ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2329 人間になったまりさ
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ankoss
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人間になったまりさ 22KB
虐待 野良ゆ 現代 虐待人間 独自設定
※独自設定垂れ流し
「おにいさん、ゆっくりしていってね!」
「あん?」
ある街の、人通りの少ない裏路地。そこを一人歩いていた男の前に、ゆっくりまりさが飛
び出してきた。
薄汚れたおぼうし。くすんだ金髪に、誇りにまみれた頬。ひとめで野良ゆっくりとわかる
風体のまりさだった。
まりさはブルブルと震えていた。男に怯えているのだ。
このまりさは知っている。人間とゆっくりとの絶対の力の差というものを、餡子脳なりに
理解している。
覚悟はしていた。だが、それでも震えは止まらない。なぜなら、まりさの前にいる男は、
普通の人間ではなかったからだ。
「チッ、糞饅頭が」
ゆっくりできない言葉。ゴミを見るような目。ゆっくりを生き物として認めない、見下し
きった態度。
だが、とまりさは歯をくいしばる。言わなくてはならない。みんなをゆっくりさせるため
、心に決めたあのことを。
「おにいさんにおねがいがあるよ!」
「へえ、言ってみやがれよ」
おにいさんは舌なめずりをした。まりさが何を言おうと、決してゆっくりさせない――そ
の意図が鈍い餡子脳でも理解できた。
だが、まりさの覚悟は並ではなかった。ぎゅっと目を閉じ、そして、ついに言った。
「ま、ま、まりさをにんげんさんにしてほしいよ!」
しん、と静寂があたりを覆った。まりさはしばらく待ったが、何も起こらない。
恐る恐る目を開けると、珍しいものが見えた。
あの恐ろしい男の、驚き口をぽかんと開ける、間抜けな顔だったのだ。
人間になったまりさ
「で……人間になりたいとか言ってたな」
「ゆ、ゆぐぅ……ぞ、ぞうでずぅ……」
まりさと男の邂逅から10分ほど後。あの路地の近くの公園。その一角のベンチ。男の座
る隣にまりさはいた。
ゆっくりではそんなに早くは移動できない。「いきなり変なこと言って驚かせるんじゃね
え!」と憤った男に、まりさはここまでサッカーボールのように蹴られながら迅速に運ば
れてきたのだった。
蹴られまくってまりさは顔中腫れ上がっている。それほどひどい有様でありながら、目が
潰れたり歯が折れたりといった致命傷は負っていない。まりさの話に興味を持った男が巧
みに加減したからである。
「どうして人間になりたいなんて考えた?」
「の、のらはたいへんなんでずぅ……みんなまいにぢゆっぐりでぎまぜんっ……!」
「そりゃま、そうだろうな」
男は軽い調子で肯定した。その態度とは逆に、まりさは野良生活の過酷さを思い出して涙
ぐんだ。
ゴミ捨て場を漁ってどうにかその日の食べ物を手に入れる。他のゆっくりとの競争になっ
たり、猫やカラスに襲われることもあり、満足に手に入らない事が多い。人間に見つかれ
ば命はない。
夏になれば暑さに喘ぎ、冬になれば寒さに震える。ダンボールのおうちがあればいいほう
。ほとんどのゆっくりがひとつところにとどまれず、人間に、雨に、野良犬に――様々な
街の脅威に怯えながら放浪する。
野良ゆっくりはちっともゆっくりできない。
「で、人間になってゆっくりしようってか? まったくお前らゆっくりは……」
「ちがいばずっ!」
「違う? なんだよお前、人間になって何をするつもりだよ?」
「まりざはにんげんざんになっで! みんなをかいゆっくりにじであげだいんでずっ!」
まりさの望み。それは、自分がゆっくりすることではない。
みんながゆっくりすることだ。
野良ゆっくりはゆっくりできない。だから、ゲスが多い。自分のゆっくりのために、他ゆ
んのゆっくりを奪ってしまう。そうでもしなければ生きていけない。
だが、飼いゆっくりは違う。飼いゆっくりあったかな人間のおうちで、いつでも好きなだ
けあまあまを食べられる。まさに究極のゆっくりしたゆっくり。野良ゆっくりはみな、飼
いゆっくりになることを夢見る。
しかし、どれだけ望もうと野良が飼いゆっくりにしてもらえることなどほとんどありえな
い。
「まりざがっ! にんげんざんになればっ! みんなをかいまずっ! それで! それで
っ! みんなにゆっぐじしてもらいたいんでずうううう!」
まりさはいつもみんながゆっくりできる方法を考えていた。そして、鈍い餡子脳はついに
妙案を思いついた。
野良を飼いゆっくりにしてくれる人間などいない。ならば、自分が人間になればいい。そ
うすればみんなを飼って、ゆっくりさせてあげることができる。
まりさの真剣な願いを聞き、男は……。
「あーはっはっはっ!」
爆笑した。
腹を抱え涙すら流し、笑いに笑った。思いがけない男の態度に、まりさは目を白黒して眺
めるばかり。
たっぷり10分以上笑い転げてから、男はようやくまりさに向き直った。
「いやあ、笑った笑った……お前おもしろいこと考えるなあ!」
「お、おもしろことじゃないよっ……まりさはしんけんにっ……」
「ああ、はいはい。お前、俺に怯えてたもんな。そんだけ蹴られまくって、それでもお願
いするくらいだから、本気だってのはよくわかるさ。で、なんで俺にそんなこと頼むんだ
?」
「お、おにいさんがっ、とってもつよいからっ!」
「強い?」
「おにいさんが、ゆっくりをいっぱいいっぱい『えいえんにゆっくり』させるのをみたよ
! そんなにつよいおにいさんなら、きっといろんなことをしっていて、まりさがにんげ
んさんになるほうほうもしってるっておもって……」
「へえ……お前、本当に本気なんだな……」
まりさは男のことを知っていた。かつて、男が沢山のゆっくりを虐待し殺すのを見ていた
。それも、一度や二度ではなかった。男は虐待お兄さんだった。
まりさは、人間とゆっくりの力の差を理解している。人間は、強い。だから凄い。そして
、ゆっくりを惨殺した男は、特に強い――すなわち、特に凄い人間だと思った。
だから、ゆっくりが人間になるなんていう、荒唐無稽にも思える方法を知っているのでは
ないかと思ったのだ。
虐待お兄さんである男の前に身を晒し、願いを言う。まりさは、まさに捨て身の覚悟を決
めていたのだ。
まりさの願いを受け、その意図を理解し、男は腕組みをして考え始めた。まりさはドキド
キと身体の中で餡子を巡らせながら、期待のこもった瞳で見つめた。
そして、ついに男はまりさに答えた。
「よし! いいだろう!」
「ゆ!?」
「本当はないしょのことなんだが、お前のその覚悟に免じて特別に教えてやろう。『ゆっ
くりが人間になる方法』をなっ!」
「ゆっくりーっ!」
まりさは顔中腫れあがった痛みも忘れて大喜びで跳ね回った。
これでみんなをゆっくりさせてあげられる! こんなにゆっくりできることはないっ!
まりさの心は今まさにゆっくりの頂点だった。
「まあ、落ち着け。まだ喜ぶのは早い」
「ゆゆ?」
「人間になるための道は長くて険しい。お前は耐えられるか?」
「ゆうう! まりさはにんげんさんになるためだったら、なんだってできるよ!」
「よし、じゃあ人間になる方法を教えてやろう。ただし、これは他のゆっくりには教えち
ゃだめだぞ。お前にだけ、特別に教えてやるんだからな」
「ゆ、ゆっくりりかいしたよ……!」
「それじゃあ教えてやる。ゆっくりが人間になる方法は……」
・
・
・
「ゆっくりしていってね!」
「ゆ? まりさ! ゆっくりしていってね!」
公園の隅につくられた、ダンボール箱を利用したゆっくりのおうち。そこに住む一匹のれ
いむが住んでいた。
そこに、あの人間になりたいまりさがやってきた。
「どうしたの、まりさ? もうすぐおひさまがゆっくりするよ?」
夜はれみりゃの活動時間だ。日も暮れようという今は、ほとんどの野良ゆっくりが自分の
おうちか、一夜の仮宿に決めた場所でゆっくりしている。
れいむの住んでいる場所はやや外れの場所にあり、この時間に他のゆっくりと会うことは
珍しいことだった。
「まりさ? どうしたの? なんだかゆっくりしてないよ?」
まりさは目を泳がせ、全身にじっとりと汗をかいている。夕日の加減でよくわからないが
、ほっぺたも真っ赤だ。
まりさとれいむは幼なじみだ。幼い頃から辛い野良の生活を過ごしてきた。
親しいゆっくりのおかしな様子に、れいむは心配そうに見つける。そして、まりさのおぼ
うしに気がついた。
「ゆ? まりさ、あたまにあたらしいおかざりさんつけたんだね! とってもゆっくり…
…」
「れいむ!」
れいむの言葉を遮り、まりさはゆっくりしていない様子から一転、満面の笑顔を見せた。
「と、とってもゆっくりできるぴかぴかさんをみつけたんだよ! れいむにみせたくて、
ゆっくりしないでいそいでもってきたんだよ!」
「ゆ? ぴかぴかさん?」
訝しげなれいむをよそに、まりさはおぼうしのなかに舌をのばした。
おぼうしをから取り出されたのは、細長いぴかぴかした棒だった。まりさは口にくわえて
掲げ、それをれいむに見せた。
夕日の紅い光を跳ねて輝くそれは、とてもゆっくりできるように見えた。
「ゆうう! すてきなぴかぴかさんだね!」
「もっとよくみてね!」
まりさがずい、と棒の先端をれいむの顔に突きつけた。れいむはゆっ、と一歩退いた。棒
の先端が尖っていて、怖かったからだ。
「ゆうう、ぴかぴかさんはゆっくりできるけど、さきっぽがとげとげでゆっくりできな…
…ゆぐうっ!?」
まりさが突然れいむの方に跳ね、ちゅっちゅするかのように近づいた。だが、実際にちゅ
っちゅしたのはまりさの唇ではなく口にくわえた棒――畳針だった。
畳針はれいむの目と目の間に刺さった。その鋭さにはゆっくりの皮も餡子ではまるで抵抗
できず、畳針はたやすくれいむの身体に深く侵入し、中枢餡をかすめた。
「ゆっ!?」
声をひとつ上げ、れいむは身体の自由が効かなくなった。畳針の先端にはゆっくりを眠ら
す薬――ラムネが塗られていたのだ。それが中枢餡に触れたことで、れいむは麻痺してし
まったのだ。
「れいむ、ごめんね、ごめんね……」
「っ……! っっ……!!」
れいむは必死に身体を動かそうとするが、ぴくりとも動かない。声一つ出すことすら出来
なかった。
(どぼじでごんなごどずるのおおおお!?」
幼なじみの突然の凶行に、れいむは混乱するばかりだった。
「ごめんねえ……」
謝りながら、まりさは舌を伸ばすと、れいむのりぼんをとりあげた。
そして、次にしたことは、れいむが全く想像しないことだった。
(れいむのおりぼんさん……!? どぼじで、どぼじで……!)
れいむが心のなかでどれほど叫ぼうと、まりさの「口の動き」は止まらない。
(どぼじでれいむのおりぼんたべぢゃうのおおおおおお!?)
ゆっくりは饅頭。食べ物だ。お飾りもまた例外ではなく、れいむ種のおりぼんは砂糖細工
だ。食べられないことはない。
だが、ゆっくりにとっておかざりは自分が自分である証。飢えのためやむをえず同族喰い
をする場合でも、おかざりを食べることはしない。ゆっくりが死ぬとおかざりは死臭を放
つようになるからだ。それに、ゆっくりは同族の死を弔うとき、おかざりを遺体の代わり
とする。それを食べるなどということは、ゆっくりにとって同族喰い以上の禁忌なのだ。
れいむが呆然とする前で、まりさはごっくんとなにかを飲み込んだ。
考えるまでもない。れいむのおりぼんは、完全に食べられてしまったのだ。
(ゆあああ……ああああ……)
命と同じくらい大切なおりぼんの喪失。幼なじみの信じられない行動に、れいむの餡子脳
は混乱の極みにあった。
「おにいさんのいったとおりだよ……さきにたべれば、『ししゅう』がしないからだいじ
ょうぶだったよ……」
だから、まりさの言葉の意味がわからない。「先に」と言ったことが何を意味するのか理
解出来ない。
だが、すぐにわかった。嫌でもわからされた。畳針を抜かれ、それでも麻痺が抜けない身
体に大きく開けた口が迫ったとき。れいむは、絶望と共に自分が「永遠にゆっくり」して
しまうことを悟った。
・
・
・
「おにいさん……いってきたよ……」
「おお、よくやったな。どれどれ……」
男とまりさが始めて出会った路地。そこにやってきたまりさを、男は迎えた。
「さあて、どれどれ……」
男はまりさに手を伸ばし、まりさにつけた「あたらしいおかざり」――小型の撮影カメラ
を取り、あらかじめ準備していたノートPCに接続した。
「おー、よく撮れてる。見てみろまりさ、ほらほらすげえぞ!」
ノートPCの画面では、カメラで撮影された映像が再生されていた。
そこには、れいむが写っていた。
まりさに食われ、その身をどんどん削られていくれいむの姿が写されていた。
「み、みたくないよ!」
「見るんだ、まりさ。なんのために最初にあのれいむを襲わせたと思ってる?」
「ゆうう……」
「お前がこれから躊躇わないようにするためだ。本当に覚悟を決めるためだ。なにしろお
前は、これからあと九十九匹ものゆっくりを喰わなくちゃならないんだからな」
男は微笑んだ。
「お前が人間になるために」
まりさは、男にゆっくりが人間になるための方法を訊ねた。
男の答えは、まりさが夢にも思わない凄惨な方法だった。
「ゆっくりが人間になるためには、ゆっくりを百匹喰わなくてはならない」
当然、まりさはそんなこと受け入れられなかった。
「う、うそだよ! そんなこと、あるわけないよ!」
「嘘じゃないさ。そもそもゆっくりがまともな方法で人間になれるわけがない。まりさ、
人間とゆっくり、どのくらいの差があるかわかるか?」
「ゆうう……わからないけど、きっとすっごくあるよ……」
「そう。人間一人になるためには、その凄い差を埋めなくちゃならない。そのために、足
りない分だけゆっくりを喰う。実に理にかなっているだろう?」
「でも……ゆっくりをたべるのは、とってもゆっくりできないことだよ……」
「まりさ。確かにお前が人間になるためには、たくさんのゆっくりを犠牲にしなくちゃい
けない。それはとてもゆっくりできないことだ。でも、考えてみろ。お前が人間になった
ら、犠牲になったゆっくりより、もっとたくさんのゆっくりをゆっくりさせてやれるんだ
」
「もっとたくさん……」
「そう。たくさん、だ!」
男のまりさでも理解できるよう分かりやすい言葉を使い、まりさを説得した。話の途中で
オレンジジュースで治療を受け、疲れただろうとあまあまを振舞われた。あまいチョコの
中には、ほろ苦くてチョコがなかったらゆっくりには食べられないだろう不思議なとろと
ろが入っていた。食べたら「かあっ」と胸が熱くなった。「ういすきーぼんぼん」とか言
うおかしだった。
その熱と、熱意のこもった男の言葉。まりさの餡子は、おしるこのように熱くなった。そ
の熱に浮かされるように、まりさはついに人間になるためゆっくりを喰らう決意をした。
そしてラムネを塗った畳針を渡され、男の指示通りに行動した。ゆっくりがあまり出歩か
ない夕方を選んだのも男だ。そして、まりさは……幼なじみのれいむを、喰らった。
ノートPCの画面の中では、まりさの行動が今も再生されている。もうれいむは頭の大半
を喰われ、片目ももうない。
今になって熱が引いてきた。そして、れいむの片目が自分を見ていた。瞳はこう語ってい
た。
「まりさ、どうしたこんなことするの」、と。
「ゆあああああああーっ!?」
まりさは今になって自分のしでかしたことの恐ろしさを知った。ゆっくりできない同族喰
い――それも、大切だった幼なじみのれいむを、自分は喰ってしまった。それも、あとか
たもなく、おかざりすら残さずに、だ。男がそう指示したからだ。まりさは熱にうかされ
ながらも忠実に従った。
「ゆげえ、ゆげえええええ!」
まりさは吐き気を覚えた。だが、男によって口は素早く閉じられた。
「まりさ。吐くな。そうしたら無駄になる」
「ゆぐぐぐ……!」
「幼なじみの死が、無駄になる」
「ゆっ……!?」
しばらく吐き気が襲ったが、まりさはどうにか耐え切った。
まりさが落ち着いたのを確認すると、男は口をおさえた手を離し、まりさの頭をなでた。
そのゆっくりした感触に、まりさはどうにか落ち着きを取り戻した。
「ゆふう、ゆふう、ゆふう……」
「よし、えらいぞまりさ。よく耐えた」
「ゆぐぅ……おにいざん……おにいざぁん……」
「人間になるまで、お前の面倒は見てやる。俺の家に連れて行ってやろう。今日はもう、
ゆっくり休め」
男に抱かれると、疲れが押し寄せてきた。まりさはそれに抵抗できず眠った。
眠る間際、幼なじみのれいむの悲しげな顔が、餡子脳の中に浮かんだ。
(ごめんね、れいむ……れいむにひどいことをしちゃったぶん、にんげんさんになって、
みんなをゆっくりさせてあげるよ……)
・
・
・
そして、まりさの人間になるための戦いが本格的に始まった。
まりさが野良ゆっくりの状況を調べ、男がその情報をもとに、どのゆっくりをどう襲うか
的確な指示をした。
襲うのは、基本的に一度に一匹。食べるときには必ずおぼうしにカメラを付け、男に報告
する。まりさには「百」という数字がわからない。だから男に管理してもらう必要があっ
た。
一回ゆっくりを食べるたびに、数日のインターバルが置かれた。
ゆっくりを連続して食べれば、まりさの身体が大きくなりすぎてしまう。そうなれば目立
って襲うのが難しくなる。
また、場所を変える必要もあった。野良ゆっくりが死ぬのは珍しくないし、跡形を残さな
い食べ方をしている。それでも同じ場所で繰り返せばまりさの同族喰いが発覚するおそれ
がある。場所を変えれば周囲の情報を得るために時間がかかる。
数日おきの同族喰い。それはまりさを飢えさせた。男が人間になるまで、ゆっくり以外を
口にすることを禁じたからだ。
ゆっくり一匹を喰らえば、成体ゆっくりのまりさでも通常は一週間程度は空腹にはならな
い。だが、ゆっくりのみを喰らうようになったまりさは、一日もすればおなかが空くよう
になった。男の許可が降りるまでまりさは耐えなくてはならなかった。
初めはためらうこともあった。だが、まりさは最初に幼なじみのれいむを手にかけた。途
中でやめればれいむの死が無駄になる。あとには引けない。それでも最初は謝りながら食
べていた。それもすぐにしなくなった。謝罪は意味が無い。どう理由をつけたところで同
族喰いは許されない罪だ。その贖いは、まりさが人間になることしかありえない。
なにより、飢えが余計な思考をさせなかった。
まりさは黙々と同族を喰い続けた。
喰うたびに自分の力が増すのを感じた。喰ったゆっくりの数が10を超えた頃には、れみ
りゃにだって負けないぐらいの力がついた。強くなるということはそれだけ「強い人間」
に近づくということだ。まりさはますます励んだ。
最初は男の用意した道具に頼っていたが、すぐに要らなくなった。強くなったまりさがゆ
っくりを狩るのは簡単だった。転ばせて、あんよの方から後頭部にかぶりついて、食いち
ぎればいい。こうすると、まずあんよが傷つくから跳ねることができなくなる。また、後
頭部にはゆっくりの喉の奥――発声器官がある。ここが傷つくことによって、ゆっくりは
声があげられなくなる。一撃で抵抗する力も助けを呼ぶ術も奪い、あとはゆっくりと喰え
ばばいい。むしろ殺さないように注意しなくてはならなかった。殺してしまえばおかざり
に死臭がつき、喰いづらくなる。何度か失敗したことはあったが、喰い残しはしなかった
。
やがてゆっくりの一家族程度なら、助けを呼ぶ暇も与えず喰らい尽くすことができるよう
になった。
相変わらず「百」という数字はよくわからなかったが、もうすぐまりさは人間になれそう
だと実感し始めていた。
そんなある日のことだった。
「おにいさん、ゆっくりただいま!」
「おかえり、まりさ」
「きょうもいっぱいたべてきたよ! おいしかったよ!」
「よしよし、よくやったな。じゃあいつものように確認だ」
同族喰いのあと、いつもまりさは男と一緒にゆっくりが喰われるさまを見る。最初は恐ろ
しく思えたものだが、今ではすっかり慣れた。最近ではむしろ見るのが楽しみになってい
た。なにしろ一回の同族喰いが終われば数日間飢えに耐えなくてはならない。映像を見直
すことで、おいしさを堪能しなおすのは飢えを紛らわすのに重要なことだった。人間にな
るための努力にすべてを捧げ続けるまりさの数少ない娯楽でもあった。
「よし、間違いないな」
「ゆ? どうしたの、おにいさん?」
「おめでとう、まりさ。ついに達成だ。お前は百匹のゆっくりを喰ったぞ」
「百」、と男は言った。
まりさの中に男の言葉がよみがえる。
「ゆっくりが人間になるためには、ゆっくりを百匹喰わなくてはならない」
ついに、達成した。あの悲願が叶ったのだ。だが、信じられない。実感がわかない。
「おにいさん、ほんとうに……」
「ああ、間違いない」
「まりさ、ほんとうに、『ひゃく』のゆっくりを、たべたの……?」
「ああ、喰ったさ。全部このノートPCに記録されている」
「ゆっくりーっ!」
まりさは歓喜の絶叫を上げた。
ついに! ついに! ついに! まりさが人間になるときが来たのだ!
「おにいさん、まりさにんげんさんになれるんだよね! なれるんだよね!」
「ああ、そうだ」
「いつなれるのかな!? すぐ!? もうすぐ!? ゆっくりしないではやくにんげんさ
んになりたいよ!」
「すぐって言うか、お前はもう人間だよ」
「……ゆ?」
まりさは男の言葉の意味がわからなかった。
――もう、人間だよ
男はそう言った。だからまりさはあたりをきょろきょろ見た。自分を見て、まわりを見た
。身体をくるりとまわしたり、ひねってみたり。いろいろ自分を確かめた。
だが、わからない。確かに男と初めて会った時より、身体はずっと丈夫になった。だけれ
ど、見た目は少々大きくなったぐらいで、普通のゆっくりまりさのままだ。
「……おにいさん、まりさどこもかわってないよ? まりさ、まだにんげんさんに……」
「まりさ。人間とゆっくりの一番の違いってなんだかわかるか?」
「ゆ……? いちばんの、ちがい?」
「そうだ。違いだ」
まりさはゆ~んと考えた。
「にんげんさんにはてあしがあるよ!」
「そうだな。でも、ゆっくりにだって胴付きがいる。人間だって事故で手足を失うことも
あるが、それでも人間は人間だ。手足の有無は絶対条件じゃない」
「にんげんさんはとってもつよいよ!」
「そうだな。強い。でも、強いゆっくりだっている。例えばどすまりさなんかは、人間一
人より力は強いよな? 強さってのは条件のひとつに過ぎないさ」
「じゃあじゃあ、にんげんさんはとってもかしこいよ!」
「そうだな。人間はゆっくりよりずっとずっと賢い。でもゆっくりの中にも賢いやつはい
るし、人間の中にだってどうしようもないバカだっている。賢さは人間の決定的な条件じ
ゃない」
「ゆ~ん……」
まりさはすっかり困ってしまった。餡子脳ではこれ以上の答えが出てきそうにない。
「わからないか、まりさ? いや、本当はお前も分かっているはずだ。今のお前と俺と出
会ったばかりの頃のお前。決定的に違うことがひとつある。それが答えだ」
「ゆううう!? おにいさん、まりさわからないよぅ……」
「難しく考えることはない。簡単なことだ」
「おにいさん! いじわるしないでおしえてね! まりさ、はやくにんげんになりたいよ
!」
「だからお前はもう人間になってるって」
「ゆうう!? どこがにんげんなの!?」
ふう、と男はため息をつくと、一言で簡単に答えを述べた。
「心が、人間だ」
その言葉に、まりさは震えた。
意味がわからない。理解出来ない。それなのに、ひどくゆっくりできない予感がする。そ
れがまりさを黙らせた。
沈黙するまりさをおもしろそうに眺めながら、おにいさんは語り始めた。
「人間とゆっくりの決定的な違いは簡単だ。『人間は、ゆっくりの命なんてなんとも思っ
ちゃいない』。ただそれだけだ。その心の在り方こそが、決定的な違いだ。人間にとって
ゆっくりなんて、よくて食べ物、悪くて生ごみ。ゆっくりは人間にとって、完全に、絶対
に、どうしようもなく下等な存在だ」
「ち、ちがうよ!」
「何が違う?」
まりさは迷った。なにも考えていなかった。それでも声を挙げずにはいられなかったのだ
。
混乱する思考の中、奇跡的に餡子脳が閃いた。
「そうだ! ゆっくりをともだちとおもってくれるにんげんさんがいるよ! ゆっくりを
かいゆっくりにしてくれる、やさしいにんげんさんがいるよ!」
そうだ、自分はそんな優しい人間になりたかったのだ。そのために今まで必死に努力して
いたのだ。
そんなまりさの必死な答えは、
「はっ」
しかし、男によって鼻で笑われた。
「優しい人間が、ゆっくりを飼う? ああそうさ、ゆっくりをペットとして飼う人間はい
るさ。でもなあ、まりさ。それは友達と思っているんじゃない。友達なら『飼う』んじゃ
ない。『いっしょに暮らす』って言うんだ。飼うってのは対等の相手に使う言葉じゃない
。相手が完全に自分の下だという前提で使う言葉だ。飼うなんて言葉を使ってる時点で、
すっげえ見下してるんだよ」
「そ、そんな……!」
「『人間になってゆっくりを飼いたい』なんて言うから話にのってやったんだ。『ゆっく
りを飼いたい』、だぜ? ゲスゆっくりが人間を奴隷呼ばわりすることがあるけどよ、お
前が言ったことはそれよりひどいことだ。お前に人間になる素質があったから俺は面倒を
みてやったってわけさ。理解できる?」
「そんな、そんな、そんああああああ!?」
男の言うことは、まりさには受け入れられないことだった。
だが、まりさの餡子脳でも理解できてしまった。男の言うことは、間違ってはいない。
確かにまりさは変わった。今ではもう、ゆっくりを喰らうことになんのためらいもない。
餡子の底で実感している。自分は男の言葉通り、本当に、まったくこれっぽっちも、ゆっ
くりの命に重さというものを感じていない。
これから先、どれほど親しい友人ができようと、どれほど愛しい番ができようと、どれほ
どかわいらしいおちびちゃんができようと、まりさはそれらの命の重さを感じることは出
来ないだろう。
ゲスゆっくりですら自分の家族や仲間の命くらい少しは大切に考える。同族だから、同じ
ゆっくりだからと考える。自分の命以外はなにもかも犠牲にするゲス中のゲスでも、自分
は特別なゆっくりだからと考える。『ゆっくり』というナマモノに命があると、価値ある
と思っている。。
だが、まりさは違う。
まりさはもう、ゆっくりという存在そのものに、そんな普通のゆっくりが抱くような価値
を感じない。
だってまりさは、百匹ものゆっくりを、食べ物として喰ったのだ。まりさにとって、ゆっ
くりはもう、ただの、食べ物に過ぎない。
自分の命にすら、価値を感じない。まりさは『ゆっくり』だから。
「じゃあどうずればいいの!? まりざはごれがらどうずればいいの!?」
「知るか。俺は約束を果たした。十分楽しませてくれたお前のことは潰さないでおいてや
る。だから、これからは一人で好きにしやがれ」
「ぞんなあああああ!!」
「ああ、お望みどおりゆっくりを飼えばいいじゃないか。心だけ人間になった、ま・り・
さ! あははははっ!」
笑いながら、男は立ち去ってしまった。
まりさはあまりのことに呆然となり、そこから一歩も動けなかった。
「まりざは……なんになっだの……? れいむは……なんのために……?」
まりさのつぶやきに答えてくれるものなどありはしなかった。
了
by触発あき
・過去作品
ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKI - 触発あきの作品集
http://www21.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/32.html
感想はこちらにいただけるとありがたいです
触発あき - ふたば系ゆっくりSS感想用掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278666597/l50
虐待 野良ゆ 現代 虐待人間 独自設定
※独自設定垂れ流し
「おにいさん、ゆっくりしていってね!」
「あん?」
ある街の、人通りの少ない裏路地。そこを一人歩いていた男の前に、ゆっくりまりさが飛
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まりさはブルブルと震えていた。男に怯えているのだ。
このまりさは知っている。人間とゆっくりとの絶対の力の差というものを、餡子脳なりに
理解している。
覚悟はしていた。だが、それでも震えは止まらない。なぜなら、まりさの前にいる男は、
普通の人間ではなかったからだ。
「チッ、糞饅頭が」
ゆっくりできない言葉。ゴミを見るような目。ゆっくりを生き物として認めない、見下し
きった態度。
だが、とまりさは歯をくいしばる。言わなくてはならない。みんなをゆっくりさせるため
、心に決めたあのことを。
「おにいさんにおねがいがあるよ!」
「へえ、言ってみやがれよ」
おにいさんは舌なめずりをした。まりさが何を言おうと、決してゆっくりさせない――そ
の意図が鈍い餡子脳でも理解できた。
だが、まりさの覚悟は並ではなかった。ぎゅっと目を閉じ、そして、ついに言った。
「ま、ま、まりさをにんげんさんにしてほしいよ!」
しん、と静寂があたりを覆った。まりさはしばらく待ったが、何も起こらない。
恐る恐る目を開けると、珍しいものが見えた。
あの恐ろしい男の、驚き口をぽかんと開ける、間抜けな顔だったのだ。
人間になったまりさ
「で……人間になりたいとか言ってたな」
「ゆ、ゆぐぅ……ぞ、ぞうでずぅ……」
まりさと男の邂逅から10分ほど後。あの路地の近くの公園。その一角のベンチ。男の座
る隣にまりさはいた。
ゆっくりではそんなに早くは移動できない。「いきなり変なこと言って驚かせるんじゃね
え!」と憤った男に、まりさはここまでサッカーボールのように蹴られながら迅速に運ば
れてきたのだった。
蹴られまくってまりさは顔中腫れ上がっている。それほどひどい有様でありながら、目が
潰れたり歯が折れたりといった致命傷は負っていない。まりさの話に興味を持った男が巧
みに加減したからである。
「どうして人間になりたいなんて考えた?」
「の、のらはたいへんなんでずぅ……みんなまいにぢゆっぐりでぎまぜんっ……!」
「そりゃま、そうだろうな」
男は軽い調子で肯定した。その態度とは逆に、まりさは野良生活の過酷さを思い出して涙
ぐんだ。
ゴミ捨て場を漁ってどうにかその日の食べ物を手に入れる。他のゆっくりとの競争になっ
たり、猫やカラスに襲われることもあり、満足に手に入らない事が多い。人間に見つかれ
ば命はない。
夏になれば暑さに喘ぎ、冬になれば寒さに震える。ダンボールのおうちがあればいいほう
。ほとんどのゆっくりがひとつところにとどまれず、人間に、雨に、野良犬に――様々な
街の脅威に怯えながら放浪する。
野良ゆっくりはちっともゆっくりできない。
「で、人間になってゆっくりしようってか? まったくお前らゆっくりは……」
「ちがいばずっ!」
「違う? なんだよお前、人間になって何をするつもりだよ?」
「まりざはにんげんざんになっで! みんなをかいゆっくりにじであげだいんでずっ!」
まりさの望み。それは、自分がゆっくりすることではない。
みんながゆっくりすることだ。
野良ゆっくりはゆっくりできない。だから、ゲスが多い。自分のゆっくりのために、他ゆ
んのゆっくりを奪ってしまう。そうでもしなければ生きていけない。
だが、飼いゆっくりは違う。飼いゆっくりあったかな人間のおうちで、いつでも好きなだ
けあまあまを食べられる。まさに究極のゆっくりしたゆっくり。野良ゆっくりはみな、飼
いゆっくりになることを夢見る。
しかし、どれだけ望もうと野良が飼いゆっくりにしてもらえることなどほとんどありえな
い。
「まりざがっ! にんげんざんになればっ! みんなをかいまずっ! それで! それで
っ! みんなにゆっぐじしてもらいたいんでずうううう!」
まりさはいつもみんながゆっくりできる方法を考えていた。そして、鈍い餡子脳はついに
妙案を思いついた。
野良を飼いゆっくりにしてくれる人間などいない。ならば、自分が人間になればいい。そ
うすればみんなを飼って、ゆっくりさせてあげることができる。
まりさの真剣な願いを聞き、男は……。
「あーはっはっはっ!」
爆笑した。
腹を抱え涙すら流し、笑いに笑った。思いがけない男の態度に、まりさは目を白黒して眺
めるばかり。
たっぷり10分以上笑い転げてから、男はようやくまりさに向き直った。
「いやあ、笑った笑った……お前おもしろいこと考えるなあ!」
「お、おもしろことじゃないよっ……まりさはしんけんにっ……」
「ああ、はいはい。お前、俺に怯えてたもんな。そんだけ蹴られまくって、それでもお願
いするくらいだから、本気だってのはよくわかるさ。で、なんで俺にそんなこと頼むんだ
?」
「お、おにいさんがっ、とってもつよいからっ!」
「強い?」
「おにいさんが、ゆっくりをいっぱいいっぱい『えいえんにゆっくり』させるのをみたよ
! そんなにつよいおにいさんなら、きっといろんなことをしっていて、まりさがにんげ
んさんになるほうほうもしってるっておもって……」
「へえ……お前、本当に本気なんだな……」
まりさは男のことを知っていた。かつて、男が沢山のゆっくりを虐待し殺すのを見ていた
。それも、一度や二度ではなかった。男は虐待お兄さんだった。
まりさは、人間とゆっくりの力の差を理解している。人間は、強い。だから凄い。そして
、ゆっくりを惨殺した男は、特に強い――すなわち、特に凄い人間だと思った。
だから、ゆっくりが人間になるなんていう、荒唐無稽にも思える方法を知っているのでは
ないかと思ったのだ。
虐待お兄さんである男の前に身を晒し、願いを言う。まりさは、まさに捨て身の覚悟を決
めていたのだ。
まりさの願いを受け、その意図を理解し、男は腕組みをして考え始めた。まりさはドキド
キと身体の中で餡子を巡らせながら、期待のこもった瞳で見つめた。
そして、ついに男はまりさに答えた。
「よし! いいだろう!」
「ゆ!?」
「本当はないしょのことなんだが、お前のその覚悟に免じて特別に教えてやろう。『ゆっ
くりが人間になる方法』をなっ!」
「ゆっくりーっ!」
まりさは顔中腫れあがった痛みも忘れて大喜びで跳ね回った。
これでみんなをゆっくりさせてあげられる! こんなにゆっくりできることはないっ!
まりさの心は今まさにゆっくりの頂点だった。
「まあ、落ち着け。まだ喜ぶのは早い」
「ゆゆ?」
「人間になるための道は長くて険しい。お前は耐えられるか?」
「ゆうう! まりさはにんげんさんになるためだったら、なんだってできるよ!」
「よし、じゃあ人間になる方法を教えてやろう。ただし、これは他のゆっくりには教えち
ゃだめだぞ。お前にだけ、特別に教えてやるんだからな」
「ゆ、ゆっくりりかいしたよ……!」
「それじゃあ教えてやる。ゆっくりが人間になる方法は……」
・
・
・
「ゆっくりしていってね!」
「ゆ? まりさ! ゆっくりしていってね!」
公園の隅につくられた、ダンボール箱を利用したゆっくりのおうち。そこに住む一匹のれ
いむが住んでいた。
そこに、あの人間になりたいまりさがやってきた。
「どうしたの、まりさ? もうすぐおひさまがゆっくりするよ?」
夜はれみりゃの活動時間だ。日も暮れようという今は、ほとんどの野良ゆっくりが自分の
おうちか、一夜の仮宿に決めた場所でゆっくりしている。
れいむの住んでいる場所はやや外れの場所にあり、この時間に他のゆっくりと会うことは
珍しいことだった。
「まりさ? どうしたの? なんだかゆっくりしてないよ?」
まりさは目を泳がせ、全身にじっとりと汗をかいている。夕日の加減でよくわからないが
、ほっぺたも真っ赤だ。
まりさとれいむは幼なじみだ。幼い頃から辛い野良の生活を過ごしてきた。
親しいゆっくりのおかしな様子に、れいむは心配そうに見つける。そして、まりさのおぼ
うしに気がついた。
「ゆ? まりさ、あたまにあたらしいおかざりさんつけたんだね! とってもゆっくり…
…」
「れいむ!」
れいむの言葉を遮り、まりさはゆっくりしていない様子から一転、満面の笑顔を見せた。
「と、とってもゆっくりできるぴかぴかさんをみつけたんだよ! れいむにみせたくて、
ゆっくりしないでいそいでもってきたんだよ!」
「ゆ? ぴかぴかさん?」
訝しげなれいむをよそに、まりさはおぼうしのなかに舌をのばした。
おぼうしをから取り出されたのは、細長いぴかぴかした棒だった。まりさは口にくわえて
掲げ、それをれいむに見せた。
夕日の紅い光を跳ねて輝くそれは、とてもゆっくりできるように見えた。
「ゆうう! すてきなぴかぴかさんだね!」
「もっとよくみてね!」
まりさがずい、と棒の先端をれいむの顔に突きつけた。れいむはゆっ、と一歩退いた。棒
の先端が尖っていて、怖かったからだ。
「ゆうう、ぴかぴかさんはゆっくりできるけど、さきっぽがとげとげでゆっくりできな…
…ゆぐうっ!?」
まりさが突然れいむの方に跳ね、ちゅっちゅするかのように近づいた。だが、実際にちゅ
っちゅしたのはまりさの唇ではなく口にくわえた棒――畳針だった。
畳針はれいむの目と目の間に刺さった。その鋭さにはゆっくりの皮も餡子ではまるで抵抗
できず、畳針はたやすくれいむの身体に深く侵入し、中枢餡をかすめた。
「ゆっ!?」
声をひとつ上げ、れいむは身体の自由が効かなくなった。畳針の先端にはゆっくりを眠ら
す薬――ラムネが塗られていたのだ。それが中枢餡に触れたことで、れいむは麻痺してし
まったのだ。
「れいむ、ごめんね、ごめんね……」
「っ……! っっ……!!」
れいむは必死に身体を動かそうとするが、ぴくりとも動かない。声一つ出すことすら出来
なかった。
(どぼじでごんなごどずるのおおおお!?」
幼なじみの突然の凶行に、れいむは混乱するばかりだった。
「ごめんねえ……」
謝りながら、まりさは舌を伸ばすと、れいむのりぼんをとりあげた。
そして、次にしたことは、れいむが全く想像しないことだった。
(れいむのおりぼんさん……!? どぼじで、どぼじで……!)
れいむが心のなかでどれほど叫ぼうと、まりさの「口の動き」は止まらない。
(どぼじでれいむのおりぼんたべぢゃうのおおおおおお!?)
ゆっくりは饅頭。食べ物だ。お飾りもまた例外ではなく、れいむ種のおりぼんは砂糖細工
だ。食べられないことはない。
だが、ゆっくりにとっておかざりは自分が自分である証。飢えのためやむをえず同族喰い
をする場合でも、おかざりを食べることはしない。ゆっくりが死ぬとおかざりは死臭を放
つようになるからだ。それに、ゆっくりは同族の死を弔うとき、おかざりを遺体の代わり
とする。それを食べるなどということは、ゆっくりにとって同族喰い以上の禁忌なのだ。
れいむが呆然とする前で、まりさはごっくんとなにかを飲み込んだ。
考えるまでもない。れいむのおりぼんは、完全に食べられてしまったのだ。
(ゆあああ……ああああ……)
命と同じくらい大切なおりぼんの喪失。幼なじみの信じられない行動に、れいむの餡子脳
は混乱の極みにあった。
「おにいさんのいったとおりだよ……さきにたべれば、『ししゅう』がしないからだいじ
ょうぶだったよ……」
だから、まりさの言葉の意味がわからない。「先に」と言ったことが何を意味するのか理
解出来ない。
だが、すぐにわかった。嫌でもわからされた。畳針を抜かれ、それでも麻痺が抜けない身
体に大きく開けた口が迫ったとき。れいむは、絶望と共に自分が「永遠にゆっくり」して
しまうことを悟った。
・
・
・
「おにいさん……いってきたよ……」
「おお、よくやったな。どれどれ……」
男とまりさが始めて出会った路地。そこにやってきたまりさを、男は迎えた。
「さあて、どれどれ……」
男はまりさに手を伸ばし、まりさにつけた「あたらしいおかざり」――小型の撮影カメラ
を取り、あらかじめ準備していたノートPCに接続した。
「おー、よく撮れてる。見てみろまりさ、ほらほらすげえぞ!」
ノートPCの画面では、カメラで撮影された映像が再生されていた。
そこには、れいむが写っていた。
まりさに食われ、その身をどんどん削られていくれいむの姿が写されていた。
「み、みたくないよ!」
「見るんだ、まりさ。なんのために最初にあのれいむを襲わせたと思ってる?」
「ゆうう……」
「お前がこれから躊躇わないようにするためだ。本当に覚悟を決めるためだ。なにしろお
前は、これからあと九十九匹ものゆっくりを喰わなくちゃならないんだからな」
男は微笑んだ。
「お前が人間になるために」
まりさは、男にゆっくりが人間になるための方法を訊ねた。
男の答えは、まりさが夢にも思わない凄惨な方法だった。
「ゆっくりが人間になるためには、ゆっくりを百匹喰わなくてはならない」
当然、まりさはそんなこと受け入れられなかった。
「う、うそだよ! そんなこと、あるわけないよ!」
「嘘じゃないさ。そもそもゆっくりがまともな方法で人間になれるわけがない。まりさ、
人間とゆっくり、どのくらいの差があるかわかるか?」
「ゆうう……わからないけど、きっとすっごくあるよ……」
「そう。人間一人になるためには、その凄い差を埋めなくちゃならない。そのために、足
りない分だけゆっくりを喰う。実に理にかなっているだろう?」
「でも……ゆっくりをたべるのは、とってもゆっくりできないことだよ……」
「まりさ。確かにお前が人間になるためには、たくさんのゆっくりを犠牲にしなくちゃい
けない。それはとてもゆっくりできないことだ。でも、考えてみろ。お前が人間になった
ら、犠牲になったゆっくりより、もっとたくさんのゆっくりをゆっくりさせてやれるんだ
」
「もっとたくさん……」
「そう。たくさん、だ!」
男のまりさでも理解できるよう分かりやすい言葉を使い、まりさを説得した。話の途中で
オレンジジュースで治療を受け、疲れただろうとあまあまを振舞われた。あまいチョコの
中には、ほろ苦くてチョコがなかったらゆっくりには食べられないだろう不思議なとろと
ろが入っていた。食べたら「かあっ」と胸が熱くなった。「ういすきーぼんぼん」とか言
うおかしだった。
その熱と、熱意のこもった男の言葉。まりさの餡子は、おしるこのように熱くなった。そ
の熱に浮かされるように、まりさはついに人間になるためゆっくりを喰らう決意をした。
そしてラムネを塗った畳針を渡され、男の指示通りに行動した。ゆっくりがあまり出歩か
ない夕方を選んだのも男だ。そして、まりさは……幼なじみのれいむを、喰らった。
ノートPCの画面の中では、まりさの行動が今も再生されている。もうれいむは頭の大半
を喰われ、片目ももうない。
今になって熱が引いてきた。そして、れいむの片目が自分を見ていた。瞳はこう語ってい
た。
「まりさ、どうしたこんなことするの」、と。
「ゆあああああああーっ!?」
まりさは今になって自分のしでかしたことの恐ろしさを知った。ゆっくりできない同族喰
い――それも、大切だった幼なじみのれいむを、自分は喰ってしまった。それも、あとか
たもなく、おかざりすら残さずに、だ。男がそう指示したからだ。まりさは熱にうかされ
ながらも忠実に従った。
「ゆげえ、ゆげえええええ!」
まりさは吐き気を覚えた。だが、男によって口は素早く閉じられた。
「まりさ。吐くな。そうしたら無駄になる」
「ゆぐぐぐ……!」
「幼なじみの死が、無駄になる」
「ゆっ……!?」
しばらく吐き気が襲ったが、まりさはどうにか耐え切った。
まりさが落ち着いたのを確認すると、男は口をおさえた手を離し、まりさの頭をなでた。
そのゆっくりした感触に、まりさはどうにか落ち着きを取り戻した。
「ゆふう、ゆふう、ゆふう……」
「よし、えらいぞまりさ。よく耐えた」
「ゆぐぅ……おにいざん……おにいざぁん……」
「人間になるまで、お前の面倒は見てやる。俺の家に連れて行ってやろう。今日はもう、
ゆっくり休め」
男に抱かれると、疲れが押し寄せてきた。まりさはそれに抵抗できず眠った。
眠る間際、幼なじみのれいむの悲しげな顔が、餡子脳の中に浮かんだ。
(ごめんね、れいむ……れいむにひどいことをしちゃったぶん、にんげんさんになって、
みんなをゆっくりさせてあげるよ……)
・
・
・
そして、まりさの人間になるための戦いが本格的に始まった。
まりさが野良ゆっくりの状況を調べ、男がその情報をもとに、どのゆっくりをどう襲うか
的確な指示をした。
襲うのは、基本的に一度に一匹。食べるときには必ずおぼうしにカメラを付け、男に報告
する。まりさには「百」という数字がわからない。だから男に管理してもらう必要があっ
た。
一回ゆっくりを食べるたびに、数日のインターバルが置かれた。
ゆっくりを連続して食べれば、まりさの身体が大きくなりすぎてしまう。そうなれば目立
って襲うのが難しくなる。
また、場所を変える必要もあった。野良ゆっくりが死ぬのは珍しくないし、跡形を残さな
い食べ方をしている。それでも同じ場所で繰り返せばまりさの同族喰いが発覚するおそれ
がある。場所を変えれば周囲の情報を得るために時間がかかる。
数日おきの同族喰い。それはまりさを飢えさせた。男が人間になるまで、ゆっくり以外を
口にすることを禁じたからだ。
ゆっくり一匹を喰らえば、成体ゆっくりのまりさでも通常は一週間程度は空腹にはならな
い。だが、ゆっくりのみを喰らうようになったまりさは、一日もすればおなかが空くよう
になった。男の許可が降りるまでまりさは耐えなくてはならなかった。
初めはためらうこともあった。だが、まりさは最初に幼なじみのれいむを手にかけた。途
中でやめればれいむの死が無駄になる。あとには引けない。それでも最初は謝りながら食
べていた。それもすぐにしなくなった。謝罪は意味が無い。どう理由をつけたところで同
族喰いは許されない罪だ。その贖いは、まりさが人間になることしかありえない。
なにより、飢えが余計な思考をさせなかった。
まりさは黙々と同族を喰い続けた。
喰うたびに自分の力が増すのを感じた。喰ったゆっくりの数が10を超えた頃には、れみ
りゃにだって負けないぐらいの力がついた。強くなるということはそれだけ「強い人間」
に近づくということだ。まりさはますます励んだ。
最初は男の用意した道具に頼っていたが、すぐに要らなくなった。強くなったまりさがゆ
っくりを狩るのは簡単だった。転ばせて、あんよの方から後頭部にかぶりついて、食いち
ぎればいい。こうすると、まずあんよが傷つくから跳ねることができなくなる。また、後
頭部にはゆっくりの喉の奥――発声器官がある。ここが傷つくことによって、ゆっくりは
声があげられなくなる。一撃で抵抗する力も助けを呼ぶ術も奪い、あとはゆっくりと喰え
ばばいい。むしろ殺さないように注意しなくてはならなかった。殺してしまえばおかざり
に死臭がつき、喰いづらくなる。何度か失敗したことはあったが、喰い残しはしなかった
。
やがてゆっくりの一家族程度なら、助けを呼ぶ暇も与えず喰らい尽くすことができるよう
になった。
相変わらず「百」という数字はよくわからなかったが、もうすぐまりさは人間になれそう
だと実感し始めていた。
そんなある日のことだった。
「おにいさん、ゆっくりただいま!」
「おかえり、まりさ」
「きょうもいっぱいたべてきたよ! おいしかったよ!」
「よしよし、よくやったな。じゃあいつものように確認だ」
同族喰いのあと、いつもまりさは男と一緒にゆっくりが喰われるさまを見る。最初は恐ろ
しく思えたものだが、今ではすっかり慣れた。最近ではむしろ見るのが楽しみになってい
た。なにしろ一回の同族喰いが終われば数日間飢えに耐えなくてはならない。映像を見直
すことで、おいしさを堪能しなおすのは飢えを紛らわすのに重要なことだった。人間にな
るための努力にすべてを捧げ続けるまりさの数少ない娯楽でもあった。
「よし、間違いないな」
「ゆ? どうしたの、おにいさん?」
「おめでとう、まりさ。ついに達成だ。お前は百匹のゆっくりを喰ったぞ」
「百」、と男は言った。
まりさの中に男の言葉がよみがえる。
「ゆっくりが人間になるためには、ゆっくりを百匹喰わなくてはならない」
ついに、達成した。あの悲願が叶ったのだ。だが、信じられない。実感がわかない。
「おにいさん、ほんとうに……」
「ああ、間違いない」
「まりさ、ほんとうに、『ひゃく』のゆっくりを、たべたの……?」
「ああ、喰ったさ。全部このノートPCに記録されている」
「ゆっくりーっ!」
まりさは歓喜の絶叫を上げた。
ついに! ついに! ついに! まりさが人間になるときが来たのだ!
「おにいさん、まりさにんげんさんになれるんだよね! なれるんだよね!」
「ああ、そうだ」
「いつなれるのかな!? すぐ!? もうすぐ!? ゆっくりしないではやくにんげんさ
んになりたいよ!」
「すぐって言うか、お前はもう人間だよ」
「……ゆ?」
まりさは男の言葉の意味がわからなかった。
――もう、人間だよ
男はそう言った。だからまりさはあたりをきょろきょろ見た。自分を見て、まわりを見た
。身体をくるりとまわしたり、ひねってみたり。いろいろ自分を確かめた。
だが、わからない。確かに男と初めて会った時より、身体はずっと丈夫になった。だけれ
ど、見た目は少々大きくなったぐらいで、普通のゆっくりまりさのままだ。
「……おにいさん、まりさどこもかわってないよ? まりさ、まだにんげんさんに……」
「まりさ。人間とゆっくりの一番の違いってなんだかわかるか?」
「ゆ……? いちばんの、ちがい?」
「そうだ。違いだ」
まりさはゆ~んと考えた。
「にんげんさんにはてあしがあるよ!」
「そうだな。でも、ゆっくりにだって胴付きがいる。人間だって事故で手足を失うことも
あるが、それでも人間は人間だ。手足の有無は絶対条件じゃない」
「にんげんさんはとってもつよいよ!」
「そうだな。強い。でも、強いゆっくりだっている。例えばどすまりさなんかは、人間一
人より力は強いよな? 強さってのは条件のひとつに過ぎないさ」
「じゃあじゃあ、にんげんさんはとってもかしこいよ!」
「そうだな。人間はゆっくりよりずっとずっと賢い。でもゆっくりの中にも賢いやつはい
るし、人間の中にだってどうしようもないバカだっている。賢さは人間の決定的な条件じ
ゃない」
「ゆ~ん……」
まりさはすっかり困ってしまった。餡子脳ではこれ以上の答えが出てきそうにない。
「わからないか、まりさ? いや、本当はお前も分かっているはずだ。今のお前と俺と出
会ったばかりの頃のお前。決定的に違うことがひとつある。それが答えだ」
「ゆううう!? おにいさん、まりさわからないよぅ……」
「難しく考えることはない。簡単なことだ」
「おにいさん! いじわるしないでおしえてね! まりさ、はやくにんげんになりたいよ
!」
「だからお前はもう人間になってるって」
「ゆうう!? どこがにんげんなの!?」
ふう、と男はため息をつくと、一言で簡単に答えを述べた。
「心が、人間だ」
その言葉に、まりさは震えた。
意味がわからない。理解出来ない。それなのに、ひどくゆっくりできない予感がする。そ
れがまりさを黙らせた。
沈黙するまりさをおもしろそうに眺めながら、おにいさんは語り始めた。
「人間とゆっくりの決定的な違いは簡単だ。『人間は、ゆっくりの命なんてなんとも思っ
ちゃいない』。ただそれだけだ。その心の在り方こそが、決定的な違いだ。人間にとって
ゆっくりなんて、よくて食べ物、悪くて生ごみ。ゆっくりは人間にとって、完全に、絶対
に、どうしようもなく下等な存在だ」
「ち、ちがうよ!」
「何が違う?」
まりさは迷った。なにも考えていなかった。それでも声を挙げずにはいられなかったのだ
。
混乱する思考の中、奇跡的に餡子脳が閃いた。
「そうだ! ゆっくりをともだちとおもってくれるにんげんさんがいるよ! ゆっくりを
かいゆっくりにしてくれる、やさしいにんげんさんがいるよ!」
そうだ、自分はそんな優しい人間になりたかったのだ。そのために今まで必死に努力して
いたのだ。
そんなまりさの必死な答えは、
「はっ」
しかし、男によって鼻で笑われた。
「優しい人間が、ゆっくりを飼う? ああそうさ、ゆっくりをペットとして飼う人間はい
るさ。でもなあ、まりさ。それは友達と思っているんじゃない。友達なら『飼う』んじゃ
ない。『いっしょに暮らす』って言うんだ。飼うってのは対等の相手に使う言葉じゃない
。相手が完全に自分の下だという前提で使う言葉だ。飼うなんて言葉を使ってる時点で、
すっげえ見下してるんだよ」
「そ、そんな……!」
「『人間になってゆっくりを飼いたい』なんて言うから話にのってやったんだ。『ゆっく
りを飼いたい』、だぜ? ゲスゆっくりが人間を奴隷呼ばわりすることがあるけどよ、お
前が言ったことはそれよりひどいことだ。お前に人間になる素質があったから俺は面倒を
みてやったってわけさ。理解できる?」
「そんな、そんな、そんああああああ!?」
男の言うことは、まりさには受け入れられないことだった。
だが、まりさの餡子脳でも理解できてしまった。男の言うことは、間違ってはいない。
確かにまりさは変わった。今ではもう、ゆっくりを喰らうことになんのためらいもない。
餡子の底で実感している。自分は男の言葉通り、本当に、まったくこれっぽっちも、ゆっ
くりの命に重さというものを感じていない。
これから先、どれほど親しい友人ができようと、どれほど愛しい番ができようと、どれほ
どかわいらしいおちびちゃんができようと、まりさはそれらの命の重さを感じることは出
来ないだろう。
ゲスゆっくりですら自分の家族や仲間の命くらい少しは大切に考える。同族だから、同じ
ゆっくりだからと考える。自分の命以外はなにもかも犠牲にするゲス中のゲスでも、自分
は特別なゆっくりだからと考える。『ゆっくり』というナマモノに命があると、価値ある
と思っている。。
だが、まりさは違う。
まりさはもう、ゆっくりという存在そのものに、そんな普通のゆっくりが抱くような価値
を感じない。
だってまりさは、百匹ものゆっくりを、食べ物として喰ったのだ。まりさにとって、ゆっ
くりはもう、ただの、食べ物に過ぎない。
自分の命にすら、価値を感じない。まりさは『ゆっくり』だから。
「じゃあどうずればいいの!? まりざはごれがらどうずればいいの!?」
「知るか。俺は約束を果たした。十分楽しませてくれたお前のことは潰さないでおいてや
る。だから、これからは一人で好きにしやがれ」
「ぞんなあああああ!!」
「ああ、お望みどおりゆっくりを飼えばいいじゃないか。心だけ人間になった、ま・り・
さ! あははははっ!」
笑いながら、男は立ち去ってしまった。
まりさはあまりのことに呆然となり、そこから一歩も動けなかった。
「まりざは……なんになっだの……? れいむは……なんのために……?」
まりさのつぶやきに答えてくれるものなどありはしなかった。
了
by触発あき
・過去作品
ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKI - 触発あきの作品集
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感想はこちらにいただけるとありがたいです
触発あき - ふたば系ゆっくりSS感想用掲示板
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