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  • アニメキャラ・バトルロワイアル @ Wiki
  • 赤い断片

アニメキャラ・バトルロワイアル @ Wiki

赤い断片

最終更新:2008年04月11日 23:02

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だれでも歓迎! 編集

赤い断片 ◆LXe12sNRSs



 あたしが持ってるでっかい銃は、神様から奪い取ったものさ。
 正義なんて吐き気がする。あんたさえいればそれでいい。
 頭に輪っかはないけれど、あたしはあんたの天使様。
 あんたがどんな野郎でも、今はあんたをやっちまいたくなるよ。
 すべてはあんた次第だよ。死なないヤツなんて居やしないんだから。
 地獄の業火よ、ブタどもを焼き尽くせ、ってな。
 生れ落ちてからというもの、あたしにとってこの世は常に地獄だったよ。
 たとえ奴等がどんな人間だろうと、あたしは全部やっちまいたくなるのさ。

 跪きな、出来のいいオツムが乗っかってんだろ。
 仲間のためを謳うなら、地の果てを目指してみなよ。
 全部差し出して、思うがままにやってみな。
 あたしがあんたの苦痛を消し去ってやるからさ。

 神に祈るなんて無駄なのさ。だからあたしは銃を手放さない。
 自分自身のために、躊躇無く引き金を引けるぜ。
 これは単なるビジネス、女々しいブタに割く時間なんてないよ。
 セイレーンが死の歌をあんたに歌ってくれるだろうさ。
 考える必要なんてないだろ? やるかやられるか、だぜ。
 泣こうがどうしようが、現実は変わらないのさ。
 あたしには鋼の意志がある。あたしの行く手を邪魔するなよ。
 人生の貸し分は全部返してもらうのさ。弱さなんてしゃぶって捨てちまえ。

 キリスト様の後光が差すこの腐った世界で、あんたは下手を打ったんだ。
 運の無い野郎だね。あたしの側から見てごらん。
 燃える炎が照らし出す、力と武器が真実さ……それがすべてだよ。


                                    MELL「Red fraction」より



 ◇ ◇ ◇


 ――あのブラッド・パーティーから、数週間が過ぎた。
 一方的に招待状を突きつけられ、参加を余儀なくされた傍迷惑なゲーム。
 俺はその数少ない生還者の一人として、元の暮らしに舞い戻ることができた。
 そう、このロアナプラに。

「ペプシを一本」
「この街でガキの飲みモン買うたぁ珍しいな。なんだ、禁酒同盟にでも入ったか?」
「俺が飲むんじゃないよ。仕事……いや、趣味の一環みたいなものさ」

 犯罪都市ロアナプラ。タイの一角に聳えるこの街は、世界政府が黙認して然るべき悪の巣窟だ。
 酒、女、銃弾、麻薬、罵詈雑言……ハードボイルドを売りにしたハリウッド映画には付き物の単語が、安売りのように飛び交う。
 俺は、少し前までは日本のしがない商社マンだった。死体の腐臭とも、引き金の重みとも無縁の生活を送ってきた。
 それが一転して、今じゃ立派な悪党の仲間入りだ。どう人生を転んだって、こんな顛末を辿る人間はいない。
 それに加え、最近じゃあ次元間規模の殺し合いまで経験してしまった。
 人生経験は富みより貴重と言うが、あんな地獄は二度と御免だ。
 もし第二幕を開こうとしている人間がいるなら、俺は飛んでいってでもそいつを殴り倒す。

 ……そうだ。人間は変わる。
 善人が悪人に、悪人が善人に、俺が突如としてトリガーハッピーになる未来だって否定できない。
 ただ、限度はある。いくらなんでも、スーパーマンがゴジラと協力してNY市街を破壊するなんてストーリーは認められないだろう。
 なら、俺は?
 商社マンが悪人の街で暮らし始めたとして、俺はどこまでブラックに染まることができる?
 たまにゃ御法に触れることもする――俺がラグーン商会に飛び込む際確認したのは、たったそれだけだった。
 あのとき俺は、悪人と善人の境界線に、つま先を踏み込んだ程度の覚悟しか持ち合わせていなかった。
 人は生まれながらに良心を抱いている。それがどこで磨耗し壊れるかは、生き方しだいだ。
 俺はどうだ? 俺はまだ、あまっちょろい悪党見習いか? 銃も撃てない偽善者か?
 ガルシア君に同情し、双子の幸せを願い、そしてあの世界ではクソッタレジジイを殴り飛ばしたいと心の底から願った。
 今の俺は、レヴィという名のお守りを失ったやんちゃな赤ん坊だ。
 親の目から離れた赤ん坊がどんな人生を送るかなんて、子持ちじゃなくても想像できる。

 ただでさえ、ここはロアナプラなんだぜ?
 どんな生き方をするのが一番利口か、いいかげん理解しようぜ。
 なぁ、ロック――――。


 ◇ ◇ ◇


 昼。ロアナプラ市街のある一角。
 住人不在の廃棄されたボロ屋の入り口に向けて、ワイシャツにネクタイで身を固めた青年が歩を進めていた。
 傍目から見て、就職活動に繰り出す大学生か訪問販売に出たセールスマンの印象を受ける。が、どちらもこの街では異質な存在だ。
 元の世界に戻ったとて、彼のファッションに特に変化はなく。
 今は亡き相棒が残したあの悪趣味なアロハでさえ、住まいのどこかに眠っている。
 ホワイトカラーは彼の代名詞でもあり、お気に入りだった。

 一缶のペプシと未開封のマイルドセブンを一箱持って、ロックはボロ屋の扉を開く。
 この貧相な建物は、彼の所属するラグーン商会のアジトではない。縁も所縁もない空き家である。
 だというのに、我が家に帰るような様子でそのボロ屋に入室したロックは、中を見て思わず目を疑った。

 ロックの帰りを出迎えたのは、数にして三人。男が二人、女が一人。
 色の濃いサングラスにスキンヘッド、屈強な筋肉をこれでもかと誇示する大柄な黒人の名は、ダッチ。
 線の細い体つきに、ぼさぼさの髪型。陽気なアロハシャツを携えた無精ヒゲの男の名は、ベニー。
 ダッチとベニー。二人とも、ロックと同じラグーン商会のメンバーである。
 そして、もう一人。
 ボロ屋を支える支柱の一つに荒縄で身を縛られ、むくれっ面を見せる少女がいた。
 歳は10かそこら。おそらくはルーマニア系。容姿は変態が好みそうな整った顔立ち。
 この少女に、名はない。

「……ダッチ、今すぐその子の縄を解くんだ。その子は俺たちを襲ったりはしない。そうならないよう教育されているんだ」

 ロックは若干青ざめた顔で、仕事仲間であるはずのダッチにそう語りかけた。
 その表情からは、どこか警戒心のようなものが窺える。周囲一帯の空気も、妙に張り詰めているようだった。

「だろうな。俺がふんじばろうとしても、このガキまったく抵抗しなかった」
「なら――」
「だがなロック。事はそういう問題じゃねぇんだ。こいつが俺たちに危害を加えなくても、火の粉は降りかかる。
 厳密に言うと、このお嬢ちゃんと、このお嬢ちゃんに構ってやがるテメェが原因でだ」

 ロアナプラの住人といえば、気性が荒く、敬語も満足に扱えぬような荒くれ者ばかりだ。
 そんな荒くれ者どもの中でも、ダッチは極めて稀な、良識人の部類に入る。
 無闇に罵声を飛ばしたりはせず、いついかなるときもクールに物事を進める。
 そんなダッチが、声に明らかな怒りを含めてロックと対峙している。

「……重々承知のうえさ。だからこそ、この件はダッチにもベニーにも話さなかった」
「いいや、わかっちゃいねぇなロック。おまえがこのお嬢ちゃんを匿うってことは、俺たち全員の問題だ。
 ただでさえ、相手にしてるのは世界で一番おっかない女なんだぜ。睨まれただけで卒倒もんのな。
 奴等はガキの悪戯を小事とは考えねぇ。吐き捨てた唾が、そのまま戦争の引き金になっちまう。
 根っからのソルダートなんだよ。いつもの調子で善意を働かせてるってんなら、とんだ筋違いだぜロック」

 説教……いや、これは忠告だった。
 これ以上先に足を踏み入れてはいけない、おまえはボーダーラインのギリギリに立っているんだぞ――という、ダッチの仲間に対する思いやり。
 それを正面から受け止めてなお、ロックの決心は揺るがない。そもそも、こうなることは想定していた。
 ダッチにもベニーにも頼らず、自分一人でここまで事を進めてきたのは、今回のゲームに味方は望めないと覚悟していたからだ。

「……ダッチ。あんた、人を殺したことはあるか?」

 緊張感の続く視線を介し、ロックがふとそんな質問を投げかけた。

「そりゃなんのジョークだ? この街の住人にそんなこと訊くなんてなぁ……『足し算はできるか?』って訊くくらいクソのつまらねぇ質問だぜ」
「ダッチ、俺は答えが欲しいんだ。それがおもしろい、つまらないなんてのはどうだっていい」

 ロックのいつにも増して真剣な様相に、ダッチは笑いかけた口元をキュッと閉ざす。
 ――趣味に没頭するときのロックは、いつだって本気だ。そんなことはとっくの昔に知っている。

「……答えはイエスだ。相手のどてっ腹に風穴開けたこともありゃ、RPGで脳漿ブチ撒けさせたことだってある」
「そうか……そうだな。やっぱりあんたは、こっち側の人間だ」

 一言二言交えると、二人はそのまま黙り込んだ。
 睨み合うでも掴みかかるでもなく、ただ何も語らず、同じ空間に存在して己を保っている。
 静寂は人を殺す。何もしない、何もしようとしない静けさは、他者には理解できない。仲間でさえ。
 ロックはただ、その場に佇んで考え事をしていた。必死なまでに。

「……腹が減ったな」

 不意に、ダッチがそんな言葉を口にする。

「ベニー、そろそろ昼時だ。後のことはおまえに任せるぜ。なにせ、『カオハン』のチャイナ・ボウルは売り切れるのが早い」
「了解。ロック、僕らはピザでも頼もうか。ランチを取るにはちょいとばかし埃っぽい場所だが、外で食べる気分じゃないだろ」

 腕時計の短針は、昼時を告げていた。
 二人の狙いすましたかのような提案に息をつきながらも、ロックはボロ屋を出ていくダッチの背中を見送る。
 続けて、ベニーがピザ屋に電話をかけに外に出ている間、ロックは柱に縛られた少女の拘束を解いていた。
 ロックの身長の半分ほどしかない低い背丈、乱雑で手入れの後も見受けられない栗色の髪。
 顔立ちは見事だが、育ちはよくなさそうな――少女からは、そんな印象を受けた。

「ごめんな、痛かったろう? さぁ、これで自由に――ぶふぇ!?」
「――畜生! あンのクソオヤジ、人が抵抗できねぇのいいことにやりたい放題やりやがって!
 あの命令がなかったら、今ごろケツ穴増やしてヒィヒィ言わせてやるところだぜ!」

 拘束からの解放と同時に、ロックは自由になった少女から、八つ当たりの鉄拳を貰い受けた。
 歳不相応な、それでいてロアナプラの住人としては花丸を上げたい出来の罵声が、ナチュラルに飛び出す。
 血に飢えた瞳と、血色のいい溌剌とした表情。ロックは、少女にある女性の面影を重ねながら――改めてこう思った。
 ああ、似ているな、と。

「……お怒りはごもっとも。今回は俺の仲間が悪いことをした。だけど、とりあえず胸ぐらを掴むのはやめてくれないか?」
「あぁ!? そりゃなんの冗談だ? 
 ロック、あんたにゃ感謝してるがよ、今のあたしはテールライト並みに真っ赤っ赤になる寸前なんだ。
 今すぐあのスキンヘッドにブチ込みてェ気分だが、あいにく命令違反になるからそれはできねェ!
 なんだったら、このままのボルテージで『ホテル・モスクワ』に突攻してやっても…………痛ぅっ!?」

 ロックの胸ぐらを掴みながら息巻いていた少女が、急に悶絶し痛みを訴え始めた。
 腹部を押さえている様子から見て、どうやら怪我をしているらしい。

「言わんこっちゃない。君は怪我人なんだから、もう少し大人しく――」
「るせェ! 大人ぶるンじゃねェよこのホワイトカラーが! もういい、知るか! あたしは出ていくぜ!」
「あ、おい!」
「ついてくンな!」

 ロックの制止を振り払い、少女はぶっちょう面をさげたままボロ屋を出て行ってしまった。
 追い縋ろうとした手が虚しく引っ込む中、入れ違いに戻ってきたベニーが、目を白黒させてロックに尋ねる。

「彼女、勝手に行かせちゃっていいのかい? 匿っていたんだろう?」
「……あとで、探しに行く」

 やれやれと頭を俯かせながら、ロックは盛大に溜め息をついた。


 ◇ ◇ ◇


 男二人、チーズ特盛のミックスピザに食らいつきながら、会話を進める。
 と言っても、会話はベニーが尋ねてロックが答えるだけの質疑形式。
 ロックが独断で行った今回の一件については、ダッチもベニーも深くは関与していない。
 が、見過ごすわけにもいかないのが厄介なところ。それゆえの質疑である。

「彼女がどんな境遇に置かれている人間で、誰を敵に回しているか、どれくらいまで把握してるんだい?」
「……全部、知っているさ。その上での覚悟だ」
「だとしたらロック、君はとんだ大バカだ。赤ん坊を庇いながらケサン基地に乗り込む母親がいるとでも?」
「いない、だろうな。このまま抗い続けたら、俺には遠くない未来、ミートパテになる運命が待っている」
「そこまでわかっていて、なぜ? 同情かい?」
「……」

 ロックの言葉が、不意に途絶える。
 ややあっても答えは返ってこず、ベニーが再度言葉を紡いだ。

「ロック、もし君が双子のときのやり直しをしようとしているなら――悪いことは言わない、手を引くべきだ。
 人食い虎を元の温厚な子猫に戻すなんて芸当は、どんなに優秀な調教師だって不可能なんだよ。
 ましてや、眼前では野生の獅子が見張ってる。綱渡りなんてレベルじゃない、信念を貫くにはリスクがデカすぎる」

 ベニーの忠告を受けて、ロックはまた沈み込んだ。
 食べかけのピザを手に持ったまま、俯いた視線をひび割れた床に向ける。
 数々の逆境を乗り越えてきた彼からは想像もできないような、陰気な面構え。
 彼女なら、見かけた途端に殴り倒していたかもしれない。

「彼女、ベレッタを使うそうじゃないか。それも二挺拳銃(トゥーハンド)」

 ベニーは残り1ピースとなったピザに手をつけながら、小さな声でそう囁いた。

「ロック、これは僕の勝手な憶測の上に、君のプライドを傷つける要因にもなりかねないが……言わせてもらう。
 彼女をレヴィの後釜にしようとしているんなら、諦めるんだ。
 君がどれほどレヴィのことを引きずっているかは知らないが――」
「それは杞憂だよ、ベニー」

 ぽてっ、と。ロックが手にしていたピザのひとかけらが、埃塗れの床に落ちた。
 ロックは静かに立ち上がると、「あの子を捜してくる」とだけ言い残し、ベニーには一瞥もくれずボロ屋を出て行こうとする。
 ベニーには、その思いつめた背中を見送ることしかできなかった。

「あぁ、そうそう。一つ聞き忘れてた」

 去り際、ロックが振り返らぬままベニーに質問を投げかける。

「ベニー、あんたは人を殺したことはあるかい?」
「……あいにく、他人の眉間に鉛玉をブチ込む趣味は僕にはない。
 だが、僕だってなんだかんだでロアナプラにいる人間だ。それ相応のことはやってきたさ」
「そうか」

 答えを得ると、ロックはそのままボロ屋から退出した。
 結局最後までベニーと視線を合わせようとしなかったところが、どこか虚しく、仲間の心配を誘う。

「どんな英雄譚に感化されてきたかは知らないが……自分の立ち位置を見誤らないことだ、ロック」

 誰もが自覚している。自覚しなければ、ここにはいられない。
 ここはロアナプラ。ここにしか存在しない、この世界特有の街。


 ◇ ◇ ◇


 ――バトルロワイアル。ギガゾンビはあの殺し合いのゲームを、そう呼称していた。
 ロボットや吸血鬼、魔術師に亜人まで……今を思えば、異文化交流の極みだったな、あれは。
 悪夢から覚めた後の現実ってのは、かくも淡白なものだった。
 記憶も事実もそのままに、元の世界に帰された俺は、それ以後他のみんながどうなったかなんて知らない。
 両親を失ったしんのすけの将来、事の発端であるギガゾンビの処遇、俺に行く末を知る術は与えられていない。
 気になることは他にも山ほどある。
 エルルゥが気にかけ、皇を失ったトゥスクルのその後。北条沙都子や園崎魅音が帰りたいと願った雛見沢のその後。
 どちらも、飛行機を飛ばしたって辿り着けない場所にあるんだろうな。
 俺の知っている日本にも、春日部はあった。だが、そこに野原しんのすけは住んでない。
 みんな、バラバラになっちまった。帰るべき世界に納まって、よろしくやってることだろう。
 いや、なにも放浪癖が生まれたわけじゃないさ。ただ、俺はあそこでなにかを植え付けられちまった。
 それがなにか、確かめたい。でも具体的な方法が見つからなくて、足掻いてる。
 ……その末路が、現在の状況だ。俺は今、とんでもない泥沼に嵌ってる。

 ロアナプラへの帰還後、俺はダッチとベニーに事の説明を求められた。
 連絡もよこさず数週間どこ行ってやがった……って。俺があっちにいたのは僅か二日足らずだが、少しばかり時差が生じたらしい。
 タイムパラドクスの弊害ってやつだろうか。二人の話によれば、俺とレヴィが消えたのはほぼ同時期。
 ついでに言えば、あの双子やロベルタのことも、二人の記憶にちゃんとあった。
 仮面の変態に拉致されて殺し合いに参加させられてた。って馬鹿正直に答えてもよかったんだがな。
 残念ながら、俺は脳異常患者として仲間に冷たい目で見られる趣味はない。なので、真相は暈しておいた。
 ただし、レヴィの死については正直に伝えた。
 最後の最後まで勇猛にカトラス振るいながら死んだ、ってね。
 もちろん、二人はそんな説明で納得などしなかった。
 だがどんなに説明を求められたって、殺し合いをやっていたと証明する術がないのだから仕方がない。
 俺は今日まで黙秘を続け、前よりも少し微妙になった空気の中で、生を謳歌していた。
 ラグーン商会の稼ぎ頭である女ガンマンと一緒に姿を消し、一人だけ戻ってきた男。そりゃ居た堪れないさ。

 レヴィの死が尾を引いていないといえば嘘になる。
 俺をこっちに引き込んだのは紛れもなくレヴィであり、彼女には何度も命を救ってもらった。
 気休めに傾けた鎮魂のグラスも、死者の魂を呼びよせる儀式にはならない。
 レヴィの死に際に立ち会えなかった俺には……もう、なにも知ることはできない。
 しんのすけやエルルゥが味わった消失感とは違う、どこか冷めた感じの虚無感が胸に蟠っている。
 この妙な気持ちも、今の泥沼に嵌った一因なのかもな。

「よぉーロック。しけたツラしてんなぁ。色男が台無しだぜ?」

 あの子を捜して街を練り歩く最中、聖堂女の制服を着たシスターに声をかけられた。
 シスターといっても、煙草をくわえ、サングラスをかけた不良シスターだ。

「……エダか」
「聞いたぜぇーロック。レヴィと地獄に駆け落ちして、一人だけ生還したんだってぇ?
 や~るじゃないの。さすがはあたしが惚れ込んだ男だ」
「ふざけるのはよしてくれ。悪いけど、今は冗談につき合える気分じゃないんだ」
「ヘーイ、どうしたってんだよロック。冷たいじゃないのさ~。
 こちとら貴重な酒飲み仲間がおっちんで寂しい思いしてんだ。ちょっとくらい付き合ってくれたっていいじゃないの」

 ロアナプラの一角に立つ暴力教会。おかしなことに、こんな街にも教会はある。
 教会といってもそれは表の顔だ。裏の顔は、ロアナプラで唯一武器の売買を公認されている手配屋……うちもよくお世話になっている、顔馴染みだ。
 特にこのエダは、レヴィとも個人的に親交を持っていたらしい。
 おともだち、なんていうお上品な間柄ではないだろうが、彼女の死に無関心なはずはない。

「こいつぁ風の噂で聞いたんだがよぉ、なんだかまた面倒なことに首突っ込んでるらしいじゃないかい。
 なんなら、レヴィの代わりにあたしが力貸してやってもいいんだぜ? 高くつくけどよ」
「遠慮しておくよ、エダ」

 素っ気なく返し、俺はエダの脇を通り過ぎようと歩を進めた。
 今はとてもじゃないが、彼女の軽口に付き合ってやれる気分じゃない。
 レヴィのこともそうだが、今はあの子のことで頭を悩ませっぱなしだ。
 抱え込まなくていい面倒事を自ら呼び込み、己の首を絞める。つくづく、俺は早死にするタイプだと思う。
 ただ、これは俺の性分だ。今さら変えられるもんでもない。
 ……もしかしたら、うつしちまったのかもな。
 レヴィに、こんな俺のどうしようもない性格が。

「そうだエダ、一つ馬鹿な質問に答えてくれないか?」
「あーん? なんだい?」
「人を殺したことはあるかい?」
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃははははははは!」


 ◇ ◇ ◇


 エダへの質問を爆笑で返された後、俺は港の付近で件の少女を発見した。
 埠頭に座り、ただぼんやりと海を眺めている。
 既に空は茜色に染まっており、水平線の彼方に、太陽の沈む光景が映し出されていた。
 水面を見つめる少女の瞳は、覗き込むのもおこがましいほど無垢で、まだ子供なのだということを実感させてくれる。

「海が好きなのか?」
「……なんだよロック、あんたも随分構うじゃねーか。こんな厄介者、とっとと手放したほうが身のためだぜ」

 声をかけ、返ってきた言葉は、どこか懐かしい。
 ああ、そうだな。
 ベニーの憶測を肯定するわけじゃないが、彼女は確かに、レヴィに似ている。

 ――数日前、俺がこの港で拾った少女。彼女に名はない。俺が知らないのではなく、誰にも名づけられたことがないのだ。
 発見当初は、それはそれは酷い有様だった。弾丸に射抜かれた腹部は血に塗れ、死の淵に立たされた状態。
 誰にやられたのか、そもそもこの少女は何者なのか、そんなことを考えるより前に、身体が動いた。

 俺が彼女について知ったのは、彼女の怪我が安静にしていれば問題ない程度にまで回復してからだった。
 双子の再来――極一部じゃ、この一件はそんな呼称で面白おかしく話題になっている。
 ルーマニアの政変以後、施設から闇社会に売られていった多くの子供たち。彼女はその中の一人だった。
 そんな哀れな少女が、二挺のベレッタを携えこのロアナプラにやってきた理由……それは、彼女に与えられた『命令』を果たすため。
 ホテル・モスクワのバラライカさんに喧嘩を売れ、という荒唐無稽な命令に。

 かつて、同じ目的を持ってロアナプラを震撼させた子供がいた。
 あの殺し合いにも参加していた双子――ヘンゼルとグレーテルは、変態どもの享楽に付き合わされた末に化けた、快楽殺人者だ。
 だが、この少女は違う。幼少の頃から授業という形で人の殺し方を学び、主の命令を忠実に実行するよう教育された。
 それがたとえどんな命令でも、必ず遂行する。子供ながらに、子供だからこそ、逆らえないように。
 いわば、調教を施された精巧な殺人マシーンだ。彼女は殺人に快楽を求めない。だから、標的外のダッチには抵抗しなかった。
 彼女の標的は、このロアナプラの裏を牛耳る一人、バラライカさん含めたホテル・モスクワの構成員全員。
 奴等を皆殺しにしろ。
 そう、誰かが指示した。かつての双子を仕向けたヴェロッキオのように。

 彼女と双子が違う点は、殺人に快楽を求めないこと、命令に忠実なことと、もう一つ。感情の起伏が激しいことが挙げられる。
 ダッチの横暴に怒りを表し、またその怒りを抑制することもできている。
 命令を命令と割り切り、標的以外は狙わない。行動だけ見れば、立派なプロの殺し屋だ。
 単なる快楽殺人者にならないよう調整したのは、裏社会における厄介ごとを背負い込まないためだろう。
 ここでは、無闇な殺しが波紋を呼ぶ。依頼者の望む望まないに関わらず、うっかり対象外の人間でも殺してしまったら、
 今度はその人間の組する組織に睨まれることになる。この子の教育者は優秀な反面、どこか程度が低く思える。

 ……つまりだ。
 俺は今、ロアナプラの大ボスとも言えるホテル・モスクワのトップ、バラライカさんの敵を匿っている。
 これが自殺行為にも等しい愚かな真似だってことは、重々承知している。
 俺は今、狙撃兵にスナイパースコープで覗かれている状態だ。あとは弾が飛んでくればアウト……。
 今回ばっかりはヤバイかもな。レヴィはもちろんのこと、ダッチもベニーも突き放して、俺は単独で動いている。
 どう考えたって無謀だ。なのに、不思議と引き下がる気にはなれない。
 つくづく思うよ。どうして俺は、こんなに命知らずなのかってね。

「なぁ、もうそろそろやめにしないか? ホテル・モスクワは君が考えているほどガードの緩い組織じゃない。
 仮に命を捨てる覚悟で挑んだって、返り討ちに遭うのが関の山だ」
「またその話かよロック。説得……ってのをしようってンなら無駄だぜ。あたしは退かねェ。
 あたしは、お天道様の下歩いて暮らしてきたあんたとは違うンだ。機械みたいなもンよ。
 与えられた命令をまっとうする。命なんてのはその代価でしかねェ。飛ンでったら戻ってこねェ弾丸と同じさ」
「自覚しているうちは、まだ歯止めが利く。君は弾丸とは違うんだ。標的から逸れる意志を持ってる」
「鉛の玉が勝手に道を逸れるって? ハッ、そんなことが許されるかよ」
「許すよ。俺が許す」
「……つくづくハッピーな野郎だなぁ、あんたは」

 ハッピー、か。ま、そうかもな。
 俺がやろうとしていることは、蛇に睨まれた蛙を救済しようとしているのと同義……ただ、俺の立場は蛙よりも弱い蟻だ。
 それを理解していながら――勝算皆無と知りながら――俺は俺の望む結果を導き出そうとしている。
 ガキだな、ロック。バニラアイスより甘ったるい、ガキの考えだ。反吐が出らぁ。
 ……最近、前にも増して自虐的になってきた気がする。ここらへんが境界線なんだと、認識させられる。

「? なんだそりゃ、見ねぇ銃だな。カスタムか?」

 少女が覗く傍ら、俺は懐から一丁の銃を取り出した。
 グリップ部に二本のサーベルとドクロのマークが装飾された、こじゃれた銃。
 俺があの世界から、唯一持ち帰ったものだった。

「ベレッタM92カスタム……通称ソード・カトラス。君も愛用しているベレッタのカスタム銃さ」
「なんだよロック、イカした銃持ってンじゃねェか。やっぱホワイトカラーでも悪党は悪党ってわけか?」
「あいにく、俺は銃を撃つのも持つのも趣味じゃなくてね。これは形だけの……そう、モデルガンみたいなものさ」

 なんだよつまんねー、と返す少女に、俺は苦笑を漏らした。
 ――ギガゾンビ城での戦いで、レヴィが最後まで握っていたソード・カトラス。これはその復元品だ。
 復元といっても、あの世界は地球破壊爆弾で木っ端微塵に砕け散ってしまった。原型など残ろうはずがない。
 なのでこのカトラスは、一から作りなおした別物と言ってしまっていい。
 見てくれは銃だが、引き金を引くことも、弾を装填することもできないよう作りなおされている。
 こうやって女々しく携帯しているのも、レヴィの遺品としての意味合いが強い。
 気に入らないことがあれば、カトラス振るって大暴れ……そんな、少年海賊みたいな真似が、俺もしたかったのかもしれない。

「知ってるかい? 世の中にゃ、銃じゃ解決しないこともあるんだぜ」
「あぁ? なんだそりゃ」

 呆れた声を出し、少女は溜め息をついた。いいかげん、俺の小言にもうんざりしてきたのかもしれない。
 おせっかい焼きってのは、そう簡単に受け入れられるもんじゃない。この子みたいなタイプならなおさらだ。

「あんたの言いたいことはイマイチわかんねぇけどさ。あたしは振り上げた拳を降ろすつもりはないぜ。
 ……ま、それでもあんたにゃ借りがある。怪我もあるし、もう一日くらいは大人しくしてやるさ。
 命令の邪魔するヤツはウザってェが、役に立つヤツは利用してやって損なしだ……って教わったんでね」
「そいつぁ立派な教えだ。君の教育者は、どこか平和な街で教師になるべきだな」
「……機会があったら、伝えといてやるよ」

 そのときだ。ゆっくり立ち上がった少女に凶弾の銃声が降りかかったのは。


  ◇ ◇ ◇


 少女の身が揺れる。額から真っ赤なシャワーを噴き出し、物言わぬまま前倒れになる。
 一秒後には、もう死人が完成していた。脳天に一発ブチ込まれて人生終了。あっけない最後を、俺は見届けた。
 潮の香りがする埠頭全体を、血と硝煙の臭いが包み込む。気分は一気に最悪だ。
 俺は弾丸の射出先に目をやる。そこには、身を震わせながら銃を構える、小太りの男が立っていた。

「……なん、でっ!」
「し、知らなかったんだ! お、俺はなにも、依頼主がよりにもよってホテル・モスクワに喧嘩吹っかけてるなんてことも!
 あいつらはやべぇ、やばすぎる! とばっちりが俺にまで回ってこねぇとも限らねぇ、いや、絶対回ってくる!
 おお俺はただ、おもしろおかしくガキどもを調教できればよかったんだ! あんな奴等に喧嘩吹っかける気はなかったんだよ!」

 少女を撃った男は、錯乱しているのか呂律の回らない口ぶりでなにやら弁明している。
 だが――ああ、クソッタレ。知ったことかよ。
 あの子は、この男に殺された。見るべき結果はただそれだけだ。
 あるのかよ、こんな胸糞の悪い終わり方が。
 双子とは違う。なんの望みもなく、支えにしていた命令さえ果たせず死んだ。
 こんな……ことがあってたまるかよッ!

「な、なんだ!? や、やるってのかよ!」

 気づけば、俺はカトラスの銃口を男に向けていた。
 ああ、馬鹿だな。こんな模造品を向けてる俺も、その模造品にビビってるあいつも。

 ――ロアナプラに吹き溜ってる連中は、どいつも皆、くたばり損ないだ。
 ――墓石の下で虫に食われてる連中と違うところがあるとすりゃ、たった一つ。
 ――生きるの死ぬのは大した問題じゃねぇ。こだわるべきは、地べた這ってくたばることを、許せるか許せねェか、だ。

 ああそうだよ、他人の死なんてクソの役にも立ちゃしない。ここはそういう街さ。
 けどな、俺にはそれが我慢ならねぇ。
 子供も大人も皆平等で、死にながらに生き永らえてる。ダッチも、エダも、バラライカさんも、あの子だって!
 ああそうさ、俺はどこまでいったってホワイトカラーの日本人だ。ロアナプラの連中とは違う。
 連中のようになりたいとも思わない。だけど、俺はここにいる。岡島の性より、ロックの名を取った!
 そんなことは最初からわかり切ってたのさ。だから俺は、俺なりに割り切ろうとした。双子の一件がそうだった。
 でもなぁ、俺はあそこで浸かっちまったんだ。思い出しちまったんだよ!

 ――死んじゃったら大人になれないよ?

 命は尊いものだって、救える命があるってことを教わっちまった。
 俺は、あのときはまだロアナプラの住人でいられた。北条沙都子を切り捨てようとした俺は……!
 みんなが助かる上での最善の方法を考えるだとか、願った結末に導くための取捨選択をするなんてのは、腐った大人のやることだ。
 それをアイツは、しんのすけは真っ向から否定しちまった。
 しんのすけだけじゃない。ドラえもん、ハルヒ、ゲイナー、ゲイン、トグサ、凛、フェイト、誰も諦めたりなんてしなかった。
 割り切ったり妥協したりなんて考えは持っちゃいない。最高の結末を望んで、それを掴み取った。
 笑っちまうよな。俺もその一員だったんだぜ? なのに、元の世界に帰ればこのザマだ。
 女の子一人救えない。ただ命の綱渡りを楽しんでるだけのド変態だ。
 クソッタレなブラッド・パーティー? 子供を交えた殺し合い?
 なに言ってやがる。ロアナプラのほうが、帰ってきた現実のほうが、よっぽど地獄じゃねぇか!

 「……お、おい……ブルっちまったのか? ははっ、なんでぇ驚かせやがって」

 気がつけば、俺は手からカトラスを取りこぼしていた。
 これが単なる模造品だからって、銃であることには変わりない。
 俺は、銃は持たない主義なんだ。今さらそれを枉げるつもりはないさ。
 それで痛い目見るのは、まぁ自業自得ってとこだろ。
 こんな無鉄砲な男、守護霊様だって愛想つかすさ。

 ……ああ、クソ。
 こんなときに限って、無性に煙草が吸いたくなる。
 たしか、さっき買ったマイルドセブンがポケットにあったかな。
 火は……と、おいおい、最後の一服なんだぜ。
 焦るなよ。煙草くらい……ゆっくり……。


 ◇ ◇ ◇


『ハイ、ダッチ。ご機嫌いかがかしら?』
「バラライカか。そろそろ、そっちのほうから連絡があると思ってたよ」
『災難だったみたいね、今回の件。ラグーン商会の社長としては、居た堪れなかったんじゃない?』
「まったくだ。今回ばかりは肝が冷えた。タイレノールが1ダースあっても足りん」
『飼い犬に手を噛まれかけたってやつかしら? あなたもゆくゆく不憫な男ね』
「そうでもねぇさ。なんだかんだでまだ生きてるんだからな。で、今回の一件、ホテル・モスクワとしてはどう捌くんだ?」
『特にどうとも。元凶は既に押さえたし、仕掛け人はそっちで始末してくれたんでしょう?』
「特になにもしちゃいねぇがな。終わった些事にゃ構ってられないってわけか」
『まぁ、被害も少なかったしね』
「それはなによりだ。スマートなビジネスってのはクールな友好関係がなきゃ成り立たねぇ。今後も蟠りなくいきてぇもんだ」
『もちろん。けど、目の前の敵を討ち滅ぼそうとするのはマフィアも兵隊も同じよ。そのこと、忘れないでね』
「ヘヴィなお告げだ。社訓にしたいくらいだぜ」
『ああ、そうそうダッチ。一つ、変なことを訊いてもいいかしら?』
「なんだ?」
『今回の一件……前にも似たようなことがあった気がするんだけど、覚えはないかしら?』
「? なんだ、あの嬢ちゃん以外にも、子供に命を狙われた経験があるのか?」
『いえ、特に心当たりがなければいいわ。それじゃダッチ、近いうちに仕事があるだろうから、また電話するわね』


 ◇ ◇ ◇


 俺は、あの世界で一人の子供の命を奪った。
 あの子にとっては、やり直しの機会だったのかもしれない。そのやり直しは、俺も望んでいた。
 けど、そのやり直しの芽を、俺は自ら摘んでしまった。
 悪党と善人の境界線は、そんな簡単に越えられるもんじゃない。
 人を殺したからって、その人間の本質が悪党になれるわけじゃないんだ。

「ベニー、ダッチの電話が終わったら、三人でイエロー・フラッグまで繰り出さないか? もちろん、代金は俺持ちで」
「同僚の精神的疲労を鑑みての痛飲ってわけかい? 朝までコースは?」
「……オーケー。レヴィがいないだけマシとしておこう」

 港で向け合った銃口と、その結果。俺は、間一髪のところをダッチに救われた。
 あの子を撃った小太りの男は、あの子の教育を手がけた調教師……いわば、育ての親だったらしい。
 調教師といっても、あの子がホテル・モスクワをターゲットにしていたことまでは知らなかったようで、
 詳細を知った男は、万が一あの子が失敗した場合、自分にまで火の粉が飛んでくることを恐れたらしい。
 だから、自分から幕を下ろした。なんとも身勝手な、親の暴虐ってやつだ。
 これで、すべて丸く納まった。バラライカさんに喧嘩を売る輩は排除され、俺も匿う対象を失った。
 ホテル・モスクワとラグーン商会の間に蟠りができるかもしれないが、そこは長い付き合いだ。ダッチがなんとかするだろう。

「……結局、俺は双子のときの失敗を、あの子でやり直そうとしていただけだったんだな……」
「双子? なんのことだい?」
「なにって……ヘンゼルとグレーテル、そう呼ばれていたルーマニア人の双子さ。覚えてるだろ?」
「ん? う~ん……あいにく記憶にないな。ロックの個人的な知り合いかい?」

 惚けた様子でもなく、ベニーは本当にわからないといった表情で頭を捻っていた。

「それじゃあ、ロベルタは? あのターミネーター紛いのメイドは?」
「ターミネーター? ああ、あのラブレス家のメイドか。
 あれはたしか、イエロー・フラッグの爆発に巻き込まれて死んだんじゃなかったっけ? 死体が出てこなかったって言うが」

 ……ああ、そうか。そういうことか。
 タイムパラドクスの弊害。最初は、双子のことを覚えていたからおかしいなとは思ったけど……今になって、辻褄あわせの改変が始まったってわけか。 
 時間平面状がどうとか、因果律がどうとか、俺にはよくわからないけど、双子の事件やレヴィとロベルタの殴り合いは、もう歴史からは抹消されたようだ。
 でも、俺は覚えてる。次元間を飛び越えた俺はイレギュラーケース……そういうパターンも、あるってことか。

 なんか……急に馬鹿らしくなってきたな。

「ヘイ、ロック! なにしけたツラしてやがんだ。こちとらおまえのせいで疲労が溜まってる。雇用主としては痛飲を希望をしたいところなんだがな」
「ナイスタイミングだダッチ。ちょうど、ロックが酒代を提供すると言っていたところだ」
「そいつはクールだ。ティル・ドーンはアリか?」
「オーライだダッチ。その代わり、今夜は俺の馬鹿な妄言に付き合ってくれないか? 失踪中に体験した、とびきりイカしたエンターテインメントだ」
「ほう、そいつぁ楽しみだ。決まりだベニー、車を回してくれ!」


 ◇ ◇ ◇


 知ってるかい? 他の世界じゃ、ロアナプラなんて街はタイに存在しないらしいぜ。
 こんなクソッタレな街、お天道様の眺める平和な世界にゃ必要ないんだとよ。

 ――レヴィ、今夜のバカルディは、俺の奢りだ。気が向いたらグラスを傾けてくれ。
 俺がこの街で、どれだけ自分を貫けるかなんてわからないけどさ。
 やれるだけやってみるつもりだよ。なんせ、ロアナプラの住人は「生きながらに死んでるんだから」な。
 俺だって、布団の上で死ぬよりは趣味を貫き通して死にたいさ。

 ……そう、趣味だ。俺がやってることは。
 ナイチンゲールにもキングにもなるつもりなんてない。ただの悪趣味な道楽さ。
 こんな変わり者、ロアナプラに一人くらいいたっておかしくはないだろ?
 ……ああ、そうだな。長生きはできないと思うよ。
 でも、俺は俺を枉げたくない。
 我が侭かい? 我が侭だよな。
 だがねレヴィ、俺をこっちに引き込んだのは、おまえとダッチ、ベニーが原因なんだぜ?
 不愉快だと思うなら、あっちで思う存分暴れてくれ。夢の中で説教くらいは聞いてやるよ。

 ……向こうでベニーが騒いでる。あっちで覚えたとびきりハードな宴会芸とやらを披露しろってさ。
 まったく、あんなこと言うんじゃなかったかな……これじゃ商社マン時代の再来だ。
 ま、こちらのほうが全然気楽にやれるけどね。


 じゃあな、レヴィ。
 機会があったら、また飲もう。



                                 【アニメキャラ・バトルロワイアル BLACK LAGOON 完】

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