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103 :旅人:2009/01/04(日) 01:08:33 ID:EiF2kfec0
 08/12/19 23:06

加瀬の話が終わり、彼女と松木はしばらく語り合った。
それから松木は、内線電話で誕生日ケーキを持ってくるようにとお手伝いさんに頼んだ。
 数分もしない内に、町田が先日松木邸に届いた CS beatmania IIDX 15 DJ TROOPERSの
特別版の箱を発見、有無を言わせず遊ばせてー!とPS2を起動、
ディスクをセットして専コンを繋ぎ、最初の登録画面で
DJ NAMEを「IIDX 15」にしてFREEモードを選んだ。

 さてそうして、ケーキが届くまでに町田は松木ら四人を前に自分のプレーを披露した。
 一曲目に「TROOPERS」(A)。デスボイスと重低音なギター、スクラッチと
特徴の多いこの曲を難なくクリア、総BP数は10にも満たなかった。蛇足だが、djlevelはAAAだった。
 次に選曲画面を見ると、「TROOPERS」のすぐ隣に同名の曲の色の違う難易度が追加されていた。
黒い赤。あ、この難易度は何と呼べばいいんだ?と松木が思っている中、

「わぁ、何これ!面白そうだからやってみよっと」

 そう言った町田が二曲目に「TROOPERS」(A+)を選曲した。
A譜面とは比べ物にならない程スクラッチが大量に配置され、
より曲に対する演奏感が増したと言えるこの譜面を、またしても町田は難なく捌く。

「スクラッチ面白ーい!キュキュキュカキュキュキュカキュキュキュキュ……」

と言いながら、所々ミスをするものの、町田の両手はしっかりとスクラッチを回して鍵盤を叩いていく。
「ち、ぎ、り、だっせーい!」という空耳と同時に曲は終了、またもAAAで町田はクリアしていった。


 町田が三曲目に「MENDES」(A)を選曲した後、
談話室のドアがコンコンとノックされて、多田が蕎麦屋な格好をして現れた。
その所以で、右手に乗せられている高級料理店で見るような銀のプレートと銀の蓋が、
まるで蕎麦屋の人がざる蕎麦を積んで運んでくるかのように見えた。
 町田の打鍵音とMENDESが流れる談話室の中で
多田がテーブルの真ん中にプレートを置き、それから蓋を取る。
 果たして、そこにプレートの上に上がっていたのは大きなホールケーキと、
こじんまりとしたざる蕎麦が人数分積み重なっていた。
つゆはセルフサービスなのか、ペットボトルに詰められ、小さな椀が人数分備えられていた。

「これがホントの麺です、なんつってな!アハハハハハ」

多田は誰にもうける事の無かった渾身のギャグを放った後、恥ずかしそうに去っていった。

104 :旅人:2009/01/04(日) 01:12:12 ID:EiF2kfec0
「それじゃ、皆さんでいきましょうか。…せーのっ」

町田が演奏を終えた所で松木が四人にそう声をかけた。次には

       「「「「「頂きまーす!!」」」」」

と五人が同時に言い、そしてケーキとざる蕎麦を食べ始めた。
皆が皆、一様に美味い、美味い麺です、ケーキ美味エエエェェェ!!
などと感想を述べたり叫んだりしながら、それでも楽しそうに食事を取っていた。
 小暮が、松木が少し変だと感じてケーキを口に入れてそれを流し込んでから言う。

「松木さん」
「え、何です?」
「蕎麦、食べないんですk」

言い終える前に小暮は前のめりになって倒れた。
松木を除く三人がそれに驚き、そして次の瞬間には小暮と同じように前につんのめって倒れた。

 その光景を、松木は黙って見降ろしていた。

「すみません、こうするより他は無いんです。
 必ず、皆さんだけは助けます…他の人たちも……多田君!」

独り言を言っていたかと思われた松木が多田を呼び出し、
談話室の前に待機していた蕎麦屋スタイルの多田が談話室に入ってくる。
松木は多田(蕎麦屋スタァイウ)にすぐさま命令を出す。

「皆に特効薬を。後、アレは出来てる?車の用意は?」
「大丈夫です。アレの用意も、車の用意も。薬は四人に無理やり飲み込ませます」

分かった、とだけ返した松木は多田を談話室に残し、廊下へ出た。
そのまま玄関の方へ歩き、そして出迎えていた執事石坂が、
ゆう様と言いながら黒い艶々したロングコートを差し出した。

「石坂さん、これの用意はもう出来ている?」
「えぇ。このコートも、車のエンジンもおかけしました。ではどうぞ、行ってらっしゃいませ」

105 :旅人:2009/01/04(日) 01:19:02 ID:EiF2kfec0
何で、どうしてこんなに眠いんだ…?何で皆がぶっ倒れているんだ?
松木さん、すみませんって何だ?皆さんだけは助けるって、どういう事だ……?
………後を、追わなく、ちゃ…………




 松木が玄関で黒く艶やかとしたロングブーツを履いた時、
彼の後ろで立っているはずの石坂が驚いた声を上げた。
松木がそれに驚きながら振り向くと、そこには居るはずのない人物が立っていた。

「探偵さん…」
「食べ物に何を仕込んだ?
 アンタはケーキを食ってはいたが、蕎麦は食わなかったな……
 眠り薬でも入れたか?クソ、頭がガンガンする…眠い………」

小暮が左手で壁に手をつきながら松木に言った。
松木は驚きと賞賛の二つの表情を顔に浮かべながら、
マフィアが拳銃を取り出すような仕草をし、
小暮の予想通り、右手に拳銃を握ってその銃口を小暮に向けながら言う。

「すみません。タイムリミットはもう一時間を切りました。
 後30分と少ししかない。急ぐので、眠ってください」

何、と弱い声で返答した小暮は次の瞬間右の腿を押さえていた。
ガァッ!と苦痛を叫び、それから両膝をついて手をつかずに小暮はドサッと床に倒れこんだ。
 松木の左手はトリガーを引いていた。
だが、その銃からは炎も煙も銃声も出ていない。

「サプレッサー付き麻酔銃、思っていたよりいい感じだ」
「お褒めの言葉を頂き、有り難く存じます。
 この者の処置は私に任せ、ゆう様は早くお行きになってください」

分かった、と残して松木が玄関から出て言った後。
そこには老紳士石坂と、彼に支えられて何処かへ運ばれてゆく探偵小暮の姿のみがあった。

106 :旅人:2009/01/04(日) 01:21:02 ID:EiF2kfec0
 08/12/19 23:14
松木は自分の車を高速で走らせていた。
交通量の少ない山道をビュンビュン飛ばす松木は、一瞬だけある事を思い返していた。
一週間前から知った「ある計画」の存在を知るきっかけから、
松木は走馬灯のように記憶をフラッシュバックさせていた…………




 一週間前の出来事だった。
その日は町田さんと共に「平和のラヂオ」の収録をしたのだった。
町田さんがせき込みながらも収録を頑張ってくださった事が、今でも鮮明に記憶している。
 駅まで僕が送った後、その後の事だったと思う。見知らぬ男が僕に声をかけてきたのだ。
僕にはそっちの気が毛頭も無いので、無言でその場を去ろうとした。だが、

「松木さんよぉ、とんでもない情報が手に入ったんですわ」

と男が言ったのだ。僕は思わず振り向きざまに「どんな?」と尋ねてしまった。
聞いて驚かないでくだせぇよ、と男は前置きしてから言った。

「ここじゃ話せねぇんで、どこか人気のない場所で……」
「じゃ、僕の家に来てください。僕の部屋なら気楽に話せると思いますよ」

107 :旅人:2009/01/04(日) 01:25:06 ID:EiF2kfec0
 僕と男は数十分後には僕の部屋に居た。
僕が椅子を差し出して座るように勧め、
そして男が座った後に僕は別のイスに座った。
男は信じてくれようもありませんがね、と前置きしてから言った。

「聞きましたよ、今日のネットラジオ。
『平和のラヂオ第六回目』、いい話でしたねぇ。
 あっしはあの町田彩さんのファンでねぇ…
 顔立ちはまぁまぁだし、音ゲーはどれをプレーしてもとても上手い。理想のタイプですわ」
「……それが『とんでもない情報』なんですか?」
「今のはカットしておいてくだせぇ。
 ………一週間後に自分が死ぬと聞いたら、どうしますかねぇ?」
「ぇ…あ――はい、分からないですね、その時にならないと」

やっぱりそう言うとあっしは思ってたんですよ!と男が愉快そうに笑った。
そして男は笑い顔のまま、僕に向けてとんでもない事を言い放った。

「その時ですから、答えられますでしょ」
「………からかうのもいい加減n…」

松木さん、と男は力強い口調で言った。

「これまでに、風邪のような症状を出した事は?」
「無いですよ」
「じゃ、激しい咳は?」
「いいえ」
「そんだったら、最後にゲーセンで音ゲーをしたのはいつですかねぇ?」
「ついさっき、ピースで。町田さんとIIDX勝負を。
 言うまでもないですけど、負けました」

んな馬鹿な、と男は吃驚した様子で呟いた。
その後に抗体がどうとかこうとかと勝手に独りごちていたから、僕は男に聞いた。

「抗体?新種のウイルスでも現れたって言うんですか?」

何気ない一言だった。巷では新型インフルエンザが多数の死者を云々と聞いていたので、
その情報が僕の頭に作用してこんな事を言わせたのだと思う。
でもあの男は、全身から怒気を放出させながら僕に叫んだ。

108 :旅人:2009/01/04(日) 01:30:08 ID:EiF2kfec0
「新種のウイルスゥ?!そんなもんじゃねぇんですわ!
 アレはどんなもんでも太刀打ちできねぇんですわ!
 一種の限定されたバイオハザードを起こすだけの威力があるんですわ!」

バイオハザード。生物災害。レベル4。僕の頭の中にはこの三つの単語が瞬時に浮かんで消えていった。
そして、僕は直ぐに事の重大さに気がついた。

「バイオハザードが起きる!?一体どういう事ですか!!?」
「落ち着いてくだせぇ、松木さん。
 ………これから話すのはすべて真実です。落ち着いて聞いてくだせぇ」

 僕が分かりましたと返すと、
男は一度天井の明りを見てから僕に目線を移して言った。
「『大富豪』って団体を知ってますか?」
「いいえ、初耳です」
「どんな団体だと思います?」
「さぁ。金持ちの集まりじゃないってのは推測がつきますけど」
「流石は松木さん、頭の方も鋭いねぇ。
 ………大富豪ってのは、国が運営している殺し屋組織の名前ですわ」

一瞬、ほんの一瞬だけ僕は自分の耳を疑った。
「国 が 運 営 し て い る」 殺し屋組織?
おいおい何だよ、フィクションワールドでもあるまいし。
混乱していた僕に、男の止めの一撃が入った。

「信じらんねぇのも無理はねぇと思います。
 でもさっき言ったはずです。これから話すのは本当の事だと」
「……国営の殺し屋組織って言いましたっけ。
 なんで国がそんな事をしなきゃいけないんですか」
「そりゃあ、私立のがあれば国立のだってあるんじゃないすかねぇ。
 ま、確実に殺しを依頼するなら国立か、
 それとも社会的立場がかなり上の人間専用のものなのか…」
「国立の殺し屋組織なら個人情報を守ってもらえる、
 とかそんなメリットとかあるんでしょうか……?」

でも、二つばかりはっきりしている事があるんですわ。
そう言った男は僕の目を見つめながら真剣な口調で言った。

「一つ。彼らのコードネームはトランプの番号なんですわ。
 NO.4、NO,8みたいな感じですわ。
 でも、Jから始まる記号からは、その記号の呼び名がコードネームらしいんす。
 ジャック、クイーン、キング、エース、そしてジョーカー」
「じゃ、2の数字の人のコードネームは?」
「NO.2ですわ」
「へぇ、ザ・セカンドとかいうカッコいいものかと思ってました」

あんな奴らにカッコよさを求めるなんて、やっぱ変わってるねぇと男は独りごち、
それから二つ目を、それは僕にとって衝撃的な情報だったそれを言った。



       「大富豪の奴らは皆、超 能 力 の よ う な 能 力を有しているんですわ」

109 :旅人:2009/01/04(日) 01:34:37 ID:EiF2kfec0
 そこで、松木の記憶のフラッシュバックが解けた。
それと同時に、松木は車を路肩駐車させて車道へ飛び出していく。
そのまま松木は車から見て右手に、つまりは木々が生い茂る山を駆け上がっていった。
 暗闇の中、雪や茂みに足を引っ掛けながらも松木は走り続けた。
山中で松木はハッ、ハッと荒く息をしていた。彼は自分の体力に相当の自信を持っていたのだが、
100M走をするかのようなペースで走り続けているのだから無理はない。
それでも、松木には全速力で走らなければ理由があった。

……このままだと、皆死んでしまうから。
この身がどうなろうとも、皆が助かればそれでいい。


 08/12/17

あれは昼頃だっただろうか。
僕の信頼できる人間で構成した情報収集隊「アンドロメダ」が、
ピース店内で人気のない所でモップをかけている僕に報告しにきた。
姓を羽田という女性がそのアンドロメダのリーダーであるのだが、彼女が僕に言うには、

「大富豪がどのようにして音ゲーマーを殺すのか、そのメカニズムが分かった」らしかった。


 こう言っては不謹慎だが、僕はとても興味を覚えていた。
一体どのようにして、全国に沢山存在する音ゲーマーを選別して殺すのだろうか。
その事が僕の頭から離れなかった。国立の殺し屋組織にしか出来ない方法があるというのだろうか。


 その答えは、意外にもあっさりしたものだった。
その方法と手段。まず手段の方から伝えられた。「行脚」。これが手段だと羽田は言った。
そして方法。あの変な男から「生物災害を引き起こすレベルの云々」とは聞いていたが……


「全 国 各 地 の ゲ ー セ ン を ウ イ ル ス を ば ら 撒 き つ つ 行 脚 す る」


何という事だ、と僕は思った。そして、もう残された時間が二日しかないと知り、絶望した。

110 :旅人:2009/01/04(日) 01:39:52 ID:EiF2kfec0
 残り時間はたった二日。被害は全国規模。結果は大量死。
しかしどうにも出来ない。出来ないのだ。たった二日で何をやれと?
そんな感じにどうする事も出来ないという絶望に打ちひしがれていた僕に、羽田は優しく言った。

「大丈夫です。ゆう様ならどうにか出来ます」
「どうにかって…奴らはどういう風にしてかは知らないけど、
 全国にウイルスをばら撒いたんだろ?」
「えぇ。我々アンドロメダが調べたところ、音ゲーマーのみ感染するようです。
 人体を調べ上げて音ゲーマーだと判断した後、感染症状を引き起こして
 ある時間になると発症、心臓マヒを起こさせる殺人ウイルス。
 そんなウイルスが全国のゲーセンの音ゲー筐体の
 イーパス読み取り装置から検出されてきています」

羽田の言葉を聞いて、僕の中で大富豪の手口が読めてきた。
その仮説を羽田に聞いてもらう事にした。あまり自信は無かったけど。

「………大富豪のメンバーが行脚して音ゲーをプレーする。
 でも、その時使っていたイーパスにはウイルスが付着していた。
 そんな事とはつゆ知らず、別の音ゲーマーが汚染された読み取り装置を使って
 音ゲーをプレーする。プレー終了後に排出されたイーパスを媒介として、その音ゲーマーが感染する…?」

概ねその通りです、と羽田は言った。そして深刻な面持ちで続けた。

「そのウイルス『アポカリプス』はもう、殆どの音ゲーマーに感染しているでしょう。
 先に言った感染症状、兆候とも言いますが、それは『激しい咳を繰り返す』事なんです。
 もう、あの町田って人も感染しています。そうとしか考えられません」
「そうか、僕にはそんな症状が出ていない……
 だからあの男、抗体がどうとかって言っていたんだ………」

残念な事に、と僕が一人合点している所に羽田が割り込んだ。

「アポカリプスの発症は、ある時間で一斉に起きるようプログラムされているようです」
「さっきから聞いていると、まるであのゲームに出てきたウイルスみたいだね?」
「何のゲームかは存じ上げませんが…
 遺伝子的殺人ウイルス、みたいな名称が合うのでしょうかね」
「あのゲームでは殺人ウイルスとかそんな位置づけだったから、それでいいんじゃない?
 それより、どうにかしてこのアポカリプスの発症を抑える方法は無いの?
 町田さんと収録した後、家に通した情報屋にどうにかするって約束しちゃったんだけど」

うーん、と羽田は考えてくれた。僕も必死に頭を働かせたが、なにも名案は浮かばない。
「八方塞がり‐もう、何も見えない‐ ダメダメ人間 松木ゆう」 なんて考えて思考が逸れた時――

111 :旅人:2009/01/04(日) 01:44:21 ID:EiF2kfec0
「ァァアアアアアアア!!!!!」

いつも物静かな女性だなぁと思っていた羽田が、突然吠えた。

「ウイルスプログラム!人体限定の!プログラムウイルス!」
「ちょっ、どうしたの羽田さん!落ち着いて!」
「分かりましたよ!」
「何が!」

僕がそう叫んで羽田を黙らせ、一度息をさせてから発言させた。

「アポカリプス発症を阻止する方法、見つけました!」




 そういう訳で、松木ゆうは山の木々が開けた場所で息を荒くしながら立っていた。
全ては、アポカリプス発症を阻止するため。
全ては、何の罪のない音ゲーマー(一部を除く)を死なせないため。
全ては、もしかすると最後になるかもしれない友人たちとの思い出作りのため。
全ては、そういうのをひっくるめて自分のため。

 松木が傍らの木に手をついて休息をとりつつ、
マナーモードにしている携帯電話で現在時刻を確かめる。

「11:34……もう、二十分と少ししかないのか………」

松木は、二日前の羽田との会話を思い出していた。
彼女がアンドロメダで調べ上げた事とは、
音ゲーマー殺害の方法と手段と、それがいつ決行されるかという事だった。
松木の脳内で羽田の言葉が再生される。


「アポカリプスが発症する時間は、08/12/20 0:00です………」

アポカリプスの発症、(ほぼ)全ての音ゲーマーの終わりがやってくる時間が、もうすぐそこまで近づいている……

112 :旅人:2009/01/04(日) 02:05:19 ID:EiF2kfec0
 羽田と話した日。
羽田をリーダーとする情報収集隊「アンドロメダ」が
得た情報を分析すると、アポカリプスの発症を抑えるカギが見つかった。

 アポカリプスは先進的な殺人ウイルスだ。だが、先進的すぎたのが弱点だった。
殺人ウイルスが人体に感染、そのウイルスが遺伝子的に色々と感染者を判断、
殺害すべきターゲットだと認定した時には既に感染者は死亡している…
これが、殺人ウイルスの常識というかそんなようなアレだ。
 だが、アポカリプスは遺伝子的な情報のみで音ゲーマーかどうかを判断できない。
その為にイーパス読み取り装置を媒介装置とし、イーパスを媒介として感染させる。
この時、全く無関係の第三者が感染しても死亡しないような配慮が施されている。
 神を信ずる者が救われ、そうでないものが死ぬ。
まさに、アポカリプスという殺人ウイルスはその名を冠するに相応しいのだ。

 そこを松木達は弱点と見た。
アンドロメダの調べによると、大富豪からコナミのサーバーに対する
ハッキングのようなものが随時行われているらしいのだ。
それが、アポカリプスが人間の選定を行い、そしてその役目を果たすキーとなっている。
普通、管理者が気づきそうなものなのだが……と羽田は言っていたが、
それは企業名誤植を続けるあの会社なら不思議ではないと松木は思った。
そして思って、ごめんなさいごめんなさいと目に見えない相手に謝罪していた。

 つまり、大富豪のアジトにはコナミのサーバーにハッキングを仕掛ける装置があって、
そしてそれを破壊すればアポカリプスは発症しない。それがアポカリプスを止める唯一の方法なのだ。

(という仮説で、実際のところどうやってアポカリプスを制御しているかは知らない。
 本当にハッキングによる制御なのか、それとも別の方法で制御しているのか。
 それは分からないが、兎に角、アポカリプスは制御されたウイルスだという事は分かった。
 この一歩は小さな一歩かもしれないが、松木達にしてみれば大きな一歩だった)


 ――そして松木は、意外にも自宅から近い山奥の地中に構えられた大富豪のアジトを見降ろしている。
アンドロメダの調べによる情報は、パーティーで小暮が言っていた事と被る所もあった。
数字とJからKまでのコードネームのメンバーは「錯覚」という超能力という事を、
Aと2のコードネームのメンバーは「変容」という超能力という事を、
そして、ジョーカーが使う超能力の名前と内容が一切分からないという事が分かったのだ。


 うん、それで十分。あの時にNO.9から渡されたお守りもある。錯覚対策は十分。
そうだ、もうあの時にはNO.9は人の形をした何者かだった。
何故か分かる。そう、意味も理由もないのに、何故か、直感的に。
 それに、僕の体に先天的にあるという「A-ウイルス抗体」を使用した特効薬をあの四人に飲ませた。
副作用として、激しい睡魔と軽い記憶喪失を引き起こす代物なんだけど。
でも、あの四人にだけは死んで欲しくない。差別するようで悪いけど、それはこれからの行動で示す。




―――必ず、全ての音ゲーマーを救う。大富豪だか何だか知らないけど、必ず潰す。
      何が神の裁きだ、一体何様のつもりなんだ。大富豪も………彼らにそんな依頼をした奴も――





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