ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0585 ドスと理想と長の資格 前
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ankoss
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・いつも通りご都合俺設定爆発だよ!!
・原作を匂わせる部分が少しだけあるよ!気をつけてね!!
・賢いゆっくりがいるよ!
・今回は前後編を前提にしてるよ!中途半端が嫌いな人は気をつけてね!!
では、ゆっくりしていってね!!!
ある山に、ゆっくりの群れが一つあった。
そこに住むゆっくりたちは皆非常に善いゆっくりであり、
麓にある人間の村とも良い関係を保っていた。
ここまで立派な群れになれたのは、長であるドスまりさのおかげである。
――――――――――
元は流れ者であったドスは、色々な事を知っていた。
雨風や洪水を防げる家の作り方や、効率の良い食料の貯め方。
ゆっくりの種によって役目を分け、作業効率を伸ばす方法。
食べれる物と食べれない物、毒物や薬になる草を見分ける知識。
それらを群れのゆっくりや生まれてくる子供に伝えるための教育制度。
これらは今までに他のドスに教わったり、自分で身につけたものらしい。
ドスの知識に触れて、今まで何も考えず勝手気ままに、
しかし毎日をギリギリのところで過ごしていたゆっくり達は,
すぐに喜んでドスを長に迎え入れた。ドスも快く承諾してくれた。
長となったドスはゆっくり達に、教育という形で生きるにあたって必要な知恵を全て施し、
それらを教わることで群れのゆっくりはどんどん善良な賢いゆっくりになっていった。
その中で、特に優秀だったぱちゅりーを相談役として補佐につけ、
学ぼうとせず、好き勝手に振舞おうとするゲスを徹底的に排除した。
それも追放という形をとらずに、死罪という形でドス自ら手を下して。
同属殺しはゆっくりできない、という倫理観を持っていた群れのゆっくり達も、
ドスの言う通りにして自分達の暮らしがまともになったという実績による信頼感や、
教育により群れや周囲にゲスが存在する事の危うさを学ぶ事で、それを黙認するようになった。
そして誰もが、自ら手を下したドスの潔い決断に頼もしさを覚え、一層信頼した。
こうしてドスは、己の思い通りの群れを作り上げた。
――――――――――
ドスまりさは満足していた。
ずっと夢見てた自分の理想の群れを、とうとう作る事ができたからだ。
生まれてこの方一人で生きてきたドスは「群れをゆっくりさせる長」になることがゆん生の目標だった。
それ故に理想の為、これまでに色々な知識を詰め込む事に苦労を惜しもうとしなかった。
その努力の結果自分の理想の群れが出来上がった。これが喜ばずにいられるものか。
が、しかし。理想の群れにする為の仕上げがまだ残っていた。
人間の存在である。
人間はゆっくりよりも遥かに強い。ドスならともかく、それ以外では歯が立たない。
よって、目をつけられない様にせねばならない。
人間の機嫌を損ねないために、ゲスを排除したり皆に教育を施したりと、
打てるだけの手は打って不安要素は徹底的に取り除いた。
が、それでもヘタすればあっという間に群れは壊滅してしまう。
自分は生き残れるかもしれないが、群れが無くなってしまってはどうしようもない。
ドスは悩みに悩んだ。
補佐役のぱちゅりーと相談した結果、“じょうやく”を結ぼう、ということになった。
ドスが見てきた群れでもやっていたところがある策である。
不安ではあるが、それ以上のものがドスには思いつかなかったのだ。
じょうやくの内容は以下の通りである。
・人間はゆっくりに、ゆっくりは人間に手を出さない。
・人間に迷惑をかけたゆっくりは人間がどうするかを決めれる。
・人間は山のものを自由に採ってもよい。
・ゆっくりが村に入る時は村の誰かに許可を得る。
以上。
これで足りないのなら、ドスはまだこちらが譲るつもりだった。
それだけ下手に出ても人間を敵に回したくはなかった。
群れのゆっくり達にも、じょうやくを結ぶ旨を伝えた。
こちらがかなり下手に出ることに少し不満そうにする者もいたが、
人間は怖いものだと教え込まれた事や、ドスの説得もあって最終的には皆承諾した。
そして、補佐ぱちゅりーを長代理として残し、
不安を隠しながらもドスは、一部の取り巻きと共に麓の村へと降りて行った―――
――――――――――
麓の村に着くと早速人間を見つけた。見張りでもしているのだろうか?
ドスは緊張しながらも、できるだけ友好的に見えるよう話しかけた。
「こんにちは、にんげんさん。ゆっくりしていってね!!!」
「うん?お前…でかいな。ドスか。村に何の用だ?」
「どすはこのむらのひとたちにおはなしがあってきたよ。
むらでいちばんえらいひとをよんできてほしいよ!」
「……少し待ってろ」
静かに言うと、人間は行ってしまった。
上手くいったのだろうか?あまり機嫌が良さそうには見えなかったが…
いずれにせよ、いきなり襲い掛かられないとも限らない。
辺りを警戒しながらドス達は人間を待った。
しばらくするとさっきの人間がもう一人若い人間を連れてやってきた。
「待たせた。ここに来たのはお前たちだけか?
ならば案内しよう。俺達についてこい。」
「う、うん。わかったよ。みんなもいっしょについてきてね!!」
「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」
村の広場らしきところに行くと、人間が沢山いた。
おそらくは村全員がいると思っていいだろう。
始めて見る人間の多さに、ドス以外はしーしーを漏らしていた。
ドスとて平気だったわけではない。長としての体面上、平気なように振舞っているだけだ。
そうしてる内に人だかりの中心にドス達は連れてこられ、完全に囲まれる。
これからどうなるのかとドスが内心怯えていると、人だかりから一人の人間が出てきた。
白く長い髪と髭をもった、鋭い眼つきの威厳がある老人だった。
「待たせたな。わしがこの村をまとめておる者じゃが。
…おぬしか?最近山に出来た群れの長は。」
「そ、そうだよ。・・・ゆ?なんでしってるの?」
「あのいつも騒がしい饅頭どもが急に一斉に落ち着きよるんでな。
そこにドスが来たとなれば、子供でも推測できるわい。
して、何のようじゃ?話があるとの事らしいが」
「うん!じつは、にんげんさんと“じょうやく”をむすびたくてここまできたんだよ!!」
「じょうやく?おお、条約のことか。ふむ…話してみせい」
それからドスは、自分の考えている事を村の皆に全て話した。
人間に迷惑をかけないよう、ゆっくり達を教育した事。
自分達に対立する意思はないこと。
じょうやくの内容に不満があるなら、まだこちらに譲る気があること。
一通り話し終えたドスは緊張でドキドキしながら、
何人かで集まって相談している村長の返答を待った。
少し経って、こちらを向いた村長が告げる。
「よいじゃろう。その条件で条約を結ぼうぞ」
「え?…いいの?」
「何を言っておる?条件を出したのはおぬしじゃろうに」
おかしそうに笑う村長だったが、ドスは訳がわからなかった。
当然文句の一つも言う筈だと思ってたのに、まさかこうも簡単に決まってしまうとは。
混乱するドスに、村長は言った。
「ふん、まだ文句でもつけられるとでも思うたか?そのような事はせん。
この条約文はおぬしが考えたのじゃろう?なかなかようできておる。
あの饅頭どもをおとなしくさせる手際といい、
おぬしの力量は信用しても良さそうじゃとわしらは判断した。
まあ、これを破った場合は…わかっておるじゃろうがな。
皆の者もわかったな!先程言うたこの者達との約束、くれぐれも違えるでないぞ!!」
村長の言葉に一斉にうなずく村民達。それを見て、ドス達は胸(?)を撫で下ろした。
「これでよいじゃろう。一々伝えて回るのも面倒なのでな。
こんな事もあろうかと、こういう形で出迎えさせてもらった。
どうやら怖がらせてしまった様じゃが、悪かった。」
「そんちょうさん……」
こうして至極あっさりと、じょうやくは締結された。
――――――――――
それからの人間との関係は、円満であった。
まず相互の利益になるとして、物々交換が定期的に行なわれた。
人間が見つけにくい山の幸であっても、ゆっくりなら見つけることが出来る場合が多々ある。
それを知った人間は、自分たちの作物やお菓子とそれを交換しようと持ちかけたのだ。
それらはゆっくりにとってもそこそこ価値があるものではあったが、
人間のおやさいさんやあまあまさんと交換できるなら、悪い話ではない。
ゆっくり達は、即座にその話に跳びついた。
図らずも、これが群れのゆっくりのストレス発散法になった。
いくら善良でも所詮はゆっくり。過度の締め付けはストレスを蓄積させるものだ。
それを知っていてもこれといった考えを持たないドスは、どうしようかと頭を悩ませていたが、
定期的に美味しい物が食べれるということがゆっくり達にとって最高の娯楽となった。
楽しみが無ければ生きていけないのはゆっくりも同じなのだ。
他にも、ドスや補佐役のぱちゅりーは話を通さなくても自由に村に入れる様になったり、
群れと村の交流がもっと深くなるようにといって、今よりも村に近い均された土地を群れに提供してくれたり、
れみりゃやふらんを効率よく撃退する方法を教えてくれたりと、村の人間たちはとても群れに良くしてくれた。
今度こそ、ドスまりさは幸せだった。
人間も優しくしてくれる。ゆっくり達もとてもゆっくりしている。
これ以上ない理想の群れに、ドスだけでなく皆がゆっくり出来ていた。
だが、どれだけ満たされてようとも、自然はそんな事には構わずに牙を剥く―――
――――――――――
じょうやくが結ばれてから、実に三年の時が流れた。
自然界においては世代交代のサイクルが早いゆっくりも、
この群れに限ってはそれは適応されなかった。
実に充実した生活を送っていた群れは控えめに、しかし順調に規模を大きくし、
時代を担う子供達も次々と育っていた。
しかし、幸せな生活を送ってから三年目の冬、群れはこの上ない危機を迎える。
気候の変化によりバランスが崩れたこの山の資源が激減。群れも食糧危機に陥ったのだ。
元はといえば、何故か昨年春が来るのが遅れたのが原因だった。
長く続く冬の為に緊急用に備蓄していた食糧をほとんど使い込み、
本来冬を凌ぐ分だけなら十分確保できたはずの食料も、本来の数分の一しか取れなかった。
このままでは到底全員で冬など乗り切れはしない。
ドスは頭を悩ませていた。
採った食料が無くなり、前回の冬の時点で残り僅かになった非常食に切り替えざるをえなくなって、
進退窮まったドスは最後の手段を使わねばならないところまで来ていた。
それは人間の里からの強奪である。
人間は環境が悪くてもある程度食べ物を自分たちで作る事ができる。
そりゃ豊かというわけではないだろうが、それを奪い取れば群れを助ける位はできるはずだ。
あんなにも自分たちに良くしてくれた人間達。
だが、それでも生きるためなら仕方がない。じょうやくどころではないのだ。
勿論正攻法で行っては勝ち目は無い。が、それでも勝算はあった。
まず、群れを揃えて人里に下りる。それも全員、チビ達も含めてだ。
今までほとんど少しのゆっくりにしか接してこなかった人間たちには、
例え力は無いと分かっていても大勢のゆっくりはそれなりに迫力があって見えるはず。要はハッタリだ。
群れのゆっくりが襲われる危険もあるが、そこでドスの出番だ。
ドスには分厚い皮と、大きな体と、何よりもドススパークという強力な武器がある。
人間にだって深手を負わせることができるドス最大の切り札だ。
本来なら誰かに向けて撃つ事はしないが、今回は話が別だ。
最初は威嚇。それでも駄目なら何人か村の誰かに掠めて当てて、痛い目にあってもらおう。
人間は本来一人一人では臆病な生き物だ。目の前で痛い目にあった人間を見れば、強く出れないだろう。
いざという時のために人間の観察を怠っていなかったドスは、人間の習性がある程度把握できていた。
そして群れに食料を運びこんだ後、きっと人間たちは報復に来るだろう。
だが今は空っぽの食糧備蓄用の洞窟を使えば、群れのゆっくりを何とか全員収める事ができる。
そして一つしかない入り口は、ドスが編成しておいた警備隊と共に死守する。
ここでも警備隊よりドスが頑張る事になる。
こちらには、使う機会の無かったドススパーク用のキノコが沢山あった。
それをあるだけ持って入り口に少し入ったところで待ち構え、人間が見えたところで撃つ。
これならドススパークの長い射程を活かせて、攻撃範囲の狭さはさほど気にならないはずだ。
後は、残った食料の少ない人間たちが襲う気がなくなるまで戦えば良い。
どちらかが滅びるまで戦う必要は無いのだ。ただ、報復するには高くつく相手だとさえ思わせれば。
もしかしたら、人間側に死者も出るかもしれない。
が、そんな事はドスには関係なかった。
そもそもこれはこちらにとっては生き残りをかけた戦いだ。
人間は食料が減っても向こうにだって保存食くらいはあるだろうし、
全滅するわけではないのだからこれくらいなら、とドスは考えていた。
――――――――――
ドスが決意を固めようとしたとき、補佐役のぱちゅりーがドスのおうちに飛び込んできた。
「どす~!きいて、どす!
ふゆをのりきるいいほうほうをおもいついたの!」
「なに?ぱちゅりー。どすもおもいついたんだけど、いちおういってみてよ」
「にんげんさんにさいていげんのしょくりょうをわけてもらうのよ!!」
「…ぱちゅりー。にんげんさんだってよゆうがあるわけじゃ…」
「むきゅ、それくらいわかってるわ!
でもぱちゅりーたちよりはよゆうがあるでしょ?」
「まあ…そうだね。」
「それにただでわけてもらうわけじゃないわ!
わけてもらうかわりにつぎにおやさいさんをつくるときなんかに、
むれのゆっくりでたくさんおてつだいするやくそくをするの。
いまのみんなならきっとやくにたてるはずよ。
これならやさしいにんげんさんたちは、うけてくれるかもしれないわ!!」
悪くは、ない。それどころかなかなか良い案だとも思う。
ぱちゅりーの言う通り、普通の人間ならともかくあのお人よし達ならこの案を受けるかもしれない。
だが―――
「だめだよ」
「むきゅっ!?どうして?」
「もしにんげんさんたちがうけいれてくれたとしても、
むれのみんながたすかるだけのたべものがもらえるとはかぎらないよ。
もらっておいてもんくをいうわけにはいかないしね」
「むきゅ……」
建前上そうは言ったが、実際にドスが考えていた事はまるで違った。
(それよりも、もしものことをおもえばうばったほうがかくじつにちがいないよ…)
つまるところドスは、人間を信用していなかったのだ。
――――――――――
各地を流れ色んな群れを見てきたドスは、当然人間と共生している群れも幾つか見た。
そしてそのうちの一つは、人間に滅ぼされた。
別に何が悪かったわけでもない。ただ、滅ぼされた。
ドスが見ていた限りではゆっくり達はみんなつつましく暮らしていただけだ。
人間にだって迷惑はかけていない。誰が困っていたわけでもない。
なのに条約も何もかも無視されて、一人残らず殺された。
群れから一足先に旅立ったドスは巻き込まれずに、隠れてその光景をただ見ていた。
泣き叫び、逃げ惑うゆっくり達。それを追いかけ容赦なく潰す人間達。
そして、その地獄の中心で吊るし上げられてなぶり殺しにされた、長のドスまりさ。
何故そのような事になったのかは、いまだに解らない。
だがあれを見れば、誰だって人間など信用できなくなる。
もちろん人間にだって善い者もいれば、ゲスもいるだろう。
そしてあの村の人たちはきっと善い人間だ。
しかしそれでも、あの村の人間が食料に困って群れを襲わないと、
こちらを警戒して群れを襲わないと誰が言い切れるのか。
何も見てない群れのゆっくり達の様にドスは人間を手放しで信用できなかった。
むしろ万が一の事を考えれば、ここで先手を打っておくべきだろう。
どうせ人間に関わる以外に群れが生き延びる道は無いのだ。
ならば自分の理想の群れのために自分の納得がいく形でやってみよう。そう思った。
あの驕り高ぶった人間どもから、自分が皆を守るのだとドスは心の中で息巻いていた。
――――――――――
代わりの案をと必死に頭を捻っているぱちゅりーに、ドスは自分の考えを伝えた。
ぱちゅりーは最初は反対したが、それ以外に方法が無いと言うと渋々頷いた。
後は群れのゆっくり達だけである。
「みんな、きいてほしいよ!!」
群れを一箇所に集めたドスは、堂々と言い放った。
「このままじゃもう、ごはんがなくてみんなしんじゃうよ!
…だから、にんげんさんのむらからうばうことにしたよ!!!」
一斉にざわめき立つゆっくり達。
「ゆ?どす、どういうこと!?」
「だれかからむりやりものをとるのは、わるいことなんだよ!
そんなこともわからないの!?どすがおしえてくれたんでしょ!!」
「それににんげんさんはとってもつよいよ!!れいむたちがぎゃくにやられちゃうよ!!」
「そんなごうとうみたいなまね、とかいはじゃないわ!!」
一斉にドスの考えは否定される。が、これくらいは想像の範囲内だ。
「だいじょうぶだよ!みんなでいけばにんげんさんはこわがるにちがいないし、
いざとなってもどすがいるからまもってあげるよ!!!」
「ぱ、ぱちゅりーはどうなの?ほんとにこれでいいの?」
「むきゅぅ…ほかにいいほうほうがおもいつかないの。
みんな、ごめんね…もりのけんじゃがきいてあきれるわ…」
「そんなぁ……」
「みんなってちびちゃんもつれていくの!?あぶないよ、そんなことできないよ!!」
「だからどすがちゃんとまもるよ!あんしんしてていいよ!!」
「もしせいこうしても、にんげんさんたちにしかえしされちゃうよ!」
「そのこともちゃんとかんがえてあるよ!もんだいないよ!」
「ちぇんたちがごはんとっちゃったらにんげんさんたちはどうなっちゃうの?
ゆっくりできなくなるよ。それでいいの?ちぇんにはわからないよ~」
「にんげんさんたちにはまだたくわえがあるからみんなしんだりはしないよ!わかってね!!」
「ちんぽちんぽちーんぽ!!びっぐまらぺにーす!!!」
「こうふんしすぎてなにいってるかわかんないよ!ちゃんとしゃべってね!!」
「ありすたち、にんげんさんにはいっぱいおせわになったわ!
おんをあだでかえすようなことして、どすははずかしくないの!?」
「……どすだってつらいんだよ。でもこうしなきゃみんなしんじゃうんだよ!
どすにはみんなをゆっくりさせるぎむがあるんだよ!
ほかにほうほうがないならしかたないでしょ!?にんげんさんのことなんかしらないよ!」
そして最終的に、群れのゆっくり達が折れた。
ドスの言う通りにやってきたおかげで今までやってこれたのだし、
何よりもドスは自分達のためにここまでやろうと言っているのだと思うと、
他の方法も思い浮かばないゆっくり達は、それ以上何も言えなかった。
かくして準備を万全にして、群れは皆で村へと降りていった。
――――――――――
子供も含めて百を超える大軍で村に押しかけ、村長を出すように言ったドスは、
村の入り口付近で山の茂みを背に待機していた。いざという時に逃げ易くするためだ。
しばらく待ってドスが焦れ始めると、村長が何人かの若者を連れてやってきた。
こちらにとっては好都合だ。人間は少ないほど話が進みやすい。
「…えらく大勢で来よったのう。何の用じゃ」
「にんげんさん。じつは、どすたちもうごはんがないよ。
このままじゃしんじゃうよ」
「誰だってそうじゃよ。わし等とて厳しいのは変わらん。
…で、何の用じゃ。回りくどいのは好かん。さっさと話せ」
「にんげんさんたちのごはんがほしいんだよ。
むれのみんながいきのびれるくらいはね。」
「何?馬鹿を言うな!そんな事をしてしまえば、わし等が危なくなるわい。
話はそれだけか。ならさっさと帰『ドゴォーン!!!』 ……」
「そういうわけにはいかないんだよ。このままじゃしんじゃうっていったでしょ?
…つぎはあてるよ。わかったらさっさとたべものをもってきてね。」
「条約はどうなった?元はといえばおぬし達が持ちかけてきた事じゃろうに」
「そんちょうさんわかってないね。いまはひじょうじたいだよ?
そんなこといってられないんだよ。
おたがいのいきのこりがかかってるときに“じょうやく”だなんて、
ほんとにこのむらのにんげんはおおあまだね!」
「他の者達はどうなのじゃ?どうやら納得してるわけではなさそうじゃが」
「むきゅん…ごめんなさい、にんげんさん……」
「みんなだってさんせいしてくれたよ。
もういいでしょ?これいじょうじかんかせぎしようとするなら、うちこむよ」
「……残念じゃよ」
「どすもだよ。こんなことがなければ、うまくやれるとおもってたのに」
「ふん、心にも無い事を…目はそう言うておらんぞ。…まあいい。
―――やれ。」
村長の合図と共に、ドスの口の中に何かが突き刺さった。
「…ゆ?……ぎゃあ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁぁ゛ぁ゛!!!
いだい゛!!いだいぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」
「どす!?どうしたの、どす!!」
「むきゅ!どす、しっかりして!!」
「あぁ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!うごげな゛いよお!どぼじでぇ!?
いだいよ゛!だれがだずげで!!」
その場から動く事も出来ずに悲鳴を上げ続けるドス。
その様子を冷ややかな目で見ていた村長は、大きな声で言い放った。
「今じゃ、皆の者!!こやつ等全て生かして捕らえよ!!一匹たりとも逃がすなよ!!」
合図と共に後ろの茂みや木陰から、隠れていた村の若者が大勢出てきた。
あまりに急な事に呆然とするゆっくり達。ドスはまだ悲鳴を上げている。
「むきゅ!?…みんなにげてーーーー!!!むぎゅん!!!」
言った直後に捕まったぱちゅりーの指示と同時に悲鳴を上げて逃げ始めるゆっくり達。
だが村人たちは、本当に一匹も逃がす気はなかった。
「いやぁぁ゛ぁ゛!!おちびちゃんだけでもにげぎゅ!!!」
「どおじでとおれないのぉ!?あ、あ…やべでぇぇえ゛ん゛!!!」
「みゃみゃーー!やめちぇね!たしゅけてあげぢぇぎょ!!」
「ありすは、ありすはどうなってもいいからほかのこたちは…
あぁ!おちびちゃん!!いやぁぁぁ!!やべでぇぇぇ!!」
「にゃんでぇぇぇ!?わ゛がらな゛いよぉぉぉ!!!」
「ち、ちーんぽぉ!かせーほうげぃ!!」
逃げようとするものの退路は完全に人間に塞がれ、それを抜けても見えない壁に阻まれた。
成す術の無いゆっくり達は、ただ嘆くだけである。
次々と群れのゆっくりは多少手荒ではあるが、生け捕りにされてゆく。
ドスはというとあまりの激痛に皆の悲鳴すらも頭に入らず、そのまま気絶した。
こうして、群れは一匹残らず人間に捕まった。
――――――――――
気絶してしまったドスが次に目覚めたのは、激痛によるものだった。
「・・・・・・う゛…あがぁぁぁぁ゛!!!いだい!な゛んでぇ!?」
「気がつきおったか…まあそれの上に立たされて、寝てはおれんか」
「ぞ、ぞんぢょうざんたぢ。なんでぇ…?」
「そのなんでが何を指すのかは知らんが、お前の今の状況の事を言うとるなら、
お前は気絶した後に荷車で連れてこられて、剣山を集めて固定した床に落とされたんじゃ。
身動きがとれんじゃろう?村から外れた小屋じゃから、好きなだけ叫ぶがよい」
確かに痛みで解らなかったが、動けない。
「うう゛…なんでどずがごんなにがんだんに…」
「吹き矢で唐辛子の粉末を練りこんだものを塗った針を口に撃って、
同時に以前博麗の巫女殿から頂いた、弱い妖怪の動きを縛る符を使ったんじゃよ。
護身用にと持っていたが、思わぬところで役に立ったわ」
村長は、まるで他人事のように淡々と答える。
「なんで、どずのかんがえでるごどが…」
「別にどうという事はあるまい。
貴様がこちらを信用せず、ずっとこちらを観察していたのと同じ。
我等も貴様らを信用しきってはおらんかった。気付かんとでも思ったか?」
「ぞ、ぞんなぁ…」
「貴様らが大勢で来た時点で察しはついたわ。
後はこっそりと時間をかけて皆を隠れさせ、合図と同時に貴様の動きを封じ、
先と同じく巫女殿から頂いた結界符を使い逃げ場を塞ぎ、捕らえただけじゃ」
「ど、どぼじでごんなごどずるのぉ……」
「これは異な事を言う。わしらは何もしておらんよ。
したのはお前。選んだのはお前じゃ。
貴様が言ったのであろう。これは生き残りがかかっていることなのだと。
わしらは自分が死なぬために貴様らを全員捕まえた。それだけじゃ」
「う゛ぅ゛・・・・・・ぞ、ぞうだ!み゛んなはぶじなの!?」
ドスはそれが気がかりだった。自分の群れが無くなってしまう!
「無事かは知らんが、全員生かしておる。死んだやつは一匹もおらん」
「よ、よがっだ…」
「愚かな事をしたのう。話はお前の補佐役から全て聞いた。
あやつの考えた案、悪くはなかった。あれを申し出ておれば前向きに考えてやったものを…」
「な゛、なら、せめでみんなをだずげであげで。むらを゛おぞうのはどずがかんがえだごどだがら、
みんな゛ばわるぐないんだよ゛。どずばどうなっでもいいがら、みんな゛はだずげで…」
そうだ。良い案だと言うならそれで皆だけは、何の咎も無い皆だけは助けて欲しい。
今回の事はドス一人が悪いのだ。この甘い人間達なら、受け入れてくれる。
ドスは藁にも縋るような思いだった。
だが、返ってきた答えは、無情なものだった。
「―――ならぬ。そのような都合の良い話があるか。」
「え?な゛…な゛んで……?」
あんまりな答えに呆けるドスに対して、村長は声を荒げた。
「何故じゃと…?そのような事も解らんのか、愚か者!!
貴様の決定は群れの総意。貴様の意思は群れ全体の意思!
皆の声を聞き、群れの行く末を決め、その責任を群れの先に立って全ての者と共に背負う!
それが長というものであり、群れを治めるという事じゃ!!
それすらも解らんと、このような事を軽々しく決めおったのか…この大たわけが!!
人の命を奪ってでも食料を奪うという事が長としての貴様の決定ならば、
我等も己が生き残る為に貴様らの全てを奪い尽くす。
無論誰一人として許すわけにはいかぬ。責任の所在は貴様ら群れ全てにあるのじゃからな。
先程貴様は我等が大甘だと言ったが、我等は別に甘い訳ではない。
これまでの事も、村に害が無かったからこそよ。何にせよ貴様らの選択に付き合っただけじゃ。
今回とて貴様らが友好的に来ていれば、話は違ったじゃろうにな……残念じゃ」
「あ…あぁ゛…」
ドスは何も言い返せなかった。
どう自分の心を取り繕おうとも、
自分の思う通りに群れを動かすのが長。群れは自分の理想を体現させるための物。
心の底ではそう思っていたドスには、何も言い返すことはできなかった。
もしも真に皆の事を考えていたなら、群れの事を想っていたならば、
自分が信用できないなどという理由だけでこのような事に踏み切りはしなかっただろうに。
「そもそも貴様が如何に図体がでかかろうが、権力があろうが、責任があろうが、命は命じゃ。
一つの命に価値の差も、代わりとなるほどの物も無いわ。
貴様の命一つで百以上の命を救おうなど、思い上がりも甚だしい。
…貴様は村の食料として役立ってもらう。そしてそれは他の者も同じ事じゃ。代わりは無い」
「あ゛ぁぁぁ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
いい気になって自分の好き勝手やった結果がこれだ。
どうしようもなくなったドスは、ただ叫ぶことしか出来なかった。
身動きもとれず、ただただ叫ぶドスに興味を失くしたように、村長達は小屋から出て行った。
こうして群れのゆっくり達の、ゆっくりとしての生は終わった。
これからは越冬のための食料として、道具として、無残な扱いを受ける事となる…
・なかがき?
又もや長くなってしまいそうだったので、
苦肉の策として前後に分けることにしました。
後、名前の件。まとめwiki見たら、ととあき(仮)とかなってました…
もう何でもいいんで後編上げるくらいには決めときます。
では、(いつになるか分からんけど)後編で!!
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・原作を匂わせる部分が少しだけあるよ!気をつけてね!!
・賢いゆっくりがいるよ!
・今回は前後編を前提にしてるよ!中途半端が嫌いな人は気をつけてね!!
では、ゆっくりしていってね!!!
ある山に、ゆっくりの群れが一つあった。
そこに住むゆっくりたちは皆非常に善いゆっくりであり、
麓にある人間の村とも良い関係を保っていた。
ここまで立派な群れになれたのは、長であるドスまりさのおかげである。
――――――――――
元は流れ者であったドスは、色々な事を知っていた。
雨風や洪水を防げる家の作り方や、効率の良い食料の貯め方。
ゆっくりの種によって役目を分け、作業効率を伸ばす方法。
食べれる物と食べれない物、毒物や薬になる草を見分ける知識。
それらを群れのゆっくりや生まれてくる子供に伝えるための教育制度。
これらは今までに他のドスに教わったり、自分で身につけたものらしい。
ドスの知識に触れて、今まで何も考えず勝手気ままに、
しかし毎日をギリギリのところで過ごしていたゆっくり達は,
すぐに喜んでドスを長に迎え入れた。ドスも快く承諾してくれた。
長となったドスはゆっくり達に、教育という形で生きるにあたって必要な知恵を全て施し、
それらを教わることで群れのゆっくりはどんどん善良な賢いゆっくりになっていった。
その中で、特に優秀だったぱちゅりーを相談役として補佐につけ、
学ぼうとせず、好き勝手に振舞おうとするゲスを徹底的に排除した。
それも追放という形をとらずに、死罪という形でドス自ら手を下して。
同属殺しはゆっくりできない、という倫理観を持っていた群れのゆっくり達も、
ドスの言う通りにして自分達の暮らしがまともになったという実績による信頼感や、
教育により群れや周囲にゲスが存在する事の危うさを学ぶ事で、それを黙認するようになった。
そして誰もが、自ら手を下したドスの潔い決断に頼もしさを覚え、一層信頼した。
こうしてドスは、己の思い通りの群れを作り上げた。
――――――――――
ドスまりさは満足していた。
ずっと夢見てた自分の理想の群れを、とうとう作る事ができたからだ。
生まれてこの方一人で生きてきたドスは「群れをゆっくりさせる長」になることがゆん生の目標だった。
それ故に理想の為、これまでに色々な知識を詰め込む事に苦労を惜しもうとしなかった。
その努力の結果自分の理想の群れが出来上がった。これが喜ばずにいられるものか。
が、しかし。理想の群れにする為の仕上げがまだ残っていた。
人間の存在である。
人間はゆっくりよりも遥かに強い。ドスならともかく、それ以外では歯が立たない。
よって、目をつけられない様にせねばならない。
人間の機嫌を損ねないために、ゲスを排除したり皆に教育を施したりと、
打てるだけの手は打って不安要素は徹底的に取り除いた。
が、それでもヘタすればあっという間に群れは壊滅してしまう。
自分は生き残れるかもしれないが、群れが無くなってしまってはどうしようもない。
ドスは悩みに悩んだ。
補佐役のぱちゅりーと相談した結果、“じょうやく”を結ぼう、ということになった。
ドスが見てきた群れでもやっていたところがある策である。
不安ではあるが、それ以上のものがドスには思いつかなかったのだ。
じょうやくの内容は以下の通りである。
・人間はゆっくりに、ゆっくりは人間に手を出さない。
・人間に迷惑をかけたゆっくりは人間がどうするかを決めれる。
・人間は山のものを自由に採ってもよい。
・ゆっくりが村に入る時は村の誰かに許可を得る。
以上。
これで足りないのなら、ドスはまだこちらが譲るつもりだった。
それだけ下手に出ても人間を敵に回したくはなかった。
群れのゆっくり達にも、じょうやくを結ぶ旨を伝えた。
こちらがかなり下手に出ることに少し不満そうにする者もいたが、
人間は怖いものだと教え込まれた事や、ドスの説得もあって最終的には皆承諾した。
そして、補佐ぱちゅりーを長代理として残し、
不安を隠しながらもドスは、一部の取り巻きと共に麓の村へと降りて行った―――
――――――――――
麓の村に着くと早速人間を見つけた。見張りでもしているのだろうか?
ドスは緊張しながらも、できるだけ友好的に見えるよう話しかけた。
「こんにちは、にんげんさん。ゆっくりしていってね!!!」
「うん?お前…でかいな。ドスか。村に何の用だ?」
「どすはこのむらのひとたちにおはなしがあってきたよ。
むらでいちばんえらいひとをよんできてほしいよ!」
「……少し待ってろ」
静かに言うと、人間は行ってしまった。
上手くいったのだろうか?あまり機嫌が良さそうには見えなかったが…
いずれにせよ、いきなり襲い掛かられないとも限らない。
辺りを警戒しながらドス達は人間を待った。
しばらくするとさっきの人間がもう一人若い人間を連れてやってきた。
「待たせた。ここに来たのはお前たちだけか?
ならば案内しよう。俺達についてこい。」
「う、うん。わかったよ。みんなもいっしょについてきてね!!」
「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」
村の広場らしきところに行くと、人間が沢山いた。
おそらくは村全員がいると思っていいだろう。
始めて見る人間の多さに、ドス以外はしーしーを漏らしていた。
ドスとて平気だったわけではない。長としての体面上、平気なように振舞っているだけだ。
そうしてる内に人だかりの中心にドス達は連れてこられ、完全に囲まれる。
これからどうなるのかとドスが内心怯えていると、人だかりから一人の人間が出てきた。
白く長い髪と髭をもった、鋭い眼つきの威厳がある老人だった。
「待たせたな。わしがこの村をまとめておる者じゃが。
…おぬしか?最近山に出来た群れの長は。」
「そ、そうだよ。・・・ゆ?なんでしってるの?」
「あのいつも騒がしい饅頭どもが急に一斉に落ち着きよるんでな。
そこにドスが来たとなれば、子供でも推測できるわい。
して、何のようじゃ?話があるとの事らしいが」
「うん!じつは、にんげんさんと“じょうやく”をむすびたくてここまできたんだよ!!」
「じょうやく?おお、条約のことか。ふむ…話してみせい」
それからドスは、自分の考えている事を村の皆に全て話した。
人間に迷惑をかけないよう、ゆっくり達を教育した事。
自分達に対立する意思はないこと。
じょうやくの内容に不満があるなら、まだこちらに譲る気があること。
一通り話し終えたドスは緊張でドキドキしながら、
何人かで集まって相談している村長の返答を待った。
少し経って、こちらを向いた村長が告げる。
「よいじゃろう。その条件で条約を結ぼうぞ」
「え?…いいの?」
「何を言っておる?条件を出したのはおぬしじゃろうに」
おかしそうに笑う村長だったが、ドスは訳がわからなかった。
当然文句の一つも言う筈だと思ってたのに、まさかこうも簡単に決まってしまうとは。
混乱するドスに、村長は言った。
「ふん、まだ文句でもつけられるとでも思うたか?そのような事はせん。
この条約文はおぬしが考えたのじゃろう?なかなかようできておる。
あの饅頭どもをおとなしくさせる手際といい、
おぬしの力量は信用しても良さそうじゃとわしらは判断した。
まあ、これを破った場合は…わかっておるじゃろうがな。
皆の者もわかったな!先程言うたこの者達との約束、くれぐれも違えるでないぞ!!」
村長の言葉に一斉にうなずく村民達。それを見て、ドス達は胸(?)を撫で下ろした。
「これでよいじゃろう。一々伝えて回るのも面倒なのでな。
こんな事もあろうかと、こういう形で出迎えさせてもらった。
どうやら怖がらせてしまった様じゃが、悪かった。」
「そんちょうさん……」
こうして至極あっさりと、じょうやくは締結された。
――――――――――
それからの人間との関係は、円満であった。
まず相互の利益になるとして、物々交換が定期的に行なわれた。
人間が見つけにくい山の幸であっても、ゆっくりなら見つけることが出来る場合が多々ある。
それを知った人間は、自分たちの作物やお菓子とそれを交換しようと持ちかけたのだ。
それらはゆっくりにとってもそこそこ価値があるものではあったが、
人間のおやさいさんやあまあまさんと交換できるなら、悪い話ではない。
ゆっくり達は、即座にその話に跳びついた。
図らずも、これが群れのゆっくりのストレス発散法になった。
いくら善良でも所詮はゆっくり。過度の締め付けはストレスを蓄積させるものだ。
それを知っていてもこれといった考えを持たないドスは、どうしようかと頭を悩ませていたが、
定期的に美味しい物が食べれるということがゆっくり達にとって最高の娯楽となった。
楽しみが無ければ生きていけないのはゆっくりも同じなのだ。
他にも、ドスや補佐役のぱちゅりーは話を通さなくても自由に村に入れる様になったり、
群れと村の交流がもっと深くなるようにといって、今よりも村に近い均された土地を群れに提供してくれたり、
れみりゃやふらんを効率よく撃退する方法を教えてくれたりと、村の人間たちはとても群れに良くしてくれた。
今度こそ、ドスまりさは幸せだった。
人間も優しくしてくれる。ゆっくり達もとてもゆっくりしている。
これ以上ない理想の群れに、ドスだけでなく皆がゆっくり出来ていた。
だが、どれだけ満たされてようとも、自然はそんな事には構わずに牙を剥く―――
――――――――――
じょうやくが結ばれてから、実に三年の時が流れた。
自然界においては世代交代のサイクルが早いゆっくりも、
この群れに限ってはそれは適応されなかった。
実に充実した生活を送っていた群れは控えめに、しかし順調に規模を大きくし、
時代を担う子供達も次々と育っていた。
しかし、幸せな生活を送ってから三年目の冬、群れはこの上ない危機を迎える。
気候の変化によりバランスが崩れたこの山の資源が激減。群れも食糧危機に陥ったのだ。
元はといえば、何故か昨年春が来るのが遅れたのが原因だった。
長く続く冬の為に緊急用に備蓄していた食糧をほとんど使い込み、
本来冬を凌ぐ分だけなら十分確保できたはずの食料も、本来の数分の一しか取れなかった。
このままでは到底全員で冬など乗り切れはしない。
ドスは頭を悩ませていた。
採った食料が無くなり、前回の冬の時点で残り僅かになった非常食に切り替えざるをえなくなって、
進退窮まったドスは最後の手段を使わねばならないところまで来ていた。
それは人間の里からの強奪である。
人間は環境が悪くてもある程度食べ物を自分たちで作る事ができる。
そりゃ豊かというわけではないだろうが、それを奪い取れば群れを助ける位はできるはずだ。
あんなにも自分たちに良くしてくれた人間達。
だが、それでも生きるためなら仕方がない。じょうやくどころではないのだ。
勿論正攻法で行っては勝ち目は無い。が、それでも勝算はあった。
まず、群れを揃えて人里に下りる。それも全員、チビ達も含めてだ。
今までほとんど少しのゆっくりにしか接してこなかった人間たちには、
例え力は無いと分かっていても大勢のゆっくりはそれなりに迫力があって見えるはず。要はハッタリだ。
群れのゆっくりが襲われる危険もあるが、そこでドスの出番だ。
ドスには分厚い皮と、大きな体と、何よりもドススパークという強力な武器がある。
人間にだって深手を負わせることができるドス最大の切り札だ。
本来なら誰かに向けて撃つ事はしないが、今回は話が別だ。
最初は威嚇。それでも駄目なら何人か村の誰かに掠めて当てて、痛い目にあってもらおう。
人間は本来一人一人では臆病な生き物だ。目の前で痛い目にあった人間を見れば、強く出れないだろう。
いざという時のために人間の観察を怠っていなかったドスは、人間の習性がある程度把握できていた。
そして群れに食料を運びこんだ後、きっと人間たちは報復に来るだろう。
だが今は空っぽの食糧備蓄用の洞窟を使えば、群れのゆっくりを何とか全員収める事ができる。
そして一つしかない入り口は、ドスが編成しておいた警備隊と共に死守する。
ここでも警備隊よりドスが頑張る事になる。
こちらには、使う機会の無かったドススパーク用のキノコが沢山あった。
それをあるだけ持って入り口に少し入ったところで待ち構え、人間が見えたところで撃つ。
これならドススパークの長い射程を活かせて、攻撃範囲の狭さはさほど気にならないはずだ。
後は、残った食料の少ない人間たちが襲う気がなくなるまで戦えば良い。
どちらかが滅びるまで戦う必要は無いのだ。ただ、報復するには高くつく相手だとさえ思わせれば。
もしかしたら、人間側に死者も出るかもしれない。
が、そんな事はドスには関係なかった。
そもそもこれはこちらにとっては生き残りをかけた戦いだ。
人間は食料が減っても向こうにだって保存食くらいはあるだろうし、
全滅するわけではないのだからこれくらいなら、とドスは考えていた。
――――――――――
ドスが決意を固めようとしたとき、補佐役のぱちゅりーがドスのおうちに飛び込んできた。
「どす~!きいて、どす!
ふゆをのりきるいいほうほうをおもいついたの!」
「なに?ぱちゅりー。どすもおもいついたんだけど、いちおういってみてよ」
「にんげんさんにさいていげんのしょくりょうをわけてもらうのよ!!」
「…ぱちゅりー。にんげんさんだってよゆうがあるわけじゃ…」
「むきゅ、それくらいわかってるわ!
でもぱちゅりーたちよりはよゆうがあるでしょ?」
「まあ…そうだね。」
「それにただでわけてもらうわけじゃないわ!
わけてもらうかわりにつぎにおやさいさんをつくるときなんかに、
むれのゆっくりでたくさんおてつだいするやくそくをするの。
いまのみんなならきっとやくにたてるはずよ。
これならやさしいにんげんさんたちは、うけてくれるかもしれないわ!!」
悪くは、ない。それどころかなかなか良い案だとも思う。
ぱちゅりーの言う通り、普通の人間ならともかくあのお人よし達ならこの案を受けるかもしれない。
だが―――
「だめだよ」
「むきゅっ!?どうして?」
「もしにんげんさんたちがうけいれてくれたとしても、
むれのみんながたすかるだけのたべものがもらえるとはかぎらないよ。
もらっておいてもんくをいうわけにはいかないしね」
「むきゅ……」
建前上そうは言ったが、実際にドスが考えていた事はまるで違った。
(それよりも、もしものことをおもえばうばったほうがかくじつにちがいないよ…)
つまるところドスは、人間を信用していなかったのだ。
――――――――――
各地を流れ色んな群れを見てきたドスは、当然人間と共生している群れも幾つか見た。
そしてそのうちの一つは、人間に滅ぼされた。
別に何が悪かったわけでもない。ただ、滅ぼされた。
ドスが見ていた限りではゆっくり達はみんなつつましく暮らしていただけだ。
人間にだって迷惑はかけていない。誰が困っていたわけでもない。
なのに条約も何もかも無視されて、一人残らず殺された。
群れから一足先に旅立ったドスは巻き込まれずに、隠れてその光景をただ見ていた。
泣き叫び、逃げ惑うゆっくり達。それを追いかけ容赦なく潰す人間達。
そして、その地獄の中心で吊るし上げられてなぶり殺しにされた、長のドスまりさ。
何故そのような事になったのかは、いまだに解らない。
だがあれを見れば、誰だって人間など信用できなくなる。
もちろん人間にだって善い者もいれば、ゲスもいるだろう。
そしてあの村の人たちはきっと善い人間だ。
しかしそれでも、あの村の人間が食料に困って群れを襲わないと、
こちらを警戒して群れを襲わないと誰が言い切れるのか。
何も見てない群れのゆっくり達の様にドスは人間を手放しで信用できなかった。
むしろ万が一の事を考えれば、ここで先手を打っておくべきだろう。
どうせ人間に関わる以外に群れが生き延びる道は無いのだ。
ならば自分の理想の群れのために自分の納得がいく形でやってみよう。そう思った。
あの驕り高ぶった人間どもから、自分が皆を守るのだとドスは心の中で息巻いていた。
――――――――――
代わりの案をと必死に頭を捻っているぱちゅりーに、ドスは自分の考えを伝えた。
ぱちゅりーは最初は反対したが、それ以外に方法が無いと言うと渋々頷いた。
後は群れのゆっくり達だけである。
「みんな、きいてほしいよ!!」
群れを一箇所に集めたドスは、堂々と言い放った。
「このままじゃもう、ごはんがなくてみんなしんじゃうよ!
…だから、にんげんさんのむらからうばうことにしたよ!!!」
一斉にざわめき立つゆっくり達。
「ゆ?どす、どういうこと!?」
「だれかからむりやりものをとるのは、わるいことなんだよ!
そんなこともわからないの!?どすがおしえてくれたんでしょ!!」
「それににんげんさんはとってもつよいよ!!れいむたちがぎゃくにやられちゃうよ!!」
「そんなごうとうみたいなまね、とかいはじゃないわ!!」
一斉にドスの考えは否定される。が、これくらいは想像の範囲内だ。
「だいじょうぶだよ!みんなでいけばにんげんさんはこわがるにちがいないし、
いざとなってもどすがいるからまもってあげるよ!!!」
「ぱ、ぱちゅりーはどうなの?ほんとにこれでいいの?」
「むきゅぅ…ほかにいいほうほうがおもいつかないの。
みんな、ごめんね…もりのけんじゃがきいてあきれるわ…」
「そんなぁ……」
「みんなってちびちゃんもつれていくの!?あぶないよ、そんなことできないよ!!」
「だからどすがちゃんとまもるよ!あんしんしてていいよ!!」
「もしせいこうしても、にんげんさんたちにしかえしされちゃうよ!」
「そのこともちゃんとかんがえてあるよ!もんだいないよ!」
「ちぇんたちがごはんとっちゃったらにんげんさんたちはどうなっちゃうの?
ゆっくりできなくなるよ。それでいいの?ちぇんにはわからないよ~」
「にんげんさんたちにはまだたくわえがあるからみんなしんだりはしないよ!わかってね!!」
「ちんぽちんぽちーんぽ!!びっぐまらぺにーす!!!」
「こうふんしすぎてなにいってるかわかんないよ!ちゃんとしゃべってね!!」
「ありすたち、にんげんさんにはいっぱいおせわになったわ!
おんをあだでかえすようなことして、どすははずかしくないの!?」
「……どすだってつらいんだよ。でもこうしなきゃみんなしんじゃうんだよ!
どすにはみんなをゆっくりさせるぎむがあるんだよ!
ほかにほうほうがないならしかたないでしょ!?にんげんさんのことなんかしらないよ!」
そして最終的に、群れのゆっくり達が折れた。
ドスの言う通りにやってきたおかげで今までやってこれたのだし、
何よりもドスは自分達のためにここまでやろうと言っているのだと思うと、
他の方法も思い浮かばないゆっくり達は、それ以上何も言えなかった。
かくして準備を万全にして、群れは皆で村へと降りていった。
――――――――――
子供も含めて百を超える大軍で村に押しかけ、村長を出すように言ったドスは、
村の入り口付近で山の茂みを背に待機していた。いざという時に逃げ易くするためだ。
しばらく待ってドスが焦れ始めると、村長が何人かの若者を連れてやってきた。
こちらにとっては好都合だ。人間は少ないほど話が進みやすい。
「…えらく大勢で来よったのう。何の用じゃ」
「にんげんさん。じつは、どすたちもうごはんがないよ。
このままじゃしんじゃうよ」
「誰だってそうじゃよ。わし等とて厳しいのは変わらん。
…で、何の用じゃ。回りくどいのは好かん。さっさと話せ」
「にんげんさんたちのごはんがほしいんだよ。
むれのみんながいきのびれるくらいはね。」
「何?馬鹿を言うな!そんな事をしてしまえば、わし等が危なくなるわい。
話はそれだけか。ならさっさと帰『ドゴォーン!!!』 ……」
「そういうわけにはいかないんだよ。このままじゃしんじゃうっていったでしょ?
…つぎはあてるよ。わかったらさっさとたべものをもってきてね。」
「条約はどうなった?元はといえばおぬし達が持ちかけてきた事じゃろうに」
「そんちょうさんわかってないね。いまはひじょうじたいだよ?
そんなこといってられないんだよ。
おたがいのいきのこりがかかってるときに“じょうやく”だなんて、
ほんとにこのむらのにんげんはおおあまだね!」
「他の者達はどうなのじゃ?どうやら納得してるわけではなさそうじゃが」
「むきゅん…ごめんなさい、にんげんさん……」
「みんなだってさんせいしてくれたよ。
もういいでしょ?これいじょうじかんかせぎしようとするなら、うちこむよ」
「……残念じゃよ」
「どすもだよ。こんなことがなければ、うまくやれるとおもってたのに」
「ふん、心にも無い事を…目はそう言うておらんぞ。…まあいい。
―――やれ。」
村長の合図と共に、ドスの口の中に何かが突き刺さった。
「…ゆ?……ぎゃあ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁぁ゛ぁ゛!!!
いだい゛!!いだいぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」
「どす!?どうしたの、どす!!」
「むきゅ!どす、しっかりして!!」
「あぁ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!うごげな゛いよお!どぼじでぇ!?
いだいよ゛!だれがだずげで!!」
その場から動く事も出来ずに悲鳴を上げ続けるドス。
その様子を冷ややかな目で見ていた村長は、大きな声で言い放った。
「今じゃ、皆の者!!こやつ等全て生かして捕らえよ!!一匹たりとも逃がすなよ!!」
合図と共に後ろの茂みや木陰から、隠れていた村の若者が大勢出てきた。
あまりに急な事に呆然とするゆっくり達。ドスはまだ悲鳴を上げている。
「むきゅ!?…みんなにげてーーーー!!!むぎゅん!!!」
言った直後に捕まったぱちゅりーの指示と同時に悲鳴を上げて逃げ始めるゆっくり達。
だが村人たちは、本当に一匹も逃がす気はなかった。
「いやぁぁ゛ぁ゛!!おちびちゃんだけでもにげぎゅ!!!」
「どおじでとおれないのぉ!?あ、あ…やべでぇぇえ゛ん゛!!!」
「みゃみゃーー!やめちぇね!たしゅけてあげぢぇぎょ!!」
「ありすは、ありすはどうなってもいいからほかのこたちは…
あぁ!おちびちゃん!!いやぁぁぁ!!やべでぇぇぇ!!」
「にゃんでぇぇぇ!?わ゛がらな゛いよぉぉぉ!!!」
「ち、ちーんぽぉ!かせーほうげぃ!!」
逃げようとするものの退路は完全に人間に塞がれ、それを抜けても見えない壁に阻まれた。
成す術の無いゆっくり達は、ただ嘆くだけである。
次々と群れのゆっくりは多少手荒ではあるが、生け捕りにされてゆく。
ドスはというとあまりの激痛に皆の悲鳴すらも頭に入らず、そのまま気絶した。
こうして、群れは一匹残らず人間に捕まった。
――――――――――
気絶してしまったドスが次に目覚めたのは、激痛によるものだった。
「・・・・・・う゛…あがぁぁぁぁ゛!!!いだい!な゛んでぇ!?」
「気がつきおったか…まあそれの上に立たされて、寝てはおれんか」
「ぞ、ぞんぢょうざんたぢ。なんでぇ…?」
「そのなんでが何を指すのかは知らんが、お前の今の状況の事を言うとるなら、
お前は気絶した後に荷車で連れてこられて、剣山を集めて固定した床に落とされたんじゃ。
身動きがとれんじゃろう?村から外れた小屋じゃから、好きなだけ叫ぶがよい」
確かに痛みで解らなかったが、動けない。
「うう゛…なんでどずがごんなにがんだんに…」
「吹き矢で唐辛子の粉末を練りこんだものを塗った針を口に撃って、
同時に以前博麗の巫女殿から頂いた、弱い妖怪の動きを縛る符を使ったんじゃよ。
護身用にと持っていたが、思わぬところで役に立ったわ」
村長は、まるで他人事のように淡々と答える。
「なんで、どずのかんがえでるごどが…」
「別にどうという事はあるまい。
貴様がこちらを信用せず、ずっとこちらを観察していたのと同じ。
我等も貴様らを信用しきってはおらんかった。気付かんとでも思ったか?」
「ぞ、ぞんなぁ…」
「貴様らが大勢で来た時点で察しはついたわ。
後はこっそりと時間をかけて皆を隠れさせ、合図と同時に貴様の動きを封じ、
先と同じく巫女殿から頂いた結界符を使い逃げ場を塞ぎ、捕らえただけじゃ」
「ど、どぼじでごんなごどずるのぉ……」
「これは異な事を言う。わしらは何もしておらんよ。
したのはお前。選んだのはお前じゃ。
貴様が言ったのであろう。これは生き残りがかかっていることなのだと。
わしらは自分が死なぬために貴様らを全員捕まえた。それだけじゃ」
「う゛ぅ゛・・・・・・ぞ、ぞうだ!み゛んなはぶじなの!?」
ドスはそれが気がかりだった。自分の群れが無くなってしまう!
「無事かは知らんが、全員生かしておる。死んだやつは一匹もおらん」
「よ、よがっだ…」
「愚かな事をしたのう。話はお前の補佐役から全て聞いた。
あやつの考えた案、悪くはなかった。あれを申し出ておれば前向きに考えてやったものを…」
「な゛、なら、せめでみんなをだずげであげで。むらを゛おぞうのはどずがかんがえだごどだがら、
みんな゛ばわるぐないんだよ゛。どずばどうなっでもいいがら、みんな゛はだずげで…」
そうだ。良い案だと言うならそれで皆だけは、何の咎も無い皆だけは助けて欲しい。
今回の事はドス一人が悪いのだ。この甘い人間達なら、受け入れてくれる。
ドスは藁にも縋るような思いだった。
だが、返ってきた答えは、無情なものだった。
「―――ならぬ。そのような都合の良い話があるか。」
「え?な゛…な゛んで……?」
あんまりな答えに呆けるドスに対して、村長は声を荒げた。
「何故じゃと…?そのような事も解らんのか、愚か者!!
貴様の決定は群れの総意。貴様の意思は群れ全体の意思!
皆の声を聞き、群れの行く末を決め、その責任を群れの先に立って全ての者と共に背負う!
それが長というものであり、群れを治めるという事じゃ!!
それすらも解らんと、このような事を軽々しく決めおったのか…この大たわけが!!
人の命を奪ってでも食料を奪うという事が長としての貴様の決定ならば、
我等も己が生き残る為に貴様らの全てを奪い尽くす。
無論誰一人として許すわけにはいかぬ。責任の所在は貴様ら群れ全てにあるのじゃからな。
先程貴様は我等が大甘だと言ったが、我等は別に甘い訳ではない。
これまでの事も、村に害が無かったからこそよ。何にせよ貴様らの選択に付き合っただけじゃ。
今回とて貴様らが友好的に来ていれば、話は違ったじゃろうにな……残念じゃ」
「あ…あぁ゛…」
ドスは何も言い返せなかった。
どう自分の心を取り繕おうとも、
自分の思う通りに群れを動かすのが長。群れは自分の理想を体現させるための物。
心の底ではそう思っていたドスには、何も言い返すことはできなかった。
もしも真に皆の事を考えていたなら、群れの事を想っていたならば、
自分が信用できないなどという理由だけでこのような事に踏み切りはしなかっただろうに。
「そもそも貴様が如何に図体がでかかろうが、権力があろうが、責任があろうが、命は命じゃ。
一つの命に価値の差も、代わりとなるほどの物も無いわ。
貴様の命一つで百以上の命を救おうなど、思い上がりも甚だしい。
…貴様は村の食料として役立ってもらう。そしてそれは他の者も同じ事じゃ。代わりは無い」
「あ゛ぁぁぁ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
いい気になって自分の好き勝手やった結果がこれだ。
どうしようもなくなったドスは、ただ叫ぶことしか出来なかった。
身動きもとれず、ただただ叫ぶドスに興味を失くしたように、村長達は小屋から出て行った。
こうして群れのゆっくり達の、ゆっくりとしての生は終わった。
これからは越冬のための食料として、道具として、無残な扱いを受ける事となる…
・なかがき?
又もや長くなってしまいそうだったので、
苦肉の策として前後に分けることにしました。
後、名前の件。まとめwiki見たら、ととあき(仮)とかなってました…
もう何でもいいんで後編上げるくらいには決めときます。
では、(いつになるか分からんけど)後編で!!
・過去作品
ふたば系ゆっくりいじめ 412 僕と『あの子』とゴミ饅頭と
ふたば系ゆっくりいじめ 446 俺とゲスと自業自得な餡子脳
ふたば系ゆっくりいじめ 460 弱虫まりさとほんとの勇気