プラネットクロニクルズ

・作業しにくさ(オンラインに依存?)
・もうすでに「飛ぶ」事件はおこっている!
・編集はコピペですべき
・gmail(執筆)>@wiki(週一の整理)>ワープロ(確定)
・オフラインで原稿は保存しておくこと

storybookを導入しましょう。http://www.moongift.jp/2008/11/storybook/
プラクロデータ
■①■
storybookをインストールすると以下にディレクトリが作成されます。下記フォルダ内に解凍してください。
XP
C:Documents and Settings\Users\.storybook\projects
ビスタ多分ここ
C:\Users\frodo\.storybook\projects
*フォルダ"Users"は格パソコンに登録されてるユーザー名です。
■②■
storybook→プロジェクトの選択画面でpurakuroを選択、開く。

PLANET CLONICLES CONTENTS
目覚め
眠り姫
女がいない
ハルカ
ロゴ
長官
長い話
ガニメデへ
スイーパーのしごと
地下鉄



今後この罫線内の◆で連絡、指示を出し合うカタチにしましょう。
また下のコメント部では簡単な更新履歴を書いてください。
ではひきつづき4話以降の書き込みをすすめていきます。
ぜひタグもおぼえて使ってください。このページのずっと↓の方に書いてあります。

◆冒頭の役割
ストーリーを大きく隠喩させる>>>書き出しはさらに検討
設定を提示する>>>キャラクター・仕事・世界感

◆プロット部より
I>O
キャラクターの書き込みをお願いします。人間関係をよりリアルに設定してください。
3人称だとドライになりがちなので会話と心理描写の1人称で進行する部分を多めにいれていってください。セリフもあいまいな箇所を残したまま要点だけ進行していきますので、びしびし変更していってください。名セリフも期待しています。(090713)
了解しました(090713)
かけあいも長くしてもらったほうがリアルかも。ストーリーなんか関係ねえ、小説の魅力は会話なんだよって感じで攻めてください(090714)


I>K
とくに描写の書き込みをお願いします。冒頭では宇宙船のデザイン(インテリア・エクステリア)をお願いします。細かい色の指定など想像を助ける描写をたくさんいれてください。
比喩表現などのいいまわしの部分もお願いします。

◆キャラクターデザイン部より
O>I

O>K

◆描写デザイン部より
K>I

K>O


  • ちょこっとプロットを書き足しました -- K (2009-07-3 22:48:38)
  • 11-12話、大辞典更新しました。 -- I (2009-07-13 22:58:30)
  • ちょっと書きました。うう熱帯夜だ -- okuno (2009-07-14 01:22:51)
  • 13話、細かい部分に手をいれました。 -- I (2009-07-15 01:57:20)
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冒頭


「一次元」について思いをめぐらせていた。この宇宙の始まりは一次元だという。一次元ということはどういうことだろう。この世界が三次元、平面が二次元、ただの点が一次元。点ってなんだ?その点が球体なら三次元、モニターにあらわれるドットが欠落した部分のようなものなら二次元。ゆっくりと三本の軸が伸びていき、それらが交わるところに真っ白の点ができる。そこでゆっくりと軸を消し去ろうとしてみるが、うまくいかない。もう一度。今度は三本の軸すら交わらない。ゆっくり、慎重に。いつもやっているようにモニター目標物にロックをかけるように。ドットが正確に重なるように。二本にしてみよう。二本なら簡単なはずだ。そこにズームアップしていく。本当は大きさもないはずだ。しかし、点ときいて小さなものを考えていたが、大きければどうだろう。巨大な点だ。巨大な点がはじけ飛んで真っ黒な宇宙が拡散していく。どこまでもどこまでも。白い星がまじりながら拡がっていく。

「うあっ」
 フェデリック=L=コースマスは素っ頓狂な声を上げて飛び起きた。いつもの悪夢だ。滞在中の一週間は見なかったのに、タイタンの重力圏から離れてからは、もう三日も続いている。
(ちくしょう、ほとんど寝た気がしねぇ……。ただでさえ重力障害で疲れてるってのに)
 伸びきったヒゲをなでながら、樹脂で成型されたクリーム色の船室から這い出した。交代の時間を告げるアラームの乾いた音が左手のリストトップコンピュータから鳴るのを、右手で覆う。
 端末を手前に掲げるとコクピットのドアがわずかな稼働音を立てて開いた。
「おう、眠り姫。やっと起きたかよ」
 口の端をゆがめながら、イタオスが声をかける。操縦席の床に置かれたタンブラーの底には、乾いた合成酒が樹液のように固まっている。

 イタオスは重力障害に強い。あまたある火星民族のうち、一番屈強な体を持つペノーカ族なら、なおさらだ。赤い肌には、火星種族の特徴である筋張った腱が盛り上がっている。
 フェデリックは、いつもトレーニング室で過ごしている彼の筋力増強メニューを想像しながら、わざと落ち着き払った声で言った。
「まあな。で、いまどのあたりだ?」
 イタオスはゆっくりと左腕の端末からジャックを引き抜き、首を傾げながらコードを引きイヤフォンを外す。
「ガニメデまで、あと三日半、いや四日ってとこか」
「四日?、いつの間にそんなに短縮したんだ?」
 フェデリックが言い終わらないうちに、イタオスの笑い声が船内に響き渡った。
「おまえ、丸一日寝てたのに、気づいてないのかよ」
==========================okuno


「じゃあ当直も終わったし、おれはもうメシ食って寝るぜ」
 灰色の縮れた髪をゆらしながら操縦席のシートから立ち上がり、作動音がかすかに鳴りイタオスの気配がドアの向こうに消える。小さく柔らかな操縦席に座ったフェデリックは大きなため息をついた。地球育ちの二八歳にはない切れ長の目に、疲れがにじんでいる。交代直後は体がじんとして目の奥に何かが沈んでいくようだ。どろりとした比重の重い液体がゆっくりと流れ込んでいくような。さっきみた夢の感覚が残っている。
「あのときだ。俺はまだあのことを悔いているのだ。」

船内から見ると外は真っ暗な闇だ。
きっと外から見れば、真っ暗な闇の中を小さなドットが見えるだろう。移動しているかどうかわからないくらいのスピードでじっとしているのだろう。

 コクピットの小さなメインスクリーンがにじんでいる。航路と目的地までの距離、時間が刻々と変化していく。宇宙のしじまのなかをこの「空間」が移動している物的証拠のように航路上にちいさな点が映り始める。といっても、光のないこの宇宙では擬似的に描きだされた便宜的な「画像」にすぎない。「ゴミ」だ。彼らはそう呼んでいる。漫然とガニメデへの航路を確認しながらフェデリックはつぶやく。
「ここも汚くなったもんだな」
感慨ではなく変化を報告するような、とても小さな声だった。

 人類がその領土を宇宙空間に拡げ初めてまだ数十年しかたっていないというのに、遺棄されたゴミが星という星を覆いつくしている。肉眼で確認はできないが、球体のまわりをびっしりと小さな点がおのおの異なった弧を描きながら回転している。
それゆえに惑星にエントリするには航路演算の大半の時間をこの「ゴミ処理」に使うようになった。しかもガニメデのように質量が巨大になればなるほどゴミだらけだ。旧型のメカを積んでいては、物理的な航行速度より「頭のよさ」でそのスピードは左右される。ナビゲーションシステムが見落とせば即衝突、自身もゴミ衛星の一部と化してしまう。

「ま、だから俺たちのようなスイーパーが成り立つんだけどな」
テューボがその巨体を揺らしながら床面のハッチをあけた。すこし、窮屈そうに背をまるめてコクピットに入ってくる。メインスクリーンを覗き込んだ彼は、フェデリックの脇から見慣れた数字たちを眺めながらいつものようにキーをたたく。2、3ウィンドウを続けざまに切り替えて値をチェックした。
義手が黄土色に鈍く輝いている。そのゆっくりとしたなめらか動作には重いグリスがしっとりとなじみ、少しも軋む音などしない。
フェデリックはモニターから目を逸らし、天井を見上げて、大きく息を吐いた。

 相対的な理由だが、一般に船は年々航行速度が遅くなっていく。不思議に思えるが今だに技術というものは進歩する。だからといって船を買いかえる、買いかえられるのはごく一部の金持ち企業だけだ。個人では船の認可を受けるのも面倒なうえに、到底手が出せる金額ではない。
頑丈だけが取り柄の船。テューボがかつて廃船班にいたころ、職務上スクラップから再生させた船だ。その特殊用途ゆえか、度重なる改造ゆえかこの3人の船は異質なフォルムをしている。基本設計は当時一流だった素体も今では鉄屑同然の価値だ。一般人ではもうこんな船に乗っている人間はいない。そのフレームに旧式部品の寄せ集め。テューボが手を入れているからまあ動いているようなものの、タイタンーガニメデ間で1週間もかかるようではポンコツの名もいただけない。とはいうものの彼らの「業務」に必要なフックやドリルを動かす動力を搭載するにはいたしかたない。星間飛行のスピードよりその日のメシだ。彼らの職業はスイーパー。惑星管理局より認可をうけているれっきとした「公務員」だ。
惑星の軌道上にある無数の廃船、鉱物、廃棄物。ありとあらゆるものを回収して、物質をとりだし、還元する。物質に応じてそれぞれ、チームに分かれている。この3人は特殊鉱物班。表向きはそういうことになっている。

「フェド、荷物は重いがいまのところ問題なしだ」
牽引している巨石は、質量からして船の何倍かわからない。スイコミと呼んでいる吸引装置でホールドし、ワイヤーフックがボールを握りしめたようにがっしりと爪をたてている。大きさに違いがありすぎて船か岩かどちらが牽引しているのかわからない。
「船は悲鳴はあげているようだけどね。おまえの船、というよりおまえにはほとほと感心するな。他の船とは音が違うからな」
顔を上にむけたまま、フェデリックがいう。

「そうだフェド、どこぞの巨大企業がこの星のゴミを丸ごと買い占めるって話、きいたか」
「GC社の話か」
「ゴミとそのなかに埋まってる物質の総量を試算したんだそうだ。そいつを天秤にかけて」
 そのときだ。眼前のスクリーンに「HIT」の文字が赤く明滅する。まもなく鈍い衝撃が船全体を揺らした。

「船尾に……二、三発……と。へっ、ついにお出ましかい!」
 フェデリックは、上着を慌ただしく着込むと、首にかけてあった真空用のゴーグルをはめた。
「テューボ! ちょっと出てくる!」
 彼は、どんなにゴミが浮遊していようと、静寂だけは確かなこの宇宙空間に出て行くのを好んでいた。船体に攻撃を受けた場合、普通なら遠隔操作で対処する。が、この男は何よりも退屈を嫌う。それに自分の目で見たものしか信じないのだ。頑丈なハッチを3つ開錠したら真空エリアだ。装備を整えるまで20秒自動チェックにもう20秒。

「フェデリック、また君は何かを守ってくれようとしているのかい」
代わりに操縦桿をホールドしてテューボは思う。
モニターにはもう船外に出たフェデリックの位置が罰印で表示されている。

 ブリックbyブリック号の船体に長い影が落ちる。無重力の中、ハーネスから巨大なカラビナを繰り出して手すりを器用に伝っていく彼のゴーグルに、問題の箇所が映った。ゆっくりと周囲を見回してから、顔を船体に近づける。
(こりゃあ、火器じゃないな……ちょっと凹んでるだけだ)
 と、フェデリックの頭を、四角い影がかすめた。飛んできた方向を振り返る。いつの間に現れたのか、いまにも壊れそうな小型艇が停泊していた。中の人物がこちらを見つめている。
(星間難民か……出てくるんじゃなかったぜ……)

 たいていの星間難民は動力のない船で漂流する。はじめに惑星の重力に逆らうだけのスピードで飛び出さえすればいい。あるいは使い捨て燃料だ。宇宙航海法で星間難民救助の義務が定められているため難民に遭遇した船は必ず接触または回収の義務がある。
(やれやれ。)

フェデリックは慣れた手つきで船尾にある牽引ワイヤーのロックを解除した。スイコミには全部で6本ワイヤーフックある。現在は巨石を抱え込んでいるので、これは非常用の1本だ。いつもの座標位置の指定は行わずマニュアルで発射する。真空なので音は聞こえないがしゅるしゅるとワイヤーが渦を巻きながら離れていった。先端部がオートフォーカスで難民船まで向かっていく。

先端がフックしたのを確認すると腰のカラビナを付け替えて滑車を滑らせた。
「…………3、……2、……1」
無線でテューボが到着タイミングをアシストする。
リズムよく底部のハッチにつかまった。
(ハンドル式なんてずいぶん久しぶりだな。)
ハッチを後ろ手に閉めながら、わずかばかりの真空室に入り込む。

 船内は基本的に居住性はない。難民船は彼らのインナーワードで「棺桶」とよばれているくらい小さなロケットだ。狭い船内で人型の立体映像がぎこちなく動いている。
(外から見えた人影はこいつか。ったく。3Dホログラフィなんてずいぶん古風なガードプログラムだぜ。)
左腕のリストップコンピュータからアクセスを開始する。「0.00004sec.」スイーパーのごく基本的な権限で侵入に成功。影は瞬時に姿を消した。
(ま、こんな船がアレを持ってるわけないが。……!なんだ?!)

船内描写

 地球の、しかも女か?窓からわずかにのぞく細く美しく整った顔だち。女なんて遥か昔に絶滅したんじゃなかったのか?確かに映像で見た記憶がある。それにこのエングレーブは……。喉が渇く。
難民の「届出」のためのプロファイルディスクをコピーしようとしていたその瞬間だった。

「ERROR」

 

「……本物の眠り姫の棺桶だったってわけか。で? どうすんだ」
 動転したフェデリックの説明を受けて、イタオスが言う。
「心配ないわ!アタシならここにいるから」
フェデリックの左手がカン高い声をあげる。瞬時にこの状況が飲み込めたのはテューボだけだった。
 先ほど難民船で解除したガードプログラムこそダミーで、フェデリックがポートを開放した刹那、逆に相手のプログラムを寄生させてしまったのだ。
「ずいぶん古風だったのは俺のほうだったってわけ、か。」
「そゆことー。あとはあんたたちがアタシのロックキーを捜してくれればいーの」

 完全にハメられた。ロックキー?どうして自分でコールドスリープカプスル開けられない状況になってんだ??いやその前に、おいおいおいおい!こいつには俺のデータ一式が入ってんだぜ。会社に賠償金なんてはらったら船やらスイーパーのライセンスやらすべてがパーだ。それにどうやってこの広い宇宙からキーなんて探すんだ?わけがわからない!テューボ「組み合わせ」でハックできないのかよ?フェデリックの目配せにテューボが答える。

「ま、三億年はかかるよ、フェド」

(やれやれ。これが俺たちとハルカとの出会いだった。そしてしばらく「職務」をぶっちぎって逃走することになったいきさつだ。)

 

 大宇宙時代、そんな響きが懐かしくなるこの頃だ。人類は変わらざるを得なかった。
テラ(地球)郷愁と憂いそんなものを含んだ言葉を口の中で転がしてみる。
 オレはあそこを17歳のときに飛び出し、月面のシルバニアコロニーにいる叔父のところに転がり込んだ。まったくもってろくなところじゃなかった。
 地球でもっとも権威ある組織が世界環境管理局(GEAB)だ。当局の言うことによると、何でもわれわれ人類の最も至高とする価値は地球という惑星らしい。完全な保護管理下のもと、”あるべき自然な地球の姿”が再構成されつつある。邪魔なものはみな、宇宙(アウターアース)へ開拓という名前で追い出されたのだ。
 開拓民は赤子も同然だった。はいはいすらできなかった。宇宙病で、開拓団の2割が壊滅した。魚が空気中をおよげるかい?
 人類は宇宙人になる必要があったのだ。変わらねばならなかった。その過程で女性という存在はいなくなった。
 オレが女だといったのは、確かに地球でモニター越しに見たからだ。

 

 オンナはひさしぶりに目覚めてしゃべりたりないらしく、ぎゃあぎゃあうるさいのでフェデリックはリストをスリープさせた。
 船内にまたもとのしじまが訪れる。

(そうだ、思い出したGEABのロゴマークだ。ハルカの「棺桶」に彫られていたのは。おれたちはGEABにテラを追い出された。GEABは何もしてくれはしなかったんだ。どういうことだ?ハルカの乗っていた船自体はからきしだが中身は相当にデキがいい。逆に船は動力もないため速力もあがらない。カプスルはその長い航海にに耐えうるよう造ってある。)
 今のところGEABの計画によるものだと考えるより他なかった。

 GEABの「崇高な」理想のためにまず犠牲になったのは月だった。
「死の星である月を第二の地球として再生します」というのがあいつらの大儀で、テラの前にかならず月で実験が行われた。月さえ地球化できれば、あとはその応用という目論見だ。
 人工大気、人工太陽、人工水。
当初8つのコロニーが設計され、移住計画が進められたが、ことごとく壊滅した。46億年かけて創られたものが、1年やそこらで造れるわけもなかった。 その後、GEABからの支援は打ち切られた。火星への光速ルートが拓けたからだ。
 そしてまもなく光速航海法も実用化され、大宇宙時代の幕開けというわけだ。

 そう、月で最後に残ったのがシルバニアだった。生きること。生き延びること。凄惨なGEABからの独立戦争。いつか、テラと月には決着をつけなければならない。
 自分の中で先延ばしにしていた答えにけじめをつけるときがきたようだ。

 

「ペノーカの言い伝えには、難民を助けると必ずいいことがあるというが、これじゃあ面倒を背負い込んだだけだな。どうすんだ、フェド?」
 イタオスが三角形の耳をひねくりながら問いかける。
「知るかい! とにかくこのままじゃあ、おちおち仕事を続けられねえ。いったんガニメデ手前のセンターに降りようぜ」
 リストトップから「えー、せっかくお仕事手伝ってあげようと……」と声がした。すぐさまフェデリックは左手を振りまわす。
「うわわ、酔う酔う!」
 「……では」
 一人冷静なテューボがスクリーンにガニメデ近辺の惑星までの航路を映し出した。機械じみた高い声が響く中、フェデリックは上の空で、難民船に刻印されたGERBのロゴを見つめていた。
(「神の導き」。地球ではかつて、そんな言い回しがあったらしいが……)

 


「長官、例の件でご報告です」
「入れ」
 せむしのミュータントが、ドアを開けると、真っ白な服を着た長身の男が振り返った。手にしている紙の束の表紙には、繊細な文字でタイトルが書かれている。
 --惑星年代記
「モメンタム航法がほぼ実用段階にはいりました」伏せた額から長い毛が垂れる。灰褐色の頭皮と奇妙に長く伸びた4本の腕。緊張のあまり太く短い尾が震えている。
「惑星年代記(クロニクル)に記されている期日は承知しているな」
「はっ……」
 長官と呼ばれた男はしきりに紙の束を指で弄んでいる。
「まずは小宇宙内で使わせろ。チップにはミュータントレベルでもクラックできるようにそこそこ満足感のあるガードでもかけておけ。いずれ無償で流布される。圧倒的なスピードを手にした人類がその欲望を大宇宙へと広げていくのは時間の問題だ」
「御意……」
「星学者たちを召集しておけ」
 風防をかねた特殊ガラス製の大きな窓の外で巨大な惑星がゆっくりと昇りはじめた。

 

 船内ではテューボの長い講釈が続いていた。ハルカがテーブルの上で聴かされている。
「ウザいよー」
 他の二人はとっくに船室へと潜り込んでしまっている。

 --太陽系小宇宙での人類の繁栄は大きく3つの技術によって支えられた。まず、【星間光速航海法】。地球で開発されたものだ。これによって俺たちはひたすらどこまでもいけるようになった。モノとしてはこいつ、この小さなハコが膨大な演算して値をたたき出す。エンジンやらなんやらは意外とお前の時代から変わってない。旧式のままなんだ。スピードを増すために出力を上げるという方法ではどんなに巨大なエンジンになるかわからないからな。それに制御対応するチップ、まあオイラが持ってきたんだけどな、そいつをつけりゃあそれでOKだ。それから【異種交配技術】テラではありあまってた人類も宇宙では少なすぎた。ま、初期には犠牲も多かったしな。すべての源は地球上の生物であることは間違いないんだが、ありとあらゆる遺伝子の交配が強固な雑種を生み出したわけだ。
そして【グラブ】、簡単にいえば重力発生装置だ。あのGC社が開発した。はじまりはグラビティ・コーポレーションだったわけだ。しょせん人類は地に足ついてないと生きていけないもんなんだな。これで格段に居住性があがった。今じゃあどの船にもついてる、うん。結果資本がGCに集中して誕生したのが「プラネット・センター」、巨大娯楽施設だ。GCといえばいまじゃあこっちのほうが有名だけどな。お、見えてきたぜ。

 

 ホログラフィ、広域人工視覚といった技術が進んでも、宇宙船に窓は付きものだ。
黒いビロードの暗幕に、星々が散らばる。そこに燦然と輝く巨大な人工物が現れた。プラネット・センター。中央アトラスタワーを、居住区アルキュオネー、商業区マイア、レジャー区エレクトラなどが取り囲む立体都市だ。ハシケから行きかうシップのすがたが見え、各区画の外壁には企業のコマーシャルがせわしなく明滅している。ブリック by ブリック号の横を、豪華なファミリーシップが快速で過ぎ去っていった。

「ご講釈はおわったかい?さあて、羽を伸ばそうぜ!」
 すっかり寄港する準備ができたらしく、船室からフェデリックが出てきた。
「そうはいかない、フェド、まずシップの調整が先だ。遊びで寄るんじゃない、俺たちが抱えた問題の解決が先だ。それに一週間前からB4エンジンのプリバーナの数値が50から120の間で少しぶれるんだ、タンク加圧の根元がどうやら怪しいのだが・・・・・・。」
「イタオス! ガニメデの通貨レートを調べてくれ!」

 

「20分前の情報で約1:64だ」
イタオスが自身の端末から首を上げずに答えた。

統一レートでも買い物はできるが、現地通貨と両替したほうが少しばかり得なのと、当然なにかと便利だ。いずれにしてもまず、仕事の成果である巨石を引き渡さなければならない。

スイーパー業で処理するのは、違法に投棄された産業廃棄物、難破した船や小さなコロニーの建築物、開拓時に粉砕した巨石。大義名分は掃除屋だが、彼らのような小さな船ではその給料だけでは喰ってはいけない。取引の換算は質量であるため大手のデカイ船がスケールメリットを生かして金を荒稼ぎする。だから彼らは宇宙ゴミに含まれているレアメタルを狙う。
分別して精製してレアメタルだけを換金する。そんなまわりくどい商売は大手はやりたがらない。

「とりあえず、稼ぎの換金だ。」

換金した金は送金しなければならない契約だ。フェデリックたちのチームは特殊鉱物の回収を主としている。特鉱班は現在、4つのチーム(船)で編成されている。その4つを束ねているのが直属の上司となるロゴスという男だ。自身も船を所有している。巨船だが動きがよい。速いわけではないがとりまわしがいい。彼を象徴するような船だ、そうテューボが漏らしていたっけ。組織の中でもリーダーは幾人かいるが、とくに優秀という評判だ。ただ、それゆえに敵も多く、フェデリックたちも直接面会する機会はない。

「だが換金屋は面倒を好まないだろう。」

組織の決まりではキャプテンのフェデリックのリストップを提示しなくてはならない。精製し、含有量を確定したあと、その鉱物の最近の平均レートで手取りが決まる。
組織に属している以上、急激なレート変化はある程度緩和してくれる。バカみたいに儲かったりしないかわりにただのゴミになったりもしない。それが組織というものだ。

「握らすしかないんじゃないのか」
イタオスは窓の外を眺めている。
「まあ、そうだな」
テューボの画面はガスケットカタログのページを表示している。
「いや」
フェデリックが静かにさえぎった。
「規約にはクルーのリストップでも構わないことになっている。キャプテンが死んだ場合には」

二人が顔を向けた。
「それが手っ取り早い。今俺たちがしなければいけないことは換金だ、そっからさきはひとまずどうでも構わないだろう。仕事だからな、殺したってかまわないだろう、自分ぐらい。
イタオス、あんたにまかせる。船ごと換金屋に持っていってくれ。俺とテューボはいくところがある」

 

地下鉄の駅に向かって2人は歩いていた。
まず小型艇を借りなければならない。
「なあ」
フェデリックが話し始め、テューボが顔を向けた。

2人のたあいもない会話を。ただのどの奥には事故のことがある

だらだらと広い、船の繋留地をとぼとぼと歩いていた。高い位置からの街灯が幾重にも影を作っていた。たくさんの薄い影が交わってぐるぐるとまとわりついてきた。
フェデリックはテューボを気遣いながら、彼の後ろを歩いた。

しばらくいくとターミナルへつながる地下への階段があった。
テューボが階段を下り始める。

「ああ、そういや、俺、乗れないんだったわ」
フェデリックが左手を掲げる。リストップで改札するシステムだ。
一瞬間をおいてテューボが振り返って見上げた。
「わかった。いつも借りてるやつ、ここまで回してくる」
ゆっくりとあるいてきたせいかここまでひどく遠かったような気がしたが、ずっと先には3人の船がまだ小さく見えていた。


二人乗りの小型艇のデザインよろしく!また小型艇からの風景描写も。
ここで全員がバラバラになっているので、独白も少し入れたいです。



一方、ハルカとフェデリックの会話

「はじめてこんなに長く話したね。」
縁石に腰掛けてハルカと話しているとフェデリックのそばに猫が寄ってきた。
「おまえはいいね。」
「でも猫は話せない」
「話せなくてもわかりあえるじゃない」
「お互いそう思っているだけかもしれないけど」
「同じようなものじゃない」
猫が行ってしまうとハルカと少し目があったが、フェデリックはやさしくリストップをスリープさせた。


残ったイタオスの独白

それにしても、とイタオスは思う。留守番で残された船内には彼一人だ。フェデリックという地球人はつくづくお人よしだ。長い旅の中で船の中に何があるかはすべて把握している。あせることはない。まずはキッチンで飲み物をつくろうじゃないか。
(オレの見立てではフェデリックはP☆Cを探す任務を負っているはずだ……)
それに関しての情報をかならず隠している。
真っ赤な合成酒の瓶を冷却器にかけた。コップに2/3注ぐとあとは割る水を手にした。





合流した二人

最終更新:2010年01月11日 14:24
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