これは試練だ。いまだかつてない困難にして危機ではあるが、
それを乗り越えてこそ、聖なる領域に至る本当の成長がある。
嵐のように押し迫る阿部のただならぬ気配に怯んだリンゴォは、
何度も必死にそう自分に言い聞かせ、震える足を押さえた。
「……フフ、いい顔だ、いい気迫だぞ、アベ・タカズ! それでこそ闘い甲斐がある!!」
「黙れ、リンゴォ」
阿部がそう呟くや否や、阿部の立っていた大地が爆ぜた。
阿部生来の精力と寺生まれの男から受け継いだ霊力が、
阿部の足に集中し、それによって地面を蹴り上げたのだ。
(は、早い……!)
いきなり目の前に現れた阿部の姿に、リンゴォは目を剥いた。
そのスピードは先ほど闘った阿部はおろか、寺生まれの男も凌駕していたのだ。
しかし、リンゴォはそんな感情の揺れを排して、自らも最速を目指して動く。
右手に持った銃を構え、左の掌で撃鉄を起こし、すかさず引き金を引く。
幾多もの決闘を制してきたリンゴォの動きに淀みはない。
そして一発の銃声と共にリンゴォは確かな手応えを覚えた。
「…………失望したぞ、アベ・タカズ……おれの闘いを見て、一体何を学習した?
それではダメだ。真っ直ぐ向かってくる……それがどれだけ速かろうと、今のおれに対応できないはずがない」
お腹を押さえ、地面に手と膝をつく阿部を見下ろしながら、リンゴォは落胆を露にした。
総身を震わせた死の予感とはこんなものだったのか。
リンゴォは熱を失った冷酷な目を阿部に向け、止めの一撃を加えるべく再び引き金に指をかけた。
「俺を殺すのか、リンゴォ?」
阿部はリンゴォを見上げながら、恐る恐る訊ねた。
それに対してリンゴォは深い溜息と共に口を開く。
「まさか……決闘を侮辱するつもりか……アベ・タカズ? 君の見苦しい命乞いなどで、これ以上おれを……失望させてくれるな」
「別にそんなんじゃないさ。ただ……いいのか……って思ってな」
「…………何を……言っている?」
「俺の目の前に立派な股間(マグナム)を置いているんだ。これはもう誘っているんだろう?」
堪らずリンゴォの背筋に怖気が走る。
そしてそれが致命的な隙だと知らせてくれたのは、神速とも言える阿部の手だった。
まるで早送りのようにリンゴォの銃が打ち払われ、間髪入れずに霊気を纏った阿部の光り輝く豪腕がリンゴォの顔を殴りぬける。
同時に骨を砕く破壊音が、顎を中心として、リンゴォの身体の中を疾走。
リンゴォの顎はたった一発の拳で、粉々になってしまったのだ。
しかし、打ち据えるような激痛の中、リンゴォは冷静に、そして機械的に腕時計のつまみを捻り、スタンド――マンダムを発動させた。
時は六秒巻き戻り、リンゴォの不覚と怪我はなかったことにされ、再度リンゴォが膝をつく阿部を見下ろす場面が訪れる。
理不尽とも言える戦局の逆転。しかし、その不条理は紛れもなくリンゴォの力であり、不当には値しない。
リンゴォは勝利の確信と共に、三度銃口を阿部へと向けた。
そしてその瞬間、地面から勢いよく飛び出た光弾が、リンゴォの腹に深くめり込んだ。
「グッ、ガハッッ……!!!?」
リンゴォの口から鮮血が押し出され、その身体が空を舞う。
時間を六秒戻した直後であり、リンゴォにはスタンドを発動することはできない。
そのまま成す術もなく地に落ちたリンゴォは、腹部にもたらされる強烈な痛みに、のた打ち回るだけであった。
「俺の勝ちだな、リンゴォ」
先程とは逆に、今度は阿部がリンゴォを見下ろしながら口を開いた。
「…………そうか……あ、あの時、地面に膝をついたのは、光の弾を地中に隠すためか……」
「ああ、そうだ。そしてそこから更に六秒経ってから、渾身の攻撃を喰らわせる。
そうすればお前があのヘンテコな超能力を使っても、すぐに飛びっきりの仕掛けが発動させることができるというわけさ」
「み……見事だ、アベ・タカズ。だが……状況は五分。君の腹には風穴を開けてやった。た、闘いは……これから……だ」
リンゴォは血を吐き出しながらも、何とか身を起こし、苛烈な闘志を阿部にぶつけた。
その様子からは、戦いの矛を収める気など、微塵も窺えない。
しかし、阿部はそんなものは無意味だと言わんばかりに、ツナギのファスナーを下ろし、上半身をさらけ出した。
「そ、それは…………釣り糸?」
リンゴォの眼には阿部の腹に巻き付いている釣り糸が見て取れた。
しかもそれは青白く輝いており、リンゴォが放った銃弾を阿部に何らダメージを負わすことなく受け止めていたのだ。
たかが糸。そう言いたかったが、その糸の効果をリンゴォは身を以って十二分に知っている。
「ば、バカな!? いつの間に…………い、いや、君はあの時、激情に支配されていたはず! それなのにどうして冷静に行動できる?」
「おいおい、何を言っているんだ、リンゴォ。好きな奴の意志は無駄にはしない。それがイイ男ってもんだろう?」
リンゴォの狼狽をよそに、阿部は飄々と答えた。その極自然体である様子に、リンゴォは臍を噛んだ。
痛感したのだ。阿部という人間を見誤っていたことに。阿部の言動から、ついつい感情的な人間であると決め付けていたが、それは違った。
彼の本質は、迸る情念を確固と受け入れられる理性を持った合理的な人間なのである。
「た、確かにこの勝負……おれの方が不利なようだ。君は無傷……そして今から時を巻き戻したとしても、
足元に設置された光の弾は……かわせないだろう…………だが! まだ決着はついていないぞ、アベ・タカズ!」
痛みに震える右手を左手で押さえ、リンゴォは銃を阿部へ向ける。
やれやれ、と阿部は頭を掻きながら、そんなリンゴォに向かって忠告した。
「リンゴォ……さっきの攻撃で手加減しておいたのは、そんなことをさせるためじゃないぜ」
「手加減だと!? 君はこの神聖なる決闘に泥を塗ったというのか!!」
「おいおい、あいつが残しくれた意志を、そんな風に言うなよ。言っちゃなんだが、お前の考えより数倍は輝いていると思うぜ」
怒りの表情を見せるリンゴォに、阿部は毅然と胸を張って答えて見せた。
寺生まれの男が見せた生き様は、阿部にとって何ら恥じるものではないのだ。
そしてそれを受け継いだことを、阿部は誰よりも誇りに思っている。だから、阿部はリンゴォを殺すことは決してない。
といっても、想いを寄せた男を殺めたリンゴォを、このまま許せるというわけでもない。
阿部は火の点った感情を嗜虐的な笑みと共にリンゴォに向けた。
「まあ、安心しろよ、リンゴォ。何もこれで終わりというわけじゃない。あれじゃあ、こっちの気も収まらなくてな」
「そうだ! それでいい、アベ・タカズ! 命を懸けた公正な闘いこそ、人を成長させる…………さあ、勝負だ!」
阿部の言葉は殺意の表れ。そう思ったリンゴォは歓喜の声を上げた。
そしてリンゴォは阿部を殺すべく、銃の引き金に指をかけた。
だけど、リンゴォの身体に残る痛みは、確かな形で尾を引いていた。
一瞬、身を走った激痛にリンゴォは自らの動きを止めてしまう。
その次にすかさずリンゴォは銃声を鳴らしたが、時既に遅し。リンゴォの背後には、もう息を荒げる阿部がいたのだ。
「よう、リンゴォ」
阿部はリンゴォの耳に優しく息を吹き掛けながら、声をかけた。
即座に反転して攻撃をして掛けてくるリンゴォの腕を、阿部は子どもの手をあやすように掴み、銃も取り上げる。
そして阿部はリンゴォに向かって温かに微笑むと、途端に獣のような勢いでリンゴォを地面に押し倒し、その牙を露にした。
リンゴォのシャツを破り、ズボンを毟り取り、パンツをかなぐり捨てる。
閃光のような速さで、その所作を終えると、阿部の顔はいよいよ剥き出しになったリンゴォの下半身へと向かった。
「あ、アベ・タカズゥ……ッ!! 何をするつもり…………ンッ……ァ……!!」
リンゴォの声を大にして抗議の行動を起こしたが、それも無意味に終わってしまった。
力が入らないのだ。自らの身体に走る未知の感覚。それが脳から筋肉に送られる電気信号を阻害する。
「随分と締まっているじゃないかぁ、リンゴォ。初めてか? こりゃあ、丹念にほぐしてやらないとな」
阿部の声と共に唾液にまみれた舌が、再び尻の中で蠢き出した。生暖かく、柔らかく、濡れた舌。
それが内臓をなぞる度に、背中に何かが突き抜け、力を根こそぎ奪っていくのだ。
己が排泄器官を敵に嘗め回される。それはリンゴォほどの男であれば、屈辱に他ならない。
だけど、その中に確かに存在してしまう気持ちよさが、抗いの手を宙を空しく彷徨うだけのものとしてしまう。
阿部の行動など、リンゴォは本心で嫌だ。出来るなら、今すぐ阿部を殴り飛ばし、銃をぶっ放したい。
だが、そんなことはおろか、阿部の手を振り払うような抗議すらできない。自分の意志は無関係に、迫る快感に震える身体。
決闘を蔑ろにして、最早隷属といっていい性的な関係を強いる阿部に、リンゴォの顔は更なる屈辱で歪み始めた。
「これくらいなら、もういいだろう」
リンゴォの瞳が涙に濡れ始めた頃、阿部はようやくリンゴォの下半身から顔を外した。
これで終わりだろうか。リンゴォの口から、安堵の息が漏れる。
しかし、弛緩したリンゴォの身体を、阿部は後ろからがっちりと抱え込み、
リンゴォの期待をあっさりと否定。そして阿部は再びリンゴォの耳にそっと息を吹き込んだ。
「ようこそ、男の世界へ」
ヌポォ
「アーー!!」
――
――――
――――――――
ふー、と息を吐いて、阿部は脱ぎ捨てたツナギを身に纏った。
いつもなら軽快な仕草と言えるものだが、今はそこにかすかな疲労が見て取れる。
リンゴォを懲らしめる目的ではあったが、火がついた身体を冷ますために、阿部は都合六回も事に及んだのだ。
スッキリしたという気持ちもあるが、どうしても気だるさが残ってしまう。
といっても、そこで暢気に休んでもいられない。受け継いだ寺生まれの意志――魂。
それを果たすためにも、このバトルロワイアルを打ち砕かねばならない。
「さてと、そろそろ行くか……おっと、悪いとは思うが、リンゴォ、この銃は貰っていくぜ。もう二度とバカな真似はしないようにな」
全てを晒したまま気絶してしまったリンゴォに向かって、阿部は揚揚と声を掛けた。
それから阿部は名残惜しそうに倒れ伏した寺生まれの青年の方に顔を向ける。
何かを思いついたのだろう、やがて阿部は青年の下に歩み寄り、彼の身体をまさぐり始めた。
「これは形見として貰って行くぜ」
阿部が手に取ったのは、青年の首元にかかっていた一つのお守りであった。
「何、安心しろ。俺がお前の代わりにこのふざけた殺し合いをぶっ壊してやるさ。だから、向こうでゆっくりと休んでいろ」
最後に阿部は青年の冷たくなった頬を愛しげに撫でると、寂しそうに、それでいて力強く、その場を後にしていった。
【一日目 早朝】
【現在地 D-5】
【
阿部高和@くそみそテクニック】
【状態】健康、スッキリ、疲労(小)
【装備】
寺生まれのTさんのお守り@寺生まれの先輩Tさんのまとめ、釣り糸のサラシ
【道具】リンゴォの銃@ジョジョの奇妙な冒険(残弾 1/6)、武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 殺し合いの打破
1. 他の参加者の探す
【備考】
※寺生まれの魂を受け継ぎました
※寺生まれのTさんの全霊力を受け取りました
「この味、この臭い、そしてこの濃さ…………間違いない。これは阿部さんのものだ。
僕たちが初めて出会った場所に阿部さんがいるんじゃないかって、ロマンティックなことを考えたけれど
…………どうやら一足遅かったみたいだなあ」
ペロペロ、と再び肛門を舐められる感覚に、リンゴォは怖気を感じながら、目を覚ました。
急いでそこに目を向けてみれば、阿部と同じ肌の色に黒髪の男がいるではないか。
阿部の時は、未知の感覚とその恐怖により、手痛い傷跡を自らの身体に残してしまったが、今は違う。
リンゴォが今までの決闘で培ってきた精神力は、トラウマにも成りかねない悲惨な体験を容易く克服し、
その行為に自失することのない耐性を得ていたのだ。
リンゴォは尻の穴から零れる白濁液を必死に舐め取る青年――道下に向かって、眉一つ動かさず、至って冷静に銃を向けようとした。
「な、何? おれの銃がない……!?」
リンゴォの焦りは声となって漏れでた。愛用していた武器が、どこにもないのだ。
そしてその隙にと、道下が持つ鎧の魔槍がリンゴォの腹を貫く。
「この人が生きているってことは、やっぱり阿部さんは殺し合いになんか乗っていないってことだよね。
ん~、こんな状況でも、やっぱり阿部さんは格好いいな~。でも、だからこそ、僕が頑張らないとだよね」
そう言って、道下は満面の笑みで、槍を深く突き刺していく。笑顔で人を殺傷する。
常人であれば、恐怖を湧き起こしかねない状況だ。だが、リンゴォが感じたのは、純然たる怒りだった。
「汚らわしいぞ!! おれはまだ銃を構えていない!! それなのにおれに攻撃をしやがって……この卑怯者が!!
君はアベには遠く及ばないゴミクズだ!!」
「うるさいな……そんなことぐらい分かっていますよ。僕が阿部さんにかなうわけないじゃないですか」
道下はその言葉と共にリンゴォの顎を思い切り蹴り上げた。
それによりスタンド能力を発動させようとしていたリンゴォの行動も潰される。
だけど、それしきのことで、リンゴォの意識を断ち切ることなど、できはしない。
彼は槍で腹を何度も抉られながらも、精密機械のように素早く、正確に右手を左手の時計へと動き出す。
「嫌だな~、僕がそんなことを許すと思っているんですか?」
道下は微笑と共に、その腕を掴み取った。相手にどんな動作も許してはならない。
それは数々の不可思議な現象を目の当たりにした道下が、敵を殺すために出した結論であった。
相手の手を許してしまえば、それこそ開幕時のバーンや黎明に闘っていた二人のようなビックリショーの開幕だ。
そうなってしまえば、ただの人が抗える余地は、どこにもない。
だから道下は何ら躊躇うことなく、リンゴォの心臓を槍で突き刺した。
【リンゴォ・ロードアゲイン@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】
【一日目 早朝】
【現在地 D-5 総合公園】
【
道下正樹@くそみそテクニック】
【状態】健康
【装備】鎧の魔槍@DRAGON QUEST-ダイの大冒険
【道具】ワムズの毒(注射器×2)@トライガン・マキシマム、ランダム支給品×2、支給品一式×3
【思考】
基本 阿部高和を最後の一人にさせる
1. 阿部さん……
2. 阿部さん…………
3. うほ
【支給品情報】
寺生まれのTさんの愛用する釣竿の糸を、お腹に巻いたもの。霊力をそこに通すことによって、その強度を大幅に上げる。45口径の銃弾を喰らっても、何らダメージを負わない。また霊力で、釣り糸をある程度自由に動かすことができる。
バーン様回収し忘れの一品。寺生まれのTさんお手製のお守り。
最終更新:2014年02月07日 20:31