……そしてその構えは」
アーカードは再生中の顔に、困惑の表情を浮かべる。
イチローはまるでバッターボックスでバットを構えるように、エアを振り上げていた。
彼の武器はレーザービームだけではない。
安打製造機と呼ばれる所以となった打撃もまた、彼の武器なのだ。
アーカードは再生中の顔に、困惑の表情を浮かべる。
イチローはまるでバッターボックスでバットを構えるように、エアを振り上げていた。
彼の武器はレーザービームだけではない。
安打製造機と呼ばれる所以となった打撃もまた、彼の武器なのだ。
そして構えながらイチローは感じ取っていた。この剣の本当に使い方を。
(僕に……僕に勝利を齎してくれ!)
イチローは祈りと共に、彼の肉体と魂に宿る力、野球力とでも言うべき力を、魔力の変わりに乖離剣へ注ぎ込む。
(僕に……僕に勝利を齎してくれ!)
イチローは祈りと共に、彼の肉体と魂に宿る力、野球力とでも言うべき力を、魔力の変わりに乖離剣へ注ぎ込む。
そして、彼の願いに応えるかのように乖離剣が震え始める。
その刀身から巻き起こるのは破砕の暴風か、救済の神風か。
全てを原初に還そうとする風が、イチローを、アーカードを、彼らの周囲の全てを包み込んでいく。
その刀身から巻き起こるのは破砕の暴風か、救済の神風か。
全てを原初に還そうとする風が、イチローを、アーカードを、彼らの周囲の全てを包み込んでいく。
「……素晴らしい!素晴らしいぞ!」
アーカードは巻き起こる風に全身を刻まれながら、この上ない歓喜の声を上げていた。
しかし彼に喜びを与えたのは神造兵器・乖離剣エアの威力ではない。
人の身で乖離剣の力を発動させたイチローの、人間としての精神であった。
「そうだ!人間よ、私を殺せ!私と私の中の地獄を殺し尽くしてみせろ!
HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!」
アーカードは巻き起こる風に全身を刻まれながら、この上ない歓喜の声を上げていた。
しかし彼に喜びを与えたのは神造兵器・乖離剣エアの威力ではない。
人の身で乖離剣の力を発動させたイチローの、人間としての精神であった。
「そうだ!人間よ、私を殺せ!私と私の中の地獄を殺し尽くしてみせろ!
HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!HURY!」
破壊の嵐の中、身体を刻まれながらも、イチローはバッティングの姿勢を崩さなかった。
そして自身の全てを込めて、乖離剣を振り抜く。
そして自身の全てを込めて、乖離剣を振り抜く。
「天地乖離す(エヌマ)――――」
心に浮かぶ、剣の真名と共に
「――――開闢の星(エリシュ)!!」
そして光が全てを包み――――全てが消えた。
◇
原初の光の中
星々の始まりの中
其処には人も無く魔も無く
昼も無く夜も無い
昼も無く夜も無い
終わる 彼の世界が終わる
(醒めない悪夢なんかないさ。伯爵)
彼の世界が終わる 彼の世界が飛散する
◇
全てを消し去る光の中
イチローの脳裏に最後に浮かんだのは
自分が世界一愛する場所、野球場の景色だった。
イチローの脳裏に最後に浮かんだのは
自分が世界一愛する場所、野球場の景色だった。
超満員のスタジアム、ファン達の声援、掛け替えないチームメイトたち
そうだ。ここから帰ったら、かがみさんを試合に招待しよう。
彼女は喜んでくれるだろうか。笑ってくれるだろうか。
彼女は喜んでくれるだろうか。笑ってくれるだろうか。
(そうだ……僕は帰らなければ……僕が戦うべき球場に……僕がいるべき場所に……)
そんな彼の望みを、全てを、天地乖離す開闢の星は飲み込み、消し去っていく。
◇
戦いが終わった後の、台東区の一角。
そこには何も残っていなかった。人も、街も、戦いの痕すらも。
そこには何も残っていなかった。人も、街も、戦いの痕すらも。
ただ一つ、この圧倒的な破壊を齎した原因である乖離剣エアだけが、無傷のまま更地に残されていた。
【台東区/一日目・夕方】
【アーカード@HELLSING 死亡確認】
【イチロー@実在の人物 死亡確認】 残り46名
【イチロー@実在の人物 死亡確認】 残り46名
※台東区の一角(地図の6-Ⅳの辺り)が壊滅しました。
※アーカードとイチローの死体、首輪、支給品は消滅しました。
※乖離剣エア@Fate stay nightが放置されています。
※アーカードとイチローの死体、首輪、支給品は消滅しました。
※乖離剣エア@Fate stay nightが放置されています。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺はずっとトイレに篭っていた。
吐き気と便意のダブルパンチに襲われてたし、正直これからどう動けばいいか決めあぐねてたからな。
吐き気と便意のダブルパンチに襲われてたし、正直これからどう動けばいいか決めあぐねてたからな。
最初は地震かと思った。俺のいるトイレがガタガタと揺れ始めたからだ。
「こ、今度はなんなんだ一体!?」
便座にしがみついて耐えながら、俺は揺れが収まるのを待った。
便座にしがみついて耐えながら、俺は揺れが収まるのを待った。
揺れが収まった後、トイレの扉を開けた俺は仰天した。
さっきまでたしかにあったファミレスが、ちょうど俺が篭ってたトイレの直前で
まるで竜巻に吹き飛ばされたように消滅していたからだ。
さっきまでたしかにあったファミレスが、ちょうど俺が篭ってたトイレの直前で
まるで竜巻に吹き飛ばされたように消滅していたからだ。
何が起こったのかわからない。
俺はしばらくバカみたいに突っ立って消え去った店内を眺めていた。
俺はしばらくバカみたいに突っ立って消え去った店内を眺めていた。
【台東区・ファミレス跡地/一日目・夕方】
【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】驚愕
【装備】団長腕章@らき☆すた
【道具】支給品一式、ランダム品0~2(本人確認済み)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出
0:なぁにこれぇ……
1:早急にハルヒを探して、合流する。
【備考】
※ハルヒがこの会場にいないことに気付いていません。
【状態】驚愕
【装備】団長腕章@らき☆すた
【道具】支給品一式、ランダム品0~2(本人確認済み)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出
0:なぁにこれぇ……
1:早急にハルヒを探して、合流する。
【備考】
※ハルヒがこの会場にいないことに気付いていません。
――――遠くで大きな音がした。
なぜ私はこんな所にいるのだろう。
私は誰かの背中で揺られている。
今私が感じるのは、日光が肌を灼く痛みと、激しい渇き。
そして自分を背負って走っている男の荒い息と、心臓の鼓動、鼓動とともに流れる、その――
なぜ私はこんな所にいるのだろう。
私は誰かの背中で揺られている。
今私が感じるのは、日光が肌を灼く痛みと、激しい渇き。
そして自分を背負って走っている男の荒い息と、心臓の鼓動、鼓動とともに流れる、その――
「な、なんだよ今の音は……!」
イチローから託されたかがみを背負って走る6/の耳にも、乖離剣による破壊の音は届いていた。
「クソッ……イチロー、どうか無事でいてくれ……!」
限界を越えてもつれそうになる足をなんとか動かし、6/は走り続ける。
その背中で、かがみの体が小さく動いた。
「……っ……う……」
「!! おい!目が覚めた――――」
かがみが意識を取り戻したことに気づいて振り返ろうとする6/
その首筋に痛みが走った。
同時に、体から力が抜けていく。
「え……?」
走ることはおろか立つことすらできず、6/は地面に倒れこむ。
「か……は……」
意識が消える瞬間、彼が見たものは
自分の首筋に鋭い牙を突きたてて血を啜る柊かがみの姿だった。
イチローから託されたかがみを背負って走る6/の耳にも、乖離剣による破壊の音は届いていた。
「クソッ……イチロー、どうか無事でいてくれ……!」
限界を越えてもつれそうになる足をなんとか動かし、6/は走り続ける。
その背中で、かがみの体が小さく動いた。
「……っ……う……」
「!! おい!目が覚めた――――」
かがみが意識を取り戻したことに気づいて振り返ろうとする6/
その首筋に痛みが走った。
同時に、体から力が抜けていく。
「え……?」
走ることはおろか立つことすらできず、6/は地面に倒れこむ。
「か……は……」
意識が消える瞬間、彼が見たものは
自分の首筋に鋭い牙を突きたてて血を啜る柊かがみの姿だった。
◇
吸血鬼に咬まれたものは吸血鬼になる。
吸血鬼の存在とともに世界中に伝わっているこの伝承の通りに
アーカードによって吸血されながら生き長らえた少女、柊かがみは呪わしい夜の住人として黄泉返った。
吸血鬼の存在とともに世界中に伝わっているこの伝承の通りに
アーカードによって吸血されながら生き長らえた少女、柊かがみは呪わしい夜の住人として黄泉返った。
「…………」
吸血鬼となったかがみはその本能に従い
渇きを癒すために6/の血を吸い続ける。
吸血鬼となったかがみはその本能に従い
渇きを癒すために6/の血を吸い続ける。
血とは魂の通貨、命の貨幣。
血液と同時に、6/の記憶もまたかがみの中に流れ込んでくる。
血液と同時に、6/の記憶もまたかがみの中に流れ込んでくる。
パロロワ
書き手
一般人
怪物
マーダー
対主催
支給品
制限
書き手
一般人
怪物
マーダー
対主催
支給品
制限
「ぱ……ろろ……ワ?」
6/の血を吸った際に一緒に吸収した言葉を、思わず呟く。
しかしそれはまだ曖昧な彼女の意識の中で意味を持つことはない。
6/の血を吸った際に一緒に吸収した言葉を、思わず呟く。
しかしそれはまだ曖昧な彼女の意識の中で意味を持つことはない。
朦朧とした頭でかがみは考える。
自分の目の前で倒れている男は誰だろう。
なぜ夕陽を浴びると、体中がこんなに痛むのだろう。
そして自分の口の中に広がっている、この味は――
自分の目の前で倒れている男は誰だろう。
なぜ夕陽を浴びると、体中がこんなに痛むのだろう。
そして自分の口の中に広がっている、この味は――
「…………」
吸血によって意識を失った6/を放置したまま、かがみは身を焦がす太陽から逃れて日陰に移った。
暗がりに隠れると、彼女は自分の事を思い出す。
私は◆6/WWxs9O1s
違う
私は柊かがみ
鷹宮神社の娘で家族は父と母と二人の姉と双子の妹
友人は……
私は◆6/WWxs9O1s
違う
私は柊かがみ
鷹宮神社の娘で家族は父と母と二人の姉と双子の妹
友人は……
「こなた…………こなたに会わなくちゃ」
自分の体に起きた異常を正確に理解しないまま
かがみは出来るだけ日の光の当たらない道を選んで歩き始める。
約束の地は近い。すでに目と鼻の先だ。
かがみは出来るだけ日の光の当たらない道を選んで歩き始める。
約束の地は近い。すでに目と鼻の先だ。
もうすぐ夜が訪れる。彼女がなってしまったモノたちの時間が。
少女はおぼつかない足取りのまま、闇の奥へと進み続けていった。
少女はおぼつかない足取りのまま、闇の奥へと進み続けていった。
【台東区・秋葉原/一日目・夕方】
【◆6/WWxs9O1s@カオスロワ書き手】
[状態]:吸血による大量失血、意識不明、疲労(極大)
[装備]:拡声器
[道具]:ゴーカイジャのフィギュア@現実、豚でもわかる!風水大全~方位編~@現実?、同人誌、基本支給品一式
[思考・状況]
基本:主催者を倒しこの物語を『HAPPY END』にする
0:…………
※国会議事堂で、一部人外参加者の姿を確認しています
※豚でもわかる!風水大全~方位編~@現実?はまったく読んでいません。
※『パロロワ』に関する最低限の知識はすべて持っています。
※『アニメ』などに関する知識には制限かかけられているようですが、状況によっては思い出すかもしれません。
※自分の名前を『◆6/WWxs9O1s』と思っていますが、それに違和感を感じています。
※KAITOからガチャピンが危険人物だと聞きましたが疑っています 。
※参加者は並行世界から呼ばれたのではないかと推測しています。
※KAITOの世界の事を聞きました。
※吸血鬼(柊かがみ)に吸血されました。吸血による影響は次の方に任せます。
[状態]:吸血による大量失血、意識不明、疲労(極大)
[装備]:拡声器
[道具]:ゴーカイジャのフィギュア@現実、豚でもわかる!風水大全~方位編~@現実?、同人誌、基本支給品一式
[思考・状況]
基本:主催者を倒しこの物語を『HAPPY END』にする
0:…………
※国会議事堂で、一部人外参加者の姿を確認しています
※豚でもわかる!風水大全~方位編~@現実?はまったく読んでいません。
※『パロロワ』に関する最低限の知識はすべて持っています。
※『アニメ』などに関する知識には制限かかけられているようですが、状況によっては思い出すかもしれません。
※自分の名前を『◆6/WWxs9O1s』と思っていますが、それに違和感を感じています。
※KAITOからガチャピンが危険人物だと聞きましたが疑っています 。
※参加者は並行世界から呼ばれたのではないかと推測しています。
※KAITOの世界の事を聞きました。
※吸血鬼(柊かがみ)に吸血されました。吸血による影響は次の方に任せます。
【柊かがみ@らき☆すた】
【状態】:吸血鬼化、意識朦朧、左手骨折(回復中)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式
【思考】
1:こなたに会うために秋葉原の電気街まで行く
2:太陽光が痛いので日陰を進む
※吸血鬼化しました。
※◆6/WWxs9O1sから吸血の際に何か知識を得たかもしれません。
【状態】:吸血鬼化、意識朦朧、左手骨折(回復中)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式
【思考】
1:こなたに会うために秋葉原の電気街まで行く
2:太陽光が痛いので日陰を進む
※吸血鬼化しました。
※◆6/WWxs9O1sから吸血の際に何か知識を得たかもしれません。
| 070:今は悪魔より主婦が微笑む時代なんだ! | 投下順 | 072:[[]] |
| 070:今は悪魔より主婦が微笑む時代なんだ! | 時系列順 | : |
| 068:パロロワ考察 | ◆6/WWxs9O1s | :[[]] |
| 068:パロロワ考察 | アーカード | 死亡 |
| 057:それは小さな祈りなの | 柊かがみ | :[[]] |
| 057:それは小さな祈りなの | イチロー | 死亡 |
| 057:それは小さな祈りなの | キョン | :[[]] |