おてんば恋娘とフュージョンしましょ? ◆Ok1sMSayUQ
「はっ!」
あたいはいつの間にか大の字になって寝ていた。
なんかぴかーっとしてきーんてなってどかーんとか、そんな感じの音がして夢の中にいい旅夢気分。
もう! もう少しで美味しいアレを食べられたのに!
ん、何か忘れてる気がする、何だっけ……ってあー!
「ききき来なさい人間! 今度こそあたいのルナティックをもちょーえつしたミラクルルナティック級の弾幕を……」
最近お昼寝が趣味の門番から学んだけんぽーの構えを取りつつメイドっぽい人間を探す。
が、周りには誰もなくどこまで見ても薄気味悪い墓石の群れがズラリ。
どうやら見逃し……あたいに恐れをなして逃げ出したらしい。
ふぅ、これもあたいのかります、ん、かりすまだったっけ? まぁとにかくあたいったら最強ねってことで。
「ふ、ふん。人間ごときにスペシャルルナティック弾幕を披露する手間が省けたってもんよ。あれ、ウルトラルナティックだったかな?」
面倒なので最強ルナティックということにしよう。最強だし。
まあ人間のことなんて今はどうでもいい。それよりもあたいにとって重大かつ重要な問題がある。それは……
「どこなのよ、ここ……やだなぁ、なんか陰気くさいし。寒いって言ってもなんか体の中が震える感じだし、気味悪いよ」
霧の湖の近くでもこんな場所は知らない。というかこんなところ妖精のいる場所じゃない。
とっとと戻ってカエルを凍らせる遊びでもしたいところなのだけど、どこをどう行けばいいのか分かんない。
べ、別にヤな雰囲気だったからビビって隠れてたわけじゃないのよ!
ついでに迷子でもないんだからね! ベソなんてかいてないやいっ!
誰もいないけど取り合えず言い訳。けどこうしてたって湖に戻れるわけじゃないし……
「どうしよう……そうだ、空よ! 空を飛べばいいんだわ! あたいったら天才ね!」
ここがどこか分からないなら空を飛べばいいじゃない。上から見下ろせばきっと霧の湖も見えるはず。
我ながらナイスアイデアだ。さっそく実行すべしすべし。
ぱたぱたと背中の羽をはばたかせ、いざ空へー! ……あれ?
いつもならふわりと宙に浮くはずの体が全然持ち上がらない。いや持ち上がるけど。ちょっとだけ。体半分くらい。
ななななんで!? あ、あたいいつの間に飛べなくなったの?
太った!? メタボ!? 飛べない妖精はただのブタ!?
思わず腰周りの肉を掴んでみる。よ、よし。掴めない掴めない。太ったわけではなさそうだ。
さっすがあたい、スレンダーさも最強ね、って違う。いや違わないけど。空を飛ばないと。
「こうなったら、もう一度あたいのルナティック最強を見せないとダメみたいね……!」
なんか違う気もするけど、この際特に気にしないことにする。
大きく息を吸い込み気合を入れる。見てなさいよ、この
チルノが本気を出したらどうなるかを。
大サービスなんだかんね。滅多に見られないんだぞ。あたいのマジに惚れちまいな。
「てりゃー!」
膝を折り曲げ屈伸。そこから大ジャンプと共に羽を全力で動かす。
体はぐんぐんと上がり、体は空高くへ。見よこの推進力。よーしこのままもっと高く……
ぴたっ。
ひゅー。
びたーん!
「あうっ、い、いたい……」
さっきよりは高く飛べたものの一時的なものでしかなかったらしく高さを維持することも出来ずに地面に落下。
あたい涙目。な、泣いてないもん! ぐすん。
もー! なんで飛べないのよー! 太ってないのに!
ここがどこなのかロクに確認も出来なかった。だって体五つぶんくらいしか上がらなかったもん。
むむむ。なんで飛べないんだろう……体はどこもヘンじゃないのに。
そういえばあたいのアイシクルフォールも簡単に……じゃないけど避けられてたし、なんかいつもの調子じゃない。
体はヘンじゃないんだけど、なんかヘン。
「知るかっ!」
むつかしいことはキライなので取り合えず怒る。主にあのメイドとかに。
でもどうしよう。誰もいないから道も尋ねられないし……そうだ!
あたいは走って石の裏に隠しておいた袋を取りに戻る。
最強のあたいに武器なんていらないけど、それ以外にも何かあるかもしれない。
武器じゃないものもあるってあのおばさん言ってたもんね。
あたいがヘンな理由は分からないけど、空を飛べるアイテムがあれば話は別。
白黒魔法使いみたいにやってやろうじゃないの。
「……あ」
袋を取りに戻ったはいいけど、肝心の袋はメイドが壊した石に埋もれていた。
あたい涙目。泣いてなんかないやいっ! くすん。
仕方がないのでひとつひとつ石をどかして袋を取り出すことに。
弾幕を使うと袋を凍らせかねないので力作業。もう、どうしてこんなことしなきゃいけないのよ……
うんせほいせと石をどかすこと何回か。ようやく袋を見つけたあたいは喜び勇んで引っ張り出した。
見てなさいよ。今度こそ空を飛んでやるんだから。あいきゃんふらい!
鼻息荒くがさごそと袋の中を漁る。でてこいでてこい。
ん。何コレ。あー見たことある。なんだっけ、ヴァイ、ヴァイ……ヴァイオレンだっけ?
ギコギコすると音が出るんだよね。楽しそう。持ち帰って遊ぼう。
「違うわっ!」
空だよ、空! 空が飛べるアイテムー! こんなのどうでもいいんじゃい! いや持って帰るけどさ。
袋の中に入れなおして更に漁る。どきどき。
お? おお! これだこれ! あたいが求めてたのはこれだったのよ!
出てきたのは白黒の魔法使い愛用の箒だ。これで空もバビューンって飛べるもんよ。
ええと確か白黒はこうやって乗ってたわね。柄を跨いで……と。
さあ飛べ。いざ飛べ。わくわく。
………………
…………
……
「飛ばないじゃない! どうなってるのよこれ!」
べちんと勢い良く地面へと叩き付ける。なによ、あの白黒じゃないと乗れないっての!?
地団駄踏んで踏みつけてやっていたところ、箒の掃く部分に一枚の紙が挟まっていた。
なんだろうと思って取り、読んでみる。
『は・ず・れ・☆ 神社の普通の箒です。飛べませんよ?』
「ふざけんなー!」
紙をびりびりっと破り箒をだんだんだんだんだんだんだんと踏みつける。
後半はよく読めなかったけどはずれってことは騙されたってわけだ。
ちくしょう、あたいを馬鹿にして! いいかげんあたいだって泣いちゃうぞ!
こ、こんなはずればかりだなんて思わなかったわ。
きっとあたいが最強だからこんな仕打ちを……許せない! 氷漬けにしてやるんだから!
はずれ箒を袋の中に突っ込み、更に漁る。
食べ物だ! 後でおやつに食べよう。
水だ! 後で凍らせて遊ぼう。
時計だ! どこかに飾ろう。
ヘンな紙だ! なにこれ? なんかごちゃごちゃ書いてるけど。ヘンな絵ね。
ヘンな棒だ! 叩くのかしら。なんか出っ張りがある。押してみよう。おおっ光が! おもしろーい! 後で遊ぼう。
……うえ、また漢字がいっぱいの紙。あたいこういうのキライ。あ、あたいの名前がある。
ルーミアとかもいる。
サニーやルナ、スターたちはいないみたい。やーい悔しいだろー! ……何の紙なのか分からないけどさ。
あ、なんか丸っこいのが出てきた。なにこれ? 針みたいなのが動いてる。ふしぎ。……むつかしい。いいや。
お、えんぴつだ。さっきの紙のところにでも落書き出来そうね。取り合えず書いとこう。『メイドにんげんのバーカ』。
よしすっきり。……いや、アイテムは!? なによ全然役に立たないものばっかりじゃない!
ぐぬぬぬっ、こうなったら意地でもなにか見つけてやるんだから……
でてこーい。出てこないと英吉利牛と一緒に冷凍保存してやるわ!
お。なんか未知の手触り。これは当たりの予感。よっしゃ出でよなんちゃら!
「……って、え?」
* * *
「ん……ふぁ~、っと……おはようございます……?」
私は大きく欠伸をして目を覚ます。はて、何でこんなところで寝てたんだっけ。
っていうかまだ夜じゃない。なんか妙にだるいし。ねむねむ……朝まで寝ようかしら。
ぼんやりと見える城に対抗意識っぽいものを感じるが、今はそれより眠さの方が先立っている。
寝る子は育つ。うん、まあ今まで何をしていたかは起きてから考えましょ。
ということでこんにちはドリームワールド、さよならお月様。
ぱたりと横になり再び目を閉じる。程なくして心地よい睡魔が襲ってくる。
ぐー、ぐー……
「だーれーかー! こ、これ止めてよー!」
すぅ、すぅ、むにゃむにゃ……うるさいなー。
なによこの音、ごごごごごとかいってるし、近づいてきてるし。
……近づいてる?
「あ、ちょ、そこのアンタなんとかしてー! って寝てるし! 起きろバカー! バカガラスー!」
む、バカですって。気に入らないなぁ。ちょっとぶっ飛ばしてやろうかしら。
私の安らかな睡眠も妨害してくれちゃったことだし。
核融合の力、存分に見せ付けてあげるわ!
「私の眠りを妨げるものは何人たりとも……は?」
不機嫌を演出しつつ音のする方に起き上がり、見てみた私の目に映ったものは……でっかい筒だった。
ちょ!? ななな何よこれ! ていうかてっぺんにちっこいのいる!
しかもでっかい筒は私目掛けて一直線。このままだと正面衝突して吹っ飛ばされてしまうだろう。
だが窮地はこれ即ち好機でもある。ふふん、たかがその程度で私の力を止められると思わないことね!
ちっこいのには悪いけど吹っ飛んでもらうわ! 私の核融合を見ながら慄くがいい!
「うおおおおおおお! ニュークリアフュージョンッ!」
……しーん。
あれ? 不発? そんな馬鹿な。
僅かな熱さえ出ない私の手のひらを見ながらちょっと考える。なにかあったような……
あー! 思い出した! あのクソ忌々しい城を吹っ飛ばすために滅茶苦茶力を使ったんだった!
妙にだるいのもそのせいだ。いっぱい休憩しないとプチフレアも出せない状況なのだ。
やばい。でっかい筒はどんどん私に近づいてくる。
ダラダラと冷や汗が流れる。どうすればいいんだ。ちっこいのは相変わらずぎゃーぎゃー喚いている。
ええいうるさい黙れ。こ、こうなったらアレしかないわ。昔の偉い人が言ってたアレ。なんだっけ。
「さ、三十六計逃げるに如かずっ! そこのチビっ子! 飛び降りなさい!」
必死に回避するルートを取りつつ上にいるチビっ子に呼びかける。
よくよく見てみればベソをかいていたらしいそいつは涙声で言い返してくる。
「た、高いよここー! 飛び降りたら痛いだろバカー!」
「バ、バカって何よ! バカ言う方がバカなのよ、バーカ!」
「なんですってー! バカバカバカ! お前だってバカって言ったろバーカ!」
むきー! ムカつく! 助けてあげようってのにその言い草はないんじゃないの!?
いっそ見捨ててやろうかと思った私だが、一瞬の閃きが私の中で核融合。
「私が受け止めてあげるから飛び降りなさい」
↓
飛ぶチビっ子
↓
カッコよく受け止める私
↓
キャーお空さんステキー!
↓
そして見直すチビっ子。私はアイアムヒーロー!
完璧すぎる。やっぱ私ってば天才ね!
自らの計画のパーフェクトさに恐ろしさすら覚えながら、バカと言いたいのを我慢してチビっ子に叫ぶ。
「いいから早く! 私が受け止めてあげるから、ほら!」
ぶんぶんと手を振って降りてくるように説得する。それにこの先は禁止エリア。
急がないとあのチビっ子爆発しちゃうしね。今思い出したことだし、別にあまり私には関係ないんだけど。
人情ってぇやつでさぁ。ん、私烏だから烏情とでも言ったほうがいいのかな?
「うう、わ、わかったよー! わーーーーーー!」
などと考え事をしている間に覚悟を決めたらしいチビっ子は奇声を張り上げて飛び降りる。
……頭から。
あー、あれですか。いわゆるスピアーってやつですか。それともフライングヘッドバットかしら。
しかも何をトチ狂ったかこのチビっ子、物凄いスピードで突っ込んできた。
はっ! これは私に対する挑戦ね! ドサクサ紛れに味なことをしてくれるじゃない。
たかがひと一人、私で押し返してみせる! いや、押し返さないけど。
「わぁああぁぁぁっ!」
「さあ来なさい!」
私の勇気がチビっ子を救うと信じて! ご愛読、ありがとうございました!
【E-1 一日目・黎明】
【霊烏路 空】
[状態]疲労(大)
[装備]なし
[道具]支給品?ランダムアイテム1~3個(確認してません)
[思考・状況]基本方針:自分の力を試す
1.さあ来いチビっ子!
2.後であの建物をぶっ壊す!
※現状をよく理解してません
【チルノ】
[状態]うおおおおお!
[装備]なし
[道具]支給品一式、ヴァイオリン、博麗神社の箒
[思考・状況]おくう先生の次回作にご期待ください!
結論から言おう。
失敗だった。よく考えたら私の腕は『第三の足』だからものは掴めない。
片腕で受け止めるなんて到底無理な話なわけで。
私の鳩尾に突き刺さったチビっ子もろとも吹き飛ばされてごろごろ。超痛い……
痛すぎて文句も言えなかった。だが幸いにしてチビっ子は無事なようだった。
よ、よし。私の計画に支障はない。計画通り。
ごほごほと咳き込みながらも私は半べそをかいていたチビっ子に改めて話しかける。
「危ないところだったわね。もう少しであなた、エライ目に遭うところだったのよ」
「もうエライ目に遭ってるよ!」
そりゃそうか。でもどうしてあんなことをしていたのだろう。
私が訊いてみると、チビっ子は身振り手振りを交えながら説明を始める。
「あたいは空を飛びたかったの。でも何でか調子が悪くってさー、全然高く飛べないし。
だから空を飛べるアイテムを探してこの袋の中を見てたの。
そしたら最後に、あのでっかいやつがにゅーっと出てきて、勝手に動き出したの。
出てくるときに押し上げられて降りられなくなっちゃうしさー。
後はアンタの見たとおりよ。あ、それとあたいの名前はチルノだからね!
チビっ子なんかじゃないわよ! あたいは最強なの!」
えへん、と何故か偉そうに胸を反らす自称最強のチルノを横目にしながら、
禁止エリアに突っ込んでいって途中で止まった筒を見る。あれじゃあもう取りにはいけないだろう。
それにしてもかなりでかい。私の数倍の高さはある。
動力源も何の道具なのかも分からないが、一種の砲弾のようなものだと考えることにした。
あんなものがこの袋に入っていたことも驚きだが、なかなか手の込んだ悪戯だとも感心する。
下手すれば押し潰されるか、動き出したアレに轢き殺される。全くゾクゾクさせてくれるじゃない。
これを考案したのがあの偉そうな奴の仕業だとすれば、戦い甲斐のある相手だ。
『ふっ飛ばしたい奴リスト』にそいつを加えて私は不敵に笑った。
「ふん、面白くなってきたじゃない。あいつもあの城も、私が全部壊してあげる。
地上征服は失敗しちゃったけど今度こそ私の力を思い知らせてあげるんだから。
チルノとか言ったっけ? 助けてあげたんだから私についてきなさい」
「えー。やだよ。バカのくせに」
「バカじゃない! 霊烏路空っていう名前があるわ。お空様とでも呼ぶがいいわ」
「ねーねーおくう。霧の湖ってどっちにあるか知らない?」
聞いてない。しかもなんか馴れ馴れしい呼び方だし。さっきまで半べそかいてたくせに。
全く、私は神の力をも取り込んだ最強の地獄烏なのよ。少しは恐れろ。
核融合のひとつでも見せてやればビビるのだろうけど、生憎今の私は疲労困憊。もうちょっと休まないと。
「そこは知らないわ。もう疲れたし、朝まで休まない? 朝になったら一緒に探してあげてもいいわ。
どうせあの偉そうな奴も探し出さないといけないし。感謝しなさいよね」
「むー。まあいいや、どうせあたいもすることないし……じゃああたいもちょっと休むよ」
感謝しろって言ってるのに! ああ私の英雄伝説……ま、いいか。
なんだかんだでついてくるみたいだし。これも私の人望がなせるわざね!
ごろんと横になったチルノに続いて私も横になった。
空にはまだまだお星様が見える。地上の星ってなんか、金平糖みたいよね。
さとり様やこいし様もお燐も見てるのかなぁ……
そんなことを考えながら、私は柔らかい草の感触を楽しんでいた。
【E-1 一日目・黎明】
【霊烏路 空】
[状態]疲労(大)
[装備]なし
[道具]支給品&ランダムアイテム1~3個(確認してません)
[思考・状況]基本方針:自分の力を試し、力を見せ付ける
1.偉そうな奴(永琳)を叩きのめす。その前に朝まで休憩
2.後であの建物をぶっ壊す!
※現状をよく理解してません
【チルノ】
[状態]精神的にちょっと疲労
[装備]なし
[道具]支給品一式、ヴァイオリン、博麗神社の箒
[思考・状況]
1.霧の湖に帰って遊びたい
2.とりあえず休んで、おくうについていく
※現状をよく理解してません
※ロケットはE-2禁止エリア内にて放置されています。どうなっているかは不明
最終更新:2009年06月28日 01:40