吸血鬼の朝が来た、絶望の夜だ  > 紅魔の夜の元、輝く緑 

吸血鬼の朝が来た、絶望の夜だ /紅魔の夜の元、輝く緑  ◆TDCMnlpzcc



午後三時。紅魔館。

紅い館に主人は帰還した。
主人は帰宅と同時にあたりを見渡す。

「咲夜」
「何でしょうか、お嬢様」

永遠に幼き紅き月、レミリア・スカーレット
完全で瀟洒な従者、十六夜咲夜。

大小二つの影が玄関ホールで足を止めた。

「臭いがきつくなってきたわ。片付けなさい」
レミリアはホールの片隅を指して命ずる。

指した先には八坂神奈子の死体。

朝の戦闘から約半日。
隅に転がる死体は人間には分からないほど、
されど吸血鬼には十分感じられる程度の臭気を放ち始めていた。

「かしこまりました」
言葉を発すると同時に、咲夜は何の戸惑いもなく死体に手を伸ばす。
何年間も悪魔の館で働き続けた賜物、死体も含めた掃除はお手の物だ。

「日が暮れるまでに終わらせなさい」
早速ホールの掃除を始めた咲夜に一瞥をくれた後、
レミリアはそう言葉を残し、階上へと消えていった。





「あとどれくらいで日は沈むのかしら」

数多ある紅魔館の部屋の中の一つ。
そこでレミリア・スカーレットは静かにくつろいでいた。

夕日が沈めば夜がくる。
これからの戦いに向けて精気を養っているのだ。

夕焼けの観賞と同時に、まだ見ぬ、されど生きてはいるはずの幾人かの人妖を想う。


紅美鈴、紅魔館の門番。
されど今門には人影がいない。

――生きているのに仕事を果たしに来ないとは。
レミリアはその忠誠心のなさを嫌悪する。
門番は門を守ってこそ門番、仕事をしに戻ってくるべきである。
狭い会場、半日もあれば紅魔館にたどり着くことなどたやすいはずだ。

フランドール・スカーレット、悪魔の妹。
どこをほっつき歩いているのか、何をしているのか、さっぱりわからない。

――せめてスカーレット家の名を汚していないといいわね。
もし、汚していたら。
意味もなく人妖とつるんだり、愚かに戦って敗れたり。
――そんな事をしていたら、家族の縁を切ることも考えるわね。
――とはいえ
――まさかそんなことはないと思うけどね。
あのフランが人間や妖怪と一緒に行動をしたり、
強い力と能力をもってして、無様に負けている姿は想像できない。

大方、虐殺の限りを尽くして、恐怖をばら撒いているのだろう。


そして、
博麗霊夢、永遠の巫女。
しばらく一緒にいたこともあり、その実力は分かっている。

弱くはない。
確かに力は弱い。
されど、何か天賦の才能があり、甘く見ているとやられるかも知れない。

――少なくとも能力に制限のある家のメイドよりは強いでしょうね。



「お嬢様、よろしいですか?」

その時、後ろのドアが開き十六夜咲夜が姿を現した。


「掃除は終わったの」
「はい、お休みのところ申し訳ありませんが、処遇を決めてもらいたいものがありまして」

そういって、咲夜は手に抱えた荷物をレミリアの前にぶちまけた。

広げられたのは幾つもの支給品、
有効利用すれば弱者でも強い力が手に入るものだが、
「あまり興味ないわね」
床に転がる道具達を一瞥する。
とはいえ、それらの中に使い勝手わかるようなものはほとんどない。
「要らないわ。好きに使いなさい」
「かしこまりました」

咲夜から目を放し、再び外に目を向ける。
日はさらに沈み、空は暗さを増してきた。

がたん、後ろで咲夜が部屋の戸を閉める。

咲夜の去ったことを確認して、
キスメをゆっくりと床に座らせる。

「キスメ見ていなさい」
傍らの遺体に声をかける。
「吸血鬼の力を見せてあげるわ」
高らかに嗤う。
「八雲だの博麗だの月人だの閻魔だの」
レミリアの眼に、体に力がこもる。


「みんな踏みにじってやる!!」


そのとき、太陽が地上から姿を消した。

【C-2  紅魔館二階・一日目 夕方】

【レミリア・スカーレット】
[状態]腕に深い切り傷(治療済)、背中に銃創あり(治療済)
[装備]霧雨の剣、戦闘雨具、キスメの遺体
[道具]支給品一式
[思考・状況]基本方針:威厳を回復するために支配者となる。もう誰とも組むつもりはない。最終的に城を落とす
 1.キスメの桶を探す。
 2.映姫・リリカの両名を最終的に、踏み躙って殺害する
 3.咲夜は、道具だ



 ※名簿を確認していません
 ※霧雨の剣による天下統一は封印されています。
 ※紅魔館レミリア・スカーレットの部屋は『物置』状態です




「さてと」
主人の部屋から退出すると、十六夜咲夜は息をついた。

――なかなか面白いものが手に入ったわね。
手元の支給品を見つめて、精査に移る。

一つ目、銃の弾が百発ほど。
弾をとりだしてナイフ型の銃に突っ込もうとしたが、うまく入らない。

「使えないわね。不良品かしら」
もしくは型が合わないのか、どちらにしろ使えないことに変わりはない。

二つ目、遠眼鏡。
随分とでかい。それが第一印象だ。
スイッチらしいものをたたくと、眼鏡の中の風景が緑に染まった。
――外の世界のおもちゃかしら。
性能は悪くないらしく、暗くて見にくかった廊下が鮮やかに染まって見える。
遠眼鏡のくせに遠くがよく見えないことは気に入らないが、使い勝手は良い。

見栄えに難ありだが、必要な時だけ使えばよいだろう。

珍しい緑色の世界を楽しんでいると、
「あれ?」
遠眼鏡に一筋の線が映る。
あわてて駆け寄ると、クモの糸のようなピアノ線が張ってあるのが分かった。

「危ないわね」

掃除をしていた時には見つからなかったのだが
――不覚ですわ、万一お嬢様がけがをしていたら・・・
早速罠の解除にかかる。
ちょうどいい道具があったことを思い出し、手元に注意を戻す。

三つ目、ペンチ。
これについては特にチェックすることもない。
一応武器が仕込まれていないか確認したが、ペンチはペンチ。

ちょきん、ピアノ線は床に垂れ下がった。

四つ目、白い箱。
箱を開けると、画面と文字盤が姿を現す。

「ケイタイとかいうやつかしら?」

確か遠くの人と話をする程度の能力を持つ外の道具だったはずだ。
が、説明書の類は付いておらず、使い方が分からない。


「あら、もうこんなに・・・」

咲夜がふと顔を上げると日は完全に姿を消していた。
闇に包まれた紅魔館。

そのとき、館中の時計が六時を告げた。


【C-2  紅魔館二階・一日目 夕方(放送開始直前)】

【十六夜咲夜】
[状態]健康
[装備]NRS ナイフ型消音拳銃(1/1)個人用暗視装置JGVS-V8 
[道具]支給品一式*5、出店で蒐集した物、フラッシュバン(残り2個)、死神の鎌
    NRSナイフ型消音拳銃予備弾薬17 食事用ナイフ・フォーク(各*5)
    ペンチ 白い携帯電話 5.56mm NATO弾(100発)
[思考・状況]お嬢様に従っていればいい
[行動方針]
1.お嬢様に従うことこそ、時間を潰さずにいられる手段だ
2.このケイタイはどうやって使うの?


※出店で蒐集した物の中に、刃物や特殊な効果がある道具などはない。
※食事用ナイフ・フォークは愛用銀ナイフの様な切断用には使えません、思い切り投げれば刺さる可能性は有

※紅魔館は咲夜によって掃除されました。注意深く見なければ戦闘の痕は分かりません。
(八坂神奈子、黒谷ヤマメの死体は片付けられ、血痕は落とされました)


134:平行交差 -パラレルクロス- 時系列順 137:通過の儀式/Rite of Passage
134:平行交差 -パラレルクロス- 投下順 136:リリカSOS
113:恐怖を克服するには―― レミリア・スカーレット 150:いたずらに命をかけて
113:恐怖を克服するには―― 十六夜咲夜 150:いたずらに命をかけて

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最終更新:2010年10月26日 23:35
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