ゆっくりいじめ系3114 復讐

復讐



※下手、俺設定、矛盾



ひどい、有り様だった。窓ガラスは全て砕けちっている。
本棚は、横向きに倒れ、書物は破り取られたり、奪われていた。
台所も荒らされ、割れた食器が散乱し、食物のカスが残っていた。

私は、絶望に浸っていた。

目の前には、皮と、餡子と、涙と、飾りと……。
全てが、蹂躙され、強姦され、殺害されていた。
走馬灯のように、頭の中を思い出が駆け巡る。

もう、戻ってくる事は無い、思い出。

私は、胃の中のものを曝け出した。頭を抱える。心臓が破裂しそうだ。
目を閉じて、涙をひたすら流し続けた。

憎しみと悲しみと怒りとが、混ざって……。

私の心臓は、動作を停止した。


長い間、私は、船に乗っていた。
川は、どうしようもなく、長くて……ただ、悲しみが増すばかりだった。
私の後ろの青年は、それを察してか、何も喋らなかった。


「初めまして……」

目の前に閻魔を務める女性がいた。否、少女かもしれない。
彼女は、淡々とした口調で話した。

「……貴方は、心の清らかなお方です。
 とても、正義感の強い、理想的、模倣的な人間でしょう」

「はあ……」

途切れ途切れに、彼女の抑揚の無い声が聞こえた。

それよりも……あの子達は……。

気づかぬうちに、涙を流していた。止めなく……頬を伝わる。
すると、女性は、温もりのある声で言った。

「泣くのをやめてください。
 彼女達は、また、新しい生を授かるのですから」

「納得できません……。私には。何故でしょうか、閻魔様?
 あの子達は、悪いことをしたでしょうか?
 私の自分勝手で、あの子達を育てました……。
 でも、あの子達は、礼儀正しくて、純粋な子達でした」

私の口から、言葉がどんどんと漏れ出す。俯いて、床の一点を私は、凝視する。
閻魔は、しばらく、黙っていたが、やがて、喋った。

「……何かしたいことは有りますか?」

彼女は、私に尋ねた。意味を理解するのに、何十秒もかかった。

「もし、良ければ、私に復讐させてはくれませんか?」

私の口から、ようやく捻り出したように言葉が出た。
すると、冷め切った心が、今度は熱く燃えたぎるようになった。

「私の記憶を保ったまま、来世を迎えたいのです」

「……本来は、それをするために、何十年も苦役を負わなくてはいけないのですが。
 ……しかし今回は、それを欠点を負うことでで補完しましょう。
 つまり、転生するしてから、記憶を保てる代わりにより苦労しなくては、いけません」

「はい……私は、その覚悟があります」

私は、頷いた。

「そうですか……。では……」

彼女が、持っていた棒を高く捧げた。
緑色の光が、私の身体を包み込み、跳んだ……。


暗く、暗く……ひたすら暗く……温かい。
音は無くて、何かに包まれていることしか分らない。

なので、私は、考える事にした。

ゆっくり達は、何故殺されたのだろうか……?

そう言えば、前に何匹かのゆっくりが来た事があった。
それ以外に、ゆっくりが私の家に来た事は無い。
私は、少し痛めつけてから、彼女等を森に返したのだ。
彼女達は、怒っていた。こんなに可愛い自分を、正しい自分を痛めつけた私に。
だから、他の群れの仲間を呼んで、私の家に突入したのだろう。
ならば、私は、彼女達の群れを見つけ出して、潰さなくてはいけない。
それが、せめてもの、死んで行った友人達への弔いなのだ。

そう、考えていると、全身を包んでいる物が、開いていった。

ぽたっ

身体が、落ちた。風が当たる。

「ゆっくりしていってね!!」

「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!」

「かわいいあかちゃんがうまれたよ!!」

「まりしゃににちぇ、きゃわいいにぇ!!」

懐かしく、甲高い声が、四方から聞こえた。
そして、乾いた地面に軟着陸した。

「ゆゆっ?」

後ろから、低めの声が聞こえてきた。
振り向こうとしたが、身体がうまく動かせない。

「だいじょうぶ!? れいむぅ!!」

どうにか、答えなければ、いけない。
口を開いて、喋ろうとしたが、息が出るばかり。
しかし、やっとどうにか、喋る事が出来た。

「ゆっっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!」

『あし』で、地面を叩いて、跳ねる。
身体を、くいっと、捻って、我が新しい親の顔を見た。

……どうやら、私は、ゆっくりとして、生まれてしまったようだ。
なるほど、確かに、ゆっくりは、生物の中でも、かなり脆弱だ……。

親れいむは、私が動き喋るのを見て、安心したようだ。
すると、彼女は振り向き、もう片方の親、まりさを見た。まだ、四つ程の茎が生えている。
私の家……巣は、洞窟だった。

私は、周りを見た。まりさが一匹、れいむが二匹、姉として生まれている。
どれも、わくわくしながら、新しい姉妹を待っているのだった。

ぽたっ ぽたたっ ぽたっ

次々と、私の妹が生まれ始める。

「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!」

まりさが三匹、れいむが一匹だ。
まりさ、れいむがどちらも五匹の黄金比的な数と言えよう。

全てが生まれ終わると、茎が、しなびて、まりさから落ちた。
周りのゆっくり達が、それを貪り始めたのを見て、私を食む。特に味はしなかったが、腹を満たす事は出来た。

「まだ、からだがじょうぶじゃないから、ゆっくりすであそんでね!!
 それと、まりさも、おつかれさま!! ゆっくりやすんでいってね!!」

産児が終わると、親れいむは食料を集めに出て行った。
赤ゆっくり達は、することも無いので、親まりさと遊ぼうとするが、

「ゆゆぅ……まってね……まりさはつかれたの……」

と言われてしまい、赤ゆっくりだけで、遊ぶことにした。
それで、一匹の赤まりさが、かけっこをしようと言い出した。

「わきゃっちゃよ!!」

周りもそれに同意し、かけっこが始まる。


「じぇいじぇい……」

「ゆっきゅりちゅかりぇたよ……」

「おかあしゃんみゃだかにゃあ?」

「おにゃかしゅいたよ!!」

皆が、ぜえぜえと疲れきっていた。
私はと言うと、最後尾に回ったが、体力は消耗していない。
そう、身体を鍛えるのは重要だが、まず、大きくならなければ。
そうしなければ、私は敵討ちなど出来ないだろう。


それから、十日ばかしが経った。
我々は、直径十二、三センチ程の子ゆっくりにまで成長する事が出来た。
その日、見知らぬゆっくりありすがやって来たのだ。

「おねえしゃんはだれ?」

まだ抜けない赤ちゃん口調で子まりさが尋ねた。

「おひさしぶりね、れいむ、まりさ!!
 とかいはな、わたしにはかなわないけど、なかなかかわいいこどもね!!」

どうやら、ありすは、私の親の知り合いであるようだ。
まりさ、れいむ、そして私は彼女と挨拶をした。

そのうち、十一匹で、雑談が始まった。
ありすは『とかいはなぶゆうでん』を子供に話し、子供は目を輝かせる。

「ゆゆっ? そういえば、どうして、きたの?」

その話の途中で、親れいむは、ありすに聞いた。

「あっ……そうよ!! ありすのすごいぶゆうでんをきいてね!!」

「ゆゆっ!!」

「おねえさん、まだあるの!!」

「すごいね!!」

特にまりさ種は、ありすを尊敬と畏怖の目で見つめていた。
なんと、可愛いのだろうか、と思いつつ、心が痛んだ。

「とかいはな、ありすはすごいのよ!! ふふん!!」

ありすは、そう言って話を始めた。

「このまえね、ありすたちのおうちのはいろうとしたら、にんげんがじゃましてきたの。
 でも、ありすたちはかしこいから、かんたんににんげんからにげられたんのよ」

よくある、自慢話だ。だが、話はまだつづいていた。

「そのあと、ありすたちは、どすまりさのむれのゆっくりといっしょにふくしゅうしにいったの。
 とうめいなかべをこわして、なかにはいると
 おうちには、あまあまや、ごほんがあって、みんなよろこんでいたの。
 それと、びゆっくりがたくさんいたのよ!! 
 ひとりじめした、にんげんをころしたかったけど、いなかかったの。
 ありすは、おそいかかってきたびゆっくりをみんなたたきつぶしてやったの!!
 それで、みんなにありすはつよくてかっこいい!! ってほめられたのよ!!
 やっぱり、おろかでばかなゆっくりはしぬべきなのよ!!」

え……? 今、何と、言った。私の顔が歪んだ。
愚か……馬鹿……私のゆっくりをそんな風に言うのか。
怒りが、心に満ちる。今にも、ありすを殺してやりたかった。
皮を裂き、目玉をくり抜き、歯をへし折らせてやりたい。
だが、体格が違いすぎた。だから、我慢した。殺害衝動を押さえ込んだ。

それよりも、二つ分ったことがある。まず、あの群れは、この付近にいる、と言うことだ。
そして、もう一つ、このありすを死ぬより辛いようにしてやる必要がある、と言うことだ。

「ゆゆっ? どうしたの、れいむ? おかおのいろがわるいよ?」

顔を俯け、下から、ありすを睨んでいると、親れいむに話し掛けられた。
私は、上を向いて、ごまかした。

「ご、ごわいよ~!! ありずごわいい!!」

どうにかして、泣き真似する。涙は出ていないが、それに気づかれることはなかった。
すると、周りの子ゆっくりもそれに同調して泣き始めた。

「ごわいい!! やだああ!!」

「じにだぐないい!!」

両親と、ありすは困って飛び跳ねた。

「そ、そんなことないよ!! ありすがころすのは、わるいゆっくりだけだよ!!」

「そうだよ!! ありすは、せいぎのみかたなんだよ!!」

親れいむが言い、それに次いで、親まりさが言った。
それを聞いて、ありすは照れた。顔を赤らめて、一段と高く跳ねる。

「ゆっゆっ!! そうよ!! ありすはかっこよくて、とかいはなのよ!!」

「そうだったんだね!! こわがって、ごめんね!!」

子まりさが、言うのを引き金に、私含め七匹の子ゆっくりも謝った。

それから、色々喋って、ありすは群れへと帰って行った。


二十日が経った。生まれてから、一ヶ月になるか。
私達は、直径二十センチ程の、若々しいゆっくりへと成長していた。

親に、外に出ることを許されてから、幾ばくかの友人が出来た。
その一匹にぱちゅりーがいて、私は、姉のまりさと一緒によく彼女と遊んだ。

その中で、気づいたのだが、ぱちゅりーは私に気があるらしい。
私をぼうっと、見つめていることがたびたび有ったし、それに気づかれると、赤面するからだ。
私は、気の毒だった。何故なら、私の姉も彼女のことが好きだったからだ。
しかし、姉は、ぱちゅりーへの愛が意味の無い物であることに気づかなかった。……最期まで。

それは、川に沿った帰り道を、跳ねている時に言われたことだった。

「どうしたら、ありすみたいにかっこよくなれるんだろ?」

まりさが、跳ねながら言った。
本人は気づかれていないと思っているが……ぱちゅりーの気を引きたいためだろう。私は答えた。

「おとなになって、からだをきたえればいいよ!!」

正直、あの女郎みたいになって欲しくは無いが。だが、しょうがない。彼女達の視野は狭のだ。
だから、ああ言う見てくれだけの、格好良さのあるアバズレを目標にしたがるのだ。
しかし、次の言葉は……我慢できなかった。否、我慢してはいけないのだ。

「まりさも、くずで、おろかで、ばかで、びっちの、
 くそゆっくりをせいばいする、せいぎのみかたになりたいよ!!」

クズ、愚か、馬鹿、ビッチ(聞きなれないが、アバズレを表す外来語らしい)、糞……。
それを、聞くと、私の心臓と脳のリミッターが外れたようだった。

「ゆっびぃ!? なにびゃ!?」

私は、まりさに突進した。体格では勝るが、不意討ちにまりさが、ひるみ、川に落ちた。
まりさが、水に濡れながらも這い上がってくる所に追撃する。

「ぎゃっべえ!? どぼぼぼっ!!」

まりさが、吹っ飛んだ所にさらに叩き込んだ。
まりさは、川の深い所に入ってしまい、喋る事が出来なかった。

「ぶうう!! ぶうううう!!!」

まりさは、必死に身体をくねらせて、こちらに泳いで来る。
たたみ掛けようとしたが、もっといたぶらせてやろう、と思った。

「どおじでええ!? どうじでごんなごどずるの!!
 ゆっぐりできないれいむば……じねえええ!!!」

まりさが、私に突進をしかけるが、濡れている為か、遅い。
私は、冷静に足元の石を口で咥えた。ひんやりとする。

「ぎゃばああああ!!!!」

全身全霊をかけたまりさは、雄たけびを上げて飛び上がった。
私は、身体をくねらせて……そして、回転し、石をまりさに投げた。

ゆっくりの弾力は意外と強い。石は、正確に直進し……皮のふやけたまりさを見事に貫通した。

「ぼぎゃああああ!!??」

まりさは、惰性に従って、進み、落ちた。
べちゃっと、まりさは、潰れた。皮が簡単に裂け、餡子が飛び散った。

私はまりさを食らった。皮を食い、散った餡子を舐め尽くした。
全ては……私の、愛する者達の復讐のために……。


「おねえざんが!! おねえざんがあああ!!! ああああああああ!!!!」

私は、巣の中に飛び込み、泣く。ただ、ひたすらに泣く。
涙は、すんなりと、出た。あの時の悲しみを思えば。

「どうしたの!? れいむ!!」

「ゆっくりなきやんでね!!」

「じじょうをはなしてね!!」

私の肉親が、近寄って来て、落ち着かせようとしたが、出来ずにおろおろするばかり。

「おねえざんをでみりゃが、だべぢゃっだあああ!!!」

びくっと、空気が凍りついた。

「おねえざんん!!!」

子れいむは、まりさを思って泣いた。

「じにだぐないいい!!!」

子まりさは、恐怖を感じ、跳ね回った。

「でみりゃごわいいいい!!!!」

子れいむは知らぬ恐怖に怯えて、叫んだ。

「じずがにじでよおお!!!」

親れいむ一声叫ぶと、皆が沈黙した。彼女は、涙を流しながら、言った。

「もう、まりざばもどっでごないんだよおおお!!!
 だがら、れいむだぢが、まりざのぶんまでいぎなぎゃいげないの!!!」

「そうだよ!!! まりさは、れいむをたすけてあげたんでしょ!?」

親まりさは、飛び跳ねながら、私に尋ねた。私は、跳ねて、肯定した。

「そうだ!! 『むれ』にいけば、いいんだよ!!」

隅にうずくまって、白目を剥いていたまりさが、飛び跳ねた。
『群れ』……あの憎き、ゆっくり共の巣窟だ。
もしかしたら、行けるかもしれない……これは、またと無い機会だ。

「む……むりだよ……むれには『つよいゆっくり』しかいけないよ……」

しかし、親まりさは、地団駄を踏んで言った。

「まりさは、つよくないし、あたまもよくないよ……だから、むりだよ……」

どうやら、『群れ』は、能力が高かったり、知能が有ったりする、
エリートのゆっくりで無ければ、行けないようだった。

それを聞いて、子達は愕然とした。

親は、強くない。

それを、責めるべきではないのだが、こいつらは、ゆっくり。
彼女達の中で、親は、保護者から、罵倒される存在に変わってしまっていた。

「しね!! まりさたちのこともまもられないようなおやはゆっくりしね!!」

「おお、おろかおろか。こどももまもれないなんて、おやしっかくだね!!」

「れいむは、こんなすからすたこらさっさして、『むれ』にいくよ!!」

平気で親を罵倒する子まりさ二匹と、子れいむ。

彼女達は、蓄えていた食料を食い荒らして、外に飛び出て行った。
純真な末っ子の子れいむが止めようとしたが、跳ね除けられた。
親二匹は、子に罵倒されたのが衝撃的で、動くことも出来なかった。

残ったのは、親れいむと、消極的な親まりさ。身体の小さい、末っ子の子まりさ。
私と、大人しい長女子れいむと、末っ子子れいむ。

家族が、四匹減り、家はそのぶん、広くなった。

「ゆ!? れいむ、なにずるのおおおお!!??」

私が、家から飛び出ようとすると、親まりさに止められた。
自分の子とこれ以上、別れたくないからだろう。

「ゆっ!! だいじょうぶだよ!!
 れいむは、おかあさんのことを、せめたりしないから!!
 れいむは、おねえさんたちをよびもどしにいきたいだけだよ!!」

親まりさを残して、私は飛び出した。
あの、命知らず達の末路を見てやろう。
周りを見回すと、左の方にあいつらが居た。おおよそ、二十メートル程、離れているか。


あやつらに三メートル程まで近づいた。
あいつらは、後ろから私が来るのに、まったく気づかず、ぺちゃくちゃ喋る。

「ありすみたいになって、れみりゃをたおすんだよ!!」

「そうだよ!! 『むれ』にいけば、つよくなるよ!!」

何を勘違いしているのだろうか。『むれ』に簡単に入れると思っているようだ。
きっと、自分が強いと言う、根拠の無い思い込みの弊害であろう。

「ありすみたいになって、あのじじいとばばあみたいなぐずをころすんだよ!!」

「れいむたちなら、できるよ!!」

「せいぎのみかたになるんだよ!!」

……親のことを馬鹿にするなんて、よく出来る。
正義の味方……良心的なゆっくりを殺す奴をそう、呼ぶのだろうか。

……ゆっくりさせなくしてやる。

私は、息を吸い込み、叫んだ。

「こうまかんのおじょうさまああああ!!!!」

「ゆぅ!?」

「れみりゃ!?」

私が叫ぶと、ゆっくり達は、きょろきょろ慌て出した。
ザザッ……芝生が音を立てた。ゲス達は、そちらの方を向いた。

肌色の腕が突き出された。もぞもぞと、それが動く。
所々切れたピンクの服の袖が見え……凹凸の無い、身体が現れた。
水色の髪、鋭い牙、赤い目……胴付きのれみりゃだ。

「でみりゃごわいいい!!!」

「だ、だずげでええええ!!!!」

「お、おがあじゃあんんん!!!」

先程、れみりゃの話しを聞いたせいか、それぞれが、腰を抜かしてしまい、動けなくなった。
れみりゃは、私の方を向いていたが、怯える声を聞いて、振り返った。

「れみりゃさま!! それは、さくやのよういした、でなーです!!」

「うっう~♪ ありがとうだどお~♪」

私が、自分のことをさくや、と言うと、れみりゃは否定もせずに、
ぶるぶると震えているゆっくり達に飛びかかった。

「うっう~♪ そおれえ~♪」

可愛い、よちよちとした動作で、子まりさを一体掴んだ。
残りの二体は、口を開けて、それを見ていた。

「だずげで!!! だずげえべええっばああああ!!!!」

ガブッと、れみりゃが、子まりさを噛み砕き、飲み込んだ。
れみりゃは、にぱー、と笑って、もう一体の子まりさを掴む。

「れみりゃさま!! その、まりさはわるいまりさです!!
 ほっぺをひっぱって、ちぎりとってください!!」

すると、掴まれたまりさがこちらに気づいた。
まりさは、身をよじって、れみりゃに叫んだ。

「おでがいでずううう!!! あのでいぶをだべでええええ!!!!」

「う? あれは、れみりゃのしもべだどおお!!」

れみりゃは、私を食べろ、と言ったのに怒ったようだ。
まりさの、両頬を尖った爪を食い込ませて、引っ張り始めた。

「びゃああ!? なにずるのおおお!!!
 やべでええええ!!!! あのでいぶをだべでええええ!!!!」

まりさは、逃げ出したれいむを食べろと、れみりゃに言った。
そのれいむは「どおじでぞんなごどいうのおお!?」等と泣き喚いていた。

れみりゃはそれを無視して、拷問を続ける。

「びびばぶばいいいい!!!! びょっびぇええええ!!!!」

ビチィと頬が千切れた。餡子は、漏れ出し、まりさは落下した。
れみりゃは、落ちて、さらに餡子を噴出したまりさを踏みつけた。

「ゆぎゃあああああ!!!!!」

まりさは、帽子までも、潰され、皮の塊となった。
れいむは、その死体に「しね!! しね!!」などと叫んでいた。
が……お前もすぐに死ぬだろう。

「ゆぐぅ!!?? はなじでね!! ばなじでええええ!!!!」

れいむは、リボンを掴まれて、持ち上げられた。
彼女は、れみりゃの方を見て、媚びた笑いをする。

「れみりゃさま!! そいつのりぼんをとってください!!」

「うっう~♪ じゅうしゃのねがいをきく、れきりゃは、かっこいいんだどお~!!」

れみりゃは、ブチッとれいむのリボンを千切り取り、
「いらないものは、ぽいっ、だど~♪」と言いながら草むらに捨てた。

「ゆぎゃあああああ!!!!! がえぜええええ!!!!
 じねええええ!!!! でいぶのりぼんんんん!!!!」

れいむは、半狂乱状態で、叫び続けたが、れみりゃは無視して、笑っている。
それだけではない。普段眠っているれみりゃの嗜虐心に火がついたようだ。
さらにそれに伴って、かなり知能が増大したらしい。

「……しね……」

れみりゃの目の色が変わった。赤が……紅に……。
我が主は、指をれいむの頬に刺した。柔らかく……恐ろしく。

「びぃ!?」

鋭い爪に刺されて、れいむが小さく悲鳴を上げた。
それを見て、れみりゃは、美しく微笑んだ……。

れみりゃは、指を優雅にかき回す。
れいむは、最初ちょっとした違和感を感じるだけだったが、次第に動きは速さを増していく。

「ゆびゃ!!?? やべっ!!?? がばば!!??」

今まで感じた事の無い、内部からの痛みにれいむは、驚き、うめく。
れみりゃの、その瞳は、嘲笑っていた。愚かで、下等な、生き物に……。

「びゃびゃびゃびゃびゃ!!!!!」

れいむは、涎と涙を止まらんばかりに垂れ流し、白目を剥いた。
口はだらしなく広がり、泡が口角に集まっている。
身体は、定期的にびくんびくん、と痙攣していた。

れみりゃは、かき混ぜるのを止めて、指を引っこ抜いた。れいむは、何も反応しなかった。
彼女は、今度は、むっちりとした手を大きく開いた口に突っ込み、何かを握った。

「びゃっべええええ!!??」

れいむは、正気を取り戻し、餡子を一気に噴き出した。

れみりゃは、落ちていた枝を拾い、れいむに真上から突き刺した。
やすやすと、れいむの皮を貫通し、地面に刺さった。れいむは、磔にされたのだ。
吸血鬼を模した物にそう、されるなんて、なんて皮肉なのだろうか。

「ゆっくり、死ね」

れみりゃは、抑揚のついた声で、れいむに言った。
さっきよりも、起伏があるのに、それは氷のように、冷たかった。

れいむは、泣き叫ぶこともしなかった。
ただ、一言つぶやいただけだ。

「おぎゃ……じゃん……ぎょべん……なざぃ……」

れいむは、言い切ると、がっくりと、俯いた。
私も、それには同情せざるを得なかった。

しかし……れみりゃは、まさしく、鬼だった。

彼女は、死んだまりさの上半分にそれの餡子を詰め、逆さに置いた。
続いて、れいむの上半分を勢い良く切り取った。

「びゅっばあああ!!!」

れいむの口の半分ほどから上あたりは、跡形も無く消え去った。

れみりゃは、まりさの上半分をそれに接合した。
そして、餡子や、まりさの残った皮でそれを補強した。

これは、ゆっくり虐待の中の一つだ。
意識が混同し、感覚を共有することで、様々な虐待が出来るらしい。
もっとも、私は虐待なんて、嫌いだが。

しばらく経つと、皮が再生しはじめ、金髪のまりさが出来上がった。
まあ、下の方はれいむであるが、皮の色に少々違いがあるだけで、まりさにしか見えない。

『ゆゆぅ!?』

二つの声が、そのまりさから聞こえた。
れみりゃは、ふふふ、と妖しく笑っていた。

まりさがその場で跳ねた。

『どおじでうごがないのおおおお!!??』

どうやら、移動しようとしたらしい。
しかし、意識が二つある為、全身の連携を取る事が出来ないでいるのだ。

「でいぶはじねえええ!!!」

「まりざごぞじねえええ!!!」

すると、二体は自分の身体の中にある、もう一つの人格に気づいたためか、罵りあいを始めていた。
まず、下半身が、走り出して、上半身を木にぶつけようとした。
しかし、上半身は、後ろに身体を引いて、それを避けた。

「びぇびぇええ!!」

下半身のれいむが、ごつごつとした木にぶつかり、幾つか切り傷を作った。

「ばーかばーか!!」

それを見て、上半身のまりさは、嘲笑をしえいた。

れみりゃは、脚を投げ出して、それを醜悪な風景を楽しんでいた。
私も、れみりゃの隣に座って、ぼうと、彼女達の馬鹿な争いを眺めていた。

「ゆぐううう!!!」

すると、れいむは、高く跳ね、空中で身体を逆さにした。
まりさの上半身が、硬い地面に突っ込んでいく。

「ゆぎゃべええええ!!??」

まりさは、頭をぶつけ、ぐにゃりと曲がる。あまりの圧力の為に、餡子が少し噴き出してしまった。

「しね!! ぐずなまりさはしね!!」

「うるざいいいい!!!! ゆっぐりじないでじね!!」

れいむと、まりさは罵詈雑言を掛け合い、自らの身体を傷つけた。
目がぽろり、と取れ、歯が何本も折れた。『あし』には大きな穴が空き、唇がひしゃげた。
全身が、痛々しい切り傷で覆われ、餡子がそこかしこから漏れて、皮が見えなくなっていた。

「が……!! じ、べっべっべっ!!!」

「ぴゅうぴゅう……びゅりゅりゅりゅ!!!」

二匹のゆっくりは、言葉もろくに喋られず、
息を吐き出すのがやっと、と言う有り様なのに、未だ争いを続けていた。
もはや、目的を忘れ、ただ、本能に従って行動しているだけなのだろう。

「ぎゅびゃあああああ!!!!!」

いきなり、まりさが欠けた歯で自分の舌を噛んだ。かなり痛がっているが……。

「びゃ!!!??? びゃばだじゃかす!!!!!?????
 びゃぼるぼべらぎゃああああ!!!! はじああああああ!!!!!!」

より、舌と神経の繋がっているれいむは、この世の物とは思えぬ……
まるで、金属と金属を擦り合わせたような……音で、のた打ち回り、叫び続けた。

「べ……ゆ……まじざぞざじざよ……」

まりさは、疲れた顔で笑った。皮肉で、むなしい、笑いだった。

「ゆっ!! ゆっ!! ゆっ!! ゆっ!!」

れいむは、何度も繰り返し、繰り返し、悲鳴を上げていた。
それは、どんどんと無機質になって行き、どんどんと聞き難いものになっていった。

「ビピィッ……ビピィッ……」

壊れた蓄音機のようにれいむは、言葉を発し続けたが、それもやがて止まった。

「ゆ!! まりさは、やっぱりすごいね!!
 れいむなんて、けっきょくはくずで、どうしようもないんだね!!」

まりさは、生気を取り戻し、生意気に叫んだ。
しかし、幸せの絶頂とは、長く続かないものだ。

まりさは気づいた。

「ゆぎいいいい!!?? なんでうごげないのおおおお!!??」

『あし』が動かない。

……当然だ。『あし』を動かしていたのはれいむの餡子だ。
確かに、ゆっくり達は同化能力を持っているが、れいむはまだ『生きている』。
そう、『生きている』のだ。だから、餡子が同化することは無く、かと言って、れいむが動くことも無い。
れいむは、死んだのでは無く、精神が完全に崩壊しただけなのだ。

「死ね」

れみりゃは、立ち上がり、静かに言った。

まりさの顔は完全に青ざめた。

「おでがいでずうううう!!!! まりざをだずげでぐだざいいいい!!!!」

「嫌だ、死ね」

れみりゃは、否定すると、後ろを向いて、翼を大きく開いた。
彼女は、私に何も言わなかったが、忘れているのではなく、必要の無い存在になってしまったのだろう。

「さようなら」

そう言って、れみりゃは立ち去った。
もう、彼女と会うことは無かろう。

「おでがい!!! でいぶう!!! だずげでよおおおお!!!!」

まりさは、私に気づいたのか、助けを求めてきた。

私は無視して、愚鈍な生き物の悲鳴を背に、元着た道を帰った。


「ゆゆ!? どうだった!?」

親まりさは、私を見るとすぐに飛んで来た。

「……がんばったけど、みつからなかったよ……」

私は、意気消沈するふりをする。
親も子も俯いて、暗い顔をした。

「で、でも!! まだ、こどもはよにんいるよ!!」

親れいむが、どうにかして親まりさをはげまそうとした。

「そ、そうだよ!! れいむたちは、おかあさんたちから、にげたりしないよ!!」

「ばかにすることもないし、みすてたりもしないよ!!」

「だから、もう、なやまいでね!!」

「あのこたちのことはもうわすれてゆっくりしてね!!」

子ゆっくり達も、親まりさをはげまそうと頑張る。
それでも、親まりさは下を向いたままだった。そして、そのまま、何かをつぶやいた。

「まりさなんて……おやじっがぐなんだよおおおお!!!!」

まりさは、突発的に自傷行為を始めた。
親れいむと、子ゆっくり達は、呆然としていたが、私はすぐに飛び出した。

「ゆう!!!! ゆう!!!! ゆぶ!!!!」

まりさは、何度もごつごつした巣の内壁にぶつかって、傷を作る。

「やめて、おかあさん!! そんなことしないで!!
 そんなばかなことしても、いみないでしょう!!」

思わず、元の口調が出てしまった。
私は、母を押し止めようとしたが、彼女は違う所に行って、また、自傷し始めるのだ。
体格では、私が劣る為、追いつくこともできなかった。

途中から、親子も加わって、止めに入ったものの、まりさの自傷は、止めさせられなかった。

「ゆぎぎぃ……ばかなおやで、ごべんね……」

まりさは、餡子を垂れ流し……絶命した。

「どおじでごんなごどじだのおおおお!!??」

「ゆがああああ!!!! じなないでええええ!!!!」

「もっど、ゆっぐりじようよおおおお!!!!」

「が、が、がっ!! がっ!!! びゃべ!!!!」

親子四匹が泣き、末っ子れいむが狂ってしまった。

少しだけ悲しく、とっても後悔した。私があんな嘘をついたことに。


それから、十日程経っただろうか。
家は、とても広かったが、ただ、寒いだけだった。

今までの、活気は無かった。

父は、やつれ、私を含めた子ゆっくりが主に狩りをしていた。
彼女は、最近どんどん傲慢になっていった。

私達が、虫を取っていっても、しぶしぶ食べるようになり、蜂蜜やキノコを欲しがった。
また、意味もなく私達を叱ったり、乱暴をしたりもした。

そして、ついに限界が来てしまった。

「ゆっぶええええ!!??」

末っ子子まりさが、親れいむに突進したのだ。

「しね!! しねえええ!!!
 しょくりょうもとれないおやはしねええええ!!!!」

私達はまだ、子ゆっくりだ。成人するには、あと一ヶ月はかかる。

「うるぜえええ!!! おやにはんぎゃくするやづっはああああ!!??」

反撃しようとした親れいむに、末っ子子れいむが上からのしかかる。
親れいむは、十日動かずに、だらけきっていたので、身体もかなり鈍ってしまっていた。

「ゆびゅべ!!!! ぼべえええ!!! ごっごおお!! だっ!!」

私は、何もせずにその様子を見ていた。
長女れいむは、惨劇に怯えきり、私の後ろに隠れていた。

「どっびいいいい!!!! ゆぐりぃ!!!」

父の身体に亀裂が走り、餡子が漏れ出す。
どんどんと父は、平べったくなって行き……死んだ。

我が妹達は、巣から出て行った。

私は、目の前の肥えた食料に近づき、貪り始めた。
復讐の前のランチだ。

無理して食べ終わると、ゲップが出た。
後ろを振り向くと、長女れいむも、立ち去ったいた。

私も、この巣を捨て、『群れ』を目指した。

to be continued



…………
あとがき



ゆっくりになる、と言うコンセプトで書いてみました。
最後が、尻切れトンボみたいになってしまいました。すみません。
続編も頑張りたいと思っています。どうぞ、何かご指摘を。

ここまで、見てくれてありがとうございました。

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最終更新:2011年07月28日 19:55
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