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棗恭介の─問─答

自分で言うのもなんだが…………あまたの武勇伝を
もつ俺、棗恭介のところには、何処にいても質問の
メールが頻繁に届くんだ。
せっかく頼りにしてくれているのに、それを邪険に
扱うのも悪いからな。
俺の伝説に纏わることから非日常の素朴な疑問まで
( 内容の真偽すら問わず )真っ向から答えていこ
うじゃないかというコーナーだ。




Q:映画館での居眠り作法なら全てマスターしたと
  いう京介さんに質問です。
  今最も注目の映画はなんですか?

A:『モビ太と鉄人集団』だな。
  まだ触りしか見れてないが、名作のフレーバー
  が漂っているぜ。


Q:映画館で阿鼻叫喚の地獄絵図を作り上げたとい
  う伝説のエピソードについて教えてください!

A:俺がうっかり眠りの作法奥義の1つ「スタイリ
  ッシュ寝踊り」を決めてしまった時の話だな。
  その名の通り、寝ながら映写機の前でスタイリ
  ッシュかつ大胆に踊る技だ。
  俺は寝てたから詳細は知らないが、起きた時に
  は映画館がダンスホールと化していた。
  映画館を切り盛りしてたおじさんは、そのあま
  りの散らかり具合に血涙を流していたぜ。
  あれからは封印しているが、繰り出す時は寝て
  るからな。
  もしかすると知らない内にまた出してしまって
  いるかもしれない。


Q:舞台を見ていたら正体不明の光に包まれ、いき
  なりアブダクションされたという京介先輩に質
  問です。
  連れて行かれたのはどんなところでしたか?

A:どうやら奴ら、宇宙の覇権がどの星にあるかを
  決定するために、島1つ使った闘技場に地球代
  表として俺を呼び出したらしい。
  全人類の期待を背に、俺が降り立ったその場所
  はなんと!…………TSUTAYAだった。
  まさかこんな所でも出くわすとは思いも寄らな
  かったぜ。


Q:未来のGUNNMAへ行ったという事ですが
  まだ電車の扉は手で開ける式でしたか?

A:いや、密林とか秘境と呼ばれている割に案外普
  通の町だったぞ。
  逆にせっかくの未来旅行で体験できた未来っぽ
  さが、ホログラム式の鍵ぐらいしかなくて、あ
  まりサイバーじゃなかったのが不満だったな。


Q:ポポペプ語の勉強を終えたという恭介さんに質
  問です。
  巨大なUMAに遭遇したとの事ですがポポペプ
  語は通じましたか?

A:終えとらんわ!いい加減にしろ田中!!
  いや、確か無自覚にやってるんだったか……悪
  かったよ。
  まぁ……ともかくUMAに会ったのは本当だ。
  あれはとある劇を見ている時の話だ。
  ショッキングなシーンを見た時にフラついて柱
  に寄りかかったんだが……なんと!その柱自体
  が羽の生えたウマのようなUMAだったのさ。
  しかも俺が寄りかかったのは脚。
  つまり、俺は今までずっとそのUMAの下にい
  た訳だ。
  それに気付いた時は流石にビビったね。
  だっていつ踏み潰されてもおかしくないじゃな
  いか。
  そういう訳で、残念ながら話は聞けなかった。
  次は勇気を出してたてがみにぶら下がれないか
  どうかニンジンで交渉してみるつもりだがな。


Q:ドライブ中にバトル・ロワイアルに呼び出され
  た時、まず何を思いましたか?

A:仲間の安否が気にかかった。『優勝したら何で
  も好きな願いを叶える』とかいう景品に釣られ
  て血迷った殺人鬼に、開始早々狙われてやしな
  いかとな。
  行く宛もなく走り回ったさ、ここが1日駆けて
  も走破出来ないほど途方もなく広い場所だと気
  付いてからは、ひとまず元の場所で冷静に情報
  収集に努めることにしたが。


Q:棗先輩が最近拾った意外な落とし物とは?

A:耳だ。見える位置にいた落とし主に返そうかと
  思ったが、どうやら生え代わりの時期だったら
  しくてな。
  見つけた時には既に返す必要はなくなっていた
  全く、人騒がせなやつだぜ。


Q:数々の伝説をお持ちの恭介さんに質問です。
  逆に他の人の武勇伝で驚いたものはありますか

A:ヌルスケという冒険家の自伝を読んだ時には衝
  撃を受けたな。
  小さなメダルを集めている王様へメダルを届け
  に行く、ちょっとお茶目な冒険活劇かと思いき
  や…………方向音痴の恐ろしさを訴えかけてく
  るホラーなラストが印象に残ってるぜ。


Q:これまで体験した中で最も壮大な体験を教えて
  ください。

A:ついに俺が英雄として別世界で戦った時の事を
  公開する時が来たか。
  敵は『巨大な黒い化け物』だったが、各地から
  『8人の勇気ある英傑』を集めた俺は、魔法の
  武器を手にマッポーの世を救うべく走り出した
  ってわけさ。
  ちなみにその時の俺の武器はその名も“MU☆C
  HAうまい棒”こいつの力はなんと!
  どんな味のうまい棒にも思っただけで何時でも
  変化できるという能力だ。
  豚の丸焼き味うまい棒(特大)に、『黒い化け
  物』はもうメロメロだったぜ。


Q:こんなクチャクチャ面倒な事はさっさと終わら
  してモンペチ買いに行くぞ。
A:ああ、約束だぞ。

Q:数学よりも?
A:筋肉だ!

Q:また目一杯遊ぼう!
A:勿論。野球でも花火でも、何でもやろう。

Q:野球に必要なのは?
A:ガッツと、勇気と、そして友情だな。

Q:グローブからは?
A:青春の臭いがする。

Q:ゆーはぶふぃあー?
A:ああ、そうだな。怖いさ。

Q:こんな事をしていても、別段意味は無いように
  思われます。しっかりしてください。
A:わかっているさ。

Q:恭介氏、私のメモを勝手に読んだな?
A:貸本の間に置いとく奴が悪い。恨むんならこの
  下らないゲームを仕組んだ奴にしといてくれ。


Q:恭介、みんなで一緒にここを脱出しよう。
  仲間を集めて首輪さえ外せば、きっとどうにか
  できるはずだよ!
A:いや、俺達が1人も欠けずに生き残る可能性は
  はっきり言って低い。
  ゼロと言っても過言じゃないだろう。
  その位、このゲームは前提から詰んでいる。
  少なくとも俺達にとってはな。






Q:では聴こうキョウスケ・ナツメ。私の能力は何
  だと思う?
                 PN. F.V

A:おそらく…………『世界を飛び越える能力』じ
  ゃないかと俺は見ている。
  来々谷のメモ帳には現実と乖離した内容が書か
  れていた。6月に雪が降った事なんて俺は記憶
  にない。だがそれが有り得る状況で、一々メモ
  を執る必要があった場面なら覚えている。
  あの事故の時。
  俺がみんなと協力して作った世界の中でなら納
  得だ。
  もしもそんな場所からメモ帳を取り寄せられる
  としたらその能力しかないだろ?
  ついでに一瞬で音も無く人の入った檻を用意出
  来たことにも説明が付くから、多分その能力を
  持ってるのはあんただ。
  もっとも、『時間を飛び越える能力』とセット
  じゃない場合。苦しむ俺らを横に見ながら、淡
  々と殺し合いの準備を進めてやがったって事に
  なるがな。


Q:あんたは娯楽作りの天才らしいじゃない?
  そんなあんたなら、『世界を飛び越える能力』
  を使えばどんな面白い蠱毒が創れるのか解らな
  い訳ないわよね~?
             PN.否定的な(21)

A:俺ならまず間違いなく異世界から色んな奴を連
  れてくるな。
  魔法が当たり前に使える世界。
  とんでもなく科学が発展した世界。
  いまだに忍者がいる世界。
  軍事が巨大化した世界。
  この世の終わりを迎えた世界。
  劇場で会ったような、地球外生命体が文明を支
  配する世界もあるかもしれない。
  メダルと引き替えに景品をくれる王様が居たり
  国よりデカい怪獣をたった8人の人間が倒せる
  …………そんな世界もあるだろう。
  そんな奴らが一堂に会して公平に、強い奴は弱
  い武器を、弱い奴には強い武器を持って闘い、
  終わったら健闘を讃え合う。
  別に命を懸けさせなくていいじゃないか。それ
  だけで、手を加える余地がないぐらい楽しめる
  と思うが?


Q:そんな奴らと殺し合いになったとしよう。
  で、お前はどうする。誰かの助けを待つのか?
  それとも仲間の命と過ごした日々を蔑ろにして
  全員殺して生き延びるのか?
  どうなんだ、棗恭介。
                  PN.時風瞬

A:まず、普通にゲームに参加したり、または脱出
  を目指すのは俺の選択肢としては無い。
  余程運良く実力ある正義漢に会って、巧く立ち
  回れば、あるいは終盤まで生き残り脱出出来る
  かもしれない。
  だが、そんな都合のいい話が何度も起こるわけ
  がないし、まして全体から見て力の無い俺達の
  ような一般人が生き残るのはまず間違い無く無
  理だろう。
  ……あの理樹ですらも。
  どうせそんな状態なら、俺はひとつ賭けに出て
  みるのも悪くないと思ってる。
  分の悪い賭けだが─────────


























「ま、こんな所で自問自答しながら死を待つよりは大分マシだろ……」





棗京介は錯乱していた。
これからのため、説明は一言一句残さず死に物狂いで記憶している。
だが仲間の安否も気になったし、劇場で見た光景はどうしても頭から離れなかった。
人の頭が吹き飛ぶというのは事故を経験し血に慣れたとはいえかなり堪えた。
よろけて手を付いたのが薔薇の髪の毛と何本もの脚を持つ異形の巨躯だったのだから尚更キツい。
故に恭介は仲間を捜しに駆けずり回り、そして偶然、美樹さやかが路上で繰り広げた狂行を見る事になる。
千切れた耳が再生する様を見た時、身近なはずの人間……いや、人型をした者ですら─────────
ここでは異質な生命体の可能性があるのだと肌で感じる事になった。

一度に様々な事が起きたせいで混乱しきった情報を整理するため恭介は初期位置であるCDショップへ戻る。
そこで来々谷唯子が『繰り返す世界』の時を引き留めようとした際書かれたメモを見つけ、そして今に至るという訳だ。

「やっぱりこんな異常な状況下だからこそ
 いつもやってる事は重要だな。多少は落ち着いた」

独り言を呟くと、恭介は店に備え付けのメモ帳の上にペンを置く。そして、ひと仕事終えた後のため息を吐き出して椅子にもたれ掛かった。

「しっかし、酷いもんだぜ。こんな装備でいったいどうやって生き延びろってんだい」

傍らには古ぼけた金属バット、手の平には鰻パイ。そして大量のDVDやブルーレイ、音楽他DISC等が山積みにされている。

「こんなのじゃ、自分の身を守ることだって出来はしない」

鰻パイのお問い合わせ番号を見つめながら恭介は静かに呟く。一応掛けてみたが当然繋がらなかった。

「俺は所詮ただの普通の高校生だってのに」

別に今まで普通に学生生活を送った憶えは恭介にはない。でもビームを撃ったりはしてないし、魔法を唱えたわけでもない。
仮に一問一答で答えていたとしても『真偽を問わず』と看板に書いてあるじゃないかとも思う。

「あいつらだってそうさ…………」

他のメンバーは死ぬ。運良くこのバトルロワイアルに反感を持った力ある者に拾われていなければ。
鈴に至っては既に死んでいるような気さえする。
兄妹だから何となく繋がりがあるとか、同じような能力があるからとか…………多分そんな理由だろう。
何となくだが死んで逝ったのではという感覚が、大分前にあった。
少し頭が冷えたのはそのせいだ。まだ確証はない。
けれど胸に穴が空いたような感覚が逆に恭介に冷静な情報整理の必要性を喚起させた。
鈴に限らず、もしも仲間達の内1人でも殺した奴がいるのなら赦すつもりは毛頭無い。

魔法、もしくは考えも点かない能力や技で屠られたのならきっと仇討ち所か目の前に立つ事すらもままならないだろう。

理樹が自立して、これから面白くなるという時に。みんな居なくなる。
バサリバサリと死んで逝く。
だが、仮に強者の群の中へ生け贄の羊として呼ばれていたとしても、棗恭介は黙って死ぬような男ではなかった。

「聞こえるかバレンタイン。否定姫とかいう協力者でもいい。
 あるいは部下にでも任せているのか?どっちにしろ、聞こえているはずだ。
 もしも本気で俺達をここから逃がさないつもりならな」

自身の命を握る首輪をなぞりながら、恭介はここにいない人物へ静かに語り掛ける。

「これだけ大掛かりな会場でゲームをしようってのなら俺達を監視するための装置が必要なはずだ。
 となると、十中八九カメラか盗聴機…………あるいはその両方を仕掛けなくちゃ
 全体の把握は難しい。だから首輪にあらかじめ仕込んでおくってのが筋だろう?」

恭介は最初より少し冷えた頭で読んでいた。
敵の出方を。いつも通り、どうすれば『面白く』なるかを。その方策を。

「というわけで、聞いていると仮定して本題に入ろう。
 俺はもしかするとこのゲーム。あんたらも被害者なんじゃないかと思ってる」

立ち上がり机の上のものをバッグの中へ片付けながら、恭介は眼を細める。


「第1に、あまりにも個人の利益を逸脱し過ぎている。
 単なる娯楽や金の為ならもっと効率的なやり方があるはずだろう」


例えば魔術がない世界への魔術の輸出。科学や技術に置き換えてもいい。
金の為にやっているのならそちらの方が遥かに簡単に長期的利益が見込める。
少なくとも、内側から計画を壊しかねない強者を何人も連れてきて1回限りの催しを開催するよりは効率がいい。


「第2に、最後の挨拶に違和感がありまくる事。
 いきなり試練がどうとか喋り出したのも妙だし、なにより
 俺達どころか味方すら『供え物』と呼んだところが怪しさ満点過ぎる。
 供え物って事は、俺達が死んだ後何かに使うつもりなんだろうが
 それを初っぱなからバラしちまったら離反する奴が出てきてもおかしくないんじゃないか?」


供え物から連想されるものはあまり善いものではない。
まして言ったのは『不死になる水』などという不吉極まりない物を見せた後。
そんな単語を使えば参加者に『邪神復活の儀式』とか『魂を寄り集めて造る超兵器』のような最終目標を喚起させてしまうだろう。
そんな事を企んでいる輩が『約束を守ったので景品をください』と言われて、素直に『はいわかりました』と返してくるとは普通誰も思わない。
そこに気が付いた人間はまず殺し合いなんてしない。むしろ止めて回るだろう。

「第3に…………あんた達自身が、本気で俺達を殺しに来てるとは思えない
 知り合いを参加させたり、その知り合いの腹の調子を心配したり
 挙げ句『最後まで諦めるな』なんて、矛盾だらけにも程があるじゃないか」

名簿には『鑢七花』の名前が確かにあった。名指しで、お母さんみたいな事を注意するような間柄なのに。
こんな事にわざわざ巻き込むだろうか?
『否定姫』という相手が楽しみを持って友人を殺す凄まじくサイコな人間である可能性は棄てきれない。
しかし、旅に出たりたくさんの後輩を面倒見てきて人を見る目は鍛えられていると自負する恭介には
その協力者であるというヴァレンタインにそういう気配は一切無いように思えた。
心に誓った事は決して破らない類の、使命に忠実な人間の気配がしたのだ。


「というわけで、俺はこの殺し合いの進行を手伝う事にした」


結論を言い終える頃には机の上のキャッシャーから大量のCDから、何もかもが綺麗サッパリ収納されていた。

「勿論、裏で糸を引いている奴の為じゃない。
 無理やり片棒担がされてる連中の為だ」

金や利益の為組織を動かしているわけではなく、まるで危険を報せるような事を言う。
そして殺し合いに臨む誰かの事を気にかけられる人間が進行をやらされていたなら。
裏で手引きしている者がいると考えるのが妥当。

「それに手伝うと言ったって、別に積極的に殺して回る訳じゃない。
 さっきも言った通り俺は普通の高校生だし、ただ戦っても勝てやしない」

そのまま店を出て月を見る。尋常でない歪な模様をした月だ。だが今さらそこに驚きはない。
そうしたモノに対面する覚悟は出来た。

「だから徒党を組ませる。ゲームに参加したくない奴らには参加したくない奴らを
 ゲームに参加する気のある奴には参加する気のある奴を紹介してチームを組むように仕向ける。
 最後まで中立でいるつもりの奴に殴りかかるような奴と会ったら…………その時はその時だ」

それは正にイベントの進行を助ける係員に近い立ち位置だ。
殺しをせずに、無駄な争いを好まない強者の元へ弱者を送り届けようとする相手に
殺し合いを止めようとする手合いは攻撃しない。
敵対関係にない上に、殺す相手の所在地を教えてくる。ともすればゲームを加速させる気にすら見える相手に
殺し合いを進めようとする者が手を出す意味はほとんどない。
だから殺される確率は自然低くなる。
もちろん最初会場で見たような怪物。話の通じなさそうな、利害を結べない相手と出会ったならば別だという事も恭介は分かっている。

「そして無事成功したなら最終的にチーム戦にもつれ込むだろう。
 その時こそこの騒ぎを収束させる説得の余地が出来る。それが、俺のプランだ」

やろうとしている事はつまり『大勢を1カ所に集めて全員説得するため殺し合いを利用する』
というものだった。
まず、戦いの中で仲間意識が芽生えたなら与し易くなる。そして仲間が仲間を呼んでいったならより大きな集団になっていく。
何処にいるのか判らない1人1人を探し出して、失敗するかもしれない説得をするより効率的だろうと考えたのだ。
チームであるなら終盤まで人数も残りやすいはず。
おそらくは現状で最も人が死なずに済む方法はこれしかない。と、恭介は考えた。
そして終盤。自分達以外が全員別チームになったかどうかは放送で判る。
そうなったなら何処か1カ所に生き残った全員が集まらざるを得ない。そこでマイクか放送施設のありそうな場所へ誘導すれば準備完了だ。

「まあ見抜かれてるじゃないかとも思うが、俺のプランは他にもある。
 ただどうあれ俺はそちらの意向を無視しないつもりだから信頼してくれ」

そしてそれは主催者側にも言えること。
方法が正しいかどうかはともかく、自ら協力を志願する相手には少なからず愛着が湧くはず。
そうなれば、失敗したとしても恩赦を出してくれるかもしれない。
例えば全くの別世界へ行ける能力の応用で、自分以外誰も連れ去られていないIF世界へ戻してくれるような恩赦を。
最も確率の低いプランBではあるが無いよりはマシだ。

「さて、そろそろ話は終わりにしよう。もしも俺のやっていく事が
 気に入ってくれたなら話し合いがしたい。連絡を待っている」

これは一見個人には無茶な方法に見える。考えたとしても実行には移らないだろう。
しかし恭介には実績があった。多種多様な生徒全員を把握し魅了するカリスマ性と、行動力があった。
故に恭介は無茶とは思わない。
恭介は不敵に微笑んでいる。瞳は笑ってはいなかったが。

「そのためにはまずどっちへ行こうか…………」

恭介とて知っている。仮に成功したように見えたとしても、向かう先は暗闇かもしれないという事を。
無駄に引っ掻き回したせいで本来死ぬべきじゃなかった人間が死ぬかもしれない。
そんな自分の行いを愛する仲間達から非難されるかもしれない。
覚悟はある。同じ覚悟ならしたことがある。
あの時は失敗したが今回こそ無事に帰るつもりだが…………

「北へ行けばおそらくデカい街。南へ行けば森…………
 刀を取りに行くのもありだな」

帰れた所で誰も居ないかもしれない。
此処にいる仲間達が、妹が死んで逝く過程で自分自身も壊れていくだろう。
直枝理樹が護った日常はどんな犠牲を払ってでも、殺し合いの主催者の力を借りてでも取り戻す気概はある…………
しかしそもそもあては完全に外れていて、主催者側に組する事の出来る相手はいない可能性もある。
さっきからの一方的な会話は全て主催者の本陣へ漏れているかもしれない。
IF世界へなんて行けず此処にいる仲間達には2度と会えないかもしれない。

「さて、何処を目指す…………か」

どちらにせよ関係の無い話。最終的に自問自答し続けるよりはマシという結論が出る堂々巡り。
どちらにせよ剣を1本投げられただけ、薔薇で叩かれただけで死んでしまう事は明白。
力が無ければ、誰かが連れ出してくれるのを待つしかないのかもしれない。

「それでも俺は……………………」







【6-BCDショップ前/1日目/深夜】

【棗恭介@リトルバスターズ!
[状態]: 健康 、
[装備]: 名越のバット@SIREN
[道具]:鰻パイ@リトルバスターズ!、ランダム支給品(0~1)
   キャッシャーやCD、メモ帳その他@現地調達、来々谷のメモ@リトルバスターズ!
   基本支給品一式、刀の在りかを書いた紙(4-E・不明、不明)
[思考・状況]:基本方針:このバトルロワイアルを出来るだけ被害が少ない状態で終わらせる。
1:参加者の情報収集、特にどんな奴が何処にいるのかが知りたい。
2:他の参加者との交渉材料を出来るだけ探す。
3:メンバーを見つけたら…………?

※参戦時期は本編終了後です。
※参加者が異世界から呼び寄せられている可能性に気付きました。
※主催者の中にも連れてこられた人間がいるのではと考察しました。


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最終更新:2015年04月11日 22:17