暗い街の片隅でぼんやりと浮かぶ光がある。
水の音が涼やかに響く静かな街の中で、その薄明りは不気味に街から浮かび上がり、まるで誘蛾灯のようでもあった。
が、そんな怪しさも近づいて目を凝らせば霧散してしまうだろう。
石畳の続く西洋風の街並みから乖離した木造の屋台。その屋根には布が掲げられ、ゆらゆらと揺れている。
暖簾と呼ばれるその装飾には大きく文字が記されていた。
おでん、と。

「はぁ……」

暖簾の向こうには、そこは湯気の舞う庶民的な世界があった。
屋台の中心には大きな角型の鍋が据え付けられ、その中を大根、こんにゃく、がんもどきらお馴染みの具材が浸かっている。
薄く濁った湯の中でぐつぐつと煮え立つ彼らは、どこか人間の湯浴みを想起させるではないか。

「はぁ……」

その悠々とした様子を眺めながら、間を置かず二度の溜息を吐いた男が居た。
倦怠感を滲ませた白い息も、煮え立つ湯気にかき消され、すぐに何処かへ消えてしまう。その光景を見て、男はもう一度溜息を吐きたくなった。
水をちびちびと含みながら、男はぼぅっとおでんを見た。幸せそうに煮え立つおでんを見ていると、自分の境遇がひどく馬鹿らしい。

「意味わかんねーしなぁ……」

くたびれた様子で屋台にしなだれかかる男は、もう何度目になるのか分からない台詞を吐いた。
その様子を屋台を挟んで眺める全身金属製のロボットが居た。位置的にそれが店主に当たるのだろう。
「B-SET」と張り紙がしてあり、店主の名前らしい。

何だかシュールな状況だが、男はもう理解を放棄していた。
いきなり拉致され殺し合いを強制された時点で、自分には理解できない力が働いているのだ。今更その程度のシュールさが何だというのだ。
それに、と男は思った。

「シュールさじゃ俺も人のこと言えねぇ」

男は自嘲するように言った。それは己の容姿に対してのことだった。
おでんを前にする男はネジだった。
赤い巨大なネジが、ひどく疲れた様子でおでん屋台に座っている。それを見つめる《ドローン》。暖簾の下からはファンタジックシティが垣間見える。
その光景を思い浮かべ、男は乾いた笑みを浮かべた。

「はぁ……」

しばらくすると、男は笑みを消し再三の溜息を吐く。
この奇妙なネジは、名をクリムゾン・キングボルトと言った。










先の男との遭遇《エンカウント》からしばらく立ち、シノンは落ち着きを取り戻してきた。
とはいっても足は止めない。石畳の街を、可能な限り迅速かつ静かに駆け抜ける。
逃れられたとはいえ、先の一戦は運に依るところも大きかった。もう一度遭い見えた時は、今度こそ死を覚悟しなくてはならないだろう。

今思い返しても圧倒的な敵だった。黒スーツにサングラスという出で立ちだったPKの強さは、あらゆる面で彼女とは格が違った。
銃弾を軽々と避け、石畳を砕き、目にもとまらぬ速さで動く。
ステータスポイントの振り方の違いなどという話ではない。根本的にポイントの総量――レベルの次元が違うのだ。
先ほどはそのステータスの高さを逆に利用する形で撃退することができたが、同じ手が二度通じるとも思えない。

死んでいるかもしれないが、生きていても何ら驚きはない。
あれほどの強さを誇った敵が、そんな呆気ない終わり方をするとも思えなかった。
走りながらも、街の角からぬっとあのPKが現れるのではないか。
時間を置いたことで幾分冷静になっていた彼女であったが、それでもその可能性に恐怖せざるを得なかった。

だからだろうか。曲がり角から人影が躍り出た時、思わず声を上げてしまった。
が、それは相手も同じだったのか、現れた者も「きゃっ」と小さな悲鳴を漏らした。
現れたのは一人の女性プレイヤーだった。白い帽子を被り、緑を基調とした服に身を包んでいる。シノンと違いファンタジー系のデザインだ。

二人は示し合わせたかのように動きを止め、互いを見つめ合ったまま一言も発することができなかった。
しかし、それもすぐに終わった。
シノンと目を合わせた後、白い帽子の少女は力なくその場にへたり込んでしまったのだ。
彼女ははぁと息を吐きながら自分の胸を押さえている。よほど緊張していたのかもしれない。

「えーと……大丈夫?」

その姿を見たシノンは思わずそんな声を掛けた。
どうやら今度の遭遇は戦わずに済むようだ。そんな、束の間の安堵を胸に抱えながら。












「出会いってのは不思議だよな……」

おでん屋台に腰かけながら、クリムゾン・キングボルトはぼやいた。
その言葉尻には相変らず倦怠感が滲み出ていたが、それでも完全なる独り言だった先ほどまでよりはマシだった。

「ふむ、そうだな。一期一会という言葉があるが、何気ないところで人間が、意外にもずっと続く縁になったりする」

対するは初老の男だった。黒いローブを羽織った彼は、大剣を傍に置き、クリキンと肩を並べおでん鍋を眺めている。
彼もまた同じようにバトルロワイアルに巻き込まれ、街を歩いていたところ、クリキンと同じようにこのおでん屋を見つけ、こうして同席するようになったのだ。
不思議な出会いもあったものだ。こんなことがなかったら、彼とは絶対に知り合うこともなかっただろう。
しかし……、と思いクリキンは屋台の奇妙な風景を今一度眺めた。
おでん屋に座るネジ。その隣にファンタジー風の男が追加されたことで、心なしかより一層混沌な空間となった気がする。一体この空間は何なのだろうか。
そんな話を振ってみると、ローブの男――ワイズマンは水を煽りながら、

「エントロピーの増大という奴かな」
「は?」
「放っておけば、どんどん物事は無秩序な方向へ進んでいくという話だ。
 どうやらこの場は多種多様なネットゲームをごちゃ混ぜにしているようだからな。こうなるのも必然だ」

少し話してみて分かったが、どうやらこの男は中々理屈屋のようだ。
初老のアバターに違わず、常に落ち着いた様子で、様々な知識や含蓄深い意見を述べる。そんな人間らしい。
沖縄に引っ越して以来、デュエルアバターでは年下のヤンチャな少女とばかり話してきた自分には慣れないタイプの人間であった。

(ルー坊マー坊もコイツの百分の一くらい落ち着きがあればなぁ……、まー齢が違うから比べてもしゃあねーか)

無論、ワイズマンのリアル年齢は分からないが、きっとそれなりの高齢なのだろう。
二十年前ならいざ知らず、現代においてネットゲームはもはや若者だけのものではなくなっている訳だし。
そんなことを考えつつも、ワイズマンと適当に情報交換する。

ワイズマンの言葉通り、この「VRバトルロワイアル」には様々なネットゲームをシャッフルしているようだ。
ワイズマンは「The World」というMMORPGかららしい。クリキンはバーストリンカーのことを適当に誤魔化しながら話した。

「ふむ。ところで君に幾つか聞きたいことがある。同じネットゲームでの有名プレイヤーなどを教えて欲しい」
「有名プレイヤー……うーん、俺は大分一線から離れてるからなぁ」

ワイズマンの不意の問い掛けに、クリキンは頭を捻った。
彼は親の離婚により三年前より東京を離れ、今では沖縄にてひっそりとバーストリンカーを続けている身だ。
三年前と今では面子もまた変わっているだろうし、自分の情報はいささか古いだろう。

「そうだなぁ……王という有名プレイヤーが居て、《剣聖》とか《絶対切断》とか呼ばれていたな。ソイツらがレギオンというギルドを束ねている感じだ。
 しかし、何でそんなこと聞いたんだ?」
「いや、この場にどういう基準で呼ばれたのかが気になってね。全くのランダムなのか、それともある程度有名どころを選んでいたのか。
 今後他のプレイヤーと接触するに当たって、他のゲームのことも調べておきたいんだ。
 私なんかは情報通としてそこそこ名が通っていたと思うが……まぁ《フィアナの末裔》や《鋼の貴公子》などとは比べ物にならないだろうが」
「俺もまーそれなりに名は知られていたと思うが……三年ほど離れてるし、有名とは言い難いな」

クリキン、クリムゾン・キングボルトもかつてはレギオン《オーロラ・オーバル》に属し、《史上最強の名前を持つ男》の二つ名(※《史上最強》ではない)を持っていたバーストリンカーだ。
名前だけが先行して通っていたきらいはあるが、それでもレベル7のリンカーとしてそこそこ名が知られていた。
が、それも三年前の話だ。
ゲーム運営の思惑は知らないが、仮に各ゲームの有名プレイヤーを選出しようとしていたのなら、自分は選ばれないだろうと思う。
選ばれるとしたら《王》――先日久しぶりに顔を合わせることになった《絶対切断》のブラック・ロータスなどだろう。

「ふむ、そうか……」

一通り適当な情報交換も終わったところで、ワイズマンはそう言って腕組み考える素振りをした。
彼なりに考えを纏める必要があるのだろう。邪魔しないで置くべきか。
クリキンは何も言わず、今一度おでんを見た。何も変わらないおでんがそこにあった。

(これ、食えねーんだもんなぁ……)

どうやらこのおでん屋、おでんを食べるのに特殊通貨が居るらしく、残念ながらはんぺん一つ口にすることもできなかった。
それはワイズマンも同じらしく、こうして水を飲むことで気を紛らわせている。
B-SETなる《ドローン》を睨んだ。どうにか交渉できないかと思ったが、どうみてもそんな複雑な思考ができそうには見えなかった。

しばしの沈黙が訪れた。
ワイズマンは黙って思考を巡らせ、クリキンはだらしなく屋台に突っ伏している。
おでんの湯気が昇って行くのを見て、クリキンはこの妙に弛緩した空気に疑問を覚えた。
突然拉致され、殺し合いを強要される。一日以内に誰か殺さなければ、ウイルスによって自分も死ぬ。
と、状況だけ見れば何処までも絶望的である。にも関わらず、自分はこうして奇妙な落ち着きを払っておでんの屋台に座っている。

危機感、緊張感が足らないのではないか。自分でもそう思うのだが、今一つ身に力が入らないのも事実だ。
それは第一に、自分ではどうしようもないという諦観があるのではないだろうか。この状況を打破する方法など、自分には思いつかない。
そして何より、これが現実であると思えないのだろう。
バーチャルは何処まで行ってもバーチャル。現実を侵食することはない。
無論、それは幻想に過ぎない。バーストリンカーという力は現実にダイレクトに影響を与える力を持っているし、フルダイブ技術の黎明期にはゲームから始まり多くの犠牲者を出した凄惨な事件があったと聞く。
だから、ただ信じたくないだけなのだろうか。自分がデスゲームに巻き込まれたと。
こうして冷静に自己分析できるくらいには落ち着いている訳だし、それはあり得る話だった。
何にせよ、緊張感が足らないのは事実だ。

そうは思ったが、目の前のおでんを見て、何か心が弛緩していくのも事実だった。
クリキンは何度目になるか分からない溜息を吐いた。












「はぁ……」

ぴんと張りつめていた緊張感が一時的に解け、アトリは思わず安堵の息を吐いた。
角から誰かが出てくるのに気付いた時には身体に電流のような戦慄が走った、現れたのが「あのピエロ」でないことに気付いて、するりと身体から力抜けた。
その際に尻餅を着いてしまったが、出会った相手――シノンというらしい青い髪の少女が親切にも助けてくれた。

礼を言って、アトリはシノンに対し軽く自己紹介をした。
思えば少し軽率だったかもしれない。が、それでも一人で街を走っていた孤独が紛れたことの喜びが先行してしまった。

「うん。えーと、よろしく。アトリ」
「はい、よろしくお願いします! シノンさん」

笑みを浮かべそう挨拶したアトリだったが、そこではっとして表情を凍らせた。
安堵で足を止めてしまっているが、自分は今危険人物から逃走中の身だ。
ウズキとの合流も急ぎたい。故に手短にシノンに状況を伝えねばならない。

「あの」
「あの!」

そう思い、口を切ろうとした結果、シノンと言葉が重なり合ってしまった。
二人は気まずげに互いを見た。沈黙の後、シノンが「先にどうぞ」と促したので、アトリは礼を言って説明を始めた。

「私、今逃げてるんです。その、変なピエロと槍を持った危ない人が……」

説明をしていくと、シノンの顔がみるみる曇っていくのが分かった。アトリも、自分が今どんな顔をしているのか気になった。
一通り説明を終えた後、シノンは神妙な面持ちで口を開いた。

「ごめん、私も似たようなものなんだ。かなりの危険人物からギリギリ逃げてきたところ」

シノンが言うに、彼女もまた逃げている最中のところだった。
黒スーツの危険なPKを何とか退けることには成功したものの、倒したかどうかまでは確認できないという。
アトリとシノンは顔を見合わせた。
二人は今酷似した状況に置かれているのだ。そのことに親近感に近いものを抱かなくなかったが、何よりこのマク・アヌが如何に危険な場所かが分かってきた。
確認されているだけでも三人の危険なPKが居る。話を合わせるに、共に強大な力を持った難敵だ。

「……とにかくこの街からは脱出した方が良さそうだね。アトリはこの街を知っているみたいだったけど、道順分かる?」
「はい。この街はマク・アヌと言ってThe Worldの街の一つです。何かちょっと違うみたいですけど、たぶん分かると思います。
 でもウズキさんが……」
「分かってる。そのウズキって人も探しながら行こう」

二人で話を進めながら、適当な方針を定めた。
街の脱出。無論、街の外に行けば安心だという保証はない。更なる危険人物が居るかもしれない。
とはいえ、危険人物がうろついている場で身を隠す訳にも行かない。ウズキの捜索も必要な以上、一旦別の場に逃げ延びて状況を立て直すべきだろう。
そう結論を出し、二人は夜の街を歩き出した。このまま「黒スーツ」にも「ピエロ」にも遭遇しないことを願いながら。

が、

「クスクス」

歩き出した二人が再び出会った。
狂った愛のピエロと、哀れな無辜の怪物に。
行き合ってしまったのだ。








「突然の再会ってのは驚くよなぁ」
「そういうものかな」
「ああ、この前思いがけないところで知り合いと会ってなぁ、色々驚きの連続だった。
 ――それに出会いは不思議っつうけど、別れも不思議な感じでやってくることでもあるんだよなぁ」

もう何杯目になるのかは分からないコップを空けながらクリキンは言った。
何でこんな話になったのかは分からない。何でこんな話をしようと思ったのかも分からない。
しかし、ワイズマンと適当に話していく内に何となく身の上話のようなことをしていたのだ。
まさかこの水が実はアルコールだという訳でもあるまい。デュエルアバターは味覚まで再現できるし、アルコールが分からなくなっているなどということもあるまい。
おでん鍋からは相変わらず湯気が立ち上っている。場酔いという奴だろうか。

「三年前までの俺は沖縄に来るなんて思いもしなかったし、色々唐突で突然なこともある」
「そうだな……私も、不意に人脈が切れてしまうことがある。
 リアルで何があったのかまでは知らないが、何の前触れもなくログインしてこなくなるプレイヤーも居たな。
 あんまりに突然だった時は事件の臭いを感じた」

ワイズマンの言葉に耳を傾けながら、クリキンは思った。
もしかしたら自分は、情報屋を名乗るこの男に良いように情報を吸い取られたのだろうか。
だとしたら中々油断ならない男である。デスゲームに乗る兆しはないのはありがたいが。

しかし本当に居るのだろうか、とクリキンは思った。
こんなバカげたゲームにほいほいとPKしてしまうような輩が。
ゲームが始まって数時間が経つが、クリキンが出会ったのはこのワイズマンだけだ。
ワイズマンも似たようなものらしく、未だそんな危険人物とは出会ったことがない。
無論、ネットにはマナーを欠いた人間は大勢いる。どうしようもない程の悪意を持ったバーストリンカーも居た。
だが、だからといってこの場でゲームに乗る人間がそう居るとも思えない。何せ人の命が関わっているのだ。
0ではないにせよ、これを現実と認めPKとなるプレイヤーがどれほどいるのか。
クリキンは疑問だった。














「クスクス…… マタ アッタネ
 ……君ヲ見テイタラ オ腹ガスイテキタヨ
 スパイス ハ ナニガイイカナー ヤッパリ、キイロイマスタード ヨリ マッカデマッカ ナ ケチャップダヨネ!」

本能が危険を告げている。アトリは再び遭い見えたことに、身の毛がよだつのを感じた。
その狂ったピエロはアトリを見て心底嬉しそうにそう言ったのだ。
その言葉は明らかに食欲を孕んでおり、アトリの理性はその在り方の理解を全力で拒もうとする。

「大丈夫、アトリ?」
「シノンさん……」

アトリの様子を見かねたのか、シノンがそう語り掛けてくれた。
その手には銃が握りしめられている。戦う気なのだ、彼らと。

「勝てるかどうかは正直分からない。でも……!」

シノンの言葉は強かった。
彼女だって怖いだろうに、それでも確かな意思を以て敵に立ち向かおうとしている。

「戦えないなら、アトリは逃げても良い。私が時間を稼ぐから……」

脳裏にウズキの言葉がフラッシュバックした。
瞬間、アトリは全身を刺されるかのような罪悪感を抱いた。
「見捨てた」「のうのうと逃げ延びた」そんな無慈悲な言葉が心の中を駆け巡る。
ウズキはどうなったのか。こうしてピエロたちが現れたということは、まさか彼は――

「じゃあ銃声がしたら……」
「駄目です!」

アトリは思わず大声を張り上げた。
突然のことに、シノンが驚きに目を見開くのが分かった。
アトリは逃げたくはなかった。先ほど感じた公開をもう一度繰り返すなんて真似だけはしたくなかった。
ハセヲに会う前、榊に着き従っていた頃の自分ならここでまた心が折れていたかもしれない。
でも、今の自分は違う。違うと信じている。
歩くような速さでも良い。ゆっくりと、でもしっかりと前に進んで行かなければならない。
そう決めたのだ。

「戦います……ここで逃げていたら、駄目なんです。自分がどこに居るのか、分からなくなってしまいそうで……」
「でも、アトリ……」
「戦えます。戦って、生き残るんです」

アトリの言葉に強い覚悟を感じたのか、シノンはそこで「分かった」と短く返した。
ピエロと槍使いはまたも訳の分からない言葉を交わしている。
理解できない怖さを感じる。足が竦みそうになる。憑神はまた呼べないかもしれない。
問題なのは心だ。自分の心。
碑文の力を解放するためには、力に振り回されない強い意志が必要となる。
アトリは前を見た。二人の狂人から決して目を逸らさぬよう、しっかりと前を見据えた。

「おお! 立ち向かってくるか!
 おぞましく、汚く、弱く、裏切りに塗れた人間共よ!
 我が妻を討たんとするのなら、せめてその力を示すが良い! 戦士よ!」
「ランルーくん ハヤク ハヤク タベタイ!」

「狂人……ここを乗り切らないと朝は迎えられない、か」
「はい、シノンさん。行きましょう」

徐々に明るくなってきているとはいえ、夜明けはまだ遠かった。
それでも戦う意志を折ることなく、生き残ると言う確かな覚悟を持って、彼女たちは戦いの火蓋を切った。
















「じゃあ小屋に?」
「ああそうだ。そこを目指していたんだ。何かあると思ってね。
 しかし、屋台に思いのほか長居してしまったな」

暖簾をくぐりながら、クリキンとワイズマンが言葉を交わしている。
話し合った後、結局二人は共に行動することにした。ワイズマンの予定通り二人で小屋に向かい施設を調査するのだ。

「とにかくよろしく頼むよ。キングボルト」
「その呼び方はちょっと小恥ずかしいが、まぁ俺もよろしく頼むわ。
 そういや移動するってんなら、良いモンがあったわ」

そう言って、クリキンはメニューからあるものを取り出した。
黒光りするフォルム、ゴテゴテとしたボディにはどことなく威圧感がある。
バイク。
The World R:2においてプチグソに代わる移動手段として実装された装備である。

「これは……使えるのか?」
「んーまぁ何とかなるだろ。こっちのが断然速いし」
「それもそうだが……そうだな、とりあえずこれに乗って小屋に向かうとするか。」

慣れない手つきでバイクに跨ったクリキンを見て、一瞬の逡巡の後ワイズマンもまた後部座席に乗り込んだ。
どうにも上手く行く気がしない。そもそもこれは二人乗りができるのだろうか。
そんな疑問も浮かんだが、失敗しても大ダメージを受けることもないらしいし、とりあえず試してみるのも手だろう。
ネジの腰(でいいのだろうか?)に手を回すのは何だか奇妙な心地がしたが致し方ない。

(早く他のプレイヤーと会って情報を集めたいものだ。自分の思考を纏めるのにかまけて長居をしてしまったが……)

ちら、とワイズマンは後にしたおでん屋を見た。
マク・アヌの外観にそぐわぬそれは、勿論ワイズマンの記憶の中にはないものだ。
先ほどのグランティのように、どうやら微妙に仕様が変っているらしい。
かと思えば全く見覚えのあるマク・アヌがあったりするのだからよく分からない。

(中々興味深いな。とにかく情報を集めよう)

そんな胸中を抱えながら、ワイズマンを乗せたバイクは街を行く。

ワイズマンの方針は正しかった。彼は情報を集めるべきだった。できればもっと早くに。
彼らは知らないのだから。この街に潜む危険な者たちを。
クリキンも、ワイズマンも、この場に呼ばれていたのはゲームのプレイヤーだと思っていた。
そこに盲点があった。
情報の扱いに長けていたワイズマンでさえ、ゲームでなく、実際に人類の存亡を賭けた戦争をしている者たちの存在に想像するのは無理だった。

彼らを姿を影から覗く一人の影があった。
黒のスーツにサングラス。表情を読ませない無機質な存在。
彼は人間ではない。機械に創られながら機械に反旗を翻し、人間も機械も、全てを敵に回そうとしたプログラム。

スミス。
そう呼ばれた存在が見ていた。
だが、彼らはそのことを知らない。知らないまま、彼らは行く。






【E-2/マク・アヌ/1日目・黎明】

【ランルーくん@Fate/EXTRA】
[ステータス]:魔力消費(中)
[サーヴァント]ダメージ(小)
[装備]:なし
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品2~5、銃剣・月虹@.hack//G.U.
[思考]
基本:お食事をする。邪魔をするなら殺す。
1:美味しそうな娘(アトリ)を食べる

【シノン@ソードアートオンライン】
[ステータス]:HP50%弱、疲労(大)
[装備]:FN・ファイブセブン(弾数9/20)@ソードアートオンライン、5.7mm弾×100@現実
[アイテム]:基本支給品一式、プリズム@ロックマンエグゼ3
[思考]
基本:この殺し合いを止める。
1:謎のピエロ(ランルーくん)をアトリと共に退ける
2:殺し合いを止める為に、仲間と装備を集める。
[備考]
※参戦時期は原作9巻、ダイニー・カフェでキリトとアスナの二人と会話をした直後です。
※このゲームには、ペイン・アブソーバが効いていない事を身を以て知りました。
※エージェントスミスと交戦しましたが、名前は知りません。
 彼の事を、規格外の化け物みたいな存在として認識しています。
※プリズムのバトルチップは、一定時間使用不可能です。
 いつ使用可能になるかは、次の書き手さんにお任せします。

【アトリ@.hack//G.U.】
[ステータス]:HP100%、情緒不安定
[装備]:なし
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2(杖、銃以外)
[思考]
1:戦う
2:ハセヲに会いたい
[備考]
※参戦時期は少なくとも「月の樹」のクーデター後
※憑神を上手く制御できていません。不発したり暴走したりする可能性があります。



【F-3/マク・アヌ/1日目・黎明】

【エージェント・スミス@マトリックスシリーズ】
[ステータス]:ダメージ(中)
[装備]:無し
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~3
[思考]
基本:ネオをこの手で殺す。
1:殺し合いに優勝し、榊をも殺す。
2:シノンは出来れば、ネオに次いで優先して始末したい。
[備考]
※参戦時期はレボリューションズの、セラスとサティーを吸収する直前になります。
※ネオがこの殺し合いに参加していると、直感で感じています。
※榊は、エグザイルの一人ではないかと考えています。
※このゲームの舞台が、榊か或いはその配下のエグザイルによって、マトリックス内に作られたものであると推測しています。

【ワイズマン@.hack//】
[ステータス]:HP100%
[装備]スパークブレイド@.hack バイク(二人乗り)
[アイテム]:基本支給品一式、サイトバッチ@ロックマンエグゼ3
[思考]
基本:バトルロワイアルを止める
1:F-4の小屋に向かう。
2:仲間がいるのならば合流したい。
3:ロックマンが殺し合いに乗らないならサイトバッチを渡す。乗っていたらサイトバッチを破壊する。
[備考]
※原作終了後からの参加です。

【クリムゾン・キングボルト@アクセル・ワールド】
[ステータス]:HP100%
[装備]バイク@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2個
[思考]
基本:バトルロワイアルを止める
1:ワイズマンと共にF-4の小屋に向かう。
[備考]
※原作「最果ての潮騒」終了後からの参加です。

【バイク@.hack//G.U.】
ギルドマスターになると乗れるようになる乗り物。
街でもダンジョン内でも乗り回せ、移動時間の短縮になる。また攻撃判定があるので不意打ちにも使える。
ショップでパーツを購入することでカスタマイズすることも可能。


029:黄金鹿と嵐の夜 投下順に読む 031:貴方の魂にやすらぎあれ
029:黄金鹿と嵐の夜 時系列順に読む 031:貴方の魂にやすらぎあれ
016:凍てついた空は時には鏡で ランルーくん 042:串刺城塞
004:守る為に戦う者、奪う為に戦う者 シノン 042:串刺城塞
016:凍てついた空は時には鏡で アトリ 042:串刺城塞
004:守る為に戦う者、奪う為に戦う者 エージェント・スミス 047:縦横無尽のエージェント・スミス
021:三者三様 ワイズマン 047:縦横無尽のエージェント・スミス
初登場 クリムゾン・キングボルト 047:縦横無尽のエージェント・スミス

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最終更新:2013年07月17日 23:18