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「射手座の日を越えていけ」(前編) - (2007/06/06 (水) 19:06:57) の1つ前との変更点
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*「射手座の日を越えていけ」(前編) ◆LXe12sNRSs
「ユービック、紳士とは何か、紳士とはどうあるべきか、おまえさんは知っているか?」
「g、ギガ……」
半壊状態の喋る土偶に、ゲインは向かい合って延々説教を垂れていた。
「紳士とはご婦人を慈しみ、敬愛の意を持って真摯に接する男のことをいう。
そこに下心が混在することは許されない。ひとえに、愛だよ。
男たる者、紳士であれ。紳士たる者、男であれ。俺の言いたいことが分かるか?
つまりだな――覗きはいけない。ましてや、盗撮なんてのは極刑ものだ。そこんとこ分かるか?」
「はi……ホnト、もu教えg身に染mます、はい……」
いつになくしゅんとしているユービックを、正面から見据えるゲイン。
その背後には、怒り狂った鬼が見え隠れしているようにも思えた。
ゲインの言う紳士道がどういったものなのか、トグサにも分からなくはない。
何しろユービック……の友、コンラッドのやらかしたことは、男として――妻子持ちという身の上にある以上は、最悪と評すしかない。
視線を横に促し、トグサは静かに寝息を立てている少女のほうを見やる。
フェイトが寝ていて本当によかった。まだ子供とはいえ、もしこの事実を知れば、ショックは大きいだろう。
やれやれ、と溜め息をつき、今度はゲイナーのほうを確認する。
そこには、高速でキーをタイプする眼鏡の少年と、ハイテンションで踊る猫型ロボットの姿があった。
あちらもあちらで白熱しているらしい。もうすぐ放送が訪れるというのに、片や説教、片やゲーム、これで本当にいいのだろうか。
――ここで事態の説明をしておこう。
トグサとゲインは、ギガゾンビに反逆したツチダマ、ユービックの意を買い、その視覚データのチェックに躍り出た。
彼の視覚情報にはグリフィスという男が数多のツチダマを先導する様子や、ギガゾンビ城の内部映像などが記録されており、信憑性も高かった。
これならば、ユービックも皆から信頼を得ることができるだろう――そう思ってしまったのが甘かった。
視覚データをコンラッドのパソコンで閲覧する際、トグサたちは見つけてはいけないものを見つけてしまったのだ。
そう、コンラッド秘蔵のお宝映像……湯気立ち上る温泉に、裸身の幼女数名が浸かる姿である。
キャプチャと動画に分かれ保存されていた画像データは、どう見ても合法ではあるまい。
盗撮画像の中にはすぐ側で寝ている少女、フェイトのものもあり、トグサもまさか、こんなところで同僚の生前の姿を拝むとは思わなかった。
これに激怒したのがゲインだ。女性を愛してやまない彼の心情としては、隠れてご婦人の裸を覗く輩が、心底許せなかったのだろう。
ゲインのこの心情のおかげで、信頼を得るところであったユービックの好感度も大幅ダウンである。
ユービックは叱られながら嘆いた。心の奥底で、「あんンの盗撮魔がぁぁぁぁぁ!」と憤慨していた。
トグサもそんなユービックの不幸に同調したのか、裏切りについてはほとんど信用してやろうという気になり始めていた。
ともあれ、今はハックの準備を進めつつ、ゲイナーのプレイ結果を待つばかりだ。
敵方の、幼女の盗撮画像が納められているパソコンで代用する気にはなれなかったし、『射手座の日』がどんな恩恵を生んでくれるとも限らない。
今はゲインの説教を片耳に、ゲイナーの動向を暖かく見守ろう……ちなみに、ロックの「あの映像」はコンラッドが不要と判断したのか、データには残っていなかった。
◇ ◇ ◇
《The Day of Sagittarius 3》
3ってなんだ3って。1や2はあったのか。
僕、ゲイナー・サンガはそんな瑣末なことを思いつつ、件のゲームをプレイしていた。
ゲームタイトル、『射手座の日』。
なんともいい感じにキメようとしてかえって意味不明になってる感が否めないが、問題視すべきは中身なので気にしないことにする。
舞台は宇宙。とある恒星系を舞台にした領地争いをテーマにした、戦略系シミュレーションのようだった。
対立しているのは、二つの星間国家。一つはいわゆるプレイヤー側で、僕はこれを勝たせればいいわけだ。
僕は自軍の艦隊に<ゲイナー帝国>と名づけ、プレイを開始した。
ちなみに、名称が帝国となっているのはデフォルトで、他に変えようがなかった。僕は独裁的なやりかたはあんまり好きじゃないんだけどな……。
まぁ、ぼやいても始まるまい。僕はこの<ゲイナー帝国>を操作し、敵国、<コンピ研連合>を打ち滅ぼせばいいわけだ。
そうすれば晴れてゲームクリア。領地争いといっても、その場に話し合いという選択は存在しない。
勝てば官軍、撃滅あるのみ。製作者はどんな野蛮人なんだろうか。しかし、なんとも単純なクリア条件だった。
スタート時点では、画面はほぼ真っ暗である。モニタの下部で青く輝いている光点が、我が<ゲイナー帝国>の艦隊ユニットだ。
ユニット数は計5つ。一ユニットあたりに宇宙戦艦が一万五千隻ほど内包されているから総数七万五千、それプラス各艦隊にくっついている補給艦部隊。
それらを操作して同数の<コンピ研連合>を撃破すれば勝利条件クリアだが、それぞれの艦隊にはボスとなる旗艦が存在しており、それを撃沈されたら即刻負けとなる。
妙なこだわりを感じさせるところは、索敵システムを導入しているところだろうか。
ご丁寧なMAPは用意されておらず、敵の居場所もまず索敵艇を派遣し、マッピングを済ませなければ明かされないらしい。
闇雲に進軍させては、暗がりから襲撃される危険性があるわけだ。これはリアルなオーバーマン戦にも通じている。
明暗を分けるのは、やはりこの索敵システムなのだろう。すみやかに敵の位置を把握し、先の行動を予測した者が勝利者となる。
対人戦ならともかく、これはCPU戦だ。このゲームコンピュータがどれだけの性能を誇っているかは未知数だが……正直、<コンピ研連合>なんて名前からは脅威を感じない。
システム面から見れば、攻略性のない駄ゲーに思えるが……唯一僕向けなところを挙げるとするならば、ターン制でなくリアルタイム制であるところだろうか。
これは対人戦なら結構盛り上がりそうだ。シンシア相手ならやりがいもあったろうけど……と、そろそろ始めようかな。
プレイ開始前に、お互いの艦隊紹介一覧が表示された。
と言っても、分かるのは各艦隊の名称と旗艦がどれかということだけであり、大して攻略の役に立ったりはしない。
<コンピ研連合>のユニット名は、旗艦を筆頭に<ディエス・イラエ><イクイノックス><ルペルカリア><ブラインドネス><ムスペルヘイム>なる小洒落たパーソナルネームがついていたけれど、正直どうでもいい。
それに対する<ゲイナー帝国>は、<A艦隊><B艦隊><C艦隊><D艦隊><E艦隊>という適当ぶりである。だからネーミングなんてどうでもいいんだって。
ともあれ、「射手座の日を越えていけ」の謎を解き明かすための戦争は、開戦のファンファーレを鳴らした――
「ふっふっふ、有象無象がこぞってやられに来たか……我が<コンピ研連合>の戦力、あまく見ないでもらおうか!」
開戦とともに表示されたメッセージウインドウに、そんなセリフが書き込まれていた。
どうやら、<コンピ研連合>の大ボスたる人物らしい。顔グラフィックまで用意されているあたり、なかなか侮れない。
まず僕は索敵艇を派遣し、敵の位置を掴むべく陣を形成していく。
この手のゲームは基本が大事だ。奇抜な戦略は身を滅ぼしかねない。地味? 文句言わないでくださいよ。
次第に視野が広がっていき、やがて敵の第一陣、<イクイノックス>が姿を現した。
と思ったら、他の艦隊も次々に姿を現してくるから驚いた。
戦力を小出しにするような消極的な戦法は好かないらしい。旗艦のみを下げ、正面からぶつかるというCPUにしては豪気な戦略だ。単純ともいう。
こちらは旗艦を含めた5ユニット、すべてで迎え撃つ構えである。
基本的に、戦争は数で決まる。決定的な火力の差がない以上、こういったゲームでは特に物量がものを言う。
「敵は鶴翼陣形で僕らを誘い込むつもりか」
敵部隊は姿を見せたものの、あちらから攻撃にはうってこない。
防御陣を敷き、そこから包囲網を形成する算段なのだろう。見え透いた手だ。
こういったカウンター狙いの輩を相手にする場合、自ら突っ込んでいっては駄目だ。
専守防衛につとめ、端から防御陣を切り崩していくという戦法が打倒だろう。
だが、それじゃあ駄目だ。
僕が戦うべき真の敵は、<コンピ研連合>ではない。時間である。
残りの人数が減少した今、ギガゾンビ側がどういった手段を持って殺し合いにメスをかけてくるか分からない。
迅速に情報を入手し、首輪を外す必要がある。そのためにも、スピーディにこのゲームをクリアしなくてはならないんだ。
ならば取るべき戦法は決まっている――速攻だ。
自軍を動かし、敵の陣に踏み込んでいく。もちろん相手の罠に引っかからないよう、考えた隊列でだ。
すると敵軍は<イクイノックス>のみを残し、他の3艦隊は後退し始め、索敵範囲の届いていない闇の中へと消えていく。
<イクイノックス>を囮にし、その隙に包囲網を形成するつもりか。そうはいくか。
こちらは進軍しつもも索敵艇を派遣し、周囲の警戒を怠らない。
攻撃と防御を両立させ、確実に<イクイノックス>を追い詰めていく。他の敵が救援に駆けつける様子はない。
このまま<イクイノックス>を捨て駒にするつもりか? そんなことを考え出したときだ。
「あ、ゲイナー君。そっちは敵がまだいるはずだよ、きっと」
「え? うわっ、ほ、本当だ!!」
端で観戦していたドラえもんの声が響き、僕はその異変に気づいた。
<イクイノックス>以外の3艦隊が、僕の艦隊を取り囲んでいる――!? 馬鹿な、ありえない!
前方に追い詰めていた<イクイノックス>を囮に、左方に<ルペルカリア>、右方に<ブラインドネス>、後方に<ムスペルヘイム>が、いつの間にか部隊を展開させていた。
索敵しきれていなかった範囲を移動して、僕を囲んだのか――いや、だとしても早すぎる。
こちらの索敵艇よりも速く動き、気づかれずに四方に艦隊を移動させるなんて、それこそワープでもしなければ不可能だ。
とにかく応戦しかあるまい。僕は左舷と右舷から繰り出される挟撃に弾幕を張るが、前と後ろからも、矢継ぎ早に攻撃が仕掛けられる。
マズイ、これじゃタコ殴り状態だ。時間を気にするあまり、少し迂闊に進軍しすぎたか。
だが、僕だってゲームチャンプとしての意地がある。この程度の逆境、簡単に打開し……ドラえもんうるさい!
敵もなかなかに慎重らしく、こちらに反撃の術があると知ると、深追いせず即座に撤退していった。
すぐさま索敵艇を出すものの、相手は速度に特化しているらしく、艦影を捉えることができない。
まんまと逃げられてしまったわけだ。退けた、と言えないところがなんとも悔しい。
どうやら敵の作戦は一撃離脱を信条としたヒット&アウェイらしく、このままでは長期戦になるのも覚悟しなければならなかった。
CPUのくせに、なんて姑息な手を使うのだろうか。このゲームの製作者は、どれだけ陰湿な性格をしているんだ。
短期決戦が望めないからといって、焦ってしまっては敵の思う壺だ。いかなるときとて、将は冷静沈着でいなくちゃならないんだから。
その後も<コンピ研連合>は現れては消え、現れては消えを繰り返し、こちらのダメージを蓄積していった。
索敵艇で相手の位置が分からなくなったのは、CPU戦ゆえのご都合なのか。だとしたらベリーハードにもほどがある。
このままではイライラの溜まる一方だ。プレイヤーにストレスを与えるゲームはクソゲーだ、と思いつつも、僕はノートPCを投げ出したりはしない。
隣を見る。ドラえもんも劣勢だということが分かっているのか、不安げな表情をしていた。
自軍の状態を確認する――要となる旗艦はほぼ無傷であるものの、それを防衛する4艦隊の被害は甚大だ。
もし4艦隊のどれか一つでも切り崩されれば、敵はここぞとばかりに攻め入ってくるだろう。そうなればゲームオーバー、敗戦は必至。
コンティニューは可能だろうが、やり直している暇なんてない。焦るつもりはないが、求めるべきは速さなのだ。
チャンスは一度きり。チャンプとしての誇りと、みんなの命運をかけて、僕はこのゲームをクリアしてみせる!
(ゲイナーくん、がんばって。ぼくはうるさいって怒られちゃったから、暖かい目で応援しているよ。じーっ……)
ドラえもんの視線が鬱陶しい。まるで砂場で遊ぶ子供を身守るかのような、母親みたいに暖かい目だ。
そういえば、子守ロボットとか言ってたっけ。応援してくれるのはありがたいけど、それで戦況が変わるわけじゃないのが心苦しい。
ドラえもんの視線に答えるべく、僕は一度艦隊を後退させた。策を練り直すためである。
僕が目指すのは、タイムレコードを更新するくらいのスピードクリアだ。そのためにはどんな戦略が最適か、今一度考えてみる。
相手の作戦がチマチマしたヒット&アウェイだと分かった以上、強引に攻め込んでのスピードクリアは難しいと思われる。
ただ、それは定石で考えた場合だ。盲点は、このゲームの本質たる部分……『旗艦を撃沈すれば勝利』、というルールに潜んでいた。
相手の攻め手は旗艦以外の4艦隊。残りの一隻は、未だに雲隠れを決め込んでいる。
他四つが攻めに回っているということはつまり、旗艦の守りが手薄、どころかまったくないのも同意。
旗艦さえ発見できれば、一気に集中砲火を浴びせられるわけだ。
僕はMAPの隅で索敵艇を派遣することのみに従事し、敵旗艦の発見に勤しんだ。
すると敵は焦りを見せたのか、再び攻撃を仕掛けてきた。
――かかったな! これが僕の狙いさ!
そう、索敵に夢中になっていると見せかけ、相手が攻め込んでくるのを待つ。罠を仕掛けたのだ。
敵が今やられて一番困るのは、旗艦を発見されることだ。
当然、索敵を大々的に展開すれば、それを嫌がり阻止しようと踏み込んでくる。そこを討つ。そういうわけだ。
四方で囲う陣形は相変わらずだったが、襲ってくるタイミングさえつかめれば、いくらかはやりようがある。
僕は全艦隊を左方に向かわせ、敵艦<ルペルカリア>に突っ込んでいった。
包囲網を抜ける最善の方法。それは、一点突破。
局地的に戦況を見れば、5対1。外野からの攻撃はあるが、僕が負ける要因は何一つない。
結果として、<ルペルカリア>は自軍の総攻撃を受け沈黙した。それをスイッチに、他の3艦隊も闇に消える。
無茶をしたが、これでジリ貧だった戦況は打開できた。
こちらの<D艦隊>と<E艦隊>が撃沈寸前の深手を負ったが、単純な戦力差でいえばこれで5体4。数ではこっちが有利だ。
問題は、<コンピ研連合>の次の動きである。ユニットを一つ失った今、3艦隊でヒット&アウェイを継続するか、それとも旗艦も攻めに転じるか。
……なんて。
数分後、真面目に敵の行動を先読みしようとしていた自分が、どれだけあさはかだったか思い知らされることになる。
「なんなんだこれは……」
思わず、そんな力ない声が漏れてしまう。
ユニットを一つ失った<コンピ研連合>の次なる戦略。それは、予想だにしないものだった。
意外なことに、敵は正面から姿を現したのだ。敵ユニットの一つ、<ブラインドネス>が、単身……を、『20に分けて』。
最初に説明したが、一つのユニットは一万五千隻の宇宙戦艦+補給艦によって形成されている。
ダメージを受けるごとに、その総数が減っていくという寸法だ。
そして僕は、このゲームのマニュアルに載っていたあるシステムのことを思い出す。
それは、『分艦隊』と呼ばれるものだった。
概要はこうだ。一つのユニットを最大20のユニットに分散し、それぞれを索敵や囮、壁に利用する。分身みたいなものだ。
当然、個々の戦力はガクンと落ちるし、なにより複数のユニットを同時に操作しなければならないというデメリットがある。
5つのユニットを同時に駆使するだけでも高難易度だというのに、それをさらに増やすなど、あまりに馬鹿げている。
いくら僕がゲームチャンプとはいえ、専門はあくまでもコントローラだ。パソコンのタイピングがそこまで上手いわけではない。
だからこそ、熟練者向けのシステムである『分艦隊』は、戦略の視野に入れていなかった。
しかし、まさかそれを敵が仕掛けてくるとは思わなかった。
考えてもみて欲しい。『分艦隊』最大のデメリットは、操作難度が上がるという部分にある。
だが、僕が相手にしているのは現実の人間ではなく、CPUだ。
彼らはキーボードを叩くなんていう原始的な方法は取らない。要するに、操作難度の上昇という弊害は関係ないのだ。
ノーリスクで『分艦隊』のメリットを利用できるなんて、そんなの反則じゃないか。製作者はユーザーをなめてるのか!
クレームを言っても、それが製作者側に届くことはない。所詮は素人の自作品、ゲームバランスは滅茶苦茶というわけか。
僕は20に分散した<ブラインドネス>と正面からやりあいつつ、ついに<D艦隊>と<E艦隊>を撃沈されてしまった。
敵の<ブラインドネス>を示す光点は、まだ8つほど残っている。数的にも絶対的不利に陥ってしまった。
不幸は続くもので、僕が<ブラインドネス>群の相手に躍起になっていると、後方から<イクイノックス>、<ムスペルヘイム>が攻め込んできていた。
別に気づかなかったわけではない。今回は<ルペルカリア>を落としたことによりできた余裕で、完璧な索敵を済ませている。
敵が隠れたまま歩み寄る隙間なんてなかったはずなんだ……そうして不信感を募らせていた僕は、ついに見てしまった。
前方の<ブラインドネス>の光点がパッと消え、
いつの間にか後方、敵二艦隊の側に合流している姿を。
……つまり、だ。
敵は冗談でもなんでもなく、文字通り『ワープ』なるマニュアルにもないインチキ能力を使い、戦っていたと。
索敵から逃れ、四方を上手く取り囲めていたのも、すべてはこのワープ能力によるものだと。
デメリットを処分した『分艦隊』に、行為自体が反則的である『ワープ』。
<コンピ研連合>は、僕ら<ゲイナー帝国>が持ち得ない絶対的な力を保持していた。
「ふっ、フフフフフ……」
「げ、ゲイナーくん……?」
意識せず、笑みが漏れた。傍らでドラえもんが心配そうに見つめている。
やられた。完敗だよ。こんなふざけたCPUを搭載しているゲーム、クリアできるはずがない。
何が射手座の日を越えていけ、だ。無理に決まってますよこんなの。
僕は<C艦隊>が撃沈されたところで手を休め――そのままノートパソコンを閉じようかどうか考えた。
クリアできないゲームに、可能性なんて残されていない。早いところトグサさんに席を譲ってしまおう。
みんなは落胆するかもしれないけれど、幸い、ipod内のデータを持ってハッキングすれば、首輪の構造データは入手できそうだし。
*時系列順に読む
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*投下順に読む
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|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (後編)]]|ゲイン・ビジョウ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(後編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (後編)]]|ゲイナー・サンガ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(後編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (後編)]]|ドラえもん|291:[[「射手座の日を越えていけ」(後編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (後編)]]|フェイト・T・ハラオウン|291:[[「射手座の日を越えていけ」(後編)]]|
*「射手座の日を越えていけ」(前編) ◆LXe12sNRSs
「ユービック、紳士とは何か、紳士とはどうあるべきか、おまえさんは知っているか?」
「g、ギガ……」
半壊状態の喋る土偶に、ゲインは向かい合って延々説教を垂れていた。
「紳士とはご婦人を慈しみ、敬愛の意を持って真摯に接する男のことをいう。
そこに下心が混在することは許されない。ひとえに、愛だよ。
男たる者、紳士であれ。紳士たる者、男であれ。俺の言いたいことが分かるか?
つまりだな――覗きはいけない。ましてや、盗撮なんてのは極刑ものだ。そこんとこ分かるか?」
「はi……ホnト、もu教えg身に染mます、はい……」
いつになくしゅんとしているユービックを、正面から見据えるゲイン。
その背後には、怒り狂った鬼が見え隠れしているようにも思えた。
ゲインの言う紳士道がどういったものなのか、トグサにも分からなくはない。
何しろユービック……の友、コンラッドのやらかしたことは、男として――妻子持ちという身の上にある以上は、最悪と評すしかない。
視線を横に促し、トグサは静かに寝息を立てている少女のほうを見やる。
フェイトが寝ていて本当によかった。まだ子供とはいえ、もしこの事実を知れば、ショックは大きいだろう。
やれやれ、と溜め息をつき、今度はゲイナーのほうを確認する。
そこには、高速でキーをタイプする眼鏡の少年と、ハイテンションで踊る猫型ロボットの姿があった。
あちらもあちらで白熱しているらしい。もうすぐ放送が訪れるというのに、片や説教、片やゲーム、これで本当にいいのだろうか。
――ここで事態の説明をしておこう。
トグサとゲインは、ギガゾンビに反逆したツチダマ、ユービックの意を買い、その視覚データのチェックに躍り出た。
彼の視覚情報にはグリフィスという男が数多のツチダマを先導する様子や、ギガゾンビ城の内部映像などが記録されており、信憑性も高かった。
これならば、ユービックも皆から信頼を得ることができるだろう――そう思ってしまったのが甘かった。
視覚データをコンラッドのパソコンで閲覧する際、トグサたちは見つけてはいけないものを見つけてしまったのだ。
そう、コンラッド秘蔵のお宝映像……湯気立ち上る温泉に、裸身の幼女数名が浸かる姿である。
キャプチャと動画に分かれ保存されていた画像データは、どう見ても合法ではあるまい。
盗撮画像の中にはすぐ側で寝ている少女、フェイトのものもあり、トグサもまさか、こんなところで同僚の生前の姿を拝むとは思わなかった。
これに激怒したのがゲインだ。女性を愛してやまない彼の心情としては、隠れてご婦人の裸を覗く輩が、心底許せなかったのだろう。
ゲインのこの心情のおかげで、信頼を得るところであったユービックの好感度も大幅ダウンである。
ユービックは叱られながら嘆いた。心の奥底で、「あんンの盗撮魔がぁぁぁぁぁ!」と憤慨していた。
トグサもそんなユービックの不幸に同調したのか、裏切りについてはほとんど信用してやろうという気になり始めていた。
ともあれ、今はハックの準備を進めつつ、ゲイナーのプレイ結果を待つばかりだ。
敵方の、幼女の盗撮画像が納められているパソコンで代用する気にはなれなかったし、『射手座の日』がどんな恩恵を生んでくれるとも限らない。
今はゲインの説教を片耳に、ゲイナーの動向を暖かく見守ろう……ちなみに、ロックの「あの映像」はコンラッドが不要と判断したのか、データには残っていなかった。
◇ ◇ ◇
《The Day of Sagittarius 3》
3ってなんだ3って。1や2はあったのか。
僕、ゲイナー・サンガはそんな瑣末なことを思いつつ、件のゲームをプレイしていた。
ゲームタイトル、『射手座の日』。
なんともいい感じにキメようとしてかえって意味不明になってる感が否めないが、問題視すべきは中身なので気にしないことにする。
舞台は宇宙。とある恒星系を舞台にした領地争いをテーマにした、戦略系シミュレーションのようだった。
対立しているのは、二つの星間国家。一つはいわゆるプレイヤー側で、僕はこれを勝たせればいいわけだ。
僕は自軍の艦隊に<ゲイナー帝国>と名づけ、プレイを開始した。
ちなみに、名称が帝国となっているのはデフォルトで、他に変えようがなかった。僕は独裁的なやりかたはあんまり好きじゃないんだけどな……。
まぁ、ぼやいても始まるまい。僕はこの<ゲイナー帝国>を操作し、敵国、<コンピ研連合>を打ち滅ぼせばいいわけだ。
そうすれば晴れてゲームクリア。領地争いといっても、その場に話し合いという選択は存在しない。
勝てば官軍、撃滅あるのみ。製作者はどんな野蛮人なんだろうか。しかし、なんとも単純なクリア条件だった。
スタート時点では、画面はほぼ真っ暗である。モニタの下部で青く輝いている光点が、我が<ゲイナー帝国>の艦隊ユニットだ。
ユニット数は計5つ。一ユニットあたりに宇宙戦艦が一万五千隻ほど内包されているから総数七万五千、それプラス各艦隊にくっついている補給艦部隊。
それらを操作して同数の<コンピ研連合>を撃破すれば勝利条件クリアだが、それぞれの艦隊にはボスとなる旗艦が存在しており、それを撃沈されたら即刻負けとなる。
妙なこだわりを感じさせるところは、索敵システムを導入しているところだろうか。
ご丁寧なMAPは用意されておらず、敵の居場所もまず索敵艇を派遣し、マッピングを済ませなければ明かされないらしい。
闇雲に進軍させては、暗がりから襲撃される危険性があるわけだ。これはリアルなオーバーマン戦にも通じている。
明暗を分けるのは、やはりこの索敵システムなのだろう。すみやかに敵の位置を把握し、先の行動を予測した者が勝利者となる。
対人戦ならともかく、これはCPU戦だ。このゲームコンピュータがどれだけの性能を誇っているかは未知数だが……正直、<コンピ研連合>なんて名前からは脅威を感じない。
システム面から見れば、攻略性のない駄ゲーに思えるが……唯一僕向けなところを挙げるとするならば、ターン制でなくリアルタイム制であるところだろうか。
これは対人戦なら結構盛り上がりそうだ。シンシア相手ならやりがいもあったろうけど……と、そろそろ始めようかな。
プレイ開始前に、お互いの艦隊紹介一覧が表示された。
と言っても、分かるのは各艦隊の名称と旗艦がどれかということだけであり、大して攻略の役に立ったりはしない。
<コンピ研連合>のユニット名は、旗艦を筆頭に<ディエス・イラエ><イクイノックス><ルペルカリア><ブラインドネス><ムスペルヘイム>なる小洒落たパーソナルネームがついていたけれど、正直どうでもいい。
それに対する<ゲイナー帝国>は、<A艦隊><B艦隊><C艦隊><D艦隊><E艦隊>という適当ぶりである。だからネーミングなんてどうでもいいんだって。
ともあれ、「射手座の日を越えていけ」の謎を解き明かすための戦争は、開戦のファンファーレを鳴らした――
「ふっふっふ、有象無象がこぞってやられに来たか……我が<コンピ研連合>の戦力、あまく見ないでもらおうか!」
開戦とともに表示されたメッセージウインドウに、そんなセリフが書き込まれていた。
どうやら、<コンピ研連合>の大ボスたる人物らしい。顔グラフィックまで用意されているあたり、なかなか侮れない。
まず僕は索敵艇を派遣し、敵の位置を掴むべく陣を形成していく。
この手のゲームは基本が大事だ。奇抜な戦略は身を滅ぼしかねない。地味? 文句言わないでくださいよ。
次第に視野が広がっていき、やがて敵の第一陣、<イクイノックス>が姿を現した。
と思ったら、他の艦隊も次々に姿を現してくるから驚いた。
戦力を小出しにするような消極的な戦法は好かないらしい。旗艦のみを下げ、正面からぶつかるというCPUにしては豪気な戦略だ。単純ともいう。
こちらは旗艦を含めた5ユニット、すべてで迎え撃つ構えである。
基本的に、戦争は数で決まる。決定的な火力の差がない以上、こういったゲームでは特に物量がものを言う。
「敵は鶴翼陣形で僕らを誘い込むつもりか」
敵部隊は姿を見せたものの、あちらから攻撃にはうってこない。
防御陣を敷き、そこから包囲網を形成する算段なのだろう。見え透いた手だ。
こういったカウンター狙いの輩を相手にする場合、自ら突っ込んでいっては駄目だ。
専守防衛につとめ、端から防御陣を切り崩していくという戦法が打倒だろう。
だが、それじゃあ駄目だ。
僕が戦うべき真の敵は、<コンピ研連合>ではない。時間である。
残りの人数が減少した今、ギガゾンビ側がどういった手段を持って殺し合いにメスをかけてくるか分からない。
迅速に情報を入手し、首輪を外す必要がある。そのためにも、スピーディにこのゲームをクリアしなくてはならないんだ。
ならば取るべき戦法は決まっている――速攻だ。
自軍を動かし、敵の陣に踏み込んでいく。もちろん相手の罠に引っかからないよう、考えた隊列でだ。
すると敵軍は<イクイノックス>のみを残し、他の3艦隊は後退し始め、索敵範囲の届いていない闇の中へと消えていく。
<イクイノックス>を囮にし、その隙に包囲網を形成するつもりか。そうはいくか。
こちらは進軍しつもも索敵艇を派遣し、周囲の警戒を怠らない。
攻撃と防御を両立させ、確実に<イクイノックス>を追い詰めていく。他の敵が救援に駆けつける様子はない。
このまま<イクイノックス>を捨て駒にするつもりか? そんなことを考え出したときだ。
「あ、ゲイナー君。そっちは敵がまだいるはずだよ、きっと」
「え? うわっ、ほ、本当だ!!」
端で観戦していたドラえもんの声が響き、僕はその異変に気づいた。
<イクイノックス>以外の3艦隊が、僕の艦隊を取り囲んでいる――!? 馬鹿な、ありえない!
前方に追い詰めていた<イクイノックス>を囮に、左方に<ルペルカリア>、右方に<ブラインドネス>、後方に<ムスペルヘイム>が、いつの間にか部隊を展開させていた。
索敵しきれていなかった範囲を移動して、僕を囲んだのか――いや、だとしても早すぎる。
こちらの索敵艇よりも速く動き、気づかれずに四方に艦隊を移動させるなんて、それこそワープでもしなければ不可能だ。
とにかく応戦しかあるまい。僕は左舷と右舷から繰り出される挟撃に弾幕を張るが、前と後ろからも、矢継ぎ早に攻撃が仕掛けられる。
マズイ、これじゃタコ殴り状態だ。時間を気にするあまり、少し迂闊に進軍しすぎたか。
だが、僕だってゲームチャンプとしての意地がある。この程度の逆境、簡単に打開し……ドラえもんうるさい!
敵もなかなかに慎重らしく、こちらに反撃の術があると知ると、深追いせず即座に撤退していった。
すぐさま索敵艇を出すものの、相手は速度に特化しているらしく、艦影を捉えることができない。
まんまと逃げられてしまったわけだ。退けた、と言えないところがなんとも悔しい。
どうやら敵の作戦は一撃離脱を信条としたヒット&アウェイらしく、このままでは長期戦になるのも覚悟しなければならなかった。
CPUのくせに、なんて姑息な手を使うのだろうか。このゲームの製作者は、どれだけ陰湿な性格をしているんだ。
短期決戦が望めないからといって、焦ってしまっては敵の思う壺だ。いかなるときとて、将は冷静沈着でいなくちゃならないんだから。
その後も<コンピ研連合>は現れては消え、現れては消えを繰り返し、こちらのダメージを蓄積していった。
索敵艇で相手の位置が分からなくなったのは、CPU戦ゆえのご都合なのか。だとしたらベリーハードにもほどがある。
このままではイライラの溜まる一方だ。プレイヤーにストレスを与えるゲームはクソゲーだ、と思いつつも、僕はノートPCを投げ出したりはしない。
隣を見る。ドラえもんも劣勢だということが分かっているのか、不安げな表情をしていた。
自軍の状態を確認する――要となる旗艦はほぼ無傷であるものの、それを防衛する4艦隊の被害は甚大だ。
もし4艦隊のどれか一つでも切り崩されれば、敵はここぞとばかりに攻め入ってくるだろう。そうなればゲームオーバー、敗戦は必至。
コンティニューは可能だろうが、やり直している暇なんてない。焦るつもりはないが、求めるべきは速さなのだ。
チャンスは一度きり。チャンプとしての誇りと、みんなの命運をかけて、僕はこのゲームをクリアしてみせる!
(ゲイナーくん、がんばって。ぼくはうるさいって怒られちゃったから、暖かい目で応援しているよ。じーっ……)
ドラえもんの視線が鬱陶しい。まるで砂場で遊ぶ子供を身守るかのような、母親みたいに暖かい目だ。
そういえば、子守ロボットとか言ってたっけ。応援してくれるのはありがたいけど、それで戦況が変わるわけじゃないのが心苦しい。
ドラえもんの視線に答えるべく、僕は一度艦隊を後退させた。策を練り直すためである。
僕が目指すのは、タイムレコードを更新するくらいのスピードクリアだ。そのためにはどんな戦略が最適か、今一度考えてみる。
相手の作戦がチマチマしたヒット&アウェイだと分かった以上、強引に攻め込んでのスピードクリアは難しいと思われる。
ただ、それは定石で考えた場合だ。盲点は、このゲームの本質たる部分……『旗艦を撃沈すれば勝利』、というルールに潜んでいた。
相手の攻め手は旗艦以外の4艦隊。残りの一隻は、未だに雲隠れを決め込んでいる。
他四つが攻めに回っているということはつまり、旗艦の守りが手薄、どころかまったくないのも同意。
旗艦さえ発見できれば、一気に集中砲火を浴びせられるわけだ。
僕はMAPの隅で索敵艇を派遣することのみに従事し、敵旗艦の発見に勤しんだ。
すると敵は焦りを見せたのか、再び攻撃を仕掛けてきた。
――かかったな! これが僕の狙いさ!
そう、索敵に夢中になっていると見せかけ、相手が攻め込んでくるのを待つ。罠を仕掛けたのだ。
敵が今やられて一番困るのは、旗艦を発見されることだ。
当然、索敵を大々的に展開すれば、それを嫌がり阻止しようと踏み込んでくる。そこを討つ。そういうわけだ。
四方で囲う陣形は相変わらずだったが、襲ってくるタイミングさえつかめれば、いくらかはやりようがある。
僕は全艦隊を左方に向かわせ、敵艦<ルペルカリア>に突っ込んでいった。
包囲網を抜ける最善の方法。それは、一点突破。
局地的に戦況を見れば、5対1。外野からの攻撃はあるが、僕が負ける要因は何一つない。
結果として、<ルペルカリア>は自軍の総攻撃を受け沈黙した。それをスイッチに、他の3艦隊も闇に消える。
無茶をしたが、これでジリ貧だった戦況は打開できた。
こちらの<D艦隊>と<E艦隊>が撃沈寸前の深手を負ったが、単純な戦力差でいえばこれで5体4。数ではこっちが有利だ。
問題は、<コンピ研連合>の次の動きである。ユニットを一つ失った今、3艦隊でヒット&アウェイを継続するか、それとも旗艦も攻めに転じるか。
……なんて。
数分後、真面目に敵の行動を先読みしようとしていた自分が、どれだけあさはかだったか思い知らされることになる。
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