オーヴァン/犬堂雅人の目的は、当初のそれとは変わりつつあった。
否、究極的な目標――アイナの救済とAIDAの除去自体は変わっていない。
しかし、そこに至るまでの道筋、そのために為すべき目標は明らかに変化している。
ゲーム開始時点では、彼の世界は一つだけであった。
The World R:2。彼が知り、識り尽くしたあの世界だけが、彼の戦いの舞台であった。
碑文を喰らったハセヲの第一相“死の恐怖”が、オーヴァンの持つ第八相“再誕”を発動させる。
結果、世界は一度死に、蘇る。AIDAという異物を排除する形で、世界は再度生まれ変わる。
既に準備は整っていた。ハセヲは全ての八相と相対し終え、あとはオーヴァンとの再戦を待つのみ。
だからこそ、この場でハセヲと相対し、そして“再誕”を発動できれば、オーヴァンの目標は達成される。
――最初の転機は、まずあの少女だ。
サチ。
彼女は確かに別の世界を知っていた。
あるいは、別の現実というべきか。全く異なる認識の下で生きる彼女と出会い、そしてオーヴァンは思った。
このゲームには、単なるAIDAの暴走以上の“真実”が隠されている、と。
だからこそ、彼は“真実”を求めた。
トワイス、榊といったGMに協力する形で、まずは己の認識を広げることを目指した。
そのために舞台を暗躍する形で動いていたが――その直観はある時確信へと変わった。
――茅場晶彦、そして預言者オラクル。
彼らとの出会いが、オーヴァンに確信、ないしは天啓を与えた。
“選択”を司る預言者は語った。出会いには意味がある、と。
“残滓”である超越者は語った。ワタシがワタシであることの認識を。
彼らのような存在がいて、共に語る言葉を持っていた。
その事実が示すところは一点。“ここ”は単なるデスゲームの場ではない、ということだ。
何か別の目的が、幾重にも隠された先に、“ここ”の本当の意味がある。
何故自分たちは集められ、幾多もの現実越しに殺し合っているのか。その本当の意味を、知らねばならない。
きっとそれがオーヴァンがこの場にいる“意味”であり、取るべき“選択”である。
「――ご苦労、というべきかね」
その男、榊はまるで待ち構えていたかのようにオーヴァンに語りかけた。
「全くアンタには頭が下がるよ。人を騙し、弄び、時には己の手も汚す。 そして今回は想定外のバグの報告、と。
ゲームの円滑な進行のための献身的な行いだ。運営として感謝しておきたいところだ――その悪辣さをな。
ふふふ……本当にご苦労なことだ。そこまでこの榊のプロデュースするゲームが気に入ってくれたかね?」
ニヤリ、と露悪的に笑いながら、榊は言葉を紡ぐ。
AIDA感染が進行した結果、侍のようなPCのポリゴンは醜く崩れ、浮かべる笑みも歪んでいる。
オーヴァンは榊の視線を無言で受け止めながら、二人のPCを地面へと放り投げた。
認知外迷宮<アウターダンジョン>。
ワイヤーフレームが不気味に照り光るできそこないのエリアにて、彼らは相対している。
月海原学園でのエージェント・スミスによる“
絶対包囲”を越えたのち、オーヴァンは一人この場に赴いていた。
PCを取り戻したワイズマンとボルドーという二つのイレギュラーを保存すべく、A-3のゲートをハッキングしたのだ。
狙いとしては運営側からもこの二人のイレギュラーを隠しておきたいところであったが、しかし当然のように向こうはこちらを捕捉してきた。
まぁ、想定の範囲内だ。
彼らはこの世界の管理者だ。知らない方がおかしいとさえいえる。よしんば認知外迷宮まで監視の目が届かないのだとしても、スミスの消滅はあの世界の内側で起きたことだ。
その観測ができていない方がおかしく、回収されることもまた予想の範囲内であった。
「このエリアに踏み込むことは禁止、ということだったが、しかし今回は報告すべきと思ってな」
「ああ、分かっているよ。私は何もかも杓子定規な人間じゃない。どこぞの嘘の言えないAIと違ってね、私は柔軟に対応してみせるさ」
榊は言って哄笑した。あはははは、と何が面白いのか大声を張り上げている。
どうやら彼は己に当てはめられた“運営役”という役割がひどく気に入っているらしい。何にせよ、ペナルティは受けずに済みそうだ。
「エージェント・スミスの“上書き”の解除、か。なるほどこれは想定していなかった事態だ。
元より例外の方が多いような世界ではあるがね。この展開は極め付けだ。全く――面白いことになってきた」
榊は上機嫌そうにそう語ると、転がった二人のPCを乱暴な手つきで抱えた。
初老の賢者、ワイズマン。AIDAに侵食された褐色の剣士、ボルドー。
オーヴァンにしてみれば、共に知らない仲ではなかった。特に前者とは縁が深い。
けれども石になったかのようにピクリとも動かず、榊に無造作に回収されようとしている姿を見て、オーヴァンは何も感じなかった。
そうした感傷を感じることは、もはや自分は許されない立場だ。
「その二人」
だからオーヴァンは事務的な口調で、淡々と榊に問いかけた。
「その二人の処遇はどうなる。回復次第ゲームに復帰するのか?」
「いや、それはない。既に二人は完全に“脱落”扱いだよ。それを今更翻すことはしないさ。
死人は蘇らない――それがゲームの
ルールだ。破る訳にはいくまい」
榊はそこで含み笑いを漏らした。
考えることが愉しくて仕方がない、とでもいうような様だった。
「しかし、言っただろう? 私はイレギュラーさえもゲームに変えてみせると。
ゲームとして“脱落”したが、けれども彼らはある意味で復活した。
これをただ殺して終わり、ではあまりにも味気ない。相応の場所で働いてもらうさ。死人さえも再利用してみせよう。
なに、何の因果か、どちらも知ってる顔だからなぁ――この二人は」
「…………」
榊の言葉にオーヴァンは閉口。何を思ったが知らないが、ろくなことではあるまい。
ただ何にせよ、今の榊は機嫌がいい。彼の性格を考えるならば、今この時の接触を無駄にするべきではないだろう。
「ところで――尋ねていいだろうか?」
「ふむ、何かな?」
「真実、だ。今から約12時間ほど前か? ゲーム開始当初に交わした“真実”を見せるという約束。
そろそろ時が来たかと思ってね」
オーヴァンはそう言って、薄く笑った。
あの時よりオーヴァンは表層のデスゲームにおいて暗躍し続けていた。
希望となり得たシルバー・クロウの命を摘み取った。
サチとキリトの関係を引き裂き、痛みの森へと誘った。
エージェント・スミスを誘導し、月海原学園を“絶対包囲”へと追い込んだ。
そして――スカーレット・レインをこの手で討った。
多くの死に、多くの悲劇に、オーヴァンは間接的に関わっている。
この存在がゲームの加速の一翼を担ったことは、もはや疑いない。
「フムン」
言うと、榊は考える素振りを見せた。
腕を組み、不躾な視線でオーヴァンを一瞥し、
「そうだな。確かにアンタはよくやってくれている――いいだろう、私は約束は違わない。
このゲームに隠された真実を話してやろう」
そう言って語り始めた。露悪的に、うたうように、愉しげに彼は声を張り上げる。
「この世界は! 現実は! 言ってしまえばツギハギなのだよ
そしてそれはつまり――」
◇
ツギハギの世界。
そこに敷かれた脆弱なルールと、プレイヤーに与えられた幾多もの“ルール破り”。
そしてルールが壊れた向こうに解放される、脅威のエリア。
榊が語った“真実”とやらはそう言った事柄だった。
「……まずは一つ、か」
据えられたポータルよりオーヴァンは通常エリアに帰還する。
アスファルトが敷かれた道路、乱立する電柱、現実的な日本の住宅街がそこにはあった。
――今しがたの接触、確かに榊は“真実”を語った。
恐らくあの事実は嘘偽りのない真実だろう。
ゲームの裏側にしてシステムの罠。なるほど確かに絶望的だ。
――だが。
オーヴァンは思う。本当にそれだけか、と。
オラクルや茅場との出会いが導いた“真実”は果たしてその程度のものか。
いや、榊のことを疑っている訳ではない。ただ
世界の真実としては――足らない。
恐らくその“真実”には更なる奥が存在している。
「……それでお嬢さんは」
そこまで考えながら、オーヴァンはその場に“偶然”にも居合わせることになった参加者へと呼びかけた。
「何か、用があるのかな?」
白衣を纏った、褐色の少女だった。ポータルの向こう側にいた彼女は、怪訝な表情をオーヴァンへと向けている。
「……貴方は」
「ああ、そうか。おかしいものな」
合点がいった、というようにオーヴァンは頷く。
恐らく“偶然”ここに居合わせたこの少女は、日本エリアの向こう側、ウラインターネットよりやってきたに違いない。
そしてその先に、ほぼ同じタイミングで転移してきたオーヴァンがいた。
これは、おかしい。同じエリアから転移したのならば、ウラインターネットでオーヴァンと出会っている筈だろう。
故に――彼女は悟った。
オーヴァンがイレギュラーであることを。
この“偶然”が単なる“偶然”である筈がない。
オラクルの姿が脳裏を過った。あるいはこれも――運命だとでもいうか。
「そうだよ。今まさにGMと接触していてね――ゲームの“真実”について教えてもらっていた」
故にオーヴァンは告げた。きっとそうするべきだと感じたからだ。
少女はぴくりと眉を上げた。その反応を見ながら、さぁどうしたものかとオーヴァンは考える。
「君も、このゲームのプレイヤーなんだろう? 少し話そうか」
“真実”のその更に奥の“真実”を知るためだ。
もう少しGMの駒として、ゲームを加速させる役目について見せよう。
そしてその先にこそ――
【A-3/日本エリア/一日目・午後】
【オーヴァン@.hack//G.U.】
[ステータス]:HP100%、SP100%、PP100%
[装備]:銃剣・白浪@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式、{静カナル緑ノ園、DG-Y(8/8発)、逃煙球×1}@.hack//G.U.、{邪眼剣、スパークブレイド、妖精のオーブ×2、ウイルスコア(T)}@.hack//、{マグナム2[B]、バリアブルソード[B]、ムラマサブレード[M] 、サイトバッチ}@ロックマンエグゼ3、{インビンシブル(大破)、サフラン・アーマー}@アクセル・ワールド、破邪刀@Fate/EXTRA、不明支給品1~12、レアアイテム(詳細不明)、付近をマッピングしたメモ
[ポイント]:300ポイント/1kill(+2)
[思考]
基本:“真実”を知る。
1:利用できるものは全て利用する。
2:トワイスと<Glunwald>の反旗を警戒。
3:リコリスの調査はGM側からの信用を得てから。
4:ゲームを進めるが、必要以上にリスクを背負うつもりはない。
5:サチに感染させたAIDAの成長・変化に若干の興味。
[備考]
※Vol.3にて、ハセヲとの決戦(2回目)直前からの参戦です
※サチからSAOに関する情報を得ました
※榊の背後に、自分と同等かそれ以上の力を持つ黒幕がいると考えています。
※ただしAIDAが関わっている場合は、裏に居るのは人間ではなくAIDAそのものだと考えています
※ウイルスの存在そのものを疑っています
※榊の語る“真実”――ゲーム崩壊の可能性について知りました。
【ラニ=Ⅷ@Fate/EXTRA】
[ステータス]:HP40%、魔力消費(大)/令呪二画 600ポイント
[装備]: DG-0@.hack//G.U.(一丁のみ)
[アイテム]:ラニの弁当@Fate/EXTRA、基本支給品一式、図書室で借りた本 、noitnetni.cyl_1-2、エリアワード『虚無』、万能ソーダ@.hack//G.U.、機関 170式@.hack//G.U.、導きの羽@.hack//G.U.、吊り男のタロット×3@.hack//G.U.、剣士の封印×3@.hack//G.U.
[思考]
0:月海原学園に向かい、白野やレオと出会う。
1:師の命令通り、聖杯を手に入れる。
そして同様に、自己の中で新たに誕生れる鳥を探す。
2:
岸波白野については……
[サーヴァント]:バーサーカー(呂布奉先)
[ステータス]:HP60%
[備考]
※参戦時期はラニルート終了後。
※他作品の世界観を大まかに把握しました。
※DG-0@.hack//G.U.は二つ揃わないと【拾う】ことができません。
[全体の備考]
※運営側に関する状態表が一部解禁されました。
【榊@.hack//G.U.】
[ステータス]:健康。AIDA侵食汚染
[装備]:閲覧不可
[アイテム]:閲覧不可
[ポイント]:-/-
[思考]
基本:ゲームを正常に運営する。
1:ボルドーとワイズマンを“再利用”する
[備考]
※ゲームを“運営”することが彼の役割です。それ以上の権限はありません。
※彼はあくまで真実の一端しか知りません。
【ボルドー@.hack//G.U.】
[ステータス]:HP??%、SP??%、ダメージ(中)、AIDA感染(悪性変異)、PP10%-PROTECT BREAK!
[装備]:なし
[アイテム]:なし
[ポイント]:???ポイント/?kill
[思考]
基本:<Glunwald>に支配されているため不明。
[AIDA] <Grunwald>
[思考]
基本:オーヴァン(<Tri-Edge>)に従う。
[備考]
※スミスの持つ『救世主の力の欠片』と接触し、AIDA<Oswald>がAIDA<Grunwald>へと変異しました。
また『救世主の力の欠片』を取り込んだことで、複数のPCに同時感染し、その感染率が相手の精神力を上回った時、そのPCのコントロール権を奪う能力を獲得しました。
※<Grunwald>の能力により意識を封じられています。
【ワイズマン@.hack//】
[ステータス]:HP??% 、SP??%、ダメージ(特大)、AIDA感染(<Grunwald>)
[装備]:なし
[アイテム]:なし
[ポイント]:???ポイント/?kill
[思考]
基本:<Glunwald>に支配されているため不明。
[備考]
※<Grunwald>の能力により同時感染しており、またその意識も封じられています。
最終更新:2016年10月04日 00:05