▼判決
粉飾決算を行った会社、代表取締役らの不法行為責任を認定。

▼事例概要
原告は、被告側が粉飾決算を行っていることを関知せずに被告側の株式を取得し、後に被告側企業が上場廃止となったため生じた損失を、被告側に求めた事件。

▼判決に至った経緯
(1)原告側は善意の第三者であり、善意の第三者に対して発生した直接損害
(2)被告側には粉飾決算を行っている自覚があり、株価が下落するという予見可能性が存在する
(3)上記の理由から、原告側は粉飾決算がなされているのを知らずに株式を購入し、損害が発生したのだから、被告側は不法行為責任を負うべき
(4)被告側取締役副社長は、代表取締役の監督を懈怠し、更には代表取締役の指示に従い、取締役に重大な過失に基づき取締役に粉飾決算を指示
(5)被告側取締役は取締役会に諮り是正を行う姿勢がなく、代表取締役および副社長の指示に従う
(6)以上から被告側全員に損害賠償責任を認定

▼リスク管理体制にフォーカスした主張
【論点1】被告企業の取締役副社長を担っていたY3に関して
  • Y3は財務部長および管理部長に対して粉飾決算の指示を行っていたため、損害賠償責任を負う(原告側)
  • Y3は、被告企業の代表取締役を監督する立場にあったにもかかわらず、この任務を懈怠し、粉飾を放置または幇助したため、故意または重大な過失あり(原告側)
  • Y3は決算報告書の作成に関与しておらず、また監査法人の監査も受けているため、承認した。さらに有価証券報告書やインターネット上での公告にも関与していない。(被告側)

【論点2】被告企業の財務・経理関係全般を担っていたY4に関して
  • Y4は、被告企業の代表取締役を監督する立場にあったにもかかわらず、この任務を懈怠し、粉飾を放置または幇助したため、故意または重大な過失あり(原告側)
  • 取締役就任は任期途中からのことであり、決算や有価証券報告書の作成・提出に関しては関与していない。また、粉飾決算の是正に関しては、代表取締役および取締役副社長に進言していたため、注意義務は尽くしている。(被告側)

【論点1に対する裁判所の判断】
  • 株式会社の取締役会は、会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事実のみならず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集または招集を求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務である。(最昭和48年5月22日)
  • Y3はY2の指示のままに、本来は取締役会に諮るべきである粉飾決算の指示を部下に命令していたのであって、損害賠償責任を免れ得ない。

【論点2に対する裁判所の判断】
  • Y4は粉飾決算を是正するよう進言してはいたものの、取締役会に諮るなどの措置を取らなかったため、損害賠償責任を免れ得ない。


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最終更新:2010年06月28日 21:01