「お姉ちゃん、演芸大会に出るんだって♪」
私はふと、体育の時間に聞いた憂の言葉を思い出しました。
(唯先輩、試験も近いっていうのに、何考えてるんだろう・・・。もしかして、何も考えてないだけなのかなぁ・・・。)
私は唯先輩の心配をしつつ、買い物を終えて自転車を走らせていました。
今日はとても風が気持ち良いです。
こんな日はのんびりお散歩でもしたいな、なんて思っていると、土手でギターを弾く、見覚えのある姿を見つけました。
「唯先輩」
「あ、
あずにゃん♪」
「こんなところで練習ですか?」
「試験前は音楽室使えない規則だし、家だと憂の迷惑になるかなぁって」
平沢唯先輩・・・私に「あずにゃん」というあだ名を付けてくれた人。まぁ、あずにゃんって呼ぶのは唯先輩だけなんですけどね。
唯先輩は、何かあれば「あずにゃん あずにゃん」と言いながら抱きついてきます・・・。
場所を選ばずに抱きついてくるから、最初は正直戸惑っていました。
でも、唯先輩と一緒に居ると、安心するというか・・・とても温かい気持ちになれる事に気付いたのです。
抱きつかれても、最近は嫌だなって思わなくなったし・・・、逆に嬉しいくらい・・・かな・・・。
身も心も慣れてきちゃったというか・・・。どうやら、私は唯先輩の事が・・・///
「やっぱり、演芸大会出るんですか?」
「あっ、憂から聞いた?」
「はい・・・」
「初めてのソロだからねぇ、緊張するよ♪」
「一人で出るんですか?」
「そうだよ♪」
唯先輩のソロかぁ。見てみたい・・・けど、心配です。練習時間も限られてるし、何よりも試験も近いんですよ?
「・・・試験勉強もしながら?」
「頑張るよぉ☆」
頑張る、かぁ。最近、唯先輩からよく聞く言葉だけど・・・試験勉強と演芸大会の練習の両立、一人じゃ大変ですよ・・・。
だけど、他の先輩達には試験勉強に集中してほしいからって誘わなかったみたいです・・・。
- 仲間を思いやりながら練習する姿を見て、私・・・唯先輩の力になりたくなりました。
「わかりました、私も一緒に出ます!」
「良いの!?」
「私、普段から一応勉強しているので、試験は大丈夫です・・・と思います」
「ありがとぉ、あずにゃーん♪」
唯先輩が喜びながら抱きついてきました。抱きつかれるのは、もう慣れっこだけど・・・でもやっぱりドキッとしちゃうんです。
今日も相変わらずですねぇ・・・。でも、私も唯先輩の喜ぶ顔を見れて、凄く嬉しいです///
「とにかく、曲決めて練習しないと・・・」
私は冷静に唯先輩から離れようとしました。唯先輩にはバレないように冷静を装っているけど、今凄くドキドキしているんですよ?
唯先輩も、抱きついてくる時は、少しはドキドキしてくれてるのかな・・・?
勉強に練習に、色々と大変になるけれど、一緒に練習する約束をして、私は家路に着きました。
翌日の昼休み、私はスケジュールを持って唯先輩のクラスに向かいました。
唯先輩の為に、無理のないスケジュールを組んだ・・・つもりだけど、唯先輩にはハードかな・・・?
ううん、私も傍で一緒に頑張るから大丈夫です!
とりあえず、お昼ご飯を食べたら、1時半~4時まで勉強、4時から6時まで練習、8時~10時まではまた勉強という感じです。
唯先輩のクラスに来たけど、呼ぶときっと・・・///
私の中では、安易に想像できました。唯先輩が抱きついてくる事を・・・。
嬉しいんですけどね!・・・だけど、やっぱり他の先輩達の前だと恥ずかしいな・・・///
なのでハグは阻止します!ホントは阻止したくないけど・・・。
「唯先輩!」
「あ、あずにゃん!・・・ヤッホォォォォォー!」
やっぱり来ました。どんとこいです!///・・・じゃなくって、阻止です!
私は感情を抑えて、スケジュールを唯先輩に突きだしました。
「えっっ!?」
「スケジュール立ててきました!まずは図書館で勉強です!」
「勉強疲れそうだよぉ・・・あずにゃん、3時のオヤツは・・・」
やっぱりそういう所は唯先輩ですね。美味しいお菓子が無くても唯先輩は出来る人です。私が鍛えてあげますよ!
「ありません。私で我慢してください」
「・・・え・・・?あ、あずにゃん・・・?」
暫く流れる沈黙・・・って、あれ? 私何かおかしい事言ったかな?
「梓・・・何言って・・・」(゚д゚;)
沈黙を破った澪先輩の一言。ビックリしたような表情をしているけど、何が起きたのか・・・。
今、どういう状況なのか、私には理解できませんでした。
「澪・・・梓も大人になったって事なんだよ。身も心も捧げるから、それだけ唯に頑張ってほしいって事なんだよ!」(・∀・ )
「まぁ、梓ちゃんったら・・・」(´д`*)
「えっ・・・律先輩、ムギ先輩、何言ってるんですか・・・」
私は思わず二人の方を見てしまいました。律先輩はニヤニヤしてるし・・・ムギ先輩もウットリ・・・。
肝心の唯先輩は・・・私を見ながら固まっていました。フリーズです。
「3時のオヤツは『私』で我慢してくださいって・・・お菓子は無いけど、私をどうぞ♪って事でしょ?」
「梓ちゃんも大胆ね♪」
「・・・・・・・・・・ふぇ!?///」
その時・・・ようやく私は状況を理解しました・・・と共に、顔が真っ赤になっていくのがわかりました・・・。
「ちっ、ちちちちち違います!!!/// そういう意味じゃないんですー!!」
「じ、じゃあどういう意味なんだ、梓・・・」
澪先輩が疑いの目で私を見ています。誤解なんです・・・。そんな目で私を見ないで・・・。
ついさっきまで冷静でいた私はもうどこにもいませんでした。
「で、ですから・・・!お菓子は無いけれど、ずっと私が傍にいるので、それで我慢してくださいって事で・・・」
「って事は、やっぱり御褒美は梓って事じゃんかー♪」
「律先輩、違いますー!!」
「でも梓ちゃん、顔真っ赤よ?」
「ふぇ!? そ、そんな事ないですよー///」
もう体中が熱くて、自分自身が爆発してしまいそうなくらいでした。
唯先輩はどんな顔をしているんだろう・・・。とても恥ずかしくて、唯先輩の顔が見られません・・・。
「ゆ、ゆ、唯先輩・・・!違いますからね!」
うつむいたまま、思わず叫んでしまいました。私のこの気持ちがバレないように・・・。
「私はただ、唯先輩に頑張ってほしいから協力するだけで・・・!変な誤解はしないでくだ・・・」
「ギュッ」
不意に私を包みこむ優しい感触・・・それは、私が一番落ち着く瞬間です。でも、今はまだダメ・・・鼓動が落ち着かないんです。
こんなの、唯先輩に聞かれたら恥ずかしいです・・・。
私は唯先輩から逃げようとしたけど、唯先輩がそれを許しませんでした。
「・・・唯先輩・・・///」
「ありがとう、あずにゃん・・・私、あずにゃんの期待に応えられるように頑張るよ・・・」
そう言うと、唯先輩は私の頭を優しく撫でてくれた。まだドキドキは止まらないけれど、この瞬間は私にとっての至福の時間です。
「・・・図書館・・・行きましょうか///」
「うん、行こう、あずにゃん!あずにゃんの為にも頑張るよ!」
そう言うと、唯先輩は私の手をとって走り出しました。
「うふふ、良いもの見させていただきました♪」
「ムギ・・・うっとりしすぎだぞ♪」
「律・・・お前もニヤニヤしすぎだ・・・」
「あずにゃぁ~ん、少し休憩にしようよ~・・・」
「まだ図書館に来て30分しか経ってないじゃないですかぁ」
「あずにゃん分が不足してきたよぉ。あ~ず~にゃ~ん」
唯先輩は集中力が凄い時とダメな時があります。部活での集中力は凄いんだけどなぁ・・・。まぁ、ムギ先輩のお菓子も要因の一つですが・・・。
ダメな時の唯先輩・・・もっと頑張れと言いつつも、だれている姿も何か可愛く見えてしまうようになってきました。
そういえば、憂も可愛いって言ってたっけ・・・。最初は憂との感覚の違いかなって思ってたけど、そうじゃないみたいです。
今なら堂々と言えます。唯先輩、とっても可愛いです。でも・・・本人の前では言えせません・・・。
「もう、せめて後1時間は頑張りましょうよ!そうしたら・・・」
「あずにゃん分の補給だね!」
「・・・ちゃんと頑張ったらですよ!///」
いつもは唯先輩から補給に来ているからなぁ・・・。たまには私から補給させてあげるっていうのは・・・///
そうしたら、唯先輩のやる気、グンと上がるかな・・・?「あずにゃんのおかげでやる気出たよ!」とか言ってくれるかな///
「・・・にゃん・・? あずにゃん・・・?」
「ふぇ? どうしました?唯先輩」
「いや、あずにゃんこそ大丈夫? 何か、ボーっとこっち見てたよ?」
「・・・い、いや・・・ゆ、唯先輩がしっかり勉強しているか見張っていたんですよ!」
なんていうのは嘘です。ゴメンなさい、唯先輩。私、勉強を頑張っている唯先輩の姿に見惚れていたようです。
「ふ~ん・・・。とりあえず、練習問題やってみたから、答え合わせを付き合って♪」
「お、おお、お付き合いだなんて・・・唯先輩、何言ってるんですかぁ!!///」
宜しくお願いします。・・・とはさすがに言えなかったです。だって、まだ心の準備が・・・。
「へっ?私が解いた問題の答え合わせをやってもらおうかなぁって思っただけなんだけど・・・」
「・・・はぅ///」
そりゃそうですよね・・・。って、私も「付き合う」って言葉にこんなに反応しちゃうなんて・・・。
どうしよう・・・。私、唯先輩の事しか考えられなくなってきました。
唯先輩に頑張ってもらいたいくて一生懸命になってるけど・・・本当に頑張らなくちゃいけないのは、私なのかもしれませんね。
「唯先輩、結構出来るじゃないですか」
「あずにゃんのおかげだよぉ~」
「唯先輩の実力ですよ。凄いですね!私、唯先輩の事を見直しましたよ」
「えへへ~♪」
ゴメンなさい、強気に言ってしまいました。本当は『見直しました』じゃなくて、『惚れ直しました』です。
それに、その照れ笑い・・・可愛いすぎますよ、唯先輩。どれだけ私のハートを奪うんですか?
「3時だよ、あずにゃん!あずにゃん分補給タイムだよ!!」
「ちょっと・・・唯先輩、図書館ではもう少し静かにしてください」
「でもー、他に誰も居ないよ?」
「あれ・・・?ホントですね・・・」
さっきまでは、もっと人が居たはずなんですが・・・。いつの間にか人が居なくなっています。
「3時だから、きっとみんなオヤツを食べに行っちゃったんだよ~」
「そ、それは・・・」
でも、今は広い図書館で、私と唯先輩の二人きり・・・。それを意識すると、自然と鼓動が速くなってきてしまいました。
「あずにゃん・・・良いよね?」
「まっ、待ってください・・・!」
心の準備がまだできていないんです。でも・・・唯先輩も頑張ってたし・・・唯先輩が喜んでくれるなら・・・私、出来る限り頑張ります・・・!
「ゆ、唯先輩・・・」
「な~に?あずにゃん」
「・・・・・・・・・・」
いざ言おうとすると緊張しちゃうな・・・。他には誰も居ないから、スラッと言いたいんだけど・・・。
「あの・・・ゆっくり長くするのと・・・短いけど、ちょっと刺激があるのと・・・どっちが良いですか・・・?」
- 私は何を言ってるのだろう/// 恥ずかしいから遠回しで言ってしまったけど、こんな事でわかるわけないですよね。
「ん~・・・」
「す、すみません・・・具体的に言いますと・・・いつも唯先輩が私にやってくれるように、私が唯先輩にギュッとするのと・・・」
「えっ!?あずにゃんがギュッってしてくれるの?私、それが良いなぁ~♪」
「は、はい・・・」
もう一つ、ホッペにチューという選択肢があったんですが・・・。でも、唯先輩も喜んでくれているので良かったです。
いつも唯先輩がやってくれるように、今日は私が優しく抱いてあげます。・・・これで唯先輩のやる気が、もっと出てくれますように・・・。
「ギュッ・・・」
「あずにゃん、温かいね・・・もう離れないでほしいな」
「唯先輩・・・」
私も・・・唯先輩からは、もう離れたくないです。ずっとこのまま・・・一緒に居られたら幸せです。だけど・・・。
「唯先輩・・・」
「あずにゃん・・・」
「・・・色々な人に見られて恥ずかしいです・・・」
「気にしない、気にしな~い♪」
「気にします・・・/// だって・・・ここ外ですよ?ギターを持ったまま抱きついていたら、変に思われちゃいますよ。しかも女の子同士で・・・///」
ここは昨日、唯先輩が一人で練習していた近所の土手です。・・・さっきまで学校で勉強していたはずなんですけど・・・。
「私がギュッとして、唯先輩が喜んでくれたのは嬉しかったです/// でも、唯先輩がなかなか離してくれなくて・・・」
「だって、あずにゃん、温かくて気持ち良かったんだもん♪」
「誰も居なかった図書館、気付いたらみんなに見られてたじゃないですかぁ/// とても勉強できる雰囲気じゃなかったから、逃げるように出てきちゃいましたし・・・」
「もう、あずにゃんったら照れ屋さんなんだから~♪」
図書館で大勢の人に見られていた事を思い出すと・・・顔が真っ赤になっちゃいます・・・。
しょうがないから、時間を早めて演芸大会の練習をしようとしたのですが、唯先輩からおねだりされちゃって・・・。それに応えちゃいました///
「と、とにかく練習しますよ!・・・まずは何の曲を演奏するかですよね」
そう、唯先輩との初めてのユニット演奏だもん・・・絶対に成功させますよ。
二人のギター演奏なのか、あるいは唯先輩にボーカルをやってもらうのか・・・まだまだ決める事はあるけれど、一番大事な事も決めなければいけませんね。
「ねぇ、私たちのユニット名・・・何にする?」
唯先輩が切り出しました。そう、ユニット名です。今後、どれくらいの頻度で唯先輩とのユニットが組めるかはわからないけれど・・・。
でも、せっかくなら心に残るような名前にしたいです。ネームだけでも売れそうな・・・って、さすがにそれはまだ無理かな。
「・・・放課後ティータイムじゃないですもんね」
「
先輩後輩、とかは?」
「それ、ことさら強調されるのも・・・」
唯先輩、ゴメンなさい。それだけは絶対に認めたくないです。いや、確かに先輩、後輩の仲ですよ?
でも・・・仲の良い先輩、後輩っていう関係だけにしたくないんです・・・。
先輩後輩にするくらいだったら、恋人とか夫婦とかが良いです/// 夫婦だとしたら、私が唯先輩のお嫁さんに・・・///
はぅ、妄想してしまいました・・・。こんな話、唯先輩にしたら・・・どんな反応するんだろう。
「ん~・・・唯とあずにゃん、とか?」
悪くはないですが・・・さすがに「あずにゃん」は止めてほしいかな・・・。呼ばれるのはもう慣れましたけど、呼ぶのは唯先輩だけですし・・・。
呼んでるのが唯先輩だけだから、
これからも、唯先輩だけに呼ばれたいなぁって・・・。でも、いずれは梓ってストレートに呼ばれたいな。
そうしたら、私も先輩って言わずに、ストレートに・・・って、また妄想してしまいました///
「ゆいあずってどうですか?」
「おぉ、ゆいあず!!」
ふと口にしていました。唯先輩も満更ではない様子です。
『ゆいあず』
単純なネーミングかもしれないけど、わかりやすいから良いかな。何か響きが可愛いし、唯先輩と並んでいる感じがとっても嬉しいんです。
- まぁ、ゆいとあずの間に、ハートが付いても良かったんですけどね。それは・・・また先のお楽しみに取っておきましょうか///
唯先輩との楽しい時間はアッと言う間に過ぎ、帰る時間になってしまいました。楽しい時間って・・・ちゃんと練習していましたよ?
好きな人と一緒に居ると、何でこんなに時間が早く経ってしまうんだろう。気付かないうちに、私は悲しそうな顔をしていたようです。
「あずにゃん、大丈夫?何か、悲しそうな顔をしてるよ?」
「え・・・いや、そんな事ないですよ。あっ、私・・・夕陽を見ると1日が終わっちゃうなぁって・・・それで、たまに悲しい表情になる事があるみたいです」
どうして私は
素直になれないんだろう・・・。唯先輩と離れるのが寂しいのに・・・。
明日になれば、また唯先輩に会えるのに・・・。だけど、
ずっと一緒に居たいから・・・。
私、唯先輩とずっと一緒に居たいです!離れたくないです!・・・こう言って泣きついたら、唯先輩はどういう顔をするんだろう。
困った顔にさせちゃうのかな。それとも、また優しく私の頭を撫でてくれるのかな。
その反応が見てみたいけど、唯先輩を困らせたくないから・・・だから私は我慢します。素直な気持ちになれる日が来るまでは・・・。
「唯先輩、夜の勉強も頑張ってくださいね」
「うん!ありがとう、あずにゃん♪」
「わからない事があったら、ケータイに連絡してくださいね」
「ありがとぉ・・・あずにゃんも気をつけて帰ってね!」
「はい・・・では、また明日・・・」
「バイバーイ!」
ギー太を嬉しそうに抱えながら帰っていく唯先輩・・・。私、ギー太に勝てる日が来るのかな・・・。
ただ・・・私の隣で、唯先輩がずっとあんな表情をしてくれる日が来ると良いなぁって・・・唯先輩の後ろ姿を見ながら、そう思っていました。
「唯先輩から連絡無かったなぁ・・・」
布団にもぐりこみながら、私は軽く溜息をついていました。連絡が無いって事は、勉強も無事にできたって事・・・だよね。
それとも、憂に教えてもらったのかな・・・。憂も勉強出来る子だもんね。
「夢の中でも唯先輩に会えますように・・・」
頭に思い浮かぶのは、唯先輩の事ばっかり。私もちゃんと勉強したんだけど・・・途中から上の空になっていたせいか、勉強した内容が思い出せません。
今さら確認する事でもないんだけれど・・・。やっぱり、これって・・・。
「私の初恋は・・・唯先輩です・・・大好きですよ・・・唯先輩・・・zzz」
「おはよぉ」
「あ、梓ちゃん、おはよう♪」
「梓ぁー!!」
憂と軽く挨拶を交わすや否や、純が私に泣きついてきました。昨晩、唯先輩の夢を見られず、ちょっとだけ不機嫌なんだけど・・・。
「まったく・・・朝からどうしたの?」
「
放課後、勉強教えてぇー!」
「純なら一人でもできるでしょ? 昨日まで、勉強してたでしょ?」
「憂に借りてた漫画を読破してました」
この子は何考えてるんだろう・・・。純が純なら、貸す憂も憂だけど・・・。
「私、放課後は唯先輩に勉強教えたり、ギターの練習もしなきゃいけないんだよね・・・」
「私よりも、憂のお姉ちゃんを取るって言うの!?」
「いやぁ・・・こればっかりは約束しちゃってるからなぁ」
純に泣きつかれたのは初めてだから、教えてあげたいのは山々なんだけど・・・。でもゴメンね、純。今は私、唯先輩を優先させたいの。
「じゃあ、やっぱり私が教えてあげるよ。純ちゃん、学校が終わったら、家においでよ♪」
「夜まで教えてくれる・・・?」
「漫画は読んじゃダメだよ?」
「頑張る!!」
結局、純は憂の家で勉強を教えてもらう事になりました。憂も大変だなぁ・・・純だけじゃなくて唯先輩も居るのに・・・。
あっ、しまった・・・私も行くって言えば良かったなぁ。そうすれば、唯先輩と少しでも長く一緒に居られるのに・・・。
今からでもまだ間に合うかなぁ・・・なんて思ってたら、ホームルーム開始のチャイムが鳴っちゃいました。
どうやら、今日も図書館→土手での練習という流れになりそうです。
「・・・今日は図書館混んでますね」
「そうだねぇ。座れる所無いね、あずにゃん」
試験前だから、図書館で勉強する人が昨日よりも居ました。ちょっと考えが甘かったみたいです。
「仕方無いですね。ちょっと計画を変更して、先に演芸大会の練習をしましょうか」
「でも、あずにゃん・・・」
そう言うと、唯先輩が外を指さしました。
「雨降ってるよ?」
えぇ!?雨が降るなんて聞いてないですよ!・・・そうだ、今朝は唯先輩の夢が見られなくて、ずっとボーっとしてたから、天気予報を見るのを忘れたんだ・・・。
どうしようかな・・・。私が唯先輩のクラスに行くっていうのは・・・。ダメだ、昨日の事もあるから、澪先輩達に顔を会わせ辛い・・・。
じゃあ、唯先輩に私のクラスに来てもらうのは・・・。先輩が後輩に勉強教えてもらってるって・・・これもダメだ、唯先輩のプライドを傷つけてしまう・・・。
「どうしましょう・・・」
「あずにゃんの家で勉強会っていうのはどうかな!あずにゃんの家なら、ギターの練習もできるよね?」
「私の家ですか・・・。まぁ、両親は出かけてて居ないから、構わないですよ・・・って、えぇ!?」
「ど、どうしたの?」
思わず答えちゃったけど・・・私の家で勉強と練習ですか!?・・・両親居ないから、ふ、二人きり・・・。ま、まだ心の準備が・・・///
「まだ、心の・・・じゃなかった、私、天気予報を見るのを忘れたから、今日傘を持ってきてないんですよ!だから、まだ帰れな・・・」
「なぁんだ、そんな事なら大丈夫だよ、あずにゃん!」
私の言葉を遮ると、唯先輩は鞄から傘を取りだしました。それは水玉模様の入った折り畳み傘でした。
どうやら、唯先輩は用意周到だったようで、二人分用意してきたみたいです。
「唯先輩、用意が良いんですね。二人分の傘を用意するなんて」
まるで、私が傘を忘れてくるのを予知していたみたいです。やっぱり、頼りになる先輩です。そのまま、私の心も読み当ててくださいよ。
『強いて言えば相合傘の方が良かったなぁ』なんて。まぁ、それはまた今度に・・・。
「あずにゃん、傘はこれ1本だけだよ? だから、相合傘だよ、あずにゃん!」
- 読まれてしまいました。今日も、唯先輩は無邪気な笑顔で私をドキドキさせちゃっています。
私の気持ちを知らずにやってるんだと思うけど・・・その笑顔、眩しすぎます///
毎日毎日、私を惚れさせて・・・ずるいですよぉ・・・。
「相合傘って・・・折り畳み傘に二人は入らないんじゃ・・・」
「大丈夫、二人くっつけば、何とかなるよ!今日は、ギターケース用のビニールも用意したし♪」
「・・・私が用意してきてません」
「大丈夫、あずにゃんとむったんは、私が守るから!・・・あとギー太もね♪」
「にゃー///」
唯先輩が、自分のギターをギー太と呼んで可愛がっているけど、それじゃあ、私のギターは愛称をつけるとしたら、何かなって考えた事があります。
私が使っているギターはムスタングという物だったから、『むったん』・・・かなぁって。
ギー太って、響きからすると男の子みたいだから、むったんは女の子なのかな・・・なんてね。
ギー太・・・むったんを宜しくお願いします。私も、唯先輩と幸せになります・・・。
はぅ・・・また妄想してしまいました。
「はぁ・・・はぁ・・・あずにゃんの家に着いたぁ」
「唯先輩、ずぶ濡れじゃないですか!早く家に上がって温まってください!」
「でも、約束通り・・・あずにゃんを雨から守ったよ☆ むったんもギー太も守った♪ 私、頑張ったよね!」
頑張りすぎです。これで風邪でもひいたらどうするんですか。心配で夜も眠れなくなるじゃないですか。
でも・・・学校から家まで、ずっと唯先輩の体温を感じて・・・凄くドキドキしました・・・。
唯先輩をとりあえず、私の部屋に連れてきましたが、さて、これからどうしたものかな。
「体が冷えてしまったでしょうから、とりあえずお風呂に入ってきてください」
「え~っ・・・でもぉ・・・」
「遠慮しないでください。唯
先輩のおかげで、私は濡れずに済みましたから・・・」
「お風呂に入るよりも・・・あずにゃんに温めてほしいなぁ・・・」
「なっ、何言ってるんですか!/// それじゃあ、風邪ひいてしまいますよ!」
「風邪ひいたら、あずにゃんに看病してもらう♪」
「そっ、そんな事言ってもダメです・・・。試験も演芸大会も近いんです。素直にお風呂に入ってください」
「ん~・・・じゃあ、あずにゃんも一緒に入ろうよ♪」
「わかりました。・・・って、えぇ!?」
思わず間髪入れずに返事をしてしまいました・・・。
部活の合宿で、一応一緒にお風呂には入ってるけど・・・。二人きりっていうのは勿論初めてだから・・・。
「あ、あまり・・・見ないでくださいね・・・」
「えへへ~、あずにゃん、逃がさないよ~♪」
「や、止めてください・・・恥ずかしいです・・・」
「もう、あずにゃん・・・小さくて可愛いね♪」
「そんな事・・・ないです・・・///」
「フニッ♪」
「ひゃぁっ!?・・・どこ触ってるんですかぁー!///」
刺激が・・・強すぎました・・・。まだ二人きりでのお風呂は早いです・・・。というか、色々順番が違う気がします・・・。
「唯先輩、着替えなんですけど・・・私の服だと、さすがに小さいですよね」
「大丈夫だよぉ♪」
何を根拠に大丈夫なんだろうと思ってましたが、アッと言う間に私の服を着てしまいました。でも、やっぱり少しキツそうです。
私の服を着る唯先輩・・・何か可笑しいです。
「何だか、姉妹みたいだよね♪」
「唯先輩がお姉さんですか?」
「ん~・・・あずにゃんの方がしっかりしてるから、あずにゃんがお姉さんでも良いかも♪」
「唯先輩が妹ですか・・・。それはそれで可愛い感じがしますね。唯先輩がお姉さんだと、ちょっと頼り無い感もしますし・・・」
「えぇ~・・・あずにゃん、酷いよぉー」
「冗談ですよ♪」
「・・・それじゃあ、あずにゃん!私、ここに居る間はあずにゃんの妹になるよ」
「・・・どういう事ですか?」
「今から、あずにゃんの事は梓姉ちゃんって呼ぶんだよ!梓姉ちゃん、お勉強教えて~♪って感じで!」
「何ですか、それ・・・何か、世話が焼ける妹みたいですね・・・」
「その代わり・・・」
そう言うと、唯先輩は少し黙ってしまいました。少し頬を赤らめながら、何かを言おうとしているのはわかるのですが・・・。
「・・・唯先輩?」
「あのね・・・私の事を・・・唯って呼んでくれないかなぁって・・・」
予想だにしなかった言葉に、私はすぐに返事をする事ができませんでした。
嬉しいような・・・恥ずかしいような・・・。
「・・・な、何言ってるんですか!?急に名前で呼んでくれだなんて・・・」
「・・・ダメ?」
そんな困ったような表情で見ないでください・・・。好きな人から、名前で呼んでくれって言われたら、凄く嬉しいです。でも、恥ずかしさもあります。
でも、この状況だと・・・唯先輩の事だから、姉妹ごっこみたいな遊びの感覚で言っただけなんですよね・・・。
唯先輩は、私の気持ちを知らないから、そんな事を言ったんだ・・・そう思うと、何だか、急に悲しくなってきてしまいました。
「私がお姉さんっていう設定だからなんですよね・・・。あ、ちなみ軽音部の中だと、誰に一番お姉さんになってほしいですか?」
悲しさを紛らわす為に、思わず話を反らしてしまいました。
「えっ・・・えっとー・・・やっぱり澪ちゃんかなぁ。結構勉強教えてくれるし、頼りになるからね」
私も勉強教えてます・・・私じゃあ頼りにならないのかな・・・。
「そ、それじゃあ、一番妹になってほしい人は?」
「ん~・・・妹は憂が一番だけど、軽音部の中ではムギちゃんかな。ホンワカしてて可愛いよね~」
私、年下なのに・・・私よりもムギ先輩なんですか・・・。憂の名前も出てくるのに、私の名前は出てこないんですね・・・。
「・・・ペットにしたいのは誰ですか?」
「・・・トンちゃん?」
そのままじゃないですか!唯先輩は、あずにゃんって呼んでくれるし、たまにネコミミを付けさせて、私を子ネコのように扱う事もあるのに・・・。
- 別に、唯先輩のペットになりたいとかじゃないんですけど・・・唯先輩の口から私の名前が出てこないのが寂しいんです。
「じゃあ・・・結婚するなら・・・誰が良いですか?」
「えぇ~!?」
これには、さすがに唯先輩も少し動揺したみたいです。・・・私の名前、言ってくれないかな・・・。
「え、えーっと・・・ギー太かな・・・って、人間じゃないね、あはは・・・。えっと、お婿さんはりっちゃんかな!・・・元気良いし、一緒に居ると楽しいからさっ」
とうとう、ギー太にも負けてしまいました。もしかしたら、唯先輩は私を結婚相手に選んでくれるかなって思ったんだけど、どうやら違ったみたいです・・・。
それに、律先輩を選んだら、澪先輩に怒られる気がします・・・何となく、ですが・・・。
「・・・一生の親友にしたい人は誰ですか?」
「親友なら和ちゃん!・・・幼稚園から一緒に居るから、この気持ちは変わらないんだよね♪」
そう言うと、唯先輩はニコッと笑いました。今までの私だったら、唯先輩の何気ない笑顔にすら、ドキッとしたのに・・・。
今は、胸がとっても痛いです・・・。
唯先輩にとって、私という存在をどういう感じで見ているのだろう・・・。
姉でもなければ、妹でもない。結婚したい人でもなければ、一生の親友でもない。ペットですらない。
私は、唯先輩のどこに繋がっているのですか・・・。やっぱり、ただの後輩としか見てくれていないんですか・・・。
「あずにゃん・・・」
「はい・・・」
「さっきも聞いたけど・・・私の事、唯って呼んでくれないかな?」
何でそんな事言うんですか。私、ただの後輩に過ぎないんですよ・・・?
だからと言って、私の気持ちも伝えられなくて・・・私は返事をできずに、うつむいたままでした。
唯先輩の気持ちがわからない・・・。それでも、私は頑張って声を振り絞りました。
「・・・そう呼んだら、私の事も、梓って呼んでくれませんか・・・?」
「えっ・・・?」
「あずにゃんではなく・・・梓って呼んでくれませんか?」
「えっと、その・・・」
「唯先輩が呼んでくれないのなら・・・私、呼べません・・・」
大好きな人と二人きりの空間・・・なのに、気持ちが通じないもどかしさ・・・。
いつもしてくれるスキンシップも、可愛い笑顔も、仲間を思いやる姿も・・・全て好きなのに・・・。
だけど、気持ちが通じないって思うと、こんなに辛いものなのかなって・・・。
「唯先輩は・・・どういうつもりで、名前で呼んでほしいって言ったんですか・・・」
「えっ・・・いや・・・」
「先輩、後輩の関係なのに・・・名前で呼んでほしいだなんて、先輩後輩以上の関係を期待しちゃうじゃないですか!」
「あずにゃん・・・」
「先輩は・・・唯先輩は・・・私の気持ちを知らないから・・・!」
気付かないうちに、私は体を震えさせながら涙を流していました。泣き顔なんて、見せたら恥ずかしいけど・・・今はそんな事はどうでも良かったです。
ただ、ただ・・・私の今抱いている
想いを伝えたくて・・・。
「私は・・・私は・・・」
もうダメだ・・・。私自身の感情をコントロールすることができません。
自分自身でも何言ってるかわからないくらいに、言葉だけが先行しているようです・・・。
一生に一度しかない、初恋の告白なのに・・・。せっかくなら、心に響くような事を言いたかったのに・・・。
「私は・・・私は・・・唯先輩の事が―――――」
―――――それは突然の出来事でした。唯先輩への想いを口にしようとした時、私の口は塞がれてしまいました。
唯先輩の唇によって・・・。
10秒、20秒、30秒・・・。長い時間、口づけを交わした後、私から唯先輩がゆっくりと離れていきました。
私は、その余韻に浸りながら、ゆっくり目を開けました。
「ほら、涙拭いて・・・」
唯先輩からハンカチを手渡されましたが、自然と涙は止まっていました。
手渡されたハンカチで、軽く目元を拭うと、唯先輩は私を優しく抱き締めてきました。
- 静かな時間だけが流れていきました。お互い、言葉を口にしなくても、気持ちが繋がっていました。
気持ちが繋がるって・・・とても心地良いものなんですね・・・。
再度、唯先輩への想いを口にしようとした時でした。
「好きだよ、梓・・・」
「言おうとしたのに・・・ずるいよ、唯・・・」
「梓・・・梓は私にとって、一番恋人に・・・いや、お嫁さんになってもらいたい人なんだよ」
「・・・だから、さっきお婿さんは律先輩って言ったんですね。でも、澪先輩に怒られるような気がするので、聞かなかった事にします」
「ですよねー・・・」
さっきまでの深刻な想いを抱えていた私はどこかに行ってしまいました。今は、もう・・・ただただ幸せです///
気持ちが通じた後だからこそ言えるけど・・・もっと早くに気持ちを打ち明けていれば良かったかなぁ・・・なんて。
「梓ぁ♪」
「にゃっ/// もう、急に抱きついてこないでください!」
「嬉しくないの?」
「凄く・・・嬉しいですよ?・・・唯も嬉しい?」
「唯って呼んでもらえると嬉しいな~♪ 私、梓の体温を感じられるから、抱きつくのが好きなんだ! 梓、温かいしね♪」
「そ、そうなんですか///」
ヤバいです。ニヤニヤが止まりません。これから、唯先輩・・・じゃなかった、唯・・・に、好きなだけデレッとできると考えると・・・嬉しくて嬉しくて///
こんな表情、他の人には絶対に見せられません。
「梓・・・良い匂いがする♪」
「さっき、一緒にお風呂に入ったじゃないですか・・・///」
「あぁ、そうだったね♪ ところで梓?」
「何ですか?」
「何か変だから・・・敬語も止めない?」
確かに変な感じがします。お互い、名前で呼び合うのに敬語は無いですね・・・。
タメ語で話したいけど・・・でも、私には良い提案があるんです。
「じゃあ・・・今度の試験、全ての教科で80点以上取れたら、敬語は止めますよ。その代わり、赤点取ったら、1週間は抱きつき禁止です!」
「えぇ~!?そんなぁ・・・」
「唯は出来る子です!/// 今晩、みっちり教えてあげますから・・・」
「夜までかぁ・・・うはぁ・・・」
「そんな声出さないでください!ここなら、ギターの練習もできますし、それに・・・制服もまだ乾いてないですし・・・」
びしょ濡れになった唯の制服・・・部屋で乾していますが、乾くまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
「それに、今日は憂が純の勉強を見てるんですよ!だから・・・二人の邪魔をしないように・・・唯が良ければ、うちに泊まっていってほしいなぁ・・・」
「ホント!?じゃあ、憂に梓の家に泊るってメールしておこう!」
「あっ・・・メールは、ちゃんと『あずにゃん』って打ってくださいね・・・」
「大丈夫だよぉ☆」
唯の嬉しそうな声を聞くと・・・私も嬉しくなってきます。
昨日は夕方までしか一緒に居られなかったけど、
今日は・・・明日までずっと一緒です♪
「自分で言っておいてアレですけど・・・1週間抱きつき禁止は寂しいので、ちゃんと頑張ってくださいね・・・」
「頑張るよぉ♪」
その後は、練習も勉強も、一緒に頑張りました。
大好きな人と一緒なので、どんなに大変な事も頑張れました。
「演芸大会で演奏する曲は『ふでペン ~ボールペン~』を演歌風にアレンジした物で良いですか?」
「うん! それとね、『ふわふわ時間 あずにゃんバージョン』っていうのも考えてきたの!」
「・・・何ですか、それ?」
「『お気に入りのうさちゃん抱いて』を、『お気に入りのあずにゃん抱いて』に歌詞を変えたの!」
「・・・今度、私だけに聞かせてください///」
「えへへ~///」
夜は・・・違う意味で頑張りました・・・。
「お気に入りのあずにゃん抱いて~♪・・・梓ぁ、もう我慢できないよぉ・・・」
「唯~・・・明日は試験なんですよ・・・って、そこ・・・ダッメェ・・・あぁ」
翌日、無事に試験を終えたのですが、試験の出来を聞いてみると、唯からはパッとしない答えが返ってきました。
「多分・・・大丈夫だよぉ・・・」
「唯先輩、これで成績が悪かったら怒りますよ?」
「ひゃぁ、あずにゃん怖い~・・・澪ちゃん、助けてぇ」
「いや、梓が頑張ったのに、それを自分の物にしなかった唯が悪いぞ?」
「えっ?あずにゃんは、もう私の・・・」
「にゃーーーーー!!」
何、どさくさに紛れて、私たちの関係をばらそうとしてるんですかー!?
せっかく、呼び方も「あずにゃん」「唯先輩」にしているのに・・・。
「せっかく、梓も身を捧げて頑張ったのにな!・・・で、唯・・・梓はどうだった?」
「唯ちゃんと梓ちゃん・・・激しかったのかしら♪」
「えへへ///」
「律先輩、ムギ先輩、変な事言わないでください!そして唯先輩も誤解するような反応しないでください!」
誤解じゃないですけど・・・でもこんなところで、ばらさないでくださいよぉ///
「でも・・・試験中、寝息立てて寝てたでしょ・・・?本当に大丈夫?」
「昨日の夜まで頑張ってたから、ちょっとウトウトしちゃっただけだよー・・・一応、回答欄は全部埋めたし、大丈夫だよ、和ちゃん♪」
夜に頑張ったのは勉強じゃないですよー/// まぁ、私も今日は寝不足でしたけどね・・・。
試験の結果次第では、お説教というか、お仕置きが必要ですね・・・。
試験が全て終わった翌日は、いよいよ演芸大会の本番です。私たち、ゆいあずのデビュー日でもあります。
私たちのユニットのデビューは町内の公園です。いつかは武道館で・・・。五大ドーム公演っていうのも良いかもしれません。
とにかく、夢は大きく持っていきたいです!
私たちの出番を待っていると・・・唯が私の肩に寄りかかってきました。
「こんな時に・・・」
しかし、寝息を立てて寝ている唯を見ていると、とても心が落ち着きました。さっきまで緊張してたのになぁ。
- それにしても、本当に可愛い寝顔です。このまま寝顔を見ているのも良いかな・・・なんて思っていましたが、私たちの出番が来ました。
気持ち良さそうに寝てたのに、ゴメンね・・・。そう思いつつ唯を起こして、さぁ本番です!
演奏前に、プチ漫才を入れてみたけれど、ちょこっとウケたみたいでした。まぁ、これはオマケみたいな物だから気にしてません。
私がギターで、唯が歌う『ふでペン ~ボールペン~ 演歌バージョン』だけれど・・・歌いだしてすぐに、時間制限で終わってしまいました。
曲のペースが遅かったのか、プチ漫才がいらなかったのか・・・とにかく、ゆいあずのデビューは不完全燃焼に終わってしまいました・・・。
「参加賞でしたね」
「温泉旅行狙ったんだけどなぁ・・・」
「結果は残念でしたけど・・・でも、今日はゆいあずのデビュー日でしたし・・・唯と二人だけで演奏できて・・・忘れられない日になりました」
「私もだよ!・・・また今度、ゆいあずで演奏しようね!」
「武道館も・・・目指しましょうね!」
「おぉ!!」
数日後、試験が返却されてきました。
唯との約束は、全ての教科で80点以上なら、敬語を止める事・・・逆に赤点を取ったら、1週間の抱きつき禁止です。
果たして結果はどうなったのかな・・・。私が教室前の廊下で待っていると、唯が嬉しそうに飛びついてきました。
「あずにゃん、見てみて!全部80点以上だよ!ヤマが当たった!」
「唯先輩・・・私、ちゃんと教えましたよね?それなのに、ヤマって・・・」
「えへへっ、冗談だよー♪」
まったく・・・でも、この満面の笑顔を見たら、すぐに許してしまいました。唯は本当によく頑張ったと思います。
すぐに頭を撫でてあげたい・・・けど、そこはグッとこらえます。
「お疲れ様でしたぁ」
「澪ちゃん、りっちゃん、ムギちゃん、また明日ねー♪」
放課後、部活を終えた私たちは、二人で帰ります。
「唯、本当に頑張ったね・・・。この後、アイスでも食べに行かない?///」
「おぉ、タメ語だぁ♪」
「約束・・・だもんね///」
まだ・・・ちょっと慣れないけれど・・・唯との距離が、もっと近くなった気がします。
私たちの距離がゼロになる日はいつになるのかな。考えただけでも楽しみです。
「梓、大好きだよ♪」
「私も・・・大好きだよ、唯///」
まだ、みんなの前では先輩、後輩の関係だけれど・・・みんなにバレるのは、時間の問題かもしれません。
それまでは、もう少し、二人だけの秘密の関係を続けていきたいと思います。
終わり
- …すごくイイと思うの -- (名無しさん) 2010-10-15 16:04:36
- あずにゃんの試験結果が悲惨だったらさらにおいしかった -- (名無しさん) 2010-12-29 14:30:04
- 梓がデレすぎて顔がやばいことに -- (名無し) 2012-09-23 11:23:24
最終更新:2010年08月16日 04:49