ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1139 餡娘ちゃんに花束を
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ankoss
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【はじめに】
このSSはフィクションです。
実在のものとは関係ないし、或いは他人の空似です。
餡娘ちゃん生誕記念と聞いて、カッとして書いた。
ハートフルものだし、絵師作家様方の創作物もお借りしているし、今は謝罪している。
【本編】
ふたばの森の近くに、変わった集落がある。
そこでは、ゆっくりと人間が共存していた。
小さいながらもメインストリートとなっている通りを、男と饅頭が走り抜ける。
「ヒャッハー! ゆっくりは虐待だー!」
「やめてね! かわいいかわいい、れいむをゆるしてね!」
「ヒャッハー! 絶対に許さねえ!」
大通りに面した、藁葺きの家。
その縁側で、女がありすを膝の上に乗せて和んでいる。
「平和ねー」
「とかいはねー」
「あら、鬼威惨が駆けてくわ」
「ヒャッハー! 走れ走れー!」
「お、お、おねーさん、ゆっくりしないでたすけてね!」
「れいむ、頑張ってねー」
「ゆがーん!」
れいむを追い掛け回す鬼威惨の側を、飼いまりさが通り過ぎる。
男は、白黒饅頭には目もくれない。
飼いまりさの向こうから、三輪バイクに乗った老人がやってきた。
バイクはリヤカーのようなものを引いていて、そこからは良い匂いが漂ってくる。
「おじさん、れみりゃまん、くれなのぜ!」
「はいはい。お使いかい? えらいね」
「ゆん! おだいは、おぼうしのなかなのぜ!」
老人は、まりさの帽子の中からタッパーを取り出す。
そして容器の中の小銭と、ほっかほかの蒸しれみりゃを入れ替えた。
「はい、ヤケドには気を付けるんだよ」
「ゆっくりありがとうのぜ! あちちちち・・・」
飼いまりさが、ぴょんぴょん跳ねながら来た道を戻る。
蒸し饅頭売りの側に、今度は縁側にいた女がやってくる。
「おじさん、まりさまんある?」
「はいはい。おいしく蒸し上がってるよ」
別に、まりさやありすが特別扱いを受けているわけではないのだ。
この村ではゆ虐派も愛で派も、そしてゆっくり達も、それなりに穏かに暮らしていける。
それは、集落を治めている者のおかげであった。
この村の長の名前は、餡娘ちゃん。
幼い見た目とは裏腹に、その手腕によって集落を取り仕切る敏腕少女である。
『餡娘ちゃんに花束を』 (作・二行)
餡娘ちゃんの朝は早い。
早いというより、昼も夜もなく働いているという印象だ。
村人村ゆんの要望を元に、彼女は様々な施設を作る。
人間饅頭問わず、住民は皆食いしん坊なので、作る大半は食料庫だ。
倉には納める種類によって、『とかいは』『どろわあず』『あんこばなし』等と名付けられている。
最近では『あんこばなし』のSSが溢れ返って、ある住民がさらなる保管庫を作っていた。
餡娘ちゃんは他にも会議場や遊び場などを建設する。
それらは豊臣秀吉の一夜城の如く、いつのまにか出来ていたりする。
その度に人々は、驚きと共に感謝を述べるのである。
だが、感謝を忘れたものというのは、時や場所を選ばす湧いて出る。
「けっけっけっ。こんなもの俺は気にいらねえなあ! 捨てちまうとするか!」
「むきゃきゃきゃ、さいきんは、まどうしょとよべるものがないわね!」
ゲス人間と賢者(笑)のコンビが、食料庫を荒らしている。
何かと文句を付けては、倉の中のものを潰したり、しーしーをかけて回る暴虐ぶりだ。
「ゆっ! げすがあばれてるよ!」
「いけない、餡娘ちゃんに知らせないと」
1匹と1人の目撃者が走り去る。
間もなく、小さなまりさを連れた餡娘ちゃんが、荒し被害を受けている倉に到着した。
「むきゃ? あんこちゃんよ」
「おうおうおう、餡娘ちゃんよー。俺達はつまんねえものを制裁しているだけだからよ。
村長さんは村長さんの仕事に戻って、俺達をもっとゆっくりさせてくれよ」
餡娘ちゃんは、無言で抱えていたチビまりさを放り出した。
小まりさはぽよんぽよんと、ゲスコンビの元へ近付いていく。
「おいおいおい、虐待しろってか、餡娘ちゃん」
「むきゃーっ! ようしゃなくやっちゃうのよ、おにーさん!」
「そりゃそりゃそりゃ!」
手を伸ばし、前のめりになってゲス人間が襲い掛かる。
チビまりさはそれをかわすこともなく、逆に男の指先に噛み付く。
そして。
「え?」
得体の知れない口の力で、ゲスを倉の外へ投げ飛ばした。
「むきゅきゅっ! まって、おにーさん!」
慌てて外のお仲間の元へ飛び出していくゲスぱちゅりー。
ゲス人間は顔面を地にこすり付けて悶絶していた。
チビまりさもその後を追い、ゲスに対峙する。
「やいやいやい、何てことするんだ糞袋!」
「むきゅきゅきゅ。こーかいするがいいわ、これからおにーさんのほんきを・・・」
2つのゲスの視線が、上がった。
小さかったはずのまりさは、みるみるうちに大きくなり、見上げるほどの大きさになった。
それは正しく、ドスまりさ。餡娘ちゃんが飼っているまりさの、真の姿である。
「やややあ、ドスまりさ。今日はいい天気ですね」
「むきゅきゅん。はばないすでー・・・」
ドスまりさは高く舞い上がり、哀れなゲスを大きな影で包み込んだ。
断末魔より力強く、巨大あんよの音が響いた。
ゲスぱちゅりーは単なるシミと化し、ゲス人間も完全に失神していた。
伸びている男の腕を餡娘ちゃんがつかむ。
元の大きさとなった飼いまりさと共に、彼女は村の外れに消えた。
それから先、ゲス男がたどった結末を知るものはいない。
まさか違法性のある仕置きをやるわけではないだろう。
分かっているのは、この村で彼の姿を見ることは2度となかった、ということだけである。
村から一歩出ると、そこはふたばの森だ。
それは、豊かな恵みと様々な珍獣が待ち受けている楽園。
誰しもがエンジョイ&エキサイティングを求めて、ここを訪れる。
森に来ると、鬼威惨・悪姐惨は虐用ゆっくりを使って、アウトドアな虐待に挑戦する。
愛で人間は野生ゆっくりと戯れたり、食料集めに精を出す。
鬼威惨に餌集めを頼むと、ゆっくり用の籠に唐辛子を入れたりするので、任せられない。
虐待派の村での仕事は、専ら建設業になっていた。
さて、普段なら森の中に悲鳴や喜びの鳴き声がこだまする所である。
しかし今日ばかりは違っていた。
餡娘ちゃんが、虐待派と愛護派の代表と一緒に、2人の男と向かい合っていたのである。
男というのは、端的に言えば細いのと太いの。
細かく描写すれば、細い方は貧弱な男の見本ともいうべきゴボウ野郎である。
太い方は、飛べそうもないただの豚といった感じだ。
「村の皆さんに集まって頂いたのは、他でもありません」
細いのが丁寧な口調で切り出した。
しかしその目には、明らかな軽蔑の色が見て取れる。
「皆さんには、ふたばの森に入って欲しくはないんです」
「何言ってるんですか? ここは、誰だって訪れていいはずでしょう?」
「ヒャッハー! ふたばはフリーダムだぜー!」
愛で派と虐派が抗弁する様子を、餡娘ちゃんは黙って聞いていた。
やり取りに割り込んだのは、脂ぎったもう1人の男。
「ゆっくりとか、わけわかんねーよ。キモイから消えてくれよ」
「どういう意味ですか?」
「ゆっくりと戯れる村の皆さんには、としあきの資格が無い、ということです」
としあきとは、ふたばの森を訪れる者の総称である。
由来は各自ググろう。
「ヒャッハー! ふたばの掟はただひとつのハズだぜー!」
「そうです。エンジョイ&エキサイティング。私達はそれを守り、楽しんでいます!」
「虐厨が口聞くんじゃねえよ」
「私は愛で派です!」
「やれやれ。私共も困ってるんですよ。あなた達のせいで、森がすっかり狭くなってしまって」
「ヒャッハー! 俺達は縄張りは守ってるぜー!」
「いるだけで邪魔っつってるんだよ、このハゲ!」
「ギャッハー! ハゲとモヒカンは別腹だぜ!」
「ともかく! ふたばの森のことは、森の主達が決めることです。
我々を呼びつけて恫喝紛いのことをやっても、全く無意味ですよ」
「あなた方の言い分はよく分かりました。では、森の主にお伺いを立てることにしましょう」
「まあ、きっと無駄足ですけどね。我々がここにいる。それが、答えなんですから」
「ふん・・・」
「ヒャッハー! おととい来やがれー!」
凸凹コンビは、唾を吐きながら森の奥へと帰っていった。
村の3人も、ゆっくり達と一緒に家路に着く。
餡娘ちゃんは、最後まで口を開くこともなく、何かを考え込んでいるようだった。
それからしばらく経った、ある朝。
ふたばの森に、火の手が上がった。
炎は森の自然を焼き尽くし、珍しい生き物達も犠牲になった。
ふたばに定住していたゆっくり達も、その大半は焼き饅頭となって果てた。
「ゆんやぁぁぁ! れいむのかわいいおちびちゃんたちがぁぁぁ!」
「おねえちゃぁぁぁん!」
「ああ、ふたばの森が消えていく・・・」
「あんなにゆっくりしたゆっくり達だったのに・・・」
ゆっくりや愛で派は、犠牲になった自然やゆっくりに涙を流した。
「ヒャッハー! 俺らを差し置いて虐殺とは頂けないぜー!」
「ギャッハー! 明日のサバイバルアマギリマッチがー!」
虐待派も、炎の容赦ない虐殺ぶりとプレイの幅が狭まることに落涙した。
追い討ちをかけるように、ふたば周辺にある噂が飛び交った。
餡娘ちゃんの村の人間が、森に火を付けたというのだ。
例の愛で派と虐待派の代表が、噂を流している者を探す。
案の定、あの時やり合った細いのと太いのが、焼け跡に立って熱弁を振るっていた。
「これは全て、あの頭のおかしい村の連中の仕業なんです!
ふたば焼き討ちなんて恐ろしいことができるのは、あの社会不適合者達だけです!」
「あいつらは、自分の仕業だってバレたくなくて、あちこち火を付けて回ったんだ!
ならばこちらも、餡娘とかいうクソガキの村を、襲ってやろうじゃないか!」
言ってることは、無茶苦茶だった。
それは聴衆にも分かるらしく、誰もがしらっとした視線を向けている。
彼らはふたばという遊び場がなくなったので、ヒマ潰しに来ているだけらしい。
それを知ってか知らずか、凸凹はさらにヒートアップしていく。
「皆さん分かりますか、これは自由に対する挑戦ですよ!
今ここで奴らを根絶やしにしなければ、またふたばは荒らされるんですよ!」
「あいつらは、どいつもこいつも犯罪者だ! 犯罪者を殺して何が悪い!」
「いい加減にしなさい。流石のとしあき達も引いてるじゃないですか」
「ヒャッハー! 人間虐待はゆっくりできないぜー」
愛で派はゴボウの前に、虐待派は飛べない豚の前に立ち、視線をぶつける。
「出ました! 皆さん、これがクズ村のクズ人間ですよ!」
「としあきの敵だ! としあきの敵だ!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり」
「何がゆっくりですか! あんな気持ちの悪い生首の、どこが良いんですか!」
「存在丸ごと愛らしいですが、なにか」
「そして思わずヒャッハーしますが、なにか」
「むむむ」
「なにが、むむむなのぜ!」
野次馬をかき分け、野生のまりさとれいむの番が、4人の中に飛び込んできた。
「こっちのおねーさんは、まりさたちを、ゆっくりさせてくれるのぜ!
そんなにんげんさんが、まりさごとふたばをやくなんて、ありえないのぜ!」
「こっちのもひかんさんは、れいむたちをいじめる、こわいにんげんさんだよ!
でもこっそり、もりにすんでるどーつきちぇんと、ゆっくりしてるんだよ!」
「わ、馬鹿、言うな!」
「へー、胴付きかー」
「ヒ、ヒャッハー! 視線が痛いぜー!」
「ふたばをあらしても、あんこちゃんのむらはゆっくりできないよ!
そこのおいしそうなにんげんさんは、ゆっくりりかいしてね!」
「誰が根野菜と豚肉ですか!
・・・そんなサクラを使っても、森の主の目は誤魔化せませんよ」
「お前達はおしまいだー! バーカ、バーカ!」
群集が騒ぎ出し、2つに割れた。
人の谷間から屈強な男がゾロゾロと現れ、4人と2匹に対峙した。
「おお、これはこれは主のお使いの方ではないですか。
ささ、早速、このテロリスト共をしょっ引いて下さい」
筋骨隆々たる腕が、つかむ。
捕獲したのは、細い男と太い男。
「はれ?」
「貴様らこそ、ふたばの主の目を誤魔化せると思うな」
「お、お、俺達は何も」
「黙れ放火犯。貴様らの仕業だってことは、既にお見通しだ」
「え、あれ、その、ええ、どうして?」
「その分けを、これからじっくりと話してやる」
鍛え上げた男達が、ガリガリ君とブヨンブヨンを連行していく。
対照的な光景だった。
「くそ、おい、こら!」
「餡娘の、ゆっくり村の連中と関わったばっかりにぃぃぃ!
ゆっくりの、ゆっくりの、ゆっくりぃぃぃぃぃ!」
まるで、饅頭の断末魔だ。
見苦しい叫びを残して、放火魔は連れ去られた。
群集は1人去り、2人去り、そして全ていなくなる。
残されたのは、村の2人と野生の2匹だけだ。
「ありがとう、助かったよ」
「どーいたしましてのぜ!」
「このド饅頭、聞いてもいないことペラペラと!」
「ゆー! たすけてちぇぇぇぇん! ちぇんのはにーがいじめるー!」
いつかどこかで見たような、れいむと鬼威惨の追いかけっこが始まる。
野生のれいむは意外と逃げ足が早く、モヒカンは中々捕まえられない。
「ねえ、まりさ。森が小さくなって大変でしょう?
良かったら、私達の村に来ない?」
「まりさたちは、もりぐらしのほうが、ゆっくりできるのぜ。
おねーさんたちこそ、もりがちいさくなったら、むーしゃむーしゃがすくなくなるのぜ?」
「それは大丈夫よ、だって私達の村には・・・」
遂にれいむを捕らえきれず、鬼威惨がバテて倒れている頃。
村では、餡娘ちゃんの飼いまりさが、村人村ゆんを先導していた。
「ゆっ! 餡娘ちゃんが避難所を作ったよ! ゆっくり付いて来てね!」
「ありがたや、ありがたや」
「ふたばさんがゆっくりするまで、ひなんじょでゆっくりしようね!」
避難所には、類焼を受けて焼け出されたものの仮設住宅と、備蓄食料の配給所が作られていた。
もちろん、生焼けゆっくりの寝床と餌も用意されている。
「しばらく村のご飯は、避難所で配るよ! 皆で仲良く、むーしゃむーしゃしてね!」
「すくなくても、みんなといっしょなら、ゆっくりできるね!」
「ならば俺は、ゆっくりを食うぜ!」
「ゆんやっ!」
「ゆ虐さんは、ふたばの森がゆっくりするまで我慢してね!」
「ひゃっはぁ・・・」
餡娘ちゃんは、流石に疲労を覚えていた。
ふたば大火災に伴う聞き取り調査や、避難所の作成。
災害と前後して行った祭りの準備や運営。
その他諸々の重責が、年齢不詳ながらも小さい両肩に圧し掛かっていたのだ。
なんでこんなことしてるんだろう。
そんな思いに駆られることも無いではない。
しかし、村人やゆっくりの幸せな顔を見ると、ついつい張り切ってしまうのだ。
今日も彼女は、『あんこばなし』のメンテナンスに向かう。
倉庫の間取りを変えて欲しいという、ささやかな願いを叶えるために。
チビまりさが、餡娘ちゃんの横を跳ねながら付いていく。
少女が村の大通りを行くと、違和感を感じた。
「ねえまりさ。何か村人の数が、少ないように見えるんだけど」
「ゆっ? まりさはそうは思わないよ。いつもと同じで、ゆっくりしてるよ」
「そう?」
「餡娘ちゃん、疲れてるんだよ」
「かもね。たまには、ゆっくりしようかしら」
飼いまりさが、ニコッと笑った。
餡娘ちゃんも笑い返したが、笑顔の意味は、よく分からなかった。
そうこうしているうちに、『あんこばなし』の倉に到着する。
少女は、またもやおかしな気配を感じた。
「この中に、誰かいるわね」
「ゆゆゆ? 本当?」
「まりさ、あなた今日は変よ。この気配を感じられないなんて」
餡娘ちゃんが、倉の扉に手をかける。
ゆっくりと開け、奥を覗き込むと、そこには。
「「「「「「「「「「餡娘ちゃん、おめでとー!」」」」」」」」」」
みっちりと入っていた村人村ゆんが一気に飛び出してきた。
少女は人の波の上に乗せられ、どこかへ運ばれていく。
「え? なにこれ?」
「さあ、サプライズは成功だよ! 後は盛大にゆっくりするよ!」
ドス化した飼いまりさのお帽子のつばに、餡娘ちゃんが乗せられた。
彼女が周りを見渡すと、皆、テーブルや食器やあまあまを持って、村の広場へ向かっている。
ドスまりさが広場の中央で少女を降ろすと、そこはもうパーティ会場。
ご馳走が並んだテーブルの前で、餡娘ちゃんは状況がつかめず、呆然としていた。
「それでは、改めてせんげんっするよ!」
「「「「「「「「「「餡娘ちゃん。お誕生日、おめでとー!」」」」」」」」」」
盛大な祝福宣言が、全住民から贈られた。
クラッカーが鳴る。拍手は鳴り止まない。
「ああ、あの、ええと・・・ありがとう」
「ヒャッハー! 照れてるぜー!」
「でも、私の誕生日、一週間前だよ・・・。まあ、私も忙しくて忘れてたけど」
「ごめんね、餡娘ちゃん。火災の一件があったから、準備に手間取っちゃって。
でもおかげで、色々用意できたのよ」
「ヒャッハー! これはゆんドーナツの詰め合わせだぜ!」
「ヒャッハー! こっちはボーダー商事のめすぶた饅頭だぜ!」
「甘いのばっかりね」
「そうでもないよ!」
真っ白いテーブルクロスの上に、灰色の饅頭が飛び乗る。
「あらあなた、見ない顔ね」
「私はなずーりん。書記長とも呼ばれている、近頃評判のゆっくりさ」
「その書記長さんが、私に何のようなの?」
「よくぞ聞いてくれた! 今から我が同志が餡娘ちゃんにプレゼントをする!」
「同志って、ゆっくり達が?」
「そうだとも。これは全てこの書記長の発案により・・・」
なずーりん書記長の身体が、ヒョイと持ち上がった。
鼠饅頭を手に取ったのは、白髪のメガネをかけたご老人。
「いやー、これはしょきちょーなずーという、珍しいゆっくりなんですねー。
でも、手柄の横取りはいけないんですねー」
これまた近頃噂の愛で?おじいさん、ムシゴロウさんだった。
彼は恐ろしい速さでなずーを撫で回す。まるでルービックキューブが上手い人のように。
「ゆ、ゆぶぶぶ」
「あのムシゴロウさん、そのくらいで」
「おっとこれはいけない。早速、アツアツのオレンジ風呂に浸からせてあげましょうね」
「話が進まないわね」
「いや、もう話す必要もないみたいですよ」
村人や指差した先に、1本の線があった。
ラインにも見えるそれは、ゆっくりの行列。
それらは口々に花をくわえ、色とりどりの贈り物を運んでいる。
先頭のれいむが、餡娘ちゃんの足元に来る。
「ごめんなさい、あんこちゃん。
ふたばのもりがちーさくなったから、あちこちでおはなさんをあつめてたよ」
れいむはそう言って、小さな花を少女に渡した。
れいむによく似た、赤い花。
その後も、ゆっくりが駆け付けては、花を餡娘ちゃんに贈り続ける。
「ゆっくりしすぎて、ごめんなさい」
「おはなさん、ぜんぶとっちゃわるいから、とおくまでいってきたよ」
「もっとおおきいの、とりたかったよー」
「むきゅっ。このおはなさんは、どうかしら?」
「とかいはなあんこちゃんには、とかいはなおはなさんよ」
「しろいきょとう!」
全てのゆっくりから花を受け取った頃には、餡娘ちゃんの手に大きな花束が出来上がっていた。
「ありがとう、皆。ありがとう」
この日ばかりは、人間もゆっくりも笑顔を絶やさなかった。
鬼威惨もお姉さんも、れいむもれみりゃも胴付きちぇんも、ゆっくりした表情を浮かべている。
ただ1人、餡娘ちゃんだけが、笑いながら泣いていた。
「餡娘ちゃん、これからも」
「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」
(完)
【過去作】
※単発物近作
ふたば系ゆっくりいじめ 929 ブラック・スイーツ・ちぇぇぇぇぇんソー
ふたば系ゆっくりいじめ 906 蟷螂の斧
ふたば系ゆっくりいじめ 833 俺持ってんの1円じゃなくて・・・
※カオスVS鬼威惨
ふたば系ゆっくりいじめ 947 はげの復活(上)
ふたば系ゆっくりいじめ 428 はげの行進
※YHKアーカイブス
ふたば系ゆっくりいじめ 840 プラネット・ゆース ~ドスまりさ~
ふたば系ゆっくりいじめ 675 プラネット・ゆース ~きめぇ丸~
ふたば系ゆっくりいじめ 658 緊急特別SS ゆっくり割れる窓ガラスさんの謎
ふたば系ゆっくりいじめ 594 プラネット・ゆース(うーぱっく&すぃー)
※続編準備中
ふたば系ゆっくりいじめ 560 なずーりんに祝福を
ふたば系ゆっくりいじめ 796 Detroit Yugyaku City 2
※ぬえ
nue059 「スキャット・ゆん・ジョン」
nue022 「ゆナッフTV」
nue009 「ブラックペーパー・チャイルド」
その他の作品に関しては、ふたばSS@WIKIの『二行の作品集』をご覧下さい。
餡娘ちゃんとWIKIあきに、多謝。
このSSはフィクションです。
実在のものとは関係ないし、或いは他人の空似です。
餡娘ちゃん生誕記念と聞いて、カッとして書いた。
ハートフルものだし、絵師作家様方の創作物もお借りしているし、今は謝罪している。
【本編】
ふたばの森の近くに、変わった集落がある。
そこでは、ゆっくりと人間が共存していた。
小さいながらもメインストリートとなっている通りを、男と饅頭が走り抜ける。
「ヒャッハー! ゆっくりは虐待だー!」
「やめてね! かわいいかわいい、れいむをゆるしてね!」
「ヒャッハー! 絶対に許さねえ!」
大通りに面した、藁葺きの家。
その縁側で、女がありすを膝の上に乗せて和んでいる。
「平和ねー」
「とかいはねー」
「あら、鬼威惨が駆けてくわ」
「ヒャッハー! 走れ走れー!」
「お、お、おねーさん、ゆっくりしないでたすけてね!」
「れいむ、頑張ってねー」
「ゆがーん!」
れいむを追い掛け回す鬼威惨の側を、飼いまりさが通り過ぎる。
男は、白黒饅頭には目もくれない。
飼いまりさの向こうから、三輪バイクに乗った老人がやってきた。
バイクはリヤカーのようなものを引いていて、そこからは良い匂いが漂ってくる。
「おじさん、れみりゃまん、くれなのぜ!」
「はいはい。お使いかい? えらいね」
「ゆん! おだいは、おぼうしのなかなのぜ!」
老人は、まりさの帽子の中からタッパーを取り出す。
そして容器の中の小銭と、ほっかほかの蒸しれみりゃを入れ替えた。
「はい、ヤケドには気を付けるんだよ」
「ゆっくりありがとうのぜ! あちちちち・・・」
飼いまりさが、ぴょんぴょん跳ねながら来た道を戻る。
蒸し饅頭売りの側に、今度は縁側にいた女がやってくる。
「おじさん、まりさまんある?」
「はいはい。おいしく蒸し上がってるよ」
別に、まりさやありすが特別扱いを受けているわけではないのだ。
この村ではゆ虐派も愛で派も、そしてゆっくり達も、それなりに穏かに暮らしていける。
それは、集落を治めている者のおかげであった。
この村の長の名前は、餡娘ちゃん。
幼い見た目とは裏腹に、その手腕によって集落を取り仕切る敏腕少女である。
『餡娘ちゃんに花束を』 (作・二行)
餡娘ちゃんの朝は早い。
早いというより、昼も夜もなく働いているという印象だ。
村人村ゆんの要望を元に、彼女は様々な施設を作る。
人間饅頭問わず、住民は皆食いしん坊なので、作る大半は食料庫だ。
倉には納める種類によって、『とかいは』『どろわあず』『あんこばなし』等と名付けられている。
最近では『あんこばなし』のSSが溢れ返って、ある住民がさらなる保管庫を作っていた。
餡娘ちゃんは他にも会議場や遊び場などを建設する。
それらは豊臣秀吉の一夜城の如く、いつのまにか出来ていたりする。
その度に人々は、驚きと共に感謝を述べるのである。
だが、感謝を忘れたものというのは、時や場所を選ばす湧いて出る。
「けっけっけっ。こんなもの俺は気にいらねえなあ! 捨てちまうとするか!」
「むきゃきゃきゃ、さいきんは、まどうしょとよべるものがないわね!」
ゲス人間と賢者(笑)のコンビが、食料庫を荒らしている。
何かと文句を付けては、倉の中のものを潰したり、しーしーをかけて回る暴虐ぶりだ。
「ゆっ! げすがあばれてるよ!」
「いけない、餡娘ちゃんに知らせないと」
1匹と1人の目撃者が走り去る。
間もなく、小さなまりさを連れた餡娘ちゃんが、荒し被害を受けている倉に到着した。
「むきゃ? あんこちゃんよ」
「おうおうおう、餡娘ちゃんよー。俺達はつまんねえものを制裁しているだけだからよ。
村長さんは村長さんの仕事に戻って、俺達をもっとゆっくりさせてくれよ」
餡娘ちゃんは、無言で抱えていたチビまりさを放り出した。
小まりさはぽよんぽよんと、ゲスコンビの元へ近付いていく。
「おいおいおい、虐待しろってか、餡娘ちゃん」
「むきゃーっ! ようしゃなくやっちゃうのよ、おにーさん!」
「そりゃそりゃそりゃ!」
手を伸ばし、前のめりになってゲス人間が襲い掛かる。
チビまりさはそれをかわすこともなく、逆に男の指先に噛み付く。
そして。
「え?」
得体の知れない口の力で、ゲスを倉の外へ投げ飛ばした。
「むきゅきゅっ! まって、おにーさん!」
慌てて外のお仲間の元へ飛び出していくゲスぱちゅりー。
ゲス人間は顔面を地にこすり付けて悶絶していた。
チビまりさもその後を追い、ゲスに対峙する。
「やいやいやい、何てことするんだ糞袋!」
「むきゅきゅきゅ。こーかいするがいいわ、これからおにーさんのほんきを・・・」
2つのゲスの視線が、上がった。
小さかったはずのまりさは、みるみるうちに大きくなり、見上げるほどの大きさになった。
それは正しく、ドスまりさ。餡娘ちゃんが飼っているまりさの、真の姿である。
「やややあ、ドスまりさ。今日はいい天気ですね」
「むきゅきゅん。はばないすでー・・・」
ドスまりさは高く舞い上がり、哀れなゲスを大きな影で包み込んだ。
断末魔より力強く、巨大あんよの音が響いた。
ゲスぱちゅりーは単なるシミと化し、ゲス人間も完全に失神していた。
伸びている男の腕を餡娘ちゃんがつかむ。
元の大きさとなった飼いまりさと共に、彼女は村の外れに消えた。
それから先、ゲス男がたどった結末を知るものはいない。
まさか違法性のある仕置きをやるわけではないだろう。
分かっているのは、この村で彼の姿を見ることは2度となかった、ということだけである。
村から一歩出ると、そこはふたばの森だ。
それは、豊かな恵みと様々な珍獣が待ち受けている楽園。
誰しもがエンジョイ&エキサイティングを求めて、ここを訪れる。
森に来ると、鬼威惨・悪姐惨は虐用ゆっくりを使って、アウトドアな虐待に挑戦する。
愛で人間は野生ゆっくりと戯れたり、食料集めに精を出す。
鬼威惨に餌集めを頼むと、ゆっくり用の籠に唐辛子を入れたりするので、任せられない。
虐待派の村での仕事は、専ら建設業になっていた。
さて、普段なら森の中に悲鳴や喜びの鳴き声がこだまする所である。
しかし今日ばかりは違っていた。
餡娘ちゃんが、虐待派と愛護派の代表と一緒に、2人の男と向かい合っていたのである。
男というのは、端的に言えば細いのと太いの。
細かく描写すれば、細い方は貧弱な男の見本ともいうべきゴボウ野郎である。
太い方は、飛べそうもないただの豚といった感じだ。
「村の皆さんに集まって頂いたのは、他でもありません」
細いのが丁寧な口調で切り出した。
しかしその目には、明らかな軽蔑の色が見て取れる。
「皆さんには、ふたばの森に入って欲しくはないんです」
「何言ってるんですか? ここは、誰だって訪れていいはずでしょう?」
「ヒャッハー! ふたばはフリーダムだぜー!」
愛で派と虐派が抗弁する様子を、餡娘ちゃんは黙って聞いていた。
やり取りに割り込んだのは、脂ぎったもう1人の男。
「ゆっくりとか、わけわかんねーよ。キモイから消えてくれよ」
「どういう意味ですか?」
「ゆっくりと戯れる村の皆さんには、としあきの資格が無い、ということです」
としあきとは、ふたばの森を訪れる者の総称である。
由来は各自ググろう。
「ヒャッハー! ふたばの掟はただひとつのハズだぜー!」
「そうです。エンジョイ&エキサイティング。私達はそれを守り、楽しんでいます!」
「虐厨が口聞くんじゃねえよ」
「私は愛で派です!」
「やれやれ。私共も困ってるんですよ。あなた達のせいで、森がすっかり狭くなってしまって」
「ヒャッハー! 俺達は縄張りは守ってるぜー!」
「いるだけで邪魔っつってるんだよ、このハゲ!」
「ギャッハー! ハゲとモヒカンは別腹だぜ!」
「ともかく! ふたばの森のことは、森の主達が決めることです。
我々を呼びつけて恫喝紛いのことをやっても、全く無意味ですよ」
「あなた方の言い分はよく分かりました。では、森の主にお伺いを立てることにしましょう」
「まあ、きっと無駄足ですけどね。我々がここにいる。それが、答えなんですから」
「ふん・・・」
「ヒャッハー! おととい来やがれー!」
凸凹コンビは、唾を吐きながら森の奥へと帰っていった。
村の3人も、ゆっくり達と一緒に家路に着く。
餡娘ちゃんは、最後まで口を開くこともなく、何かを考え込んでいるようだった。
それからしばらく経った、ある朝。
ふたばの森に、火の手が上がった。
炎は森の自然を焼き尽くし、珍しい生き物達も犠牲になった。
ふたばに定住していたゆっくり達も、その大半は焼き饅頭となって果てた。
「ゆんやぁぁぁ! れいむのかわいいおちびちゃんたちがぁぁぁ!」
「おねえちゃぁぁぁん!」
「ああ、ふたばの森が消えていく・・・」
「あんなにゆっくりしたゆっくり達だったのに・・・」
ゆっくりや愛で派は、犠牲になった自然やゆっくりに涙を流した。
「ヒャッハー! 俺らを差し置いて虐殺とは頂けないぜー!」
「ギャッハー! 明日のサバイバルアマギリマッチがー!」
虐待派も、炎の容赦ない虐殺ぶりとプレイの幅が狭まることに落涙した。
追い討ちをかけるように、ふたば周辺にある噂が飛び交った。
餡娘ちゃんの村の人間が、森に火を付けたというのだ。
例の愛で派と虐待派の代表が、噂を流している者を探す。
案の定、あの時やり合った細いのと太いのが、焼け跡に立って熱弁を振るっていた。
「これは全て、あの頭のおかしい村の連中の仕業なんです!
ふたば焼き討ちなんて恐ろしいことができるのは、あの社会不適合者達だけです!」
「あいつらは、自分の仕業だってバレたくなくて、あちこち火を付けて回ったんだ!
ならばこちらも、餡娘とかいうクソガキの村を、襲ってやろうじゃないか!」
言ってることは、無茶苦茶だった。
それは聴衆にも分かるらしく、誰もがしらっとした視線を向けている。
彼らはふたばという遊び場がなくなったので、ヒマ潰しに来ているだけらしい。
それを知ってか知らずか、凸凹はさらにヒートアップしていく。
「皆さん分かりますか、これは自由に対する挑戦ですよ!
今ここで奴らを根絶やしにしなければ、またふたばは荒らされるんですよ!」
「あいつらは、どいつもこいつも犯罪者だ! 犯罪者を殺して何が悪い!」
「いい加減にしなさい。流石のとしあき達も引いてるじゃないですか」
「ヒャッハー! 人間虐待はゆっくりできないぜー」
愛で派はゴボウの前に、虐待派は飛べない豚の前に立ち、視線をぶつける。
「出ました! 皆さん、これがクズ村のクズ人間ですよ!」
「としあきの敵だ! としあきの敵だ!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり」
「何がゆっくりですか! あんな気持ちの悪い生首の、どこが良いんですか!」
「存在丸ごと愛らしいですが、なにか」
「そして思わずヒャッハーしますが、なにか」
「むむむ」
「なにが、むむむなのぜ!」
野次馬をかき分け、野生のまりさとれいむの番が、4人の中に飛び込んできた。
「こっちのおねーさんは、まりさたちを、ゆっくりさせてくれるのぜ!
そんなにんげんさんが、まりさごとふたばをやくなんて、ありえないのぜ!」
「こっちのもひかんさんは、れいむたちをいじめる、こわいにんげんさんだよ!
でもこっそり、もりにすんでるどーつきちぇんと、ゆっくりしてるんだよ!」
「わ、馬鹿、言うな!」
「へー、胴付きかー」
「ヒ、ヒャッハー! 視線が痛いぜー!」
「ふたばをあらしても、あんこちゃんのむらはゆっくりできないよ!
そこのおいしそうなにんげんさんは、ゆっくりりかいしてね!」
「誰が根野菜と豚肉ですか!
・・・そんなサクラを使っても、森の主の目は誤魔化せませんよ」
「お前達はおしまいだー! バーカ、バーカ!」
群集が騒ぎ出し、2つに割れた。
人の谷間から屈強な男がゾロゾロと現れ、4人と2匹に対峙した。
「おお、これはこれは主のお使いの方ではないですか。
ささ、早速、このテロリスト共をしょっ引いて下さい」
筋骨隆々たる腕が、つかむ。
捕獲したのは、細い男と太い男。
「はれ?」
「貴様らこそ、ふたばの主の目を誤魔化せると思うな」
「お、お、俺達は何も」
「黙れ放火犯。貴様らの仕業だってことは、既にお見通しだ」
「え、あれ、その、ええ、どうして?」
「その分けを、これからじっくりと話してやる」
鍛え上げた男達が、ガリガリ君とブヨンブヨンを連行していく。
対照的な光景だった。
「くそ、おい、こら!」
「餡娘の、ゆっくり村の連中と関わったばっかりにぃぃぃ!
ゆっくりの、ゆっくりの、ゆっくりぃぃぃぃぃ!」
まるで、饅頭の断末魔だ。
見苦しい叫びを残して、放火魔は連れ去られた。
群集は1人去り、2人去り、そして全ていなくなる。
残されたのは、村の2人と野生の2匹だけだ。
「ありがとう、助かったよ」
「どーいたしましてのぜ!」
「このド饅頭、聞いてもいないことペラペラと!」
「ゆー! たすけてちぇぇぇぇん! ちぇんのはにーがいじめるー!」
いつかどこかで見たような、れいむと鬼威惨の追いかけっこが始まる。
野生のれいむは意外と逃げ足が早く、モヒカンは中々捕まえられない。
「ねえ、まりさ。森が小さくなって大変でしょう?
良かったら、私達の村に来ない?」
「まりさたちは、もりぐらしのほうが、ゆっくりできるのぜ。
おねーさんたちこそ、もりがちいさくなったら、むーしゃむーしゃがすくなくなるのぜ?」
「それは大丈夫よ、だって私達の村には・・・」
遂にれいむを捕らえきれず、鬼威惨がバテて倒れている頃。
村では、餡娘ちゃんの飼いまりさが、村人村ゆんを先導していた。
「ゆっ! 餡娘ちゃんが避難所を作ったよ! ゆっくり付いて来てね!」
「ありがたや、ありがたや」
「ふたばさんがゆっくりするまで、ひなんじょでゆっくりしようね!」
避難所には、類焼を受けて焼け出されたものの仮設住宅と、備蓄食料の配給所が作られていた。
もちろん、生焼けゆっくりの寝床と餌も用意されている。
「しばらく村のご飯は、避難所で配るよ! 皆で仲良く、むーしゃむーしゃしてね!」
「すくなくても、みんなといっしょなら、ゆっくりできるね!」
「ならば俺は、ゆっくりを食うぜ!」
「ゆんやっ!」
「ゆ虐さんは、ふたばの森がゆっくりするまで我慢してね!」
「ひゃっはぁ・・・」
餡娘ちゃんは、流石に疲労を覚えていた。
ふたば大火災に伴う聞き取り調査や、避難所の作成。
災害と前後して行った祭りの準備や運営。
その他諸々の重責が、年齢不詳ながらも小さい両肩に圧し掛かっていたのだ。
なんでこんなことしてるんだろう。
そんな思いに駆られることも無いではない。
しかし、村人やゆっくりの幸せな顔を見ると、ついつい張り切ってしまうのだ。
今日も彼女は、『あんこばなし』のメンテナンスに向かう。
倉庫の間取りを変えて欲しいという、ささやかな願いを叶えるために。
チビまりさが、餡娘ちゃんの横を跳ねながら付いていく。
少女が村の大通りを行くと、違和感を感じた。
「ねえまりさ。何か村人の数が、少ないように見えるんだけど」
「ゆっ? まりさはそうは思わないよ。いつもと同じで、ゆっくりしてるよ」
「そう?」
「餡娘ちゃん、疲れてるんだよ」
「かもね。たまには、ゆっくりしようかしら」
飼いまりさが、ニコッと笑った。
餡娘ちゃんも笑い返したが、笑顔の意味は、よく分からなかった。
そうこうしているうちに、『あんこばなし』の倉に到着する。
少女は、またもやおかしな気配を感じた。
「この中に、誰かいるわね」
「ゆゆゆ? 本当?」
「まりさ、あなた今日は変よ。この気配を感じられないなんて」
餡娘ちゃんが、倉の扉に手をかける。
ゆっくりと開け、奥を覗き込むと、そこには。
「「「「「「「「「「餡娘ちゃん、おめでとー!」」」」」」」」」」
みっちりと入っていた村人村ゆんが一気に飛び出してきた。
少女は人の波の上に乗せられ、どこかへ運ばれていく。
「え? なにこれ?」
「さあ、サプライズは成功だよ! 後は盛大にゆっくりするよ!」
ドス化した飼いまりさのお帽子のつばに、餡娘ちゃんが乗せられた。
彼女が周りを見渡すと、皆、テーブルや食器やあまあまを持って、村の広場へ向かっている。
ドスまりさが広場の中央で少女を降ろすと、そこはもうパーティ会場。
ご馳走が並んだテーブルの前で、餡娘ちゃんは状況がつかめず、呆然としていた。
「それでは、改めてせんげんっするよ!」
「「「「「「「「「「餡娘ちゃん。お誕生日、おめでとー!」」」」」」」」」」
盛大な祝福宣言が、全住民から贈られた。
クラッカーが鳴る。拍手は鳴り止まない。
「ああ、あの、ええと・・・ありがとう」
「ヒャッハー! 照れてるぜー!」
「でも、私の誕生日、一週間前だよ・・・。まあ、私も忙しくて忘れてたけど」
「ごめんね、餡娘ちゃん。火災の一件があったから、準備に手間取っちゃって。
でもおかげで、色々用意できたのよ」
「ヒャッハー! これはゆんドーナツの詰め合わせだぜ!」
「ヒャッハー! こっちはボーダー商事のめすぶた饅頭だぜ!」
「甘いのばっかりね」
「そうでもないよ!」
真っ白いテーブルクロスの上に、灰色の饅頭が飛び乗る。
「あらあなた、見ない顔ね」
「私はなずーりん。書記長とも呼ばれている、近頃評判のゆっくりさ」
「その書記長さんが、私に何のようなの?」
「よくぞ聞いてくれた! 今から我が同志が餡娘ちゃんにプレゼントをする!」
「同志って、ゆっくり達が?」
「そうだとも。これは全てこの書記長の発案により・・・」
なずーりん書記長の身体が、ヒョイと持ち上がった。
鼠饅頭を手に取ったのは、白髪のメガネをかけたご老人。
「いやー、これはしょきちょーなずーという、珍しいゆっくりなんですねー。
でも、手柄の横取りはいけないんですねー」
これまた近頃噂の愛で?おじいさん、ムシゴロウさんだった。
彼は恐ろしい速さでなずーを撫で回す。まるでルービックキューブが上手い人のように。
「ゆ、ゆぶぶぶ」
「あのムシゴロウさん、そのくらいで」
「おっとこれはいけない。早速、アツアツのオレンジ風呂に浸からせてあげましょうね」
「話が進まないわね」
「いや、もう話す必要もないみたいですよ」
村人や指差した先に、1本の線があった。
ラインにも見えるそれは、ゆっくりの行列。
それらは口々に花をくわえ、色とりどりの贈り物を運んでいる。
先頭のれいむが、餡娘ちゃんの足元に来る。
「ごめんなさい、あんこちゃん。
ふたばのもりがちーさくなったから、あちこちでおはなさんをあつめてたよ」
れいむはそう言って、小さな花を少女に渡した。
れいむによく似た、赤い花。
その後も、ゆっくりが駆け付けては、花を餡娘ちゃんに贈り続ける。
「ゆっくりしすぎて、ごめんなさい」
「おはなさん、ぜんぶとっちゃわるいから、とおくまでいってきたよ」
「もっとおおきいの、とりたかったよー」
「むきゅっ。このおはなさんは、どうかしら?」
「とかいはなあんこちゃんには、とかいはなおはなさんよ」
「しろいきょとう!」
全てのゆっくりから花を受け取った頃には、餡娘ちゃんの手に大きな花束が出来上がっていた。
「ありがとう、皆。ありがとう」
この日ばかりは、人間もゆっくりも笑顔を絶やさなかった。
鬼威惨もお姉さんも、れいむもれみりゃも胴付きちぇんも、ゆっくりした表情を浮かべている。
ただ1人、餡娘ちゃんだけが、笑いながら泣いていた。
「餡娘ちゃん、これからも」
「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」
(完)
【過去作】
※単発物近作
ふたば系ゆっくりいじめ 929 ブラック・スイーツ・ちぇぇぇぇぇんソー
ふたば系ゆっくりいじめ 906 蟷螂の斧
ふたば系ゆっくりいじめ 833 俺持ってんの1円じゃなくて・・・
※カオスVS鬼威惨
ふたば系ゆっくりいじめ 947 はげの復活(上)
ふたば系ゆっくりいじめ 428 はげの行進
※YHKアーカイブス
ふたば系ゆっくりいじめ 840 プラネット・ゆース ~ドスまりさ~
ふたば系ゆっくりいじめ 675 プラネット・ゆース ~きめぇ丸~
ふたば系ゆっくりいじめ 658 緊急特別SS ゆっくり割れる窓ガラスさんの謎
ふたば系ゆっくりいじめ 594 プラネット・ゆース(うーぱっく&すぃー)
※続編準備中
ふたば系ゆっくりいじめ 560 なずーりんに祝福を
ふたば系ゆっくりいじめ 796 Detroit Yugyaku City 2
※ぬえ
nue059 「スキャット・ゆん・ジョン」
nue022 「ゆナッフTV」
nue009 「ブラックペーパー・チャイルド」
その他の作品に関しては、ふたばSS@WIKIの『二行の作品集』をご覧下さい。
餡娘ちゃんとWIKIあきに、多謝。