竹取り男とゆっくり 5(前編)



 ある日、目覚めると腹の上に4匹のゆっくりがいた。
 男が驚いて声を上げると、そのゆっくりたちは明るい笑顔を向けてきた。
「れいむのかわいいあかちゃんたちだよ! ゆっくりみていってね!」
「むきゅ! あかちゃんたち、おにいさんにごあいさつするのよ」
「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」」

 病弱なぱちゅりーが産んだ赤ちゃんは、たった2匹だった。
 親であるれいむとぱちゅりーは、各々と瓜ふたつのこの赤ちゃんたちを見せようと、男が起きるまで枕元で待っていたらしい。
 対面を果たした赤ちゃんたちはそれなりに可愛かった。
 天真爛漫なれいむと愛情深いぱちゅりーの間で元気に育っていくことだろう。

 ……あれから三日間。
 外は晩秋の豪雨に見舞われて、男は雨漏りを直していた。
 2匹の赤ゆっくりはよく食べ、よく遊んだ。
 ときおりワガママを言うが、ぱちゅりーはよく躾をしている。
 三日の間に、赤ゆっくりはひとまわり大きくなった。

 そして四日目の早朝…。
 雨もやや落ち着いたので、男はいつもどおり竹を切りに家を出た。
 ぱちゅりーだけは起きてきて男を見送り、そのまま男の影が竹林へ消えるまで、ずっと見送っていた。

 風雨にあおられてサワサワと竹の葉音の心地よい朝、カーン、カーン、と甲高い音が山を馳せる。
 十分に成長した竹を斧で倒す。倒した竹を等分に切って荷車に乗せる。そして街に売る。それが男の先祖代々からの生業だった。
 若竹を残して一帯を切り終えた男は、場所を移動して斧を握った。
 片時の静寂が再び破られたそのときである。
 手近な場所から、なにやら声が聞こえてくる。
 斧を振るう手を鎮めて辺りをうかがっていると、2メートルほど離れた地面のくぼみが動いた。
 そして、わさわさした落ち葉をのけて土の中から顔を出したのは、なんと野良ゆっくりれいむだった。
 そのれいむは不機嫌そうにキョロキョロとあたりを見回していたが、側にいた男を見つけると、穴からピョンと飛び出した。

「ゆゆ! そこのおじさん! さっきからかんかんうるさいよ! ゆっくりできないおじさんはどっかへいってね!」

 ああ、もうそんな季節か…と男はため息をついた。
 通例、竹で覆われた山にはゆっくりのエサになるような植物や昆虫は少ない。
 そのため、この山には道に迷った"はぐれゆっくり"やエサに関する知識の乏しいゆっくりしか来ない。
 だが、最近は冬も近づいたこの時期に、ここに巣をつくるゆっくりがポツポツ現れた。
 ゆっくりたちが苦労してここに穴を掘り、食物を運び込んで越冬する最大のねらいは、春先に生えるたくさんのタケノコである。
 そして、これらは男の食料源でもあり副収入源でもある。
 だからこそ、男は毎年この季節になると罠をしかけ、アミなどを持って捕獲に専念してきたのである。
 男は、また今年も苦労して土を掘り返し、ゆっくりを掃討しなければならないのかとウンザリしていた。
 一方、れいむは何の反応も見せない男に対してますます不機嫌そうに顔をゆがめた。

「ゆ! せっかくれいむがしかってあげてるのに、きこえないの? ことばわからないの? おじさんばかなの!?」

 れいむのこの口調に、男はすぐに潰してやろうと思った。が、信じられないかもしれないがこの男は意外と平和主義者である。
 話して解決できないか、いちおう試みてみる。

「あのさ、この山には勝手に入るなよ」
「ゆ? なにいってるの? ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだから、おじさんこそかってにはいらないでね」
「そうじゃなくて、この山の持ち主は俺で、お前のものじゃないから出て行ってくれって言ってるんだ。わかる?」
「ゆゆ? さっぱりわからないよ! ここはれいむたちがみつけたんだから、れいむたちのものだよ!」
「だから、お前は俺の山に無断で入って、勝手に自分のものだって決めちゃってるだけなんだよ」
「なにいってるかわかんないよ!! れーむたちがここにきたとき、おじさんなんかどこにもいなかったでしょぉ!?」
「…あーもうっ!」

 男はやっぱりダメかと落胆した。
 れいむのほうは、男が黙ったので納得したと思ったようだ。

「ゆっくりりかいできた? それなられいむをおこらせたおわびにごはんをもってきてね。そしたらゆっくりゆるしてあげるよ」
「なんでお前みたいなチビ饅頭のエサなんか」
「ゆゆっ!? れいむはこんなにおおきくてりっぱですごくゆっくりしてるのに! そんなこともわからないなんて、おじさんやっぱりばかだね!」

 たしかにこのれいむは成体ゆっくりの中ではやや大きい部類に入る。
 そのため、れいむは自分の力をかなり過信していた。
 だが所詮はゆっくり。
 人間からすれば、直径50〜60センチの大きな饅頭にすぎない。
 体の大きさが強さの証だと考えるなら、自分よりはるかに大きな人間の恐ろしさを想像すればいいのだが…。
 それをしないがために、こうしていつも自分の命を危険にさらすのだ。

「れいむのつよさをおしえてあげるよ! おじさんはこうかいしながらゆっくりあやまってね!」

 そう言ってニンマリと不敵に笑うと、れいむは大きく息を吸いこんでから地面の石を咥えて男にプッと飛ばした。

「いたいでしょ?」
「…いたくねーよ」

 れいむはまた空気を溜めて石を咥えると、男にプッと飛ばした。

「いたいでしょ?」
「いたくねーよ!」

 れいむはまた石を咥え、しつこく飛ばしてくる。

「こんどこそいたいでしょ!?」
「うっせボケェ!!」

 ボコォッ

「ゆぎゃんっ!?」

 男は平和主義者だが、気が短かいのが玉に瑕なんだと思う…。
 れいむは男に蹴っ飛ばされて地面に叩きつけられた。
 口から餡子でも撒き散らして重傷を負うところだが、降り積もった落ち葉がクッションになったおかげで打ち身程度で済んだ。

「ゆぐっ、もうおこったよ! れいむにひどいことするおじさんは、あのよでゆっくりこうかいしてね!!」

 れいむはプッツン切れて、ボヨンボヨンと体当りをしてくる。 …が、もちろん全然きかない。

「きたねえよ」

 ズボンのすそを土まみれにされた男は、跳ねてきたれいむをゴム鞠のように蹴り上げてやった。

「ゆげえぇっ!!」

 れいむは上空4メートルぐらいまで飛ばされてから、地面に落ちてビチャッと顔面を叩きつけた。

「ゆぐ…ぐ…ぐ…………どぼぢでごんなごどずる゙の゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!!???」
「お前が先にしかけてきたんだろ?」
「ゆぎぎぎぎぎ…」

 れいむは歯軋りしながら男を睨みつけていたが、すぐに空気を吸い込んでプク〜ッと膨れて威嚇した。
「順序が逆だろ。威嚇が最初で、攻撃は後!」
 男が斧の柄でれいむの脳天をブッ叩くと、ぶにゅっとした感触とともにれいむの体は簡単にひしゃげてしまった。

「ぷびゅるるるるるるるるるる!!!」

 真一文字に結んでいた口の隙間から、溜め込んでいた空気が勢いよく漏れる。
 元の大きさに戻されたれいむは脳震盪(?)をおこして両目をギョロンギョロン回していたので、男は往復ビンタで現実に引き戻した。

 パァン! パァン!

「ゆぶっ!? ぶぶっ!!」

 ビンタを食らったれいむの頬は、左右とも真っ赤な手形がついた。
 これぞ真のもみじ饅頭。

「お前、家族がいるだろ。どこだ?」
「ゆぶぶ…しらないよ! れいむにかぞくなんていないよ!」
「とぼけるなよ? さっきお前、『れいむたち』って言ってただろ? …そこの巣穴にいるのか?」

 男はれいむを捕まえたまま、視線を穴へと向けた。

「ゆっ…ちがうよっ! れいむはひとりでゆっくりしてたんだよっ! あかちゃんもまりさもどっかいっちゃったよ!!」
「あかちゃんとまりさね。で、赤ん坊は何匹いるんだ?」
「ゆぐっっ! い…い…い…いないっていってるでしょおおお!!! れいむのいうことがきこえな…」

 パァン! パァン!

「あ゙っ!? ぶっ!!」

 くわっと反抗的な目を見開いたので再び往復ビンタをくれてやると、れいむは涙目になって歯を食いしばった。

「ごべんなざい……ゆっぐじゆるちでぐだざい……」
「じゃあもう一度聞こう。赤ん坊は何匹いるんだ?」
「よにんで…」

 パァン! パァン!

「ゆべっ!! ぐべっ!!」

 男が三度目の往復ビンタをくれてやると、赤い手形は早くもミミズ腫れになった。

「人ってのは人間を数えるときに使うんだ。お前らは人間じゃないだろうが!」
「ゆひいぃぃっ! ごべんなざいい! よんひきで…」

 パァン! パァン!

「でぃぎゃ!! ぎゃぶぅ!!」

 これで四度目。ただでさえ赤くふくれた頬を容赦なく叩くので、頬は熱をもって腫れあがり、目と口を圧迫してメタボのようになった。

「匹ってのは動物やなんかに使うもんだ。お前らは…」
「ゆっぎゃー!! ぞおでじだあ!! でいぶだぢはまんじゅうでじだあ!! うすぎだないでいぶのごどぼだぢはぜんぶでよんごでずうぅぅ!!!」

 何匹…と最初に聞いたのは男のほうだが、ビンタへの恐怖のあまり、れいむはどこまでも自分を落としていった。

「そうかそうか。薄汚いのを4個も、ボタボタと産み落としちまったのかぁ」
「そおなんでずぅ!!! じめじめじだあなのながに、うずぎだないまんじゅうがよんごもあるんでずううううっ!!!」
「じゃあお前、その薄汚い饅頭全部持って来い」
「わがりまぢだあ゙ぁぁぁぁぁぁ………………………………ゆ゙っ!?」

 機械的に服従していたれいむの餡子脳が男の言葉を理解するのに、数秒を費やした。

「だ…だめでずうう!! でいぶのこどぼだぢはゆっぐぢざぜであげ…」

 パァン!! パァン!! パァン!! パァン!!

「ぎゅぶっ!! ゆぎゃんっ!! ぎょべぇっ!! ぶげぇっ!!」

 五度目にはダブル往復。
 なにせ毎日斧を振って鍛え上げた体と、人一倍大きな手から繰りだされる強烈なビンタだ。
 やわらかいれいむの体は真っ赤な饅頭となって醜く腫れあがった。
 両頬に圧迫された口(з←こんな感じ)からは、ときおり餡子が噴き散らされる。

「おぶっ…! ぐ……ぶぷっ……」
「早く持って来い」
「わ…がじ…ばじだぁ…」

 解放されたれいむは重いほっぺたを引きずってズルズルと這っていくと、モタモタと穴の中にもぐっていった。
 男は荷車に積んだ竹を整理しながら五分間だけ待ってやったが、案の定、れいむはそれっきり出てこなかった。
 男は巣穴に近づくと、飛び出してきても反撃できるよう身構えながら中を覗いた。
 …奥にれいむの後頭部が見える。
 おそらく、もともとは別の小動物の巣穴だったのだろう。ゆっくりが作ったにしては大きすぎる巣穴だ。
 れいむはその大きな入り口を、空気を吸い込んでパンパンに膨れあがった体で栓をして、ぴったり塞いでいた。
 中からは親子の声が聞こえてくる。

「みゃみゃ! けがちてりゅよ!」
「どぽちたのぉ!?」
「ゆえーん! ゆえーん!」
「しょこどいちぇ! まりしゃおしょとにでりゅう!」
「あがぢゃんだぢ、なかに…いれば…っ……あんじんだがらね……。つよひおがあざんが…いれば…あんじん…ゆぼぇっ」
「ゆっ!? みゃみゃ、あんこもれちぇるよ!」
「れいみゅにくっちゅいたよぅ! きちゃなぁい!」
「ゆえーーん! やだぁ! みゃみゃ、ちんじゃやだぁ!」
「おしょとにでちゃいぃぃぃぃ!!」
「おぞどは……だめだよ……。えゔっ……おがあざんが、しゅーりしゅーりしてあげるがら……が…ゆげぇっ……がまんじででねぇ……」

 ボロボロになっている母れいむは、怖がらせないように人間のことは伏せたまま、泣き叫んで心配する赤ちゃんを力づけているようだ。
 が、散々ビンタされたダメージが大きいらしく、会話の途中で餡子を吐き出す雑音が聞こえてくる。
 男は母れいむの後ろ髪を引っ張った。

「おい、話が違うぞ」
「ゆぎぃっ!!」

 男の声と母れいむの悲鳴に、中の赤ちゃんたちはパニックをおこした。

「にゃんにゃのぉ!?」
「どぽちたのぉ!?」
「だれにゃにょぉ!?
「ゆええええぇぇぇん!!!」
「ゆぶぅ………おがーざんだいじょぶだがらっ! だいじょぶだがらっ!」
「とりあえずお前、出ろ」

 男は母れいむの後ろ髪を軽く引っ張ったが、母れいむは息を止めて踏ん張っている。
 巣穴はゆっくりには大きくても人間には狭すぎて入れない。
 男は面倒になって、人差し指を立てて母れいむの体に突き刺した。

 ズポッ

「ゆ゙っ」

 勇気づけていた赤ちゃんたちの目の前で、母れいむはカッと両目を見開いて硬直した。

「みゃみゃぁ! どーちたのぉ!? いちゃいのぉ!?」
「もっとしゅーりしゅーりしてぇ!」
「…………だい…じょぶ………だい…じょ……」

 ズポッ

「ゆぐっ」
「出てくるんなら、やめてやるぞ?」

 れいむは激痛に耐えながら、決心していた。
 この赤ちゃんたちを絶対に守ると。
 このまま巣穴を塞いで時間を稼いでいれば、もうすぐ食料を探しに行っているまりさが帰ってくるはずだ。
 れいむはつがいのまりさを心から愛し、信頼し、尊敬していた。
 体の大きなれいむを、すごくゆっくりしてるねと褒めてくれたまりさ。
 一見食料の無いこの山に、春になると美味しいタケノコが生えてゆっくりできることを教えてくれたまりさ。
 地面に開いていた穴を見つけ、ゆっくりと暮らせるように改装し、元の巣穴から何往復もして藁や食料を運び込んだまりさ。
 食べ盛りの4匹の子供たちとれいむに、毎日新鮮な食料を取ってくるまりさ。
 れいむはまりさを信じ、早く帰ってきてと、切に願った。

 ズポッ
「ゆぶぇっ」

 だが、新たな激痛がれいむを現実に引き戻した。
 突き刺しては引き抜き、また突き刺しては引き抜いて……今度は8回目だ。

 ズポッ
「ゆ゙ぐうっ!! ……ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ」

 れいむはとうとう指を突き刺される痛みに耐えられず、白目を剥いて痙攣しだした。
 声が漏れるたびに、溜め込んだ空気も少しずつ漏れていく。
 全身からネチョネチョした餡子汁が止めどなく噴き出てていた。

「みゃみゃー! ゆっくちへんじちてぇ!!」
「まりしゃがしゅーりしゅーりしてあげりゅからにぇ! げんきになっちぇにぇ!」
「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ」

 さすがに2ケタは耐えられないか…。
 男は9回目を数えながら突き刺すと、指を回して中の餡子をえぐった。

 ズポッ グリグリィ
「ゆがぁっ!!!!」

 体内の餡子をこね回されたショックで、れいむは一瞬の硬直した後、溜めていた空気を吐き出した。

「ぷひゅう〜〜〜るるるるるるるるるるるるる…」
「ゅ〜♪ しゅじゅしいよ!」
「れーみゅとゆっくちあしょんじぇにぇ!!」
「ゆ! ゆ! ゆっくちー!」
「まりしゃのしゅーりしゅーりのおかげだにぇ! みゃみゃ、ゆっくちげんきになったにぇ!」

 赤ゆっくりたちは、母れいむが吐き出した息に喜んでキャッキャッとはしゃいでいた
 だが、後頭部に9つの穴を開けられたれいむはショックで気絶していた。
 男はしぼんで反応のなくなった母れいむの髪を引っ張って、巣穴から少しずつ出していく。

「ゅ〜♪ ゅ〜♪」
「どこいくにょお!?」
「みゃみゃ、"ぷひゅー"やっちぇ!」
「おしょと! おしょと!」

 すると、赤れいむも母を追って一緒にくっついてきた
 芋づる式に赤ゆっくりが追いかけてくるのを確認すると、男は失神したままの母れいむを背後に投げて隠した。
 同時に1匹の赤まりさと3匹の赤れいむが巣穴から飛び出してきて、一斉に男を見た。

「「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!」」」」

 …実はこの山で生まれた赤ゆっくりたちは、一度も人間を見たことがなかった。
 山の持ち主である男以外、他の人間が出入りしないのだから当然である。
 そのため、人間を見かけたらすぐ逃げるようにと教えられていたが、実物を見たことがないために男が人間だとわからなかった。
 赤ゆっくりたちは目の前に現れた珍しい存在に気をひかれて、いなくなった母親のことなど餡子脳から消し飛んだ。

「おじしゃんはゆっくちできりゅひと?」

 好奇心旺盛な赤まりさが男を見上げてたずねた。
 男は返事のかわりに赤まりさをむんずとつかんだ。

「ゆゆ!? …ゆゆ〜ん♪ まりしゃ、おしょらをとんでるみちゃい〜♪」
「れーみゅもとばせちぇー!」
「ゆゆ! れーみゅも! れーみゅもとぶぅ!」
「ゆっくちとびちゃいよぉ!」

 地面の赤れいむたちはピョンピョン飛びはねながら催促した。
 手の中で「ゆぅゆぅ」とはしゃいでいる赤まりさはまだ生まれたばかりらしく、野生種にしては汚れもなくかなりきれいだ。
 男はそんな赤まりさのわずかな汚れを手ではらい落とすと、ヒョイと口に入れた。

「ゆ? まりしゃはどこ?」

 お空を飛んでいたはずの赤まりさが見えないと尋ねてきた赤れいむに向かって、男はしゃがんで口を開けて中を見せた。

「ゆゆ! しょんなとこりょにいたんだ!」
「れーみゅもいれちぇ!」
「ゆっくちかわっちぇにぇ!!」
「ゆゆ〜ん♪ だめだよ! ここはまりしゃのゆっくちぽいんちょだよ!」

 立ちあがった男の口の中の赤まりさは、はるか下のほうに姉妹を見下ろして優越感に浸っていた。
 一方で、男の歯が中途半端に開けられているため、身動きもままならない。
 加えて中の空気が湿っぽいことで、赤まりさは不快に感じたようだ。

「ゆ! おじしゃんもういいよ! まりしゃをゆっくちおろしちぇにぇ!」
「次に入りたいヤツ、前に並べ〜」
「ゆゆっ! れーみゅをいれちぇにぇ!」
「ゆ!? こんじょはれーみゅのばんだよ! れーみゅはゆっくちどいちぇにぇ!」
「おじしゃん、いちばんきゃわいいれーみゅをえらんでにぇ!」

 男が顔を地面に近づけると、赤れいむたちは小さな体で我先にと押し合った。
 口の中の赤まりさは姉妹を見ながら、すぐに出してもらえるものと思って飛び出す用意をした。
 そのとき……

「ゆ゙っ…」

 口の中の赤まりさが悲鳴を上げて、限界まで目を開いた。
 赤れいむたちは何が起こったのか分からずポカンとしていた。
 赤れいむたちからは見えないが、じつは男の舌が赤まりさの後頭部に突き刺さり、薄い皮を貫いて餡子の中で止まっていたのである。

「いっ…いぢゃいよっ!! いぢゃいよぉぉぉぉぉ!!」
「ゆゆ!? ど、どーちたの!?」
「…?」
「はやくおりちぇにぇ!」

 混乱する赤れいむ。
 男は舌を抜くと、吸引力を使って少しずつ餡子を吸い上げていった。
 赤ちゃんの水っぽい餡子が、破れた傷口から細いチューブ状になってピュルピュルと出てくる。
 甘くて美味しい。

「ゆびゃっ!? ぴっ…ぺっ……ぽぉ…!」

 後頭部からゆっくりと餡子を吸い出されている赤まりさは、両目をヒン剥いてグルングルンと回していた。
 赤れいむたちから見えるのは赤まりさの顔だけ。
 したがって一体何をされているのか分からない。
 だったら早く逃げればいいものを、この意味不明の事態への恐怖と好奇心から、ただ息を飲んで赤まりさを見ていた。

「ゆっ…ぶっ……ぷぴゃぴゃぴゃぴゃ…ゆぴゃぴゃあ……」

 生きたまま7割ちかくまで餡子を吸い取られた赤まりさは、白目を剥いたまま痙攣して、意味のない悲鳴をもらしていた。
 と、次の瞬間、赤まりさの眼球がパッと奥に吸い込まれた。
 薄皮には、ほの暗い二つの空洞がぽっかりと開いた。

「ゆひっ」
「ゆぎゃ!!」
「ゅっ………」

 赤れいむたちは驚いて飛びあがった。
 そのうち1匹はあぶく立った餡子汁を垂らしてひっくり返った。

「たすけちぇぇぇ!!」
「みゃみゃあぁぁぁぁぁ!!」

 2匹の赤れいむは気絶した姉妹のことなど捨てて一目散に逃げ出した。
 しかし回り込まれてしまった。
 男は餡子を吸い尽くしてカパカパになった赤まりさの皮を口から出すと、赤れいむの前に投げ捨てた。

「ゆぴっ!!!」
「ぴぎぃ!!!」

 赤れいむはまたも飛びあがった。そして地面に足がつく前に、男の手に捕まってしまった。

「では、いただきやす」

 男は両手を合わせてから赤れいむの後頭部を小さく破ると、2匹同時に口にくわえて餡子を吸いはじめた。
 泣き叫びながら恐怖にうち震える赤れいむの餡子は素晴らしく美味だった。
 一家で残っているのは気絶した母れいむと赤れいむ。
 そしていまだ帰らぬまりさだった。


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最終更新:2022年05月21日 23:37