「あやややや。これはもう勝ったようなものですね」
今回の勝負方法を知らされた文が拍子抜けしたような顔で言う。
「飛んでれば最速かもしれないけど、走ればどうかな?」
その発言に対して何か思うところがあるのか、妹紅が挑発的に返す。
「まぁ、ただ勝っても面白くありませんから、勝負の様子でも撮影しながら走るとしましょう」
最速の自負からか、さらに挑発で返す。
「いいですか? 今回の勝負はフルマラソンです。当然ですが飛行は禁止ですよ。
スペルカードは妨害目的で使わない限り自由です」
映姫から競技のルールが伝えられ、両者がスタートラインに並ぶ。
「それでは……スタート!!」
今回の勝負方法を知らされた文が拍子抜けしたような顔で言う。
「飛んでれば最速かもしれないけど、走ればどうかな?」
その発言に対して何か思うところがあるのか、妹紅が挑発的に返す。
「まぁ、ただ勝っても面白くありませんから、勝負の様子でも撮影しながら走るとしましょう」
最速の自負からか、さらに挑発で返す。
「いいですか? 今回の勝負はフルマラソンです。当然ですが飛行は禁止ですよ。
スペルカードは妨害目的で使わない限り自由です」
映姫から競技のルールが伝えられ、両者がスタートラインに並ぶ。
「それでは……スタート!!」
映姫の号令と同時にスタートし、文が即座に妹紅を引き離す。
「流石に言うだけのことはあるな……だが!!」
妹紅が早くもスペルカードを取り出して発動させると、周囲には爆発音が立て続けに響き、同時に熱風が吹き荒れる。
妹紅は足元で爆発を起こし、その爆圧を推進力に変えて走った。
この勝負のために『フジヤマヴォルケイノ』をアレンジしたスペルカード『ヴォルケイノダッシュ』だ。
「あややや……いきなりスペルカードですか」
振り向いた文がシャッターを切りながら呟く。
撮影のために停止した文との距離を一瞬で詰め、抜き去る。
抜かれながらも妹紅の後姿をしっかりと撮影するあたりは記者魂なのだろうか……。
「さて、少し真面目に走りますか」
撮影を終えた文は、小さくなった妹紅の後姿を眺めながら呟く。かなり離されたが、ヴォルケイノの継続時間は尽きてるようだ。
文は少しだけ重心を前に投げ出し、次の瞬間にはスタート直後とは比較にならないスピードで妹紅を追いかける。
実は、文が普段から履いてるあの靴がポイントである。
巷でよく知られている天狗は一本歯の下駄を履いていることが多い。一見すると走るどころか歩くのにも不自由しそうな形状をしているが、重心移動を極めた者にとっては少ない労力でかなりの速度を出すことができ、さらにオフロードすらも踏破できる理想的な履き物なのだ。
普段からそのような靴を履いている文にとっては『もうこれ以外は履けない』といっても過言でないぐらいの代物である。
「流石に言うだけのことはあるな……だが!!」
妹紅が早くもスペルカードを取り出して発動させると、周囲には爆発音が立て続けに響き、同時に熱風が吹き荒れる。
妹紅は足元で爆発を起こし、その爆圧を推進力に変えて走った。
この勝負のために『フジヤマヴォルケイノ』をアレンジしたスペルカード『ヴォルケイノダッシュ』だ。
「あややや……いきなりスペルカードですか」
振り向いた文がシャッターを切りながら呟く。
撮影のために停止した文との距離を一瞬で詰め、抜き去る。
抜かれながらも妹紅の後姿をしっかりと撮影するあたりは記者魂なのだろうか……。
「さて、少し真面目に走りますか」
撮影を終えた文は、小さくなった妹紅の後姿を眺めながら呟く。かなり離されたが、ヴォルケイノの継続時間は尽きてるようだ。
文は少しだけ重心を前に投げ出し、次の瞬間にはスタート直後とは比較にならないスピードで妹紅を追いかける。
実は、文が普段から履いてるあの靴がポイントである。
巷でよく知られている天狗は一本歯の下駄を履いていることが多い。一見すると走るどころか歩くのにも不自由しそうな形状をしているが、重心移動を極めた者にとっては少ない労力でかなりの速度を出すことができ、さらにオフロードすらも踏破できる理想的な履き物なのだ。
普段からそのような靴を履いている文にとっては『もうこれ以外は履けない』といっても過言でないぐらいの代物である。
行程も半分を過ぎて折り返し地点の守矢神社。文が文字通り疾風のような勢いで妹紅に迫る。
ヴォルケイノの疲労があるのか、妹紅は少しペースを落としている。
「これは二重の意味でチャンスです!」
再びカメラを取り出してさらに加速する。
「最速の記者が蓬莱人を追い抜く瞬間を、今!!」
自分で実況しながらカメラを妹紅に向けてファインダーを覗く。
すると、妹紅の姿が視界から消失し、代わりに巨大なオンバシラが文の視界を埋め尽くす。
砲弾が直撃したかのような音を立ててオンバシラが傾く。
「いたたたたた……もうちょっと曲がりやすいコースにできなかったんですか?」
「あーうー。生身で走ってコースアウトする方がおかしいんだって。さっさとコースに復帰しなよ」
見れば、妹紅は本日二発目のヴォルケイノでキロメートル単位の距離を稼いでいる。
気を取り直して文が追うも、ラストスパートとでも言わんばかりに継続時間を延ばしているためになかなか距離を詰める事ができない。
ここに至って初めて文は気付いた。考えて見れば相手は蓬莱人。中途半端に命を削るよりも、いっそ生命力を使い果たしてリザレクションした方が結果的に速いのか……。
ヴォルケイノの疲労があるのか、妹紅は少しペースを落としている。
「これは二重の意味でチャンスです!」
再びカメラを取り出してさらに加速する。
「最速の記者が蓬莱人を追い抜く瞬間を、今!!」
自分で実況しながらカメラを妹紅に向けてファインダーを覗く。
すると、妹紅の姿が視界から消失し、代わりに巨大なオンバシラが文の視界を埋め尽くす。
砲弾が直撃したかのような音を立ててオンバシラが傾く。
「いたたたたた……もうちょっと曲がりやすいコースにできなかったんですか?」
「あーうー。生身で走ってコースアウトする方がおかしいんだって。さっさとコースに復帰しなよ」
見れば、妹紅は本日二発目のヴォルケイノでキロメートル単位の距離を稼いでいる。
気を取り直して文が追うも、ラストスパートとでも言わんばかりに継続時間を延ばしているためになかなか距離を詰める事ができない。
ここに至って初めて文は気付いた。考えて見れば相手は蓬莱人。中途半端に命を削るよりも、いっそ生命力を使い果たしてリザレクションした方が結果的に速いのか……。
……
最速を語る天狗相手に予想外の圧倒ぶりを見せた妹紅を見て、スタート兼ゴール地点の博麗神社では観衆が総立ちになってスキマ中継を見つめていた。
しばらくすると、驚異的な持久力でヴォルケイノを維持した妹紅と『音速を超えよ!』とも言わんばかりの勢いで妹紅に迫った文が、観衆の肉眼でも確認できる距離まで接近した。
ゴール直前、マラソンとは思えぬ速度で並走しながら妹紅に語りかける。
「お互いに腹の探り合いみたいなことはやめて全力でゴールまで走りませんか?」
「乗った!!」
妹紅が提案に応じ、両者はさらに加速する。
ゴールラインまでの距離が五百メートルを切ったその時、ヴォルケイノで少しだけリードしていた妹紅が何かに躓いた。
なんと、観衆に紛れ込んだ永琳と輝夜がちょうど脛あたりの高さにロープを張っている。
文はこのチャンスを逃さず、妹紅が躓いた瞬間に後ろから一枚。ロープを飛び越えながら宙を泳ぐ妹紅を横から一枚。突っ伏した妹紅を片手で逆立ち気味に着地して正面から一枚。
神懸かった早業で計三枚の写真を撮るとそのまま前転して走り、一気にゴールラインを通過する。
しばらくすると、驚異的な持久力でヴォルケイノを維持した妹紅と『音速を超えよ!』とも言わんばかりの勢いで妹紅に迫った文が、観衆の肉眼でも確認できる距離まで接近した。
ゴール直前、マラソンとは思えぬ速度で並走しながら妹紅に語りかける。
「お互いに腹の探り合いみたいなことはやめて全力でゴールまで走りませんか?」
「乗った!!」
妹紅が提案に応じ、両者はさらに加速する。
ゴールラインまでの距離が五百メートルを切ったその時、ヴォルケイノで少しだけリードしていた妹紅が何かに躓いた。
なんと、観衆に紛れ込んだ永琳と輝夜がちょうど脛あたりの高さにロープを張っている。
文はこのチャンスを逃さず、妹紅が躓いた瞬間に後ろから一枚。ロープを飛び越えながら宙を泳ぐ妹紅を横から一枚。突っ伏した妹紅を片手で逆立ち気味に着地して正面から一枚。
神懸かった早業で計三枚の写真を撮るとそのまま前転して走り、一気にゴールラインを通過する。
「あやや……事前にお二人を買収しておいて正解でした」
あろうことか、文は勝負が始まる前に『妹紅が敗北する決定的瞬間で新聞の一面を飾る』という条件で輝夜に協力を要請していたのだ。
ちなみに、競技終了後に「誰も『観衆の買収を禁止する』なんてことは言ってませんよね?」と言って映姫を牽制することも忘れない。
きたない。さすが天狗きたない。
ちなみに、競技終了後に「誰も『観衆の買収を禁止する』なんてことは言ってませんよね?」と言って映姫を牽制することも忘れない。
きたない。さすが天狗きたない。
勝者:文