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テラカオスバトルロワイアル外伝
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それは小さな祈りなの

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台東区の路上を歩く一組の男女。
ユニフォーム姿の男性と制服姿の少女の組み合わせというどこか不釣合いなそのペアは、少女――柊かがみの希望により秋葉原に向けて歩を進めていた。
先行する男性――イチローは周囲を警戒しつつも、時折振り返ってはかがみの様子を確認している。
今のところ周囲に参加者がいる気配はない。だが、イチローには一つ気になることがあった。

(……やはり、かがみさんの歩くペースが落ちてきている)

そう、目的地である秋葉原が存在する千代田区を目の前にして、かがみの歩くペースが落ち始めたのだ。
状況的にも移動距離的にも、ただの女子高生であるかがみには相当な心労と疲労が溜まっているはずだが、かがみがそれを口に出すことはない。
理由は勿論、少しでも早くこなたに会いたいからだ。
休息を入れたらその間にこなたの身に危険が及ぶかもしれない。
自分はイチローという信頼できる人間と最初に遭遇することができたが、こなたはそうとは限らない。
早くこなたに会って、その無事を確認したい。その思いがかがみを歩かせていた。
だが、口に出さないからといって周囲にそれがバレないというわけではない。
イチローはかがみの表情から、その身に蓄積した疲労の程度を見抜いていた。

(僕と会う前は友達を探して走り回っていたそうだし、何よりこの殺し合いという状況。
 一般の女子高生の彼女には少し厳しい環境だ。……そろそろ休息を入れたほうがいいかもしれないな。
 本当は彼女が言い出すのを待つつもりだったんだけど)

当初はかがみが休息を申し出るまでは歩き続けようと考えていたイチローだったが、かがみは思いの外強情だった。
このまま進めば秋葉原に到着するまで、もしくは秋葉原の探索中にかがみはバテてしまうだろう。
軽い疲労は休息で解消されるが、重い疲労は翌日翌々日まで響く可能性がある。
それならば、疲労が軽いうちに休息を取るべきだと言えるだろう。
この殺し合いは少なくとも一日では終わらないであろうから。
そう考え、イチローは周囲の警戒を怠ることなくかがみに声をかける。

「……かがみさん、大丈夫かい? どこか近くの屋内で休憩をとろうか?」
「だ、大丈夫です! これぐらいなら大丈夫ですから……」

慌ててイチローの申し出を断るかがみだったが、その声には明らかに元気がない。
もうこれ以上は厳しいか。そう判断し、イチローは歩みを止めてかがみに向き直る。

「かがみさん、友達――こなたさんだったかな。こなたさんを早く探しだして合流したいという気持ちはすごくよくわかるよ。
 でもね、それはかがみさん自身を蔑ろしていい理由にはならないと思うんだ。
 かがみさんがこなたさんを大切に思っているように、きっとこなたさんもかがみさんを大切に思っているはずだ。
 だったら、かがみさんは出来る限り良好なコンディションを保つべきだよ。
 こなたさんと再会したとき、見せるのは疲れた顔よりも笑顔のほうがいいだろう?」
「で、でも! 休憩してる間にこなたが誰かに襲われるかもしれないじゃないですか!?」

イチローが諭すが、かがみはなおも食い下がる。
それも当然だ、とイチローは思った。でも、かがみは一つ重要な事実を忘れている。
この状況下で一般の女子高生に落ち着けというのも無理な話だが、落ち着いていなければ掴める物も掴めなくなってしまう。
だからイチローは、食い下がるかがみの言葉を斬って捨てる。

「うん、たしかにそれは十分あり得ることだ。
 でも、僕達はこなたさんが秋葉原を目指すことはわかっているけど、こなたさんが今どこにいるのまでかはわからない。
 秋葉原で待っているこなたさんに会いに行く事や秋葉原でこなたさんを待つ事はできても、どこか別の場所にいるこなたさんを探しに行くことはほぼできないと言っていい。
 だから、もしそこでこなたさんが誰かに襲われていたとしても、僕達はどうすることもできないんだ。
 そんなことがありませんように、と祈ることはできてもね」
「そんな……」

イチローの言っていることは正論だ。だが、その正論がいつも万人に受け入れられるとは限らない。
かがみも、それを正論だと理解することはできても納得はできていないのだ。
今自分は納得できないことをかがみにさせようとしている。
落胆するかがみを見つめながら、イチローはその事実に胸の痛みを覚えた。
しかし、胸の痛みを覚えたとしても、イチローは自らやかがみ、その友達が生き残るために最善を尽くさなければならない。
故にイチローは更に言葉を重ねていく。

「それに、誰かに襲われるというのはこなたさんの身にだけではなくて僕達にも起こりうることなんだ。
 ……正直な話をするとね、僕は襲撃者が一人ならばなんとか撃退できるんじゃないかと考えている。
 でも、それが複数になると撃退するのは途端に難しくなってくるだろう。
 かがみさん。君には万が一複数人に襲われたとき、僕が襲撃者を食い止めている間にその場から逃げるための体力を残していてほしいんだ。
 逃げることさえできれば、再会のチャンスはいつか必ず巡ってくるはずだからね」
「イチローさん、それって!?」

かがみが驚くのも無理はない。
イチローが今言ったことは要するに『襲われたとき自分が犠牲になってかがみを逃がす』ということなのだ。

「大丈夫、僕だってそう簡単に死ぬつもりはない。
 もしそういう行動が必要になったとしたら、の話だよ。
 しっかり周囲を警戒すればそういう事態になるのを避けることは可能だしね」
「イチローさん……」

無論、生還を第一目的とするイチローが自分を犠牲にするようなことを言ったのには理由がある。
初めてかがみと会った時に彼女を怖がらせてしまったこと、そして今彼女に感情と反する行動を取らせようとしていることをイチローは後悔していた。
イチローの発言はその後悔の念から出たものであり、同時にかがみへのせめてもの罪滅ぼしのためのものだった。

「……わかりました。ごめんなさい、ワガママ言っちゃって」
「謝らなくても大丈夫さ。友達と早く再会したいと思うのは当然のことだからね。
 それじゃあ、どこかで休憩にしよう。適した建物があればいいんだけど……」

かがみの返答を聞いて、イチローは微笑んだ。
かがみが肯定した以上、彼女のためにも速やかに行動に移るべきだろう。
そう考え、イチローは周囲を見渡し休憩場所となる建物を探し始める。
イチローの言葉を聞いたかがみも、同様に周囲を見渡す。
すると、すぐ近くに有名ファミリーレストランの店舗があるのを発見できた。
一階部分が駐車場となっており、二階部分に店舗があるタイプだ。
あそこなら近づいてくる参加者を発見するのも容易であり、イスや机なども完備されている。
休憩場所にはうってつけと言えるだろう。

「うーん……あ、あのファミレスはどうですか?
 もしかしたら食べ物があるかもしれませんし」
「……」

ファミレスの方向を指さし、イチローに休憩場所の発見を伝えるかがみ。
だが、イチローからの返答はない。
不思議に思ったかがみがイチローの方を見ると、イチローは目を閉じて何かに集中しているようだった。
何かあったのだろうか。かがみがイチローの顔を覗き込んだ、その瞬間――

「……イチローさん? ――きゃあっ!?」

かがみは、イチローに抱きかかえられていた。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆

俺は人っ子一人いない閑散とした街の中を全力疾走とはいかないまでも、それなりの速度で走っていた。
なんで走ってるのかって? そりゃああんな状態になった死体を見ちまったからさ。
残念ながら俺はあれを見てその場の調査を続けられる程豪胆でもないし、落ち着いていられる程冷静でもない。
それに、あの死体があるとわかってるのに国会議事堂の近くにいるのも気分が悪い。思い出しちまうからな。
そんなわけで、俺は国会議事堂を飛び出して闇雲に走り回っているのだ。
こういう時はハルヒが羨ましくなるね。あいつなら……って、さすがに人死にが出たとなればあいつでも自重するか。
あの孤島での出来事のときもそうだったしな。あの時は古泉や機関の面々が仕組んだ茶番劇で、今回みたいに本当に人が死んだわけではないが。
ハルヒ、か。あいつは今どこにいるんだろうな。
出会った参加者を無理やりSOS団名誉団員にでもしてるのか、イライラを募らせて閉鎖空間を発生させているのか、それとももうさっきの死体みたいに――

「…………うっ!」

再来する吐き気に思わず足を止める。
くそっ、俺は何を考えてるんだ。あの天上天下唯我独尊縦横無尽天元突破な団長様がこんなところで簡単に死ぬわけがないだろうが。
ああ、さっきのあれを思い出したせいでまた吐き気が……。
とにかく、今はハルヒを探す必要がある……んだが、あいつがどこにいるのかがさっぱりわからん。
あいつの性格からして一人でいるってことはないだろうが……行きそうな場所となるとこの東京都内には候補になる名所が多すぎる。
その中の一つで待ち伏せする手もあるにはあるが、来なかったときのリスクがデカいからこれは却下。
そうなると必然的に移動する必要が出てくるわけだが、果たして俺はどこに行くべきか。いや、どう動くべきか、だな。
決めなきゃならんことや確認しなきゃならんことは大量にある。だが、まずはその前に――

「……気持ち悪い……もういっそのことどっかのトイレで吐いちまうか……」

体調を整える必要がありそうだ。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆

「急に抱きかかえるなんて……ビックリしましたよ!?」
「いやぁ、ごめんごめん。
 誰かが走ってくる足音が聞こえたから、見つかる前に隠れようと思ってね」

階段を上がってきたかがみが抗議の声をあげ、窓際に立つイチローがそれを笑顔で受け流す。
二人はファミレスの丁度向かい側に存在する建物に身を隠していた。
その類稀なる聴力で参加者――キョンの接近を感じ取ったイチローは、かがみを抱きかかえ建物の中に飛び込んだのだ。
キョンが姿を現したのと二人が建物に飛び込んだのはほぼ同時であり、かがみを抱きかかえず二人で走って隠れようとしたならばキョンに発見されていたはずだ。
もっとも、キョンは殺し合いに乗っているわけではないため発見されても争いが起こる可能性は低かったのだが、二人はその事実を知らないのだからしょうがない。
殺し合いに乗っている参加者の可能性もあったのだから、イチローの判断は正しかったと言える。

「それに、少し恥ずかしかったです……って、そうだ。さっきの人は?」
「急に立ち止まったあと、あのファミレスに入っていったよ。
 見たところ、少し顔色が悪かったね。かがみさんと同年代ぐらいだったと思う。
 殺し合いに乗っているようには感じなかったけど……さて、どうしようか」
「どうしようかって……あの男の人と接触するかどうかってことですか?」
「うん、殺し合いに乗っていなければ情報交換をしたりしたいところだけど、乗っていたら厄介だからね。
 僕としてはもう少し様子を見ておきたいな。ただ、それだと動き出すのが遅れてしまうんだけど……かがみさんはそれでもいいかな?」
「はい、大丈夫です。もしかしたらあの人がどこかでこなたを見かけてるかもしれませんし……」
「ありがとう、かがみさん。それじゃあ、しばらく張り込みといこうか」
「はい!」

イチローに返事しながら、かがみは想う。愛しき友達のことを。

(今、あんたがどこにいるのかはわからない。
 イチローさんが言ってたみたいに、今は祈ることしかできないかもしれない。
 だったら、私は祈り続ける。私は無事だから、あんたも無事でいなさいよ、こなた!)

秋葉原は目と鼻の先。今はちょっとの小休止。
少女は祈りを捧げるけども、祈りの相手は既に亡く。
悲しき再会の時は、刻一刻と近づいていた。

【台東区・建物内/一日目・午後】
【イチロー@実在の人物
【状態】:健康、決意
【装備】:イチローの野球道具(バットとグローブ)@現実、野球ボール×15個@現実
【道具】:基本支給品一式
【思考】
基本:チームの元に帰る。その為に主催者を倒す
1:かがみとともに秋葉原に向かう
2:主催者を倒すために仲間を集める。
3:あの少年を監視する。スタンスによっては接触を試みる。
4:ゲームに乗った人間はレーザービーム
※レーザービームの威力に制限が課せられています。また身体能力にも若干制限あり?



【柊かがみ@らき☆すた
【状態】:精神的疲労(中)、殺し合いに対する恐怖
【装備】:乖離剣エア@Fate stay night
【道具】:基本支給品一式
【思考】
基本:死にたくない。もとの日常に戻りたい
1:こなたと合流するためにイチローとともに秋葉原を目指す
2:殺し合いには乗りたくないし、殺されたくない
3:あの男の娘がこなたを見かけていたらいいんだけど……  
※乖離剣エアを変な剣としか思っていません



【台東区・建物内/一日目・午後】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】少々のパニック、吐き気
【装備】団長腕章@らき☆すた
【道具】支給品一式、ランダム品0~2(本人確認済み)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出
1:早急にハルヒを探して、合流する。
2:まずは体調を整える。
【備考】
※ハルヒがこの会場にいないことに気付いていません。


056:パルマーC「強いられているんだ!」 投下順 058:狩は人々の愉しみ
056:パルマーC「強いられているんだ!」 時系列順 058:狩は人々の愉しみ
030:過程と結末と望むモノ イチロー 071:Dead END
030:過程と結末と望むモノ 柊かがみ 071:Dead END
034:国会見学とか正直一つたりとも記憶に残ってねェ キョン 071:Dead END

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