の一部設定をお借りしました。
俺が居間のドアを開けるとテーブルの上の饅頭らしき生物が挨拶してきた。
「「ゆっくりしていってね!!!!!!!!」」
半年以上前に突如として出現した謎の生物、ゆっくり。
瞬く間に現代社会に溶け込み、食用・愛玩用・虐待用と幅広い層の需要を満たしている出所や正体の一切が謎に包まれた饅頭。
黒髪に赤いリボンをつけたゆっくりが大きな声で叫ぶ。
「おにいさんははやくれいむたちにあまあまをもってきてね!」
それがなぜ俺の家にいるのだろうか。生憎俺にゆっくりを買う金も飼うつもりもない。
するとれいむと名乗った隣にいる金髪のいかにも魔女と言った雰囲気の帽子を被ったゆっくりが
「ここはまりさたちのゆっくりプレイスだからおかしをおいてはやくでていってね!」
とまくし立ててきた。
大方、どこかから侵入してきた野良ゆっくりなのだろう。
ゆっくりの習性として先程の「ゆっくりしていってね!」という独特の鳴き声や他人の家などをあたかも自分の巣であるかのように
主張する『おうち宣言』と言った行為が見られる。
しかし、この下膨れた胴体や自己中心的な言動の数々は非常にイライラする。
「あのね、俺は君たちが来るずっと前からここに住んでるの。」
「れいむたちがさいしょにみつけたかられいむたちのいえだよ!ゆっくりりかいしてね!」
「そんなこともわからないの?ばかなの?しぬの?」
テーブルの上にいるれいむを両手で掴み持ち上げると
「ゆゆっ!おそらをとんでるみたい!」
などと言っているがそのまま無視して部屋を出ると
「れいむをはやくおろしてあげてね!」
とまりさの方も付いてきた。
俺はれいむを小脇に抱えたままドアを開け、ゆっくりと玄関の外に置いてやった。
ゆっくりの愛好家、と呼んでいいのかは分からないがその中にはゆっくりを虐める事を趣味とする『虐待お兄さん』と呼ばれる人々
が存在する。
だが生憎俺はその手合ではない。
ドアを閉めてもまだ玄関に二匹はまだいるらしく「はやくここをあけてね!ゆっくりできないよ!」などと叫んでいた。
そんな呼びかけを無視してゆっくり達のいた部屋に戻ったのだが……
「こりゃひどいな。」
先程の二匹が部屋を好き放題に荒していたため、本棚の中の本は散らばり机の上の書類も破かれていた。
さながら泥棒にでも入られたかのような惨状だ。
これでは怒りに任せて虐待してしまう人が出るのも頷ける。
「食うものも無いし仕方ない。部屋の掃除でもするか。」
俺は散乱した部屋の壁に向かってそう言うと、破れた雑誌を手に取った。
後片付けを兼ねた部屋の掃除をしている途中、不意にインターホンが鳴る。
玄関ドアの外から声が聞こえてくる。
「磯野~!野球しようぜ~!」
……ちなみに俺の名前は磯野ではない。念のために言っておくが。
「………!………………!」
ドアの前に着いてから気づいたがドアの向こうから別の声も聞こえる。
さっきの聞き覚えありまくりの声の主は誰だか分かるんだがその他にも誰かいるようだ。
何か少し前に聞いた気がしたのだが……。
「誰がイガグリ頭か。」
ドアを開けると案の定見知った顔だ。
中肉中背で、どちらかと言うと好青年な印象を与える服装や立ち振る舞い。
こいつは学生の時三年間同じクラスだった奴で、最近仕事の関係で俺の家の近くに越してきたのだ。
「まぁいつもの挨拶じゃねぇか。」
と、そいつの少し後ろを見ると。
「ゆ”……ゆ”ぐ……」
そこにはズタズタにされた金髪の雑……もといまりさがいた。
「おい、そのまりさ……」
よく見るとあいつの持っているケージの中には先程ものと思しきれいむが入っていた。
「ばりざああああああ!ゆっぐりじでねええええええ!」
もう一度地面のまりさを見ると実に酷い有様だった。
表面には無数の裂傷と靴跡と打撲による青痣、所々中身の餡子が漏れ出している。
底部は黒く焼け焦げ、片方の目は抉られ目玉が地面に転がっていた。
髪は脳天の部分のみ引き抜かれ、さながら落ち武者のようだ。
そいつはチラリとも後ろを見ずに
「ああ、アレね。お前が出るまでの暇潰しに使わせて貰ったよ。お前の飼いゆっくりじゃないって分かってたからな。」
そう、こいつは筋金入りの『虐待お兄さん』なのだ。
「で、今日は何の用だよ。」
「それがさ、ちょっと手伝って欲しいことがあって。」
「ゆっくり絡みならお断りだ。」
以前こいつに付き合ってゆっくりを捕まえるために山で数日間野宿したのを思い出した。
もちろんそのゆっくりたちはこいつの虐待欲を満たすために全て殺されてしまったのだが。
「ああ、大丈夫。今回は市内っつーか近所だから。ゆっくり絡みなのは変わらないがな。」
「断る。大体お前の変態的な趣味に付き合う気はない。」
「お前、今金幾ら持ってる?」
ギクッ。
「お前給料日まだだよな~?後何日水だけで生活出来るのかな~?」
こいつ…昔から全く変わってないな。
「付き合ったら焼肉おごってやるからな。」
「クソッタレめ。」
「そのクソッタレに飯おごってもらうのはどこのどいつだ?」
「……」
「よし、商談成立だな。こっちだ。」
そう言うと踵を返して歩き始めた。そのついでといった感じに地面にへばりついているまりさを思いっきり踏み潰した。
「ぶぎゅ!」
「ばりざあああああああああああ!!!!!」
「暫しの別れって奴だな糞饅頭。ま、お前も後でゆっくり嬲り殺してやるから安心しな。」
「いやだああああああ!じにだぐないいいいいいいいいいい!」
……なんでこんな奴と知り合いなんだ俺。
そんなわけでホイホイ付いてきてしまった訳だが。
「…『ゆーてぃんぐれんじ』?」
話では聞いたことがある。何でも市販のモデルガンを使ってゆっくり達を撃ち抜くスポーツ(と呼んでいいのだろうか)だそうだ。
「ここか?」
「ああ。」
そこは自宅から歩いて十数分位の所だった。まさかこんな近所で大量虐殺が行われていたとは。
「つい最近出来たばっかだから知らなくても無理ないわな。さ、行くぞ。」
「やめでええええええええ!おうちかえるうううううううう!」
そう言うと喚くれいむの入ったケージを片手に自動ドアの先へ入って行った。
ここまで来たら引くことは出来ない。この先どんな凄惨な光景が広がっていたとしても俺は生きて帰って焼肉を食う。
そう決心して入口へ足を踏み入れた。
中はどんな魔窟かと思ったが以外に……と言ってはアレだが清潔感に溢れている。
床は磨かれ観葉植物なんかも置いてある。
もっと照明も付いてないようなアングラな雰囲気を想像していたんだが。
「いらっしゃいま……あ、お疲れ様です。」
受付と書かれたカウンターの奥の椅子に座っている女性が挨拶してきた。
……もちろん俺でなく隣のこいつにだが。
事務用の制服に身を包み、どこか優しげな印象を与える感じの女性だ。
歳は俺と同じ20代前半と言った所だろうか。
「よっす。」
どうやらこいつと座っている受付嬢は客と店員以上の関係らしい。畜生、リア充め。
「この人は私の上司に当たる人なのでそんな深い関係はないんですよ。」
「お前、結構偉いのか?」
「まだまだ下っ端だよ。今日はアレを使おうと思ってさ。」
「まぁ、アレをですか?」
ヤバい、全く会話について行けない。
「アレって何だよ。」
「ま、後で分かるって。こっちだ。」
と言うとレンジの方へ向かって歩いて行ってしまった。
受付を通る途中、受付の女性と目が合った。
「ゆっくりしていってくださいね。」
ああ、あなたのような美人の側なら幾らでもゆっくりしますとも。
後で焼肉でも一緒にどうかと誘おうと思ったがカウンターの横、つまり彼女を側面から見た時に
「わがらないよおおおおおおおおおお!」
「……もっど………じ…だが…………」
足元で彼女に踏みつけられ息絶えそうになっているゆっくり達と何事もないような笑顔を浮かべる彼女を見てそんな気は吹き飛ん
でしまった。
ゆーてぃんぐ用のレンジの部屋に繋がっている廊下は俺の想像していた通りの地獄絵図だった。
部屋の中から聞こえてくるゆっくり達の悲鳴。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!ばりざのあがじゃんがああああああ!」
「ごんなどどがいはじゃないわああああああああああああ!」
……恐らく中では罪のないゆっくり達がハチの巣にされているのだろう。
別の部屋の中を覗くと、スーツを着た男がどこぞの段ボール男が使っていた狙撃用の銃で赤ん坊のゆっくり達を撃ち抜いていた。
「ゆっくちちていっちぇゆびゃ!」
「おきゃーしゃんたしゅけぶびゃ!」
男は次々と小さな饅頭の命を奪い去っていく。
……なかなかの腕前のようで。
「ここだ。」
廊下の突き当りの部屋の中に通された。
「そういや、俺モデルガンなんか持ってねーぞ。」
「ああ、いいのいいの。今回は使わないから。」
俺には射撃の素養が全くないのをここに来て気づいた。
「今回はお前みたいな下手糞にもゆーてぃんぐを楽しんで貰うための機械のテストだからな。」
……今のは怒ってもいいのか?
「俺は準備があるからこの部屋でゆっくりしててね!」
そう言って部屋を出て行った。
しばらくすると
「あー、あー、テステス。本日は虐待日和なり。」
どんな日和だ。
「んじゃ、始めるからそこの椅子に座ってくれ。」
椅子に座るとほぼ同時にレンジ内の照明が点いた。
丁度座った位置から突き当りまで直線で約20mといった所だろうか。
「テーブルの上にマウスがあるだろ?」
これか。俺はマウスに右手を添えた。
「おお!?」
触れた瞬間目の前のガラス板に青い十字が出た。
「左クリックで十字の中心を狙って弾が発射される。とりあえずさっきのれいむを出すから撃ってみてくれ。」
「ここどこ…もうおうちかえりたいよ…」
床から上がってきたれいむは10mほど先にいた。
マウスを動かしれいむの額に青の十字を合わせる。カーソルがれいむに重なった瞬間十字が赤くなった。
「撃て。」
すまんれいむ、これも俺の焼肉のためだ。
パン、と湿気た爆竹を一発だけ鳴らしたような音がなった。
れいむの方を見てみると額に穴が空いている。
「ゆああああああ!いだい!いだいよおおおおおお!」
「もっと躊躇うと思ったんだがな。ちなみに押しっぱなしでフルオートだ。」
マウスの左ボタンを長押しする。
先程の音が連続で鳴り続ける。
「ゆうううううううう!……ゆ?」
……が、れいむには一発も当たっていない。正確には俺が一発も当てないよう狙いを外したのだ。
「おいヘタレ童貞。それじゃあテストにならんだろうが。じゃあこうしよう。手抜いたら焼肉無しな。」
俺はれいむに素早くカーソルを重ね左ボタンを押しっぱなした。
「ゆぎゃああああああああああああああああ!」
瞬く間にれいむに穴が穿たれていく。
十秒近く弾を撃ち込まれたれいむはさながら穴あきチーズのようになっている。
「ゆ”…どぼじで…どぼじでこんなごどずるの……」
「そろそろトドメさしてやれ。マウスのホイールを下に少し回せ。」
ガラス板右上の弾のアイコンが先程と変わった。
「撃ってみろ。」
バンッ!
先程とは比べ物にならないほどの音がレンジ内に鳴り響いた。
撃ちこまれた当のれいむはというと……
狙った上半身、正確には上顎から上が完全に吹き飛んでいる。
残った下半身は小刻みに痙攣を繰り返し、断面からは湯気が立ち上っている。
「これ法律にひっかかr「ま、こんなもんか。じゃあ続けるぞ。」
レンジの中にいるのはれいむとまりさの夫婦。
それに子供のまりさとれいむが3匹づつ、それよりも小さい赤ん坊のまりさとれいむが2匹ずつ。
計10匹の大所帯だ。
皆それぞれが真っ白な、ところどころに餡子と皮のこびりついたレンジの中で各々ゆっくりしている。
「ゆっゆっ!おいかけっこするよ!」
「ゆっくりおいかけるよ!ゆゆ!こんなところにあまあまさんがあるよ!」
「むーしゃ、むーしゃ、ゆゆゆゆ!しあわせぇー!」
体を震わせ全身で喜びを表現するれいむ。
「まりさにもたべさせてね!うっめ!これめっちゃうっめ!」
ガツガツと餡子の塊を平らげるまりさ。
「ゆっくりのひーすっきりのひーまったりのひーにっこりーのひー」
「れいみゅおねえちゃんおうたじょうじゅだにぇ!」
「とっちぇもゆっきゅちできりゅよ!」
自慢の歌を披露する子れいむとそれに聞き入る赤ゆっくり達。
「まりさ……みんなとってもゆっくりしてるね……」
「れいむもゆっくりしていってね……」
レンジの中の8匹のゆっくり達が一斉にまりさとれいむに向かって
「ゆっくりしていってね(ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ)!!!!!!」
の大合唱だ。流石にこちらも見ていてイライラしてきた。さて、そろそろやるか。
「何度も言うが手を抜いたら……」
「分かってるって。それに正直、段々楽しくなって来た。」
そう、この数時間で何の罪もないゆっくり達を虐待するのが楽しくなってしまったのだ。
弾丸で徐々に体を削られながらも身を挺して子供を庇うれいむ。その後ろで得体の知れない恐怖に震える子供のゆっくり。
母親と言う壁を失い逃げ惑う子供の短い命が俺の指一つで奪われていく。
こちらに気付き同胞を殺された怒りを露わにしこちらに体当たりしてくるまりさ。
しかしその渾身の一撃はガラスの壁に阻まれ部屋内のゆっくり達と同じ末路を辿る。
息絶える直前まで「わからないよ……」と言い続けるちぇん(このゆっくりの名前はさっき知った)。
「この前山に誘った時にその気があると思ってたんだがやっぱりな。」
と言う声を無視し、俺は机に備え付けてあるマイクを取りレンジ内のゆっくり達に話し掛けた。
「やぁ、ゆっくりしてるかい?」
「ゆゆっ!おそらからこえがきこえてきたよ!」
「あまあまさんもいっぱいあるからとってもゆっくりできるよ!」
「ゆっきゅちー!」
「じゃあ今から飛んでくる弾を最後まで避けたらもっとゆっくりさせてあげるよ。」
「ゆゆゆ!もっとゆっくりできるの!?」
「よくわからないけどたまさんをよければいいんだね!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「じゃあいくからね。頑張って。」
俺はカチカチとマウスを操作する。
「がんばってゆっくりしようね!」
「ゆー!」
その瞬間、親れいむが数メートル離れた壁に勢いよく叩きつけられた。
壁には放射状にれいむの餡子がぶちまけられている。
残ったゆっくり達は笑顔のまま固まっている。
「ほら、避けないとゆっくり出来なくなるよ?」
一斉にゆっくり達の血の気が引き、顔が真っ青になる。
「おぎゃーじゃんんんん!」
「でいぶうううううううううう!」
「もうやだ!おうちかえる!」
「ゆええええええええん!」
一瞬にしてレンジの中は地獄絵図と化した。
蜘蛛の子を散らすように逃げるゆっくり達。
「やべでね!ゆっぐりじでね!」
壁から映画に出てくるようなガトリング砲が伸びてくる。
「つつさんおねがいだからゆっくりやべでね!」
漆黒の砲身が高速回転を始める。
「あああああ!まわらないでえええええ!ゆっぐりでぎないいいいい!」
先程の音とは比較にならないほどの轟音とおびただしい量の弾丸がゆっくりの集団を引き裂く。
「ゆびゃあああああああああああああああ!」
「いじゃいよおおおおおおおおお!」
「じにだぐないいいいいいいいいいい!」
一通り掃射を終えるとレンジの中は餡子に塗れていた。
いったい何匹のゆっくりが生き残ったのだろう。
親まりさは体に比例して面積も多くその分弾に当たりやすかったのだろう。帽子の欠片だけを残して全て壁の斑模様と化している。
生き残っているのは体勢を低くして流れ弾を避けた子供のれいむとまりさが1匹ずつ。
残りは全て壁の模様になっているか虐殺のショックで餡子を吐いて死んでしまっている。
「面白くないな。」
部屋のスピーカーから声が聞こえてくる。
「全く以て同感だ。」
さて、残ったゆっくり達をどうするか……
「ぼうやべでね!ゆっぐりざぜでね!」
返り餡子でドロドロになったれいむが目から涙を流して懇願している。
「ごんなのゆっぐりできないよ!!!!!」
帽子を撃ち抜かれ、金髪に他のゆっくりの皮がへばりついているまりさが怒りを露わにして抗議する。
「そうか、ゆっくりがいいか。じゃあ望み通りゆっくりにしてやろう。」
「「ゆ?」」
今までの理不尽な惨状から一転、願いがあっさり叶い、二匹は逆に動揺している。
「じゃあゆっくり撃つからゆっくり避けてね!」
「「だまざんはゆっぐりでぎないいいいいいいいいい!」」
だが時すでに遅し、先程と違う形状の砲身は既に弾を発射し始めている。
「ゆううううううう!」
二匹はすかさず目を瞑る。しかし
「ゆ?」
いつまで経っても発射された弾丸は自分たちの所に届いてこない。
「ゆゆゆ!たまさん!ゆっくりしてくれてありがとう!」
「たまさんはずっとそこでゆっくりしててね!」
発射された無数の弾丸は極々低速で前に進んでいた。
それが二匹には止まっているように見えたのだろう。
二匹が異変に気づくのはそう遅くはなかった。
「ゆゆ!なんだかへやさんがせまくなってるよ!」
「たまさんはゆっくりできないからいそいでにげるよ!」
そう言って部屋の突き当りに逃げる二匹、だがしかし
「ゆぶっ!」
跳ねる途中、家族の死骸を踏みつけて大きく転倒するれいむ。
「ゆあああああああ!でいぶのあじがあああああああ!」
どうやら死骸の中にあった木の棒で底部を傷つけてしまったようだ。それにしても、何であんな所に木の棒が?
「説明しよう、まりさ種の中には帽子の耐水性を活かして川を渡る個体がいる!その木の棒がたまたまれいむの足を切ったのだ!」
解説御苦労さん。ともかく、跳ねることがままならなくなり、文字通り必死に這いずるれいむのすぐ後ろに弾は迫っていた。
「れいむいそいでね!すぐうしろまできてるよ!」
「じゃあばりざはどぼじでだずけでくでだいのおおおおおお!」
まりさはじりじりと後ずさりしながら、れいむよりも距離を取って弾の塊から逃げている。
とうとうれいむに弾が接触した。
「ゆぎぃ!」
一度歩みを止めてしまえば後は飲み込まれるだけだ。
「あ”あ”あ”あ”あ”!いだい!いだいよ!だずげでばりざあああ!おがあざん!」
それを目の前で見ているまりさはあまりの恐怖に動くことが出来ない。
それに底部を飲み込まれてはもう助かりようがないだろう。
腹部、上顎、目玉と消え最後に頭頂部に到達しタバコに水を掛けたような音を残しれいむは蒸発した。
残されたまりさにも最期の時が刻々と迫る。
「ゆゆゆゆゆゆ!やべてね!たまさんおねがいだからゆっぐりじでね!」
だが弾はゆっくりと、実にゆっくりとしたスピードでまりさに迫る。
「ゆっ!」
まりさの後退が止まる。そう、レンジの最奥、壁の部分に到達したのだ。
壁に背を付け視界一面に広がる文字通り弾幕に正対する。
「もっと……ゆっくりしたかったよ……」
言い終わるか終らないかのタイミングで弾の幕がまりさの鼻先に付く。
高熱の細かい無数の火球がまりさの体を抉る。
「ゆ”ぎぎぎぎぎぎ……!」
想像を絶する苦痛の中まりさは声を上げなかった。
否、想像を絶する苦痛のせいで声を上げる事すら出来なかったのだ。
眼球を徐々に、徐々に高熱が蝕んでいく。
「っ!!!!!」
この時点で舌は焼かれ、歯は全て溶かされている。
もはや声を上げたくても上げることは出来ない。
高熱のカーテンがレンジの最奥に触れたとき、壁には黒いシミしか残っていなかった。
「いやー、お疲れさん。いいもの見させてもらったわ。」
天井のスピーカーから暢気な声が聞こえてくる。
「……何か疲れたよ。」
天を仰いでそう言う。
「最後はノリノリだった癖によく言うぜ。なーにが『高熱のカーテンがレンジの奥最に触れたとき、壁には黒いシミしか残っていな
かった。』だ。」
「うるせぇ。」
「ま、こっちとしてもデータは取れたし、新しい虐待仲間が増えたしでいい事づくめだった訳だがな。」
虐待……か、確かに何とも言えない背徳感と征服感のある行為だ。これは癖になってしまうかも知れない。
「あーあー、そう言う中二っぽい語りとかいらねぇからさっさと飯食いに行こうぜ、飯。」
レンジの中は天井からの水と洗浄液でこびり付いた餡子が洗い流されている。
そうだ、受付の彼女も誘ってみよう。
俺は廊下に出るとそこに待っていた友と一緒に出口へと歩を進めた。
~終~
当初はもっと短かったのですが思いのほか長くなってしまいました。
作者はシューティングレンジに行ったことがないので設定を憶測とグーグル先生で書いたので滅茶苦茶かもしれません。
最後の弾幕はプラズマです。原理は大○教授にでも聞いてください。
文法的におかしな部分は多数あったと思いますが最後まで読んでいただいてありがとうございました。
最終更新:2009年03月29日 03:45