畑
ある日、俺が畑に出てみると、そこには一匹のゆっくりがいた。
「ゆっくりしていってね!!!」
近づいててみると、それはゆっくり霊夢の親子だった。
「うめぇ!これめっちゃうめえ!」
「おいしいね、ゆっくりたべようね!」
呆然としていた男、その男に気付いたのか子供霊夢が話しかける。
「おじさん! ここはれいむたちがさきにみつけたんだよ! おじさんはちがうところでたべものをさがしてね!」
「うめぇ!まじうめぇ」
「こっちもうめぇ」
「……」
「おじさんまだいたの。ゆっくいしないんだったら、ほかのところにいってね」
おそらくは母親霊夢、に体当たりを食らわされる、おかげで服は土だらけだ。
腰も強く打ってしまったので、ゆっくり達の楽しそうな笑い声を聞きながら、その場を後にした。
家
俺が、農作業から帰ってくると、そこには三匹のゆっくりがいた。
「おいじさんもゆっくりしにきたの?」
とゆっくり霊夢。
「ここはゆっくりたちのいえだよ!!!」
とゆっくり魔理沙。
「むきゅー!」
とゆっくりパチェリー。
「ここは俺の家なんだけど……」
「ちがうよ! ここはれいむたちがさきにみつけたんだよ!!!」
「そうだよ! ここはまりさたちのいえだよ!!!」
「むきゅー! ぱちぇりーたちでゆっくりするんだよ!!!」
「いやぁ、ここはもともとおれの……」
「ゆっくりできないんだったらでていってね!!!」
ゆっくり霊夢からタックルを食らわせられる。
「おじさん。かってにひとのいえをとっちゃだめだよ!!!」
こんどはゆっくり魔理沙からだ。
「むきゅ~! うそつききらい!!!」
最後にゆっくりパチェリーからの一撃。
農作業に疲れて帰ってきた俺は、反撃する体力もなく、その日は家の中から聞こえるゆっくり達の声を聞きながら、外で一晩過ごした。
屋台
今日は街まで屋台を出してきた。
売るのは、自慢の佃煮だ。
「いいにおい! おじさんこれなぁに?」
「なぁに?」
見ると家族なのだろうか、少し大きい霊夢が小さい霊夢を連れてこちらを覗いていた。
「お嬢ちゃんたちは姉妹かい?」
「うん! きょうはれいむたちがあかちゃんをつれてきたの! おじさんそれなぁに?」
なるほど、良く見るとようやく外を出歩けるようになったらしい、初めて見る光景に釘付けのようだ。
「これは佃煮だよ。ちょっと食べてみるかい?」
少量を皿に載せて、話していた霊夢に差し出す。
警戒するでもなく、いきなり食べ始める。
「ゆっ! おいしい! おじさんこれおいしいよ!!!」
随分喜んでいるゆっくり霊夢、くるっと後ろを向いて。
「みんな! これおいしいよ! おじさんがたべていいっていったから、みんなでゆっくりたべよう!!!」
「ほんと!!! いただきまーす」
「れいむのせなかにのってね! だいのうえまでのせてあげるよ!」
「ゆっくりのるよ」
「いいにおいー」
あっという間に、台の上に上がりこんでくるゆっくり姉妹。
「うめぇ!! めっちゃうめえぇ!!!」
「おいしいよ! はじめてたべたよ!」
「あかちゃんたちゆっくりたべてね!!!」
「「「ゆっくりたべるよ!!!」」」
みるみる丹精込めて作った佃煮が無くなっていく。
全て食べ終わるのに、5分もかからなかった。
「おいしかったね!!!」
「またたべたいね!!」
「ひがくれてきたから、早く帰ろうね!」
「「おうちでゆっくりしようね!!!」」
そのまま、こちらを振り向かないでゆっくり姉妹は帰っていった。
山菜
俺が山で山菜を取っていると、ゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が近づいてきた。
「おじさんなにとってるの?」
「あぁ、これはさんs「あぁ、これおいしいたべものだ!!!」」
言うが早いか、俺の籠に迫り来る二匹、なす術もなく倒される俺。
「うめぇ、めちゃうめぇ」
「これ、なかなかとれにんだよね! おじさんまりさたちのためにとってくれてありがとう」
朝から苦労して取っていた山菜をどんどん食べられる。
こっちも苦労した身なので、唖然と居て座ったまま動けなかった。
「はぁ、おいしかった!!! おじさんありがとう! おかげでゆっくりできたよ!!!」
「また、まりさたちにごちそうしてね」
ゆっくりゆっくりと言いながら、二匹は山の中に消えていった。
家宝
久しぶりに家でのんびりしていると、庭にゆっくりがやってきた。
「ゆっくりしていってね!!!」
なんてことはない、よくいるゆっくり魔理沙だ。
「いらしゃい、ゆっくりしていってね」
「うん! ゆっくりするよ!!!」
ゆっくりできる人と思われたのか、ズカズカ家の中に入り込んでくるゆっくり魔理沙。
「すごい! ゆっくりできるよ!!!」
そういって棚に向かって跳ねていくゆっくり魔理沙。
棚に載っている花瓶やガラス細工をなぎ倒し、代わりに自分が棚に乗って行く。
「ゆ♪ ゆ♪」
ひとしきり飽きたのか、今度は台所の方に向かっていく。
「ゆ! おいしそうなのがいーぱい!!!」
手当たり次第に、粗食するゆっくり魔理沙。
その度に、米はぶちまけられ、野菜はバラバラに食べられ、肉や魚もかじられる。
おまけに涎まみれだ。
最初に、家宝の壷を破壊されてしまって放心状態だった俺は、その様子を見守る事しか出来なかった。
「おじさん! ゆっくりできたよ! またあそびにくるね!!!」
本当に遊びに来るのだろうか、事務的に片づけをしていた俺はそんな事を考えていた。
翌日、友達と称する二匹を連れて、本当に遊びに来た三匹を見て、あぁ本当に来たなぁとしか思わなかった。
牛肉
今日は奮発して高い牛肉を買ってきた。
これからなににして食べようかアレコレ考えながら家路を急ぐ。
「ゆっくりしていってね!!!」
道から突然ゆっくり霊夢が飛び出してきた。
驚いて尻餅をつく形になる。
「ゆ! おじさん、そのふくろからいいにおいがするよ!」
「あぁ、これはさっきかってきた牛肉の匂いだよ」
「ゆっ! おにく! れいむもたべたいたべたい。おじさんいっしょにゆっくりたべよう!!!」
転んだ拍子に袋を放していたのがいけなかった。
既に、袋の中に顔を突っ込んでいるゆっくり霊夢。
こちらは、腰を打って立ち上がれない。
「ゆっ! これうめぇ!めっちゃうめぇ!」
一緒に、という言葉を忘れ一心不乱にむしゃぶりつくゆっくり霊夢。
「うん。ごっくん! おじさんありがとう! またいっしょにゆっくりしようね!!!」
喰い散らかした時の粕だけ残して、ご機嫌にゆっくりは去っていった。
れみりゃ
今日は紅魔館の近くで果物を取っていた。
実りに実った果実が数多く実っている。
俺は興奮して、手当たり次第に籠に入れていく。
「う~! た~べちゃうぞ~!!!」
ゆっくりれみりゃだ。
紅魔館の中で大切に育てられているらしいそれが、何故ここに居るのかは分からなかったが、下手に泣かせてあのメイド長にナイフを刺されるのはごめんだ。
「う~♪ うまいうまい♪」
れみりゃはそんな事お構いなしだ、男の籠から果実を取り出し勝手に食べている。
「う~! まず!」
自分が不味いと思ったのは捨てる、踏みつける。
「う~! ぐ~るぐる♪」
おなかが膨れたれみりゃは、持っていた日傘をたたんで、籠の中かき回し始めた。
久しぶりに沢山取れた果実がグチャグチャになっていく、手を出さないのはれみりゃが怖いからではない、メイド長が怖いのだ。
「う~!うっう~!!」
さんざんかき回した後、大威張りでれみりゃはその場所を後にした。
後には、ぐちゃぐちゃになった果実と、使い物にならなくなった籠だけが残された。
捕獲
ある日、俺が一身蜂起してなんとかゆっくりを捕まえた。
といっても、家でゆっくりしようと、言って連れて帰っているだけだが。
さぁて、連れて帰ったらどうしてあげようか。
「う~!」
「ゆっくりしね!」
その声に後ろを向くと、ゆっくりれみりゃとゆっくりフランが後ろから迫っていた。
その勢いにびっくりして思わずゆっくりを抱いていた手を離す。
「ゆゅ? ゆ゛ーーー!!」
一瞬で空中高く運び去られるゆっくり霊夢。
「ゆっぐりじたいよ。たがいよ! ごわいよ! おじざんだずげでよ!」
「う~!」
「ゆっくりしね!」
互いに両頬から食べていく二匹、あっという間に食べつくしてしまった。
「うっう~♪ あうあう♪」
「ゆっくりしね♪」
遥か高空で行われた二匹の食事。
折角手に入れたゆっくりを数分で食べ終わった二匹は、新たな獲物を探して飛び立っていった。
ゆレミ&フラ
俺が露天で竹細工を売っていると、紅魔館でご寵愛を受けているゆっくりれみりゃとゆっくりフランがやってきた。
二人ともよたよたと日傘を差している。
先程、屋敷のメイド長が一緒だったところをみると、また一緒についてきて、メイド長が買い物をしている間自由行動をしているらしい。
「うっう~! た~べちゃうぞ~♪」
今日はきぐるみを着ているれみりゃがそういいながら、俺の竹細工を蹴散らしていく。
「う~ゆっくりしね♪」
それを真似して、ゆっくりふらんも同じ事をしだした。
俺は黙っているしかない、以前注意して泣かせた店主が、すぐさま駆けつけたメイド長に連れ去られて以来戻ってきていないからだ。
「う~♪ がぁお~♪」
「うっう~♪」
笑顔で全て壊しつくした二匹は、同じく買い物を済ませたメイド長に駆け寄っていった。
メイド長が買っておいたペロペロキャンディーを両手で掴んで、ご機嫌なまま二匹は帰っていった。
ピクニック
今日は一人でピクニックだ。
数時間かけて森を散策し、ちょっと開けた所でいざ昼食を、と思っていた時。
「ゆっ、「「ゆっくりしていってね」」」
珍しい、ゆっくりシャンハイとホーライを連れたゆっくりアリスに会った。
「今日は、ゆっくりしているよ」
そういってゆっくり達に笑顔を送る。
「ゆゆっ! そう。 ゆっくりできてよかったね」
「ヨッカタァネ」
「ヨカータネ」
返事を返してくれたようだ、この種類も他のゆっくり同様、人間に友好的な種類らしい。
「おじさん、ありすとゆっくりしてくれる?」
「うん、いいよゆっくりしよう」
今日はピクニック、のんびりしようと思ってここまで来たのだ。
「アリィス、ヨカッタネ」
「ヨカターネ」
「君も一緒にお昼食べる?」
「っ! おひる! ……うん。ありすもいっしょにたべてあげる!」
「そうかい、」
じゃあどうぞ、言おうとして差し出した弁当箱が地面に落ちる。
同時に飛び散る中身。
「これはいらないよ! ありすがおひるのじゅんびするから! おきゃくさんにしょくじをだされちゃ、とかいはとしてはじだもの! おじさんはゆっくりまってていいよ」
三匹で直ぐに駆け出す、程なくして戻ってきた三匹のゆっくりは。
大きな虫と、落ちてぐちゃぐちゃになった果実と、よく分からない葉っぱを運んできた。
それからのピクニックは、なにをしようにも、アリスが空回りして、心を休めることが出来なかった。
最終更新:2017年07月21日 20:39