判決
会社が組織的に北米市場における違法なカルテルに関与した事実が認められないとして、これを前提とする取締役・監査役の善管注意義務違反の主張を棄却。また、会社従業員によるカルテルへの関与について、取締役・監査役の監督義務あるいはこれらの者の法令遵守体制構築義務に基づく善管注意義務違反の主張を棄却。

事件概要
補助参加人(三菱商事株式会社)が北米市場において違法なカルテルを維持・形成させたとして起訴され、それによって生じた損害を補助参加人の株主が求めた事件。

判決に至った経緯
(1)補助参加人による本件カルテルへの組織的関与の有無
  それを認めるに足りる証拠はないとした。
(2)被告らの、カルテルに関与した会社従業員(以下Aとする)に対する監督責任
 Ⅰ.原告らは各被告の業務分担や担当部署を全く無視して、専ら取締役あるいは監査役であったことのみを根拠として善管注意義務違反を主  張し、再三の釈明にもかかわらず、業務分担等に基づく主張をしないことから、そもそも主張自体が失当であるとした。
 Ⅱ.ただ、Aの直属の上司であった被告ら2名についてAに対する監督責任が問題となるところ、①本件カルテルが補助参加人本来の商社ビジ   ネスと利益相反する側面を有すること、②Aが個人的動機により本件カルテルに関与し、そのことを補助参加人に内密にしていたことが推  認されること、③黒鉛電極(本件におけるカルテルの対象)価格の上昇について合理的に説明できる要因が存在していたこと等から、被告ら  2名に対する善管注意義務違反の主張も理由がないとした。
(3)補助参加人の法令遵守体制の構築義務違反について
 Ⅰ.補助参加人によって法令遵守体制に関する証拠資料が多数提出されたにもかかわらず、①補助参加人の法令遵守体制についての具体的な  不備、②本来構築されるべき体制の具体的内容、③これを構築することによる本件カルテルの回避可能性について何らの具体的主張を行わ  ないことから、原告らの主張はそもそも主張自体失当であるとした。
 Ⅱ.なお、補助参加人は、①各種業務マニュアルの制定、②法務部門の充実、③従業員に対する法令遵守教育の実地など、独占禁止法の遵守  をふくめた法令遵守体制を一応構築していたことが認められ、いずれにせよ、原告らの主張は理由がないとしている。

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最終更新:2010年07月01日 08:00