昨夜、草木も眠る丑三つ時、永琳の寝室に現れたのはレミリアだった。
人目を忍んで訪れたレミリアが永琳に依頼したのは、『おねしょを治す』薬。
前日にやらかしてしまい、その時は上手く隠して事無きを得たのだが、
自らのカリスマにかけてそんな失態は館の皆に見せられない。
羞恥と熱意で顔を赤くしながら頼むレミリアに、永琳は寝ぼけ眼で応じると、調薬をした。
そして今はその結果を見るために、日暮の道を紅魔館へと歩いていた。
が、そんな永琳が目にしたのは……おねしょの布団を物干しにかけるレミリアの姿だった。
永琳「な……に、何が……どうしたの……?まさか私と同じ薬が効かない体質……!?」
レミィ「!?みっ……見ないで!見ちゃダメ!」
自らの調合した薬が効かなかった事に愕然とする永琳、
全力で隠すつもりだった布団を見られてしまい赤面して顔を隠すレミリア。
そしてレミリアの上げた可愛い悲鳴に応えて、館内から住人が姿を現す。
パチェ「何があったのレミィ!?」
咲夜「大丈夫ですかお嬢様ッ!?」
美鈴「はっ、寝ている間に敵が内側に!?」
現れた三人も布団を見て、あまりの事に動きを止めてしまう。
その間に、永琳は早くもショックから立ち直っていた。
永琳「(えぇとつまり、おねしょ……『夜尿症』を治すために
昼間出て夜出ないように調薬しちゃった……って事ね、これは)」
昨夜の調合内容はうろ覚えだったが、万全を期すために
睡眠状態ではなく外部の時間に応じて『出なくする』よう薬を調整した。
だがレミリアの睡眠は、夜ではなく昼だった。
つまり結果的におねしょ促進薬だったのだ。
永琳「(そっかー……でもこんな敵地の真ん中で、そんな事言うのもねぇ)」
レミィ「(な、なんで皆が出てきちゃうのよっ……とりあえず……)
こほん、みんな、落ち着いて。これはただの世界地図よ!」
パチェ・美鈴「(がびんっ)」
レミリアのあんまりな言い逃れに場の空気が再度凍りつく。
(ザッ)
そこに近寄る足音、五人が一斉に顔を向けた。
JS「本日の東方ファイトを開始します。今日のお題は……『詫びる』こと。
大した手間でもありませんし、すぐ終わる勝負でしょう」
永琳・レミィ「(くっ……)」
言い出し辛くなっていた永琳も、とりあえずの言い逃れをしてしまったレミリアも、
このファイト開始により逆に詫び辛くなってしまう。
永琳「(まさか助け舟のつもり?でも、今更はいそうですかなんて言えないわ)」
レミィ「(これじゃ笑って誤魔化すなんて手も取れないじゃない……!)」
誰がどう見ても何を詫びるべきか解り易いレミリアに対して、永琳の側は不明だ。
しかもわざわざやって来ている。これは更に怪しいと、紅魔館住人の視線が向けられる。
だが永琳が詫びれば、それはそれでレミリアは困った事になる。
今のところ自らのプライドのため詫びる気配を見せていないが、万が一という事もある。
レミィ「――わかったわ……詫びる……私が謝るわよッ!」
永琳に意識を向けていた三人は、レミリアの声に呆気に取られる。
そしてそれは永琳もだった。確かに誤魔化し様も無いが、カミングアウトしてしまうのか、と。
レミィ「……寝ていたらね、夢を……見たの」
俯き、肩を落とし、力なく呟くレミリアだったが、その言葉には横から口を挟ませない何かがあった。
レミィ「……パチェが……咲夜が……フランが……皆が、紅魔館から居なくなって……
目が覚めたら、私一人だけで……外に出ても誰も居なくて……。
何処まで夜空を飛んでも、誰も居ない、灯り一つない……そんな、夢」
訥々と語る言葉に全員が聞き入る。
俯いていたレミリアが、瞳を潤ませてその顔を上げた。
レミィ「……格好悪いじゃない、私が……寂しくて、布団の中で丸まって泣いてたなんて……!」
声を詰まらせ、吐き捨てるように語り終えたレミリアを、三人が落涙しながら抱き締めた。
パチェ「大丈夫よ、ずっとずっと、あなたの側に居るんだから……」
咲夜「その通りです、この十六夜咲夜、お嬢様がお呼びとあらば地獄からでも馳せ参じます!」
美鈴「門番は門だけじゃ無意味なんです、中にはちゃんとお嬢様が居てくださらないと……!」
レミィ「みんな……ゴメンね、本当に……騙してゴメン……」
涙を流しながら抱き合う主従四人の姿を、一歩離れて見守る二人。
永琳「……いつもの白黒はっきり、じゃないの?」
JS「さあ、それは閻魔の仕事、私の興味はファイトにのみあります。
そしてこの分では、今日のファイトはどうやら決着したようです。
……よもや今更、何も言う事など無いでしょうね?」
永琳「いいえ、何もありませんわ」
人目を忍んで訪れたレミリアが永琳に依頼したのは、『おねしょを治す』薬。
前日にやらかしてしまい、その時は上手く隠して事無きを得たのだが、
自らのカリスマにかけてそんな失態は館の皆に見せられない。
羞恥と熱意で顔を赤くしながら頼むレミリアに、永琳は寝ぼけ眼で応じると、調薬をした。
そして今はその結果を見るために、日暮の道を紅魔館へと歩いていた。
が、そんな永琳が目にしたのは……おねしょの布団を物干しにかけるレミリアの姿だった。
永琳「な……に、何が……どうしたの……?まさか私と同じ薬が効かない体質……!?」
レミィ「!?みっ……見ないで!見ちゃダメ!」
自らの調合した薬が効かなかった事に愕然とする永琳、
全力で隠すつもりだった布団を見られてしまい赤面して顔を隠すレミリア。
そしてレミリアの上げた可愛い悲鳴に応えて、館内から住人が姿を現す。
パチェ「何があったのレミィ!?」
咲夜「大丈夫ですかお嬢様ッ!?」
美鈴「はっ、寝ている間に敵が内側に!?」
現れた三人も布団を見て、あまりの事に動きを止めてしまう。
その間に、永琳は早くもショックから立ち直っていた。
永琳「(えぇとつまり、おねしょ……『夜尿症』を治すために
昼間出て夜出ないように調薬しちゃった……って事ね、これは)」
昨夜の調合内容はうろ覚えだったが、万全を期すために
睡眠状態ではなく外部の時間に応じて『出なくする』よう薬を調整した。
だがレミリアの睡眠は、夜ではなく昼だった。
つまり結果的におねしょ促進薬だったのだ。
永琳「(そっかー……でもこんな敵地の真ん中で、そんな事言うのもねぇ)」
レミィ「(な、なんで皆が出てきちゃうのよっ……とりあえず……)
こほん、みんな、落ち着いて。これはただの世界地図よ!」
パチェ・美鈴「(がびんっ)」
レミリアのあんまりな言い逃れに場の空気が再度凍りつく。
(ザッ)
そこに近寄る足音、五人が一斉に顔を向けた。
JS「本日の東方ファイトを開始します。今日のお題は……『詫びる』こと。
大した手間でもありませんし、すぐ終わる勝負でしょう」
永琳・レミィ「(くっ……)」
言い出し辛くなっていた永琳も、とりあえずの言い逃れをしてしまったレミリアも、
このファイト開始により逆に詫び辛くなってしまう。
永琳「(まさか助け舟のつもり?でも、今更はいそうですかなんて言えないわ)」
レミィ「(これじゃ笑って誤魔化すなんて手も取れないじゃない……!)」
誰がどう見ても何を詫びるべきか解り易いレミリアに対して、永琳の側は不明だ。
しかもわざわざやって来ている。これは更に怪しいと、紅魔館住人の視線が向けられる。
だが永琳が詫びれば、それはそれでレミリアは困った事になる。
今のところ自らのプライドのため詫びる気配を見せていないが、万が一という事もある。
レミィ「――わかったわ……詫びる……私が謝るわよッ!」
永琳に意識を向けていた三人は、レミリアの声に呆気に取られる。
そしてそれは永琳もだった。確かに誤魔化し様も無いが、カミングアウトしてしまうのか、と。
レミィ「……寝ていたらね、夢を……見たの」
俯き、肩を落とし、力なく呟くレミリアだったが、その言葉には横から口を挟ませない何かがあった。
レミィ「……パチェが……咲夜が……フランが……皆が、紅魔館から居なくなって……
目が覚めたら、私一人だけで……外に出ても誰も居なくて……。
何処まで夜空を飛んでも、誰も居ない、灯り一つない……そんな、夢」
訥々と語る言葉に全員が聞き入る。
俯いていたレミリアが、瞳を潤ませてその顔を上げた。
レミィ「……格好悪いじゃない、私が……寂しくて、布団の中で丸まって泣いてたなんて……!」
声を詰まらせ、吐き捨てるように語り終えたレミリアを、三人が落涙しながら抱き締めた。
パチェ「大丈夫よ、ずっとずっと、あなたの側に居るんだから……」
咲夜「その通りです、この十六夜咲夜、お嬢様がお呼びとあらば地獄からでも馳せ参じます!」
美鈴「門番は門だけじゃ無意味なんです、中にはちゃんとお嬢様が居てくださらないと……!」
レミィ「みんな……ゴメンね、本当に……騙してゴメン……」
涙を流しながら抱き合う主従四人の姿を、一歩離れて見守る二人。
永琳「……いつもの白黒はっきり、じゃないの?」
JS「さあ、それは閻魔の仕事、私の興味はファイトにのみあります。
そしてこの分では、今日のファイトはどうやら決着したようです。
……よもや今更、何も言う事など無いでしょうね?」
永琳「いいえ、何もありませんわ」
結果:レミリアが『事実を隠すための嘘』を詫びたと判断され、レミリアの勝ち