発言者:[[ジョージ・ゴードン・バイロン]] ニナ√、[[主だった>ヴァネッサ・クラリモンド]][[対立者>ヴァン・エレコーゼ]]は排除され、[[鉄の家令>エルンスト・ゴドフリ]]は真の&bold(){&ruby(トライフィンガー){[[三本指]]}}に[[敗れ>https://w.atwiki.jp/vermili/pages/1054.html]]、傍らには[[《伯爵》]]からの[[贈り物>マジェンタ]]と。 思いあがったあの[[小娘>ニナ・オルロック]]が守ろうと願うもの、この&ruby(はこにわ){鎖輪}を穢し砕く企ては順調に進んでいる。 あとは、自分に刃向かうと告げた小娘と[[その騎士>トシロー・カシマ]]を滅ぼし、その後じっくり、父の手掛かりにして真なる&ruby(・・・){絆の証}である[[もう一体の柩の娘>カーマイン]]を手に入れればよい―― そう自身の成功を信じて疑わなかったバイロンは、自らの血で制御下に置いていたはずの[[『裁定者』]]の暴走に愕然とした。 それは、暴力により従えた配下の者達が滅ぼされることや、小娘より奪い取ったこの城が崩れ去ることに対してなどではなく─── &color(#1C004C){&bold(){マジェンタが、父からの贈り物が、&ruby(・・・・・){己を捨てた}という受け入れがたい現実に対するものであった。}} &font(19,b){&color(#C20060,#252A35){『やはり、お前はそちらを選んだか。&ruby(・・・・・・・){ベアトリーチェ}』}} 次々と犠牲になる縛血者達に目もくれず、心を閉ざして&bold(){何が間違いだったのかいや間違いなど在り得ないと……} 己にだけ都合のよい幻想を必死に立て直そうとするバイロンに、マジェンタを介して、何者かが語り掛ける。 それは、何世紀にもわたって、&ruby(かれ){彼女}がずっと待ち望んでいたはずの愛おしい声。 だが、落胆の色を含んだその声は、仔であるバイロンの心をかつてない恐怖で侵していく。 &font(18,b){&color(#C20060,#252A35){『聖なる之が愛おしいか?&br()……賢明だな、バイロン。やはりおまえは忠実だ。私の思惑を欠片も外れぬ』}} &font(18,b){&color(#C20060,#252A35){『ならばこそ、&ruby(・・・・){つまらぬ}。誇れとは言ったものの、&br()自由意志を廃せよと説いた覚えはないのだが……まあいい』}} &size(13){&color(#C20060){&bold(){美しき人形は、スカートの端を摘み上げ、冷たい能面の表情で上品に別れを告げる。}}} &font(19,b){&color(#C20060,#252A35){『マジェンタの保管、ご苦労であった。おまえの結果は受け取った、&br()ジョージ・ゴードン・バイロンに対する実験をここに終える』}} &font(19,b){&color(#C20060,#252A35){『役目は終わりだ。以後は好きにするがいい───&ruby(・・・・){さらばだ}』}} &size(13){&bold(){そんな淡々とした、&ruby(・){主}から&ruby(・){僕}に対するような&ruby(・・){通達}を最後に、マジェンタは人形へと戻る。}} &size(13){&bold(){何を求めていたのか、その答えを告げぬまま。}} &size(13){&bold(){マジェンタを通じて言葉を紡いでいた《伯爵》は……&color(#1B1947){己が仔と縁を絶ったのだ。}}} &size(13){仔にとって判ったのはそれだけ。} &size(14){&color(#463042){&bold(){つまり、バイロンにはその程度の価値しか見出していなかったことの証明だった。}}} そして数百年の生の中で、&ruby(・・・・・・・){真実その男だけ}を追い求めてきたバイロンの精神は───&size(13){&color(#072B07){&bold(){その一言で、容易く決壊した。}}} &size(19){&color(#671755){&bold(){「&italic(){&tt(){───は、はは}}」}}} &size(20){&color(#671755){&bold(){「&italic(){&tt(){ク、くく───ははは、はっはははは、ははははははは……}}」}}} &size(22){&color(#671755){&bold(){「&italic(){&tt(){ァ、ハハハ、はははははははははははははァァァアアア――!!!}}」}}} &color(#500ED3){&bold(){あの人のために、あの方のためだけに、あの方が愛おしい。}} &color(#500ED3){&bold(){唯一の信仰にして、自らの存在する理由。}} &color(#671755){&bold(){主神にすら等しい存在に見放された現実を前に、類稀な[[魔性>おかえり───さあ、飛び方を教えてあげよう、雛鳥よ]]と[[暴力>掟(しばり)など、強者の轍の後にのみ存在を許される脆弱な概念に過ぎん]]とで周囲を蹂躙してきた「吸血鬼」は狂乱するしかない。}} &size(18){&color(#671755){&bold(){「&italic(){&tt(){お待ちを、お待ちを、《伯爵》 どうか私を……あああ行かないで行かないで行かないでッ!}}」}}} &size(18){&color(#671755){&bold(){「&italic(){&tt(){男としての私で仕えます、女としての私で焦がれます。}}}}} &size(18){&color(#671755){&bold(){&italic(){&tt(){だからどうか、どうか、御身の傍にいさせてください!}}」}}} &size(21){&color(#671755){&bold(){&italic(){&tt(){「我が命の意義は、貴方と共にしかないというのに……ッ!」}}}}} &bold(){そこには、確かにあったはずの支配者としての風格、気品は失われており───} &size(18){&color(#671755){&bold(){「&italic(){&tt(){おお……《伯爵》よ、あなたはそう仰りたかったのか! &ruby(・・・・・・・・・・){出来損ないなど造るな}、と。}}}}} &size(19){&color(#671755){&bold(){&italic(){&tt(){ご安心くださいませ、我が心は&ruby(・・・・・・・・){全て御身のために}。とうに宣誓しております。}}}}} &size(20){&color(#671755){&bold(){&italic(){&tt(){ですからぜひ、&size(22){再び私へ&ruby(・・・){加護を}! &ruby(・・・){寵愛を}!}}}&size(18){&bold(){」}}}}} &size(14){&bold(){己はとっくに捨てられた───覆しようのない真実を必死に否定すべく、妄想に愛を語り続ける。}} &size(14){&bold(){正気になど戻れるはずがない、正気になれば現実に耐えきれなくて死んでしまう。}} &size(14){&bold(){御託を並べ、虚言を弄し、妄想の世界に逃げ込んで、現実を破壊するのだ。}} &size(14){&color(#671755){&bold(){バイロンはもはやそうしなければ生きられなくなっていたから}────}} ---- - 変に長生きして無駄に強いせいでイレギュラーにはほんと弱いよねこいつ -- 名無しさん (2018-08-19 20:07:06) - なまじ強過ぎたせいで成長の余地が無かったからか、生きた年月の割に芯が異様なまでに脆い。まぁ、ファーストコンタクトからずっと放置プレイされてたせいで盛大に拗らせたのもある。 -- 名無しさん (2018-08-21 21:47:34) - まあそれだけを抱いて長年生きてたのに、それが芯からぽっきり折られたんだから仕方なし。縛血者になってから傷がないなら尚更 -- 名無しさん (2018-08-24 07:51:50) - トシロー並に傷だらけでも耐えられたと思えんけどな、今まで傷に苦しみ続けたやつが土壇場では傷付いても平気ってなるとも思えんし -- 名無しさん (2018-12-22 10:43:05) #comment