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旅人的ガイドライン ~IIDXDP ver.~ -St.2-

最終更新:

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228 :旅人:2009/02/15(日) 23:14:20 ID:S8iSwL+g0
 小暮が落ち込んでからは、何故か町田がCSDDで遊んでいた。
彼女はデモンストレーションと称し、落ち込んでしまった
小暮から二つのコントローラーを半ば奪うようにして遊びだしたのだ。
彼女曰く「後ろからずっと見てるだけなんてヤダヤダ」という事らしい。
小暮としては「うん、もう、ちょっとだけ休もう、うん」と考えているので
そこのあたりはどうでもいいようだった。

 だが、そのどうでもいいという感情はすぐに吹き飛ぶことになる。
町田が「Go beyond!」(SPA)をHARDオプションを付けて
プレーしていたその時に、小暮の携帯に着信音が鳴ったのだ。
その着信音は田中から電話が来た時に鳴るように設定されているので、
画面を見ずとも小暮は誰から電話が来たのかを知る事が出来た。
「へいへい、あー面倒くさい…」と独り言を呟きながら、小暮は携帯電話を開いて応対した。

「はいもしもし」
「中林についてなんだが……変な事が分かった」
「変な事?何でしょうか」
「パレスに…いや、白壁って言った方がいいか?」
「出来れば。でも、そんなに無理して言う必要はないですよ」
「いや、白壁と呼ぼう。んでだ。ちょっと前に白壁に聞きこみに行ったんだよ」
「あぁ、だから中林さんのDJ NAMEを聞いたんですね?」
「そうなんだが…中林のDJ NAMEは『NAKTAK』で合っているんだよな?」
「えぇ。『NAKTAK』で合ってますよ」
「おかしいんだよ。お前、町田と同レベルの…とか言ってたろ」
「はい、それはもう凄くて凄くて」
「それはいいんだ。それだけ上手いんなら、結構有名だよな?
 だから、ランカーの名が広く知れ渡ったり…だよな」
「そうですよね。でも……」

229 :旅人:2009/02/15(日) 23:21:09 ID:S8iSwL+g0
小暮はそこで言葉を濁した。そこで、田中が続きを言うように言う。

「でも、何だよ」
「『仙人』って知ってますか?」
「中国のアレか?霞食って生きるとかいう馬鹿げたアレか?」
「えぇ。馬鹿げてるかはよく分かんないですけど。
 ともかく、『仙人』という言葉は用語としてちゃんと音ゲー界にある*1…はずです」

「それってどういう意味だ?」と田中は間髪入れずに聞いた。
「確かな意味は忘れたのですが」と前置きを入れてから小暮は答える。

「滅茶苦茶上手いんですけど、IRに参加しないので無名のプレイヤーになっている、
 そんな感じの人だったんじゃないかな…大体、そういう意味です」
「ははぁ、なるほど。
 中林って奴は『仙人』と呼ばれるプレイヤーって事だ。
 だったら、白壁の聞きこみの反応も少しは納得できるな」
「それは…知らない、とか言われたんですか?」
「あぁ。知らないの一点張りでな。どういう事かと悩んでいたんだが、
『仙人』か……それなら説明がつけられるかもしれない」
「それは良かった……(ヤッターアナゴビヨナンクリデケター)」
「うん?近くに彼女が…町田がいるのか?」
「え、えぇ…(マチダサン、モウスコシシズカニシテクダサイヨ、ダイジナハナシヲシテイルノニ…)
 (エー、ナニィー?ケイジサンナノ?カワラセテー)ちょっ、何するんですか!」
「お、おい、小暮?おーい、どうしたんだよ」

通話している相手の様子が異常に変わったらしいのを聞き、
田中は少しびくついた。一体何が起きたのか。それはすぐに明かされた。

「もしもーし、刑事さん?」
「あ、町田さんでいらっしゃいましたか」

電話口の向こう側では、町田が田中と話をしたいために
彼女が小暮の携帯電話を強奪していたという事件が起きていた。
ただそれだけの話だった。だが、町田は罪悪感を抱くこともなく話を続ける。

230 :旅人:2009/02/15(日) 23:27:48 ID:S8iSwL+g0
「確かに、中林さんは『仙人』でした。
 段位も取っていなかったんじゃないかな。
『高難度なんて、たまにやる位が丁度良いんだ』って言ってました」
「いい言葉ですね。機会があったら俺も使おうっと……
 いやいや、そうではなくて。
 あなたが被害者と始めて出会った場所を教えて欲しいのですが」
「始めて出会った、うーん……
 そうだ、あそこだ。刑事さん、幸空町の『プル』って名前の小さなゲーセンです」
「幸空町の、『プル』ですね。
 分かりました。捜査のご協力、ありがとうございます。
 そうだ、小暮さんに代わって頂きたいのですが……」

「ちょっと待ってて下さい」と町田は言い、
すぐに携帯電話を持ち主の元につき返した。
持ち主、つまりは小暮の事だが、彼は携帯電話を耳にあてた。

「で、行くんですか?」
「そうだ。今から行ってみようと思う。
 そっちはそっちで事件解決を目指してくれ。それじゃあな」

田中がそう言うと通話はすぐに切れた。
小暮は携帯電話をたたみ、そしてごろんと横になった。そして、

「あーあー、事件解決なんて、そうそう上手く行くもんじゃないんだよなぁ…
 面倒くさいよなぁ………何で探偵なんかになろうとしたんだろ。フツーの仕事がしてぇよぉ……」

とやる気ゼロの呟きを残して眠りについた。
寝ちゃったよ、と町田は思わず突っ込み、そしてある物を探した。
この部屋は少々寒い。小暮が風邪をひかないようにしてやらねばなるまい。
そう思った町田は、押し入れから毛布を一枚見つけ、それを小暮の体にそっとかけてやった。

231 :旅人:2009/02/15(日) 23:30:30 ID:S8iSwL+g0
 それから町田は、裏が白いチラシとサインペンを見つけ、
何かを黙々と書いていった。その時の彼女の目は真剣そのものであった。

 約十分後、町田はため息をつくと同時に後ろから床に倒れた。
仰向けに寝る格好になった彼女の視界に、小さな壁がけ時計が目に入った。
あ、と彼女の口から洩れる。次に、彼女はゆっくりと起き上がって
チラシの裏にまた何かを書きこんで、それから外出の準備をして外へ出ていった。


 何時の間に寝てたんだろ…と思いつつ小暮が目覚めると、
身に覚えのない布団が自分の身にかけられているのに気づいた。
そして、町田に礼を言おうとして彼女の姿を探したが、
事務所の中には町田の姿が無かった。どこを探しても町田の姿は見つからなかった。
 小暮はため息をつきつつ自室に戻っていった。
一体何を考えてんだろ、あの人…と思いつつ床に座る小暮の目に何かが止まった。
それは何の変哲の無チラシだった。そう、ただのチラシだった。
小暮はそれを裏を上にし、そしてその裏に何かが書き込まれているのを見つけ、
彼は無意識のうちにそれを黙読していた。


「目指せ!クエルDPNノマゲクリア!!
 まず、手持ちのCS作品のDPlv3曲を全部プレーしよう。
 それでDPの経験を積むんだ。何事も経験が大事だから!
 次にlv4。クリア出来ないものもあるかもしれないけど、
 いちいち落ち込んでいたらキリがないよ!頑張れ!!
 そうそう、GOLDからはDPerには嬉しい仕様が追加されているよ。
 それはプレーして自分で見つけてみてね!

                それでは、昼食の準備に行ってきます。
                カップ麺二つ買ってくるから、それまで待っててね!」


カップ麺か、と小暮は笑った。
次に、自分も人の事を言えないやと彼は反省した。
自分も昼食は「いい○も」見ながらコンビニ弁当で良いや、と思っていたので。
 そう思った小暮は、次にチラシの裏に書かれていた指令に従う事にした。

「さてさて、判定の悪いハピスカは置いといて…先にゴールドから攻めるか」

そんな独り言を言いながら、彼は自室へと戻っていった。
それから数十秒後、小暮の自室は輝きが溢れるバブリーな雰囲気に満たされていった………

240 :旅人:2009/02/21(土) 01:23:48 ID:/Td24u0G0
 音安市幸空町12丁目に、田中が目指していた場所があった。
プルという名前のゲーセンだった。外見は小さな洋食屋といったふうである。
中でナポリタンでも食うか…と思ったらここゲーセンかよ、
と間違えて入店した客の為にか、そこでは洋食屋もやっていた。
 そう、プルという店はゲーセンと洋食屋が合体した店なのだ。
だからここには5鍵ビーマニがあったりする。貴重だな、と田中は思った。
IIDX筐体もあるが、今プレイヤーの手によって演奏される曲は音量が小さかった。
そういう筐体設定らしい。打鍵音も小さいことから、プレイヤーの心づかいが感じられる。
こういう店にはこれ位の曲の音量と打鍵音が丁度良い。
 余談だが、プレイヤーが演奏している曲がwith you…
である事は田中には分からなかったが、
冥や嘆きの樹とか天空脳番長(ryとか、
そんな曲であるよりはこの曲がこの場所に似合っている、と田中は感じた。

 プルで食べ物を頼むには、まずそのカウンターに行かなければならないらしい。
「いらっしゃいませー」と出迎えられないし、
「そちらの席にお座り下さい」とも言われないし、
「ご注文はいかがですかー」とも聞かれない。
 ふーん、と田中は心の中で呟き、そしてカウンターの方へ歩く。
カウンターの向かいに立つバーテンダーのような
制服を着た従業員の男がようやく口を開いた。

「いらっしゃいませ、席はご自由にどうぞ。
 ご注文はテーブルの上にありますボタンを押していただければ…」
「いや、すみませんね。そういう事じゃなくて…」

田中は男の発言を遮って言い、直ぐに次の行動を起こした。
胸ポケットに手を伸ばし、そこから掴み出されたものを見、男性は表情を変えた。

「いやぁこういう者なんですけどね。はい」
「…警察がこの店に何か用ですか?」
「そんな警戒しないでも。ちょっと話を聞きたくてですね……」
「話?」
「ええ。すぐ終わりますよ。
 ここに中林卓、いや『NAKTAK』っていう名前で通っている人って、
 もしかしてこの店の常連だったりしますか?」

241 :旅人:2009/02/21(土) 01:38:22 ID:/Td24u0G0
「そうですねぇ、いつもここには遊びに来てくれていました」
「常連って訳だ……彼について、何か知っている事をお聞かせ下さい」

そうですねぇ、と男性は考え、そして答えた。

「卓さんはいつもあのゲームで遊んでいました」
「いつもデラで…あ、続きをどうぞ」
「五鍵のビーマニも遊んでいました。
 でも、どのゲームでも卓さんが選んでいた曲って、
 落ち着いた感じのものばかりだったんです。ハウスだとか、そういうのかな」
「へぇ…滅茶苦茶上手いって聞いたんですけど、それは?」
「一度、こちらの方にお客さんがいない時に何か協奏曲のような……
 ピアノ協奏曲なのかな。それを演奏していた事があったんです」
「ピアノ協奏曲……あ、何だっけあの曲名。いいや、続けてください」
「こちらで遠目に見ても、いつもプレーしている曲とは
 降ってくる物の数が異常に多いっていうのは分かりました。
 あれが一体どれだけ難しいのかというのは、よく分からないのですが……
 それが最後の曲だったらしくて、クリアーしたんですよね。
 それで、卓さんは言ったんです。エンディング曲を流している筐体を背にして、
 こちらにつかつかと歩み寄ってきてこう言ったんです。
『いやぁごめんなさい、五月蝿かったでしょう?
 失礼を承知で頼みたいのですが、こっちの方にお客さんがいない時……
 たまにああいうのやっていいですか?滅茶苦茶ムズイ曲、たまにやりたくなるんですよ』って」

これで田中の頭の中で、少しだけ中林卓という人物の人間性が掴めてきた。
確かにあのピアノ協奏曲、H,A譜面共にかなりヤバい譜面だったような気がするその曲を、
恐らくはA譜面の同曲をクリアー出来る腕前を持ちながら
場の雰囲気に合わせた選曲が出来る人間。それが中林卓だったのだ。
確かにいい奴だ、と田中はそう思った。

242 :旅人:2009/02/21(土) 01:48:37 ID:/Td24u0G0
 その頃、町田は最寄りの大手スーパーで
買い物をするために外を歩いていた。

「うーん、帰ったら何を教えようかな…
 多分経験は十分に積んでると思うから、
 思い切ってAA(DPN)トライさせてみよっかな。
 指を開いて同時押しってどれだけ難しいか体験させないと……
 無理皿曲っていうか、旧曲はあまり触れないようにして。
 血涙(DPN)も片手でオルガンを弾かせるから、
 あれも結構ショッキングかも……革命の比じゃないと思うけど」

そんな事を呟きつつ歩いていたため、
近くをすれ違う人々が変な目で彼女を振り返って見つめたりしていたが、
そんなことは彼女にとってお構いなしのことだった。
 ただ、一人だけ反応の違った人物がいた。
黒いパーカーを着こみ、丸い銀縁眼鏡をかけた若い男だった。
その男は町田の顔を見るなり、驚いた様子で彼女に尋ねた。

「あ、あの……」
「何?何か顔についてます?」
「いいえ、あの、あなたは、あの町田、町田彩さんですか?」
「うん。そうだけど、それが?」

「いえ、すみません」と男は残して足を早めて去っていった。
町田は怪訝そうな表情を浮かべ、直ぐにそれを消して目的地へと歩いていった。

243 :旅人:2009/02/21(土) 01:55:26 ID:/Td24u0G0
 あの女!あの女は生きていたのか!
何という事だ。確かに部屋を爆破させたじゃないか!
何故生きているんだ?奴は不死身なのか!?
いや、そんな事はあり得ない。奴はゾンビか?それもあり得ない。
ただ一つ分かっている事は、この雌龍を殺さなければならないという事だ。
そうして鯉である俺が龍になる!龍になるんだ―――――!!!



 町田の全身に怖気が走った。
いや、何者かの尋常ではない殺気を全身で感じ取ったと言った方がいい。
それで彼女は、次の瞬間には走りだしていた。
だが、どれだけ逃げ走っても殺気はぐんぐん迫ってくる。
殺気を放っている人間がどんどん近付いてきているのだ。
 町田は殺されると怯えながらも、後ろに本当に人がいるのかどうか疑問に思ってしまった。
右足、左足、右足。そこで彼女は左足を前に出しながら振り向いた。


 ………それが彼女の運のツキだった。

247 :旅人的ガイドライン~ⅡDX DP ver ~ by旅人:2009/02/25(水) 00:11:09 ID:WXUYmR9Q0
 ここで物語は一旦まき戻る。
中林卓が爆殺された事が報道された時に。


 09/1/9 10:45

 音安市警察署、捜査一課の一室で
一人の男が深い悲しみの顔を浮かべていた。
自分のデスクに突っ伏し、顔を上げる事なくただ一人で泣いていた。
 中井和という名前の刑事は、その日に起きた
ある事件を知ってから、その顔に悲しみを消す事は無かった。
 音安市のツートップの音ゲーマーと言われていた
二人の人間が命を狙われ、そして一人が焼殺されたのだ。
 生きている方の人間は、前に白壁占拠事件を共に協力して、
そして解決した小暮正俊という名の探偵の家で保護されていると聞いて安心はしたが、
もう一人の放火された方の人間、中林卓の名前を思い出す度にこう思うのだ。

「なんで、どうして惜しい人間ばかりが消えていくのだろう」と。

 中井と行動を共にする事が多い田中刑事は、
未だに失意のどん底につっ立っている中井刑事を見て言った。

「なぁ、お前が嘆き悲しんだからって、
 あの中林ってプレーヤーが蘇ったり浮かばれたりすると思ってんのかよ」
「そうは言うけどおめぇ…グスッ、あの中林が……ズズッ、
 どうして放火なんてされなきゃ………」

埒が明かないな、とあきれた田中は泣き顔の中井の左手を取り、
そして強引に椅子から立ちあがらせた。ナニズンダヨ、と中井が弱々しくも反抗したので、

「お前、自分の職業分かってる?警察だよ警察。お前がその放火魔を捕まえろよ。
 そうだ、これを弔い合戦だと思え。そしたらやる気は粕程でも出るだろ」

と田中は言い放った。一瞬だけ、中井の体が止まった。その一瞬だけ、彼の呼吸が止まった。
そして次の瞬間が訪れた時、中井は短く咆哮、そして

「絶対に、絶対に中林をぶっ殺した奴を捕まえてやる!そして殺す!!!」

中井はそう宣言するかのように叫んで捜査一課を出て行った。

248 :旅人的ガイドライン~ⅡDX DP ver ~ by旅人:2009/02/25(水) 00:17:52 ID:WXUYmR9Q0
 中井はこの事件をアパート爆破事件と関係があると踏んでいた。
虫の知らせとか第六感が働いたとでもいうのか、とにかく中井は町田が危ないと考えたのだ。
 次に殺されるのは、恐らくはこの市で三番目にIIDXが上手い奴だ。
これまでの犯人の殺しの予定を書きこんだリストを考えてみると、
この市の中で一番トップ記録を持つ町田が最初に、
二番目が町田に次ぐトップスコアを記録した「TAK-0」だろう。
中林が主に「TAK-0」という名前でプレーしているのを
彼と交友関係にあった中井は知っていた。

 何故中林は「NAKTAK」と「TAK-0」を使い分けたのか。
理由は簡単だった。中林には目立ちたい願望と地味に生きたい願望があったのだ。
 中林は人の集まらない時間帯を狙って「TAK-0」としてスコアを上げる事が好きだった。
同時に「NAKTAK」として場に溶け込むことも好きだった。
今になって思えば、奴は良く分からない人間だった。
中井はそう思い、そしてそんな人間の命を奪った犯人に対する怒りを燃やしていった。


 そうして、小暮の探偵事務所の前で中井は張りこんだのだ。
彼が危惧したのは、犯人が町田を殺し損ねたのを知り、再び彼女を殺しにかかる事だった。
考えたくもないが、もしそうなるとあの探偵に事を任せるのは厳しい所がある。
中井はそう考え、あらかじめ買っておいたコーラと肉まんを口に入れながら
事務所の前で張り込みを続けていた。

249 :旅人的ガイドライン~ⅡDX DP ver ~ by旅人:2009/02/25(水) 00:23:07 ID:WXUYmR9Q0
 そして、中井がいい○もが始まるまで三十分くらい前かぁと思った時、
その時点での時刻は11:27だったのだが、事務所から誰かが出てきたのだ。

「おいおい、マジかよ・・・・・・」

中井はその人間―にこやかな笑顔を浮かべながらどこかへ出かけていく町田―
を見てそう呟かざるを得なかった。最悪の状況の成立、フェーズワン終了。
くそったれが、と中井は誰に対してか悪態をつきながら町田を車で尾行し始めた。



 町田は一体どこへ向かっているのか。
中井にはそれはさっぱり分からなかったが、
危険であるという事は十分分かっていた。
 車を走らせていくうち、近くにバス停がある事に中井は気がついた。
ここから市街地へ向かうバスが停まるはずだと中井は連想し、
続いて町田はこれに乗って白壁に行くのだろうかと予測を立てた。
 だが、この予測は別の形を伴って当たった。
町田の後方から全速力で走る眼鏡の男が、振り返った彼女の腹に何かを押しこんだのだ。
まさか、と中井は思った。あれが犯人で、町田は奴に刺されてしまったのか?
中井の嫌な想像は少し結果を違えて現実となっていった。
町田はゆっくりながらも振り返っている事から、
そして出血が認められなかった事から、町田は刺されていない事が分かった。
 それから良さ過ぎるタイミングでバスがバス停に停まった。
眼鏡男は町田の腰に右手に持つ何かを押しつけ、町田は怯えきった表情でバスに乗り込み、
その後ろに男も続いていき、彼をこのバス停最後の乗車客としたバスは発進していった。
 これを見た中井は、直ぐに田中に連絡を入れた。
これは何かヤバい感じがする。眼鏡男が放つ異様な殺気を感じ取った中井はそう思ったからだ。

「あい、こちら田中」
「中井だ。この一連の事件の犯人を見つけた」
「何だって?」
「犯人を見つけた。多分、銃か何かで町田に脅しをかけている」
「何、町田が!?どうして彼女は外に出ているんだ!」
「知るかよ!そんなもん探偵に文句言っとけ!
 それよりな、あの犯人と町田、市街地行きのバスに乗り込んだぞ!!」

250 :旅人的ガイドライン~ⅡDX DP ver ~ by旅人:2009/02/25(水) 00:32:08 ID:WXUYmR9Q0
「それが、中井が最後に言った事なんだよ探偵!」
「すみません、ちょっと疲れて寝ちゃってまして」
「馬鹿!ゲームやって寝オチかよ、冗談も大概にしておけよ!」

田中の運転する覆面パトカー車内で、田中と小暮はこんなやり取りをしていた。
中井からの連絡を受けた田中は、すぐにプルを出て事務所へと急ぎ、
事の顛末を何故かチラシの裏を眺めていた小暮に
話して聞かせて彼を同行させているのだ。
猛スピードでパトカーを運転する田中が半分叫びながら小暮に言う。

「で、奴の狙いは何だと思っているんだ!?」
「うーん、バス会社に連絡を入れるでもなし、警察にもノーコンタクト……
 うわっ、もう少しスピード落としましょうよ……
 とにかく、お金目当てではないって事はハッキリしてます」
「そんなの俺でも察しが付く!探偵、何か考えろ!!」
「町田さんが乗せられたバスは、大桟冥橋を渡って駅前に行く……
 その途中に何かあったかな……刑事さん」
「あぁ!?何だよ!?」
「あのバスが大桟冥橋を通過して、それから駅前まで途中に何か大きな建物って…」

「馬鹿か!?」と田中は大声で小暮に返した。
そして同じボリュームで田中はその問いに答える。

「パレスがあるだろ!」
「パレス…?パレスってなんでしたっけ?」
「阿呆!お前らが『白壁』とか言ってるゲーセンだろうが!!」

その答えを聞いた小暮の脳内は、凄まじいスピードで犯人の思考を推理していった。


犯人は何故、姿を現して町田を拉致してバスに乗り込んだのか。

犯人は何故、市街地へ向かうバスに乗り込んだのか。

犯人は何故、複数のルートが用意されているバスの内の白壁を通るバスを選んだのか。

犯人は何故、町田や中林といった音ゲーが滅茶苦茶上手い人間を殺そうとしたのか。



 小暮は、その脳で一瞬の内に答えを導き出した。
その脳の働きをもってすれば、穴冥だって難クリ出来る。小暮はふと思考を逸らした。





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*1 物語内での造語です