歴史の闇に消えた筈のまつろわぬ化外の民が王国に牙を剥く時、
最初で最後の残酷な学園祭が幕を開ける――
過去に古き獣の大陸と呼ばれた地で起こった大きな侵略戦争。
精霊を崇め鋼を操る人間と獣人は、その戦争を境に侵略王への恭順と流浪の選択を迫られた。
やがて侵略王は暗き獣の大陸に一つの国を興す。
その国は《アクロマギア魔法王国》。王を始祖とする魔法使いの国。
《化外の民》と呼ばれた古き民は、ある者は王を憎みながらも生きる為に王国に入り、
ある者は反逆を誓いながら大陸の闇へと消えていった。
そして500年の時が流れ、魔法が技術と呼ばれて久しいある時。
化外の民の文化である精霊を研究していた一派が一つの疑問を投げかけた。
この世の森羅万象に霊が宿るという化外の民の精霊信仰。
人がこの世の元素を操るという魔法使いの魔法主義。
魔法使いが精霊使いとなるには魔法という傲慢を捨てなければならなかった。
ならば魔法とは人工的な偽りの力ではないか? 魔法使いの傲慢は許されるのか?
その疑問は《回帰主義》と呼ばれ、平和に淀んだ王国に議論を巻き起こした。
そしてある日、大陸の闇に消えた《まつろわぬ化外の民》が王国に生きる同士に呼び掛けた。
「最後の戦いを始める。消えかけた我々の歴史に誇りを持つならばこの命に応じよ」
王国に反逆すべき時を待っていた化外の民が立ちあがり、
回帰主義に傾倒していた王国の騎士達もまたそれに応じ、
斯くして、アクロマギア魔法王国には前代未聞のクーデターが勃発した。
さて、魔法王国首都マギアから少し離れた城塞都市の内側には三つの学園が存在する。
魔法使いの思想を是とする王国の臣民の子供たちが通う魔法使いの学園《聖ベルグラース学園》
生徒個人が自由な思想を持ち、魔法使いと化外の民の融和を目指す新しき学園《ネイトアカデミー》
魔法使いによって作られたが、生徒の多くは自らの誇りを重んじる化外の民の為の学園《アスラン学園》
反逆の呼び掛けはアスラン学園の生徒達にも届き、決起した彼らに呼応して聖ベルグラース学園が立ち上がる。
「さあ、お前達はどちらに付く?」――アスラン、聖ベルグラース両学園がネイトアカデミーに迫る。
ネイトアカデミーが下した下した結論は、己が学園の理念を掲げ両者の対立に割り込むという選択だった。
――王の威光と魔法使いの誇りにかけて敗れる訳にはいかぬ。
――この争いで何れかが倒れたとして必ず歴史は繰り返すだろう。それは阻止されねばならない。
――王国に奪われた生誕の地と誇りを取り戻し、大陸をあるべき姿に戻さねばならない。
ならば始めようではないか。
最初で最後の、盛大で残酷なお祭りを――