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My Escape(第1回)
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両横に開かれる扉。
それはまるで、彼女を避けるかのように開いた。単なる思い過ごしのような気もするが。
午後の六時。
秋も終わりの方に差しかかると、夜の訪れも早まる。空は闇に包まれ、都心部の人工光にも負けない輝きを放つ星達が、その存在を主張していた。
ゴォォォォォ……と電車のモーターが唸り、そう教育されているのであろう、単調なアナウンスが車内を満たす。
これから二十分以上、電車に揺られっぱなしだ。運悪く快速列車が来なかったので、今日はそれ以上かもしれない。
彼女は視線を天井に巡らせると、広告に目移りした。週刊誌、煙草、コーヒー、英会話塾などなど……こんなところに金かけるくらいなら、もう少し他の部分に使え、とツッコミでも入れたくなるくらい、様々な宣伝が踊っていた。
外を見る為に体を捻る。いつも見慣れた建物の数々。それなりの高層ビルもあれば、ちょっと外れの一般住宅街、川を渡ったり、自分の通っている高校とはまた別の学校があったりもした。
篠田千歳(しのだ ちとせ)は、一風変わった女の子だった。周囲からは「変な奴」と呼ばれ、いつも窓の外の風景に集中していたり、そうかと思えば学校で飼われている動物の世話……兎とかではなく、イグアナとか爬虫類系ばかりをだが……を唐突に始めたりと、とにかく訳の分からない女子生徒だった。
唯一まとも……と言ってはなんだが……に思えるのは、テニスの腕前くらいだろうか。一番という訳ではないが、大会などでも上位の選手とタメ張れるほどの実力を備えている……はずなのだが、どういう訳か部活には所属していない。書類上の登録はしてあるが、本人の気分次第で顔を出すかどうか決めるという、また訳の分からない思考の持ち主だった。
なにもかもが不意打ちのように唐突で、どこに迷走するか分からない。手綱をつけるだけ無駄、というのが、彼女の周囲からの評価だった。
そんな彼女も、疲れを感じる事がある。その一つが、テニス部の練習に出た時だった。
部活という性質上仕方のない事なのだが、その練習は大多数で行なわれる。人数が多ければ多いほど、その人口も比例して上がるのは確実だ。
そんな風に、大勢の人間の群れに入り、同じ練習を受ける事が、彼女にとっての苦痛だった。周囲の人間と同じ事をしたって伸びるべきものがない……それが彼女の考え方だった。
だから、いつも友達とテニスの練習をしていたのだ。二、三人で行なうそれは、戯れというレベルではなく、確実に試合そのものと言うに相応しい緊張感と気迫を伴ったものだ。だからこそ、他人が賞賛するくらいの腕を身につけたのだ。
だから、いつも部活は体がなまらない程度にするのが、彼女の習慣だった。
大衆に混ざる事に違和感を感じる彼女にとって、自分と他人との思考のズレを忘れるが為に、彼女はいつものようにして、電車の中で過ごす。そして今日もまた、それは例外ではなかった。
それはまるで、彼女を避けるかのように開いた。単なる思い過ごしのような気もするが。
午後の六時。
秋も終わりの方に差しかかると、夜の訪れも早まる。空は闇に包まれ、都心部の人工光にも負けない輝きを放つ星達が、その存在を主張していた。
ゴォォォォォ……と電車のモーターが唸り、そう教育されているのであろう、単調なアナウンスが車内を満たす。
これから二十分以上、電車に揺られっぱなしだ。運悪く快速列車が来なかったので、今日はそれ以上かもしれない。
彼女は視線を天井に巡らせると、広告に目移りした。週刊誌、煙草、コーヒー、英会話塾などなど……こんなところに金かけるくらいなら、もう少し他の部分に使え、とツッコミでも入れたくなるくらい、様々な宣伝が踊っていた。
外を見る為に体を捻る。いつも見慣れた建物の数々。それなりの高層ビルもあれば、ちょっと外れの一般住宅街、川を渡ったり、自分の通っている高校とはまた別の学校があったりもした。
篠田千歳(しのだ ちとせ)は、一風変わった女の子だった。周囲からは「変な奴」と呼ばれ、いつも窓の外の風景に集中していたり、そうかと思えば学校で飼われている動物の世話……兎とかではなく、イグアナとか爬虫類系ばかりをだが……を唐突に始めたりと、とにかく訳の分からない女子生徒だった。
唯一まとも……と言ってはなんだが……に思えるのは、テニスの腕前くらいだろうか。一番という訳ではないが、大会などでも上位の選手とタメ張れるほどの実力を備えている……はずなのだが、どういう訳か部活には所属していない。書類上の登録はしてあるが、本人の気分次第で顔を出すかどうか決めるという、また訳の分からない思考の持ち主だった。
なにもかもが不意打ちのように唐突で、どこに迷走するか分からない。手綱をつけるだけ無駄、というのが、彼女の周囲からの評価だった。
そんな彼女も、疲れを感じる事がある。その一つが、テニス部の練習に出た時だった。
部活という性質上仕方のない事なのだが、その練習は大多数で行なわれる。人数が多ければ多いほど、その人口も比例して上がるのは確実だ。
そんな風に、大勢の人間の群れに入り、同じ練習を受ける事が、彼女にとっての苦痛だった。周囲の人間と同じ事をしたって伸びるべきものがない……それが彼女の考え方だった。
だから、いつも友達とテニスの練習をしていたのだ。二、三人で行なうそれは、戯れというレベルではなく、確実に試合そのものと言うに相応しい緊張感と気迫を伴ったものだ。だからこそ、他人が賞賛するくらいの腕を身につけたのだ。
だから、いつも部活は体がなまらない程度にするのが、彼女の習慣だった。
大衆に混ざる事に違和感を感じる彼女にとって、自分と他人との思考のズレを忘れるが為に、彼女はいつものようにして、電車の中で過ごす。そして今日もまた、それは例外ではなかった。