去勢

登録日:2025/06/11 Wed 18:58:18
更新日:2025/06/13 Fri 00:56:36NEW!
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去勢(きょせい)とは、生物の雄の生殖機能を取り外す技術である。
雌を妊娠出来なくする手法も存在するが、こちらは去勢とは呼ばれず「不妊手術」と呼ばれることが多い。



【概要】


「去勢」と表現すると、男性の身体から2つの睾丸・精巣を取り外すことで生殖が不可能な状態にすることを指す場合が多い。
2つある睾丸の片方だけを摘出し、生殖能力を残すのは「半去勢」。ぶら下がっている外性器を全て摘出するのは「完全去勢」と呼ばれる。

睾丸を残し、チ〇コ部分の陰茎のみを切り落とす手法は「羅切」と呼ばれ、チ〇コが無くなれば物理的に生殖することは困難になるが、精子の生産はできるのでまだ生殖ができる可能性は残る。
また、身体に手術を行わずに男性ホルモン抑制剤や女性ホルモンなどを投与して性的欲求と性機能を低下させることで、性的興奮も勃起もできなくすることで生殖機能が無いに等しい状態にするものは「化学的去勢」と呼ばれる。

【人間の去勢】



※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください

男性の下半身にぶら下がっている金玉、もとい睾丸は生殖に必要な精子のほか、男性ホルモンを作り出す機能がある。
そのため、子供の内に去勢された男性は男性ホルモンの分泌が抑制されることで、声変わりが起きなくなり女性のような声になる。
外見も男らしくならず女性寄りの体型になり、髭が抜け落ちて生えて来なくなる。
このような特徴が表れた完全去勢を受けた男性は、インドやパキスタンを始めとした南アジアでは「ヒジュラー」と呼ばれる男性でも女性でもない第三の性別として認識されている。
去勢のやり方としては外科手術で性器を切除する以外にも、去勢鉗子と呼ばれる器具で血管を挟んで精巣に血液が行かないようにして壊死させる方法もある。

人間が事故の怪我やがんなどの病気で結果的に生殖機能を失う、政治的理由から去勢を強制されるなどはあれど、人間が自発的に去勢手術を自分自身に行うことは非常に稀である。
自発的に行われた去勢の中でも有名なのが中国発祥の「宦官」であろう、詳しくは当該項目を参照してほしい。
日本が中国から漢字を始めとした文化を取り入れた中、宦官は日本に導入されなかったがそれには後述する要因があるとされている。
また、16〜19世紀のヨーロッパでは、第二次性徴前に去勢することで男性ホルモンの分泌を抑制し、声変わりをなくし、ボーイ・ソプラノの声質や音域を維持させる「カストラート」と呼ばれる男性歌手がいた。
拷問や刑罰の一環で去勢が慣行されることもあり、現在でも性犯罪者に対して去勢を行う刑罰がある国が存在している。

昔の医療行為全般に言えることだが、麻酔や鎮痛剤なんてものは無かったため去勢手術は非常に痛みを伴うものであった。睾丸だけならまだしも羅切と完全去勢を行うとなると陰茎の海綿体に無数の毛細血管が通っているがために出血が酷く、出血多量と傷口からの感染症で死亡するのは日常茶飯事でリスクが高く、現在でも合併症のリスクがあるため人間が日常生活を送るうえで去勢をする利点は乏しい。
前述した宦官の場合は専門の去勢手術を行う職人がいたが、カストラートの方は表向きには子供の去勢が禁止されていたこともあって散髪屋や肉屋で去勢が行われていたので非常に高リスクだったそうな。
また、よく勘違いされるが、チ〇コも睾丸も全て取り外したところで性欲は無くならない。生殖はできないのに性欲はあるというもどかしい思いをすることになる。


現代日本における去勢

現代の日本においては、睾丸を取ることを「去勢」と称して行われることはない。
しかし、トランスジェンダーの性別適合手術や何らかの疾患や怪我などで睾丸を切除する場合はある。
いずれにおいても完全に生殖機能を失ったり、ホルモンバランスを崩すなどのリスクもあるため、安易な気持ちで行うことは避けるべきである。

なお、避妊を目的とした場合は、男性なら「精管結紮術(せいかんけっさつじゅつ)(通称「パイプカット」)、女性なら「卵管結紮術(らんかんけっさつじゅつ)」を行うのが基本であり、睾丸や子宮を取ることはない。
これは、精子が通る精管や卵子が通る卵管をカットしたりクリップで留めたりすることで、精子や卵子が出て来なくなるというもの。
性欲はあるし、男性なら精液も普通に出る、女性なら生理は普通に来るので日常生活・性生活共にそれ自体に影響はない。ホルモンも正常に分泌される。
ただし、精液に精子が、子宮内に卵子が含まれなくなるので、去勢と同様に生殖能力は基本的に無くなる。

また、現在の日本では母体保護法により、本人の希望だけで上記の結紮術はできない。
「妊娠すると直接命に係わるような強い事情がある」「既に子供が複数おり、かつ配偶者の同意もある」などの厳しい条件がある。

他にもトランスジェンダーなどがホルモン剤などを投与して実質的に生殖機能を失ったり、「性別適合手術」として性器の切除と成形を行う場合がある。
特に国によっては性別適合手術を行うことが戸籍上の性別変更において事実上必須となっている。これについては賛否両論あるが……。

なお、病気で手術した場合に睾丸や子宮を取り除くことで、結果的に去勢された状態になるということは現代でもある。
漫才コンビ・爆笑問題片玉ネタで度々イジられる田中裕二などが有名か。


【家畜の去勢】


家畜の去勢は、新石器時代にはもう始まっていたとされている。
家畜の品種改良の過程で品質が悪い、従順ではない個体は去勢を行うことで勝手に繁殖することを防ぎ、成長を促したり、ホルモン分泌を抑え攻撃性を減らし大人しくさせることができる。

去勢された牛(閹牛)や豚のような食肉用の家畜は去勢されていない個体よりも肉の臭みが抑えられより柔らかくなるため繁殖用でなければ必ずと言って良いほど去勢される。特に豚の方は仔豚の段階で去勢しないと肉に雄臭が出て品質が落ちるため重要である。
鶏のような小さい動物は精巣そのものも小さいので取り出すのが難しく去勢しないのが一般的だが、去勢された鶏は「シャポン」と呼ばれ高級食材として取引される。
沖縄県にはヤギを去勢する際に余る睾丸をスライスして醤油わさびを付けて食べる「ヤギの睾丸刺身」という郷土料理がある。結構美味しい(チン)味食材らしい。

馬(騸馬)やラクダのような乗用種や駄獣、ペットの犬や猫も扱いやすくするため、優秀な繁殖用の個体以外は基本的に去勢。宗教的に人間だけでなく家畜の去勢も良くないとされている地域では、できるだけ雄は育てず雌のみを育てて使うようにしていた。
ただしハムスターやネズミのような小型で身体に対して睾丸の占める割合が大きい動物の場合は睾丸にエネルギーを貯めている為、去勢すると却って寿命を縮めてしまうので去勢しない。
サラブレッドの場合、同じく性格面での扱いやすさを求め、繁殖戦線でも役目を終えて(広義の)功労馬扱いになるときに去勢するケースが多い。実例を挙げればタイキシャトルメイショウドトウウイニングチケットは功労馬扱いとなった時点で去勢したことが預かり牧場の広報さんから明言されている・いたし、元からかなり大人しい性格だったビワハヤヒデなんかも繁殖戦線からも引退した時点で去勢されている誰だ!これは羊のケースだろって言ったの!
一方でそういった年齢になると去勢手術というのは非常に身体への負担が大きいため、タイキフォーチュンのように行わなかったケースも普通に存在する。その最たるものがそのせいである種のワガママさも残ってしまったのが定説となっているヴェルサイユの破壊神閣下*1だろう。

なお、日本では家畜を去勢する習慣が明治時代になるまで無かった
歴史上早い段階で去勢の技術自体は伝来していたとされるが、宗教的に肉食がタブーとされ、それでいて米の栽培が可能な気候と豊富な水産資源を持つが山地が多く平坦な地形が少ない日本では、家畜を育てられる土地があるならそこで農業を行ったほうが良く、動物性たんぱく質が欲しいなら魚を捕った方が手っ取り早かったので大規模な畜産が発展しなかった影響とされている。また日本の高温多湿の気候では切断面が化膿しやすく近代以前の医学ではリスクが高かったのも去勢をしない理由を後押ししたとされる。
同じく米が栽培できるインドネシアを始めとした東南アジアでも、家畜を去勢する習慣は近代になるまで根付かなかった。
日本で宦官が取り入れられなかったのは、こういった背景があり奴隷と去勢が結びつかなかったためとされている。

義和団事件や日露戦争で日本が自国の軍馬の質の低さを痛感させられ、馬の去勢を促す「馬匹去勢法」が制定された結果、在来馬が色々と大変なことになってしまったがそれはまた別の話。
現在の日本競馬が他の国と比べて去勢をあまりせず「暴れ馬を乗りこなせるものほど優れた腕の持ち主」とされる価値観がある(海外だと安全上の理由からまず去勢する障害レースですら、日本では「とってない」馬が大多数。例としてオジュウチョウサンも取っていないせいで現役最後まで変に子供っぽいところがある*2欠点があった)のは、大規模な馬産が発展しなかったが故に品種改良で従順な個体同士のみをかけ合わせて馬を従順にする所まで到達できず、前述の理由で去勢が根付かなかった名残なのかもしれない。


【玉潰し】


SMプレイで男性の金玉を揉んだり、金玉を攻撃するものがあるが、その中でも一際過激なのが「玉潰し」である。
金玉は内臓が露出しているような状態で神経や血流も集中している場所であるため人間の急所の一つとなっており、ここを攻撃されると非常に痛いのだが、玉を責める痛みだけでは満足できなくなったものが行きつくのがこれである。
金玉は衝撃を受けると体内に引っ込むようになっていて、睾丸自体も陰嚢内を動き回ることで衝撃を逃がすことができるためちょっとやそっとの攻撃では破裂しない仕組みになっているが痛いかどうかは話が別である。
睾丸を完全に潰すにはかなり強い衝撃を広範囲に加えるか、専用の器具を使用しなければならない。
無論金玉が潰れてしまっては生殖ができなくなるので結果的に去勢された状態になる。
また、医療機器ではない道具を使用したり、不衛生な場所で行う事で感染症などのリスクも否定できない。

余談だが、アマゾン川には「パクー」と呼ばれる主に木の実を食べる魚が生息しており、パクーは硬い木の実も食べらるよう強靭な顎と人間のような歯を持っているのだが、川で体を洗っていた漁師がパクーに睾丸を噛み千切られ、そのまま出血多量で死亡したという例がある。
ただしパクーは雑食性だが前述の通り主に木の実を食べる魚であって積極的に人間を襲う魚ではない、サーファーをウミガメと間違えて襲ってしまうことがあるサメのように木の実と勘違いして睾丸を食べてしまった稀な例とされている。
しかし、睾丸を噛み千切ったと言うのは衝撃的で『ボールカッター』という異名がパクーに付き、同じアマゾン川原産のピラニアカンディルと並んで恐れられるようになってしまった。


追記・修正は素手による去勢を決行してからでお願いします。
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最終更新:2025年06月13日 00:56

*1 実はギムレットも「怒って壊す」や「イライラして物に当たる」ことはなく、むしろ「ものを蹴ると楽しいことを理解しているので蹴る」「単純にイタズラが好き」であることがヴェルサイユのスタッフさんから指摘されていることには留意。…もっとダメなパターンではないかと言ってしまえばそうなんだが

*2 同一内容の調教をずっと続けることを嫌う面があった。調教センターではそれで放馬騒動を起こしたこともある