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carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle- St.5

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beatnovel

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243 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/24(木) 00:12:18 ID:CXjxjKMN0
 マキナが蠍から離れると同時に蠍が立ち上がる。
着地したマキナは振り向いて蠍の様子を見ながら無線でルセに伝える。

「全員に聞こえていると思うが、ルセ…といったか?」
「ログ、どうして機体から離脱したの!?一体何が起きたの!?」
「今のこの体の支配を握っているのは僕、マキナだよ」
「まさか、彼女を『殺した』の?」
「それは僕が剣に宿される前に持っていた人格の力だ。僕にその力は無い。
 彼女には眠ってもらっているだけだ。本当にそのままの意味で」
「それで、一体何の用?」
「早く決着をつけたいんでしょ。戦闘開始からもう10分は経ってる。
 だから、僕が地上部隊の手助けをする。奴を倒す考えもある。
 こっちの合図でこのブロックと第一ブロックを繋ぐ橋を壊してほしい」
「分かったわ」
「そこの双子、君たちはここから離れて安全な所でチャージショットの準備を。
 僕が合図をしたら、蠍と橋の入口を直線距離で結ぶようにして冷凍弾を撃って。オーケイ?」

「オーケイ!」とセリフの合致したハモり声と、蠍が動き出した音が重なった。
蠍の右の鋏が直線的な動きでマキナに向けて飛ぶ。避けなければ直撃し、ただでは済まないだろう。
 しかしマキナは剣を構えると横薙ぎに一閃、刀身を鋏に当ててはじき返した。

「嘘だろ!?」

アルベルトの驚く声が聞こえる。それもそのはず、今までのユールの姿を見てきた者ほど、
マキナのキレのいい殺陣は驚くものであるからだ。
そして、マキナの持つ剣がひと振りされると、気持ちの良い笛の音が流れるからだ。
 すぐに左の鋏が同じような動きでマキナに飛ぶ。
マキナは素早く右に横っ飛びし、空中で攻撃を避けながら横薙ぎに一閃する。
笛の音が響く。先端に鋏を生やした蠍の左腕が切断される。

「なんっちゅー切れ味だよ!?」またアルベルトが叫ぶ。

「嘘だろ!?僕があれだけ攻撃しても傷一つつけられなかったんだぞ!?」

クーリーも興奮を隠しきれない様子で叫ぶ。アリスがログの名を呼んで応援するのも聞こえた。

「仲間ってものがこれほど心に充足をもたらすものとは、今更ながら実感したよ…」

マキナが呟き、そして白い光で全身を発光させる。

「久しぶりに体を得たんだ、少し暴れてやろうか」

また呟いてにっと笑い、マキナは蠍の元へと駆けだした。

244 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/24(木) 00:22:31 ID:CXjxjKMN0
 大剣を右手に持って向かってくるマキナを蠍は針を持って出迎えた。
マキナはこれを左に横っ飛びして回避、その直後に尻尾に飛びついた。
剣を支えに尻尾を伝い、蠍の背の外殻に飛び乗る。
 蠍は高速移動して建造物に衝突したり、ジャンプや急旋回を試みて
マキナを振り落とそうとしたが、それらはすべて無駄であった。
 蠍が四度目に建造物への突撃を試みた時、マキナは激突する前に蠍から飛び降り、
建造物に突っ込んで動きを止めた蠍の生き残っている足に向かって駆けだす。

ぴぃー。ザッ!バーン!! ふぃっ。ザッ!ドーン!! ぴっ。ザッ!ドゴーン!!!

 音だけを拾い集めればそんな風に聞こえる攻撃と破壊。
マキナは蠍の残った脚部を全て破壊し、移動不能に陥らせた。

「これで、全部の脚はもいだか…何で代替してくるかな」

マキナは動けなくなった蠍から安全な位置まで離れ、そして無線を使って全員に呟いた。

「代替って、奴はまだ動くのかよ」アルベルトが問う。
「恐らく、奴はまだ何かを隠している。
 多分スペアの脚部パーツか何かだろうとは思うんだけどなぁ」

マキナはそう返し、剣を構え直して蠍を注視する。

 マキナの予想通り、脚をもがれた蠍は新たな運動手段を用いた。
下腹部から戦車などが積む無限軌道、キャタピラとブースターを出してきたのだ。

「さっきより厄介だ。頭を潰すか
 そこの双子、さっきより奴は危険だ。
 僕がどうにかして奴を止める。止めたら、合図の通りにやってくれよ」

マキナは無線でそれだけ言い、双子からの返事を受けて、再三蠍へ駆けていった。

245 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/24(木) 00:28:05 ID:CXjxjKMN0
 蠍がブースターを噴かして上昇、旋回してマキナの方を向く。
そして蠍が着地、右の鋏でマキナを殴ろうとする。
マキナはバク宙して回避、長い黒髪をなびかせながら着地、
続けて繰り出される針の刺突を剣を両手に構え、剣で受ける姿勢を取るが、
それで受ける事はせずにバックステップで回避する。



「戦い慣れしているな」

フェニックスに搭乗するイロンが呟く。
その呟きは、ルセ一人に向けられている。

「そうね。やっぱり、マキナは強い」
「自分の体ではないとはいえ、あそこまでの能力を発揮できるのか?」
「それは『心の光』の力をユールも持っているからじゃない?」
「マキナの言っていたアレか。素晴らしい力だよな」
「えぇ。無限に湧き出る『光』を色んなものに変換できるのよね。
 身体能力の強化や様々な攻撃や移動方法が可能になるとか言っていたかしら。
 手のひらから光の弾を撃ちだしたり、キックの威力を何倍にも跳ね上げたり、多段ジャンプしたり」

ルセはそう言って基地から発進させた小型の偵察機を通し、
第三ブロックの戦闘の様子を観察しながら呟いた。

「そのうち、空、飛んじゃうんじゃない?」



 そんな会話がやり取りされているとは露知らず、
マキナは何度目かの針の刺突を今度は右に横っ飛びして避ける。
横っ飛びして空中に浮くマキナの体の移動ライン上に、白い魔方陣のような床が広がる。
マキナはそれを踏み、大きくジャンプして空いている左手を蠍に向ける。
その瞬間、左手から目にも留まらぬスピードで白い光の粒が蠍の背に向かって飛翔する。
それらは全て尻尾に着弾、衝撃と熱で尻尾が焦げ付き、そして折れる。
 仲間達が驚きの声を上げるのを聞きながら、マキナは再び蠍の背中に飛び乗る。
そのまま頭部へ駆けだし、首の端に剣を添え、一閃する。
あっけなく蠍の頭が地に落ち、機械の脳を失った蠍は行動不能になった。

 本当にあっけなかった。マキナはとても簡単そうに、機械仕掛けの蠍を破壊したのである。

246 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/24(木) 00:31:13 ID:CXjxjKMN0
「後は証拠隠滅っと…」

マキナはそう呟き、第一ブロックの方角を向く。
目線の先には第一ブロックと第三ブロックを繋ぐ橋があった。

「よし、双子さん、蠍と橋を直線距離で結ぶラインを思い描いて。
 描けたら、そのライン上を凍てつかせるんだ。冷凍弾、撃てるでしょ?」

数秒間が空き、マキナの無線での呼びかけに双子が答える。
直ぐに蠍と橋を結ぶ凍てついた道が出来上がり、それを見たマキナが無線でルセに言う。

「僕が蠍を蹴っ飛ばして橋に持っていくから、橋の爆破を頼む」
「海の底に落とすの?」
「あぁ、証拠隠滅のためだ。ライオンの処理も手早くすませた方がいいよ」

言うなり、マキナは右足を光らせ、その足でサッカーボールでも蹴るような感じで
動かなくなった蠍を蹴飛ばす。ズズズ…といったふうに動き出した蠍は
氷の道に差し掛かると、勢いを殺さずにツーっと滑り出していく。
 蠍の橋への進入角度的に考えると、橋を渡るのは無理であったが、
マキナが走って橋の前に先回りし、蠍を待ち構えていた。
左足に光を溜め、段々と接近してくる蠍を、

「おぉぉおおりゃああぁぁあああぁぁあああ!!!!」

気合いの大声を上げ、左足で廻し蹴りを蠍に喰らわせた。
それが起爆剤になったかのように、蠍の動くスピードが急速に上がる。
ガガガガガガガガ!!!!!と五月蝿い摩擦音をたて、蠍は橋を渡っていく。

「今!爆破!」
「了解!スタンバイオーケイ、デトネイション!!!」

ルセの号令と同時に橋がドゴオオオォォォォォォオォォォンンンン!!!!!!!!!!!
といった擬音じゃ表しきれないもの凄い爆音を立てて爆発した。
橋の爆破の衝撃で蠍の装甲が辺りに飛び散り、本体が海面で高い飛沫を上げ、
そして何事も無かったのかのように、蠍の沈んだ海に広がる波紋は止んでいった……


 蠍を見送ったマキナは、オールコネクションで全員に無線で呼びかける。

「さて…次の敵さんが来るまで、昔話でもしようかな。聞きたいって人だけ聞いてくれればいいよ」

マキナのその呼びかけに、無線を切る者は誰もいなかった。

259 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/12(月) 23:36:09 ID:/JwPrryk0
「あんたの昔話って…何なんだ?」

クーリーが言った。他の者達は一切喋らないので、彼が代表のように聞こえる。
マキナはログにはもう詳しく話したが、と断りを入れてから話す。

「僕が千年前の人間だって知ってる人、いる?
 居てもいなくてもいいんだけどさ、もしかしたら、知ってても忘れた…とかかもしれないし。
 まぁいいや。まずは自己紹介からだ。
 僕は千年前に生きていた人間で、ユールと同じ『光に選ばれた』人間だ。
 西暦二千年代の危機に立ち向かって、死んで、剣の中に魂を入れていた。
 僕が生前何をしていたかっていう話をするんだけど、生憎、口下手なんだよね。
 この場においては関係のない話をするかもしれないけど、最後に関係のある事を言うから。
 とにかく、誰かに聞いてほしいんだ…オーケイ?」

全員が是と返し、マキナは話の続きを始める。

「んー、どこから話せばいいかな。そうだ、この話をしよう。
 僕はある大金持ちの家の子供でね。音ゲーが好きだったんだけど、ちょっとトラブってね。
 まぁゲーセンの対人関係っていうか。あの時は子供だったからあれはショックだったなぁ。
 下手糞は帰れって言うんだもん。逃げ帰るようにして家に帰ろうとしたら、
 旅の流れ者の人がさ、僕に言ったんだよ。上手くなれって。上手くなって奴を見返してやれと。
 で、その旅の人にね、コーチになって下さいって言ったの。ポップンのね、うん。
 そんで一週間だけお願いして、僕を嘲笑った人を越えて、で、旅の人と一緒に頑張って
 そのゲーセンね、客の態度がなっていなかったんだけどね、どうにか普通な感じに戻したんだ。
 また、一週間旅の人と頑張ってさ。それで、その人とお別れしたんだ」

それが僕のターニングポイントだったかもしれないなぁ…とマキナは遠い昔を思い出すかのように
そこで言葉を止め、しばらく黙っていた。数秒が経ち、マキナは突然思い出したように言う。

「そうそう、実名を出すのはアレだからね、言わないけど、
 まぁ当の本人達は死んでるからいいのかもしれないけどね、とりあえず名前は出さないで話すけど、
 当時モグリのランカー並みの腕前を持つ女性と、行動派の凄腕探偵の男性と付き合いがあってね。
 二人は仲が良かったみたいだけど、別に男と女の関係って訳じゃなかった。うん、確かそうだ」

そこでマキナは「あー」と伸ばして言い、言葉を探す。しばらくそうして、唐突に続ける。

「田舎の高級ホテルの騒動やゲーセン騒動とか、色々あったなぁ、あの探偵さん。
 凄腕の女性も、探偵さんの絡んでる事件の殆どに絡んでてね。中々面白かった。
 その話はまたの機会があれば話すとして…ま、これからが本題かな」

260 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/12(月) 23:42:37 ID:/JwPrryk0
「『大富豪』って名前の殺し屋組織があったんだ。
 奴らの一人一人の名前はトランプの数字になっててね。
 そいつらが音ゲーマー全員の抹殺を目論んでいた」

マキナがそれを言った途端、ルセとイロンを除く全員が叫ぶ。

「は!?」「何で!?」「嘘っ!?」「ええぇ!!?」

「双子…またハモってないね。まぁいいや。
 で、どうにかそれは食い止めた。でも、それは二度目の危機じゃなかったんだ。
 次に大きな事件が起きようとして、それを僕が止めたんだけど…
 その大富豪のルーキーの『9』が地球上の全人類の全滅を目論んだんだ」

「その…ナインって何者だ?」 クーリーが聞いた。

「大富豪に入る前は『狩りプレイヤーを狩るプレイヤー』として活動していた。
 狩りって行為はみんな知ってるよね?ネット対戦とかで、自分よりも明らかに
 実力の低いプレーヤーを相手に白星を上げる、とても卑劣な行為だよ。
 それを彼は許せなかったんだろうね。色々な事情があって
 そんな風なプレーをしていると前に語ってくれたよ。でも…」

まさか、大富豪に入るなんてなぁ…と悲しげな声色でマキナは言い、そして黙る。続ける。

「多分、彼にはこんな黒い感情が流れていたに違いないんだ。
『人間ってのは悪い生き物だ。だから全滅しなくちゃいけない』みたいな。
 ま、根っからの善人なんて何処捜したって見つかりっこないし、
 誰もが何かしらの黒い面ってのは抱えると思うんだけどね。
 それにしても、そういう理由で心を闇に染めてしまうなんて…イテテ」

突然、マキナが胸の辺りを押さえてうずくまった。
それを見たクーリーが必死になってマキナに呼びかけをする。

「おい、マキナ、ログの体か!?負担をかけているんだったら戻れよ!!」
「いや…違う」
「じゃあ何だ!!!」
「この体の心がさ、言うんだ…『善人はいる。それは君だ』って」

クーリーは黙った。自分のことを褒められて恥ずかしくて黙ったのか、
嬉しくて黙ったのか。それとも、別の感情を抱いて黙ったのか。それは彼のみぞ知る。

261 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/12(月) 23:44:55 ID:/JwPrryk0
「それで、色々あって、僕は千年前の光に選ばれた人の魂を手にすることが出来た。
 最高の鍛冶師に剣を作ってもらった。仲間達が最高のバックアップをしてくれた。
 だから僕は9を…いや、こう言うべきなんだろうね」

いって、少し間を置いてからマキナは言う。

「二度目の闇の顔…『全てを破壊するもの』って。
 でも僕は彼を9と呼びたい。…で、僕は9を倒した。いや、殺した。僕も殺された」

そこでまたマキナは間を開ける。聴衆となったユールの仲間達は皆黙るしかなかった。
その沈黙は長く続き、「で」のマキナの一声でスピーチが再開される。

「僕は一人で突っ走ったから死んだ。彼女には僕のような道をなぞって死んで欲しくは無い。
 だから、君たちの協力が必要だと思って、こんな迷惑をかけた。
 本当にすまないと思っている。でも、そう思っていても、お願いだ。
 これからも、彼女の為に、君たちの力を貸してほしい…頼む」

マキナはそう言って、もう喋らなくなった。
ユールの体が少しぐらついて、剣を床につき立てて体勢を立て直す。
そしてユールは目を瞑る。その双眸からは一筋の涙が流れていた。

「私からもお願い…あなた達の力を、私に」
「…君なんだね?」
「うん。クウ、そうだよ。私だよ。あなたの親友の、私だよ」
「大丈夫。僕は君に力を貸す。協力する。これからもずっとだ…君たちは?」

クーリーがアルベルト、アリス、キリーに向けて問うた。三人の答えはこうだ。

「当り前だ!一旦手ェ貸したら、最後まで俺は引っ込めないからな!!」
「当り前よ!あなたと協力する事が、ここを守るって事にもつながるんだもの!」
「アンタのいない生活って、全然考えられないからね。
 あの剣の人のようには絶対にさせないから!!直接ではないけど、アンタの為に!!」

その言葉を聞いたユールは、堰を切ったように涙を流していた。
ありがとう、ありがとう!…しばらくの間、彼女は泣きながら叫んでいた。

262 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/12(月) 23:49:30 ID:/JwPrryk0
 マキナがユールに体を返し、仲間達が決意を改めて固めていた頃。
ルセはニヤニヤしつつ、自分のみに送られてくる無線に耳を傾ける。相手はイロンだった。

「大変な事が分かった」
「何?」
「島への攻撃部隊からの連絡で、奴ら、島にいないって事が分かった」
「…じゃ、総帥は?他の二つの兵器は?」
「烏賊がいない。で、鷹と人のアレが厳重に保管されているそうだ」
「という事は、そろそろこっちのレーダーで捉えれるということ…
 そっちの方で人型可変機動の方はそっちで破壊できない?」
「今、爆弾で破壊を試みていると言っている。
 総帥がいない以上、この島は用済みだからな…地図から消えても構わないだろう」
「跡形もなく吹き飛ばすのはやめて。ターゲットのみの消滅をお願い」
「分かった……そっちのレーダーに烏賊の反応は無いのか?」
「まだ」
「……嫌な予感がする。航空部隊を哨戒飛行に出してくれ。
 フェニックスでも全方位の監視はしているが、こっちはあまり精度が良くない。
 近くで彼らに見てもらうのが一番だと思う」
「了解。すぐに彼らに指示を出すわ」
「そうそう、ルセ、お前も出撃の用意をした方がいいかもしれないぞ」
「え?」
「ログのあの戦闘能力…支援機に乗せていては十分に発揮できないだろう」
「そうれはそうね…でも」
「でも、どうした?」
「それだけ彼女が危険な目に遭うって事よ?」
「お前とクウで守ってやればいい。大丈夫。ログなら大丈夫だ。あの少年も頼りになる」
「…かもしれないけどね。とりあえず、準備だけはしておく」

「それともう一つ」イロンが言い、続ける。

「クウについてなんだが…」
「彼がどうかした?」
「あの短期間で、奴が私並みにあの機体を扱えているって事に気がついたか?」
「蠍戦の時にやってのけたわよね、海面スレスレの超低空飛行、そこからの猛攻。
 彼が高所恐怖症だって事を忘れさせる働きぶりだった」
「アイツ、先天的にこのテの物の操縦が上手いのか、あるいは…」
「そうなんじゃないの?」
「いや、前に聞いた話があってな。…WSFの本部が、約20年前に……」

263 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/12(月) 23:54:21 ID:/JwPrryk0
 ルセからの指示を受け、ノエル航空部隊は哨戒飛行に入った。
ユールが第二ブロックを、クーリーが第四ブロックを見て回る事になり、
二人は無線で話をしながら異常がないかどうかを観察する。

「もう、人間じゃなくなってきたみたいだ」
「…それについては否定しないよ」
「ちょっとジャンプしただけで、私の機体が滞空していた高度まで上がれるなんて…」
「大体200メートルくらいだったよね」
「…クウは、こんな私でも大丈夫だって言うの?」
「言うね。そんなの全く関係が無いじゃないか。
 僕がそんな事で君を嫌いになると思うかい?そうだろ、ないだろ?
 だから、君が悩む必要なんてない。どこにもないんだ」

ありがとう、とユールは呟き、無線を切る。
クーリーは一度目を瞑り、そして開く。

「嬉しい事言ってくれて、こっちこそありがとうだよ、ユール……ん?」

クーリーの視界の中に何かの違和があった。
北方の海が何かおかしい。海面に波紋がある訳でもないが、何かがおかしい。

「レーダーには何も映ってない。
 ステルスかもしれない。でも、レーダーと視覚に対するステルスなら、まさか…」

まさか、感づいているというのか?
クーリーは自分でも信じられないような確信を胸に、違和感を覚えた場所へ急行する。

「ノエル2、一体どうしたの!?」ルセの声だ。

「北の海、なにかおかしいんです。
 視覚とレーダーに対するステルス性を備え持つ何かだと思いますが、
 僕が視認出来る訳がありませんし。でも、第六感というか、
 そんなのが僕に告げてくれて…これから調べてみようと思います」
「分かった。こっちもあなたの向かう方に各種センサーを向けて探知する」

「お願いします」とクーリーは言って無線を切る。
レーダーを見ると、ユールの機体が自分の後を追ってきているのが分かった。

「ログ、どうしたの?」
「何か見つかったのかなって思って」
「多分、敵じゃないかとは思うんだよね…何となく」

264 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/12(月) 23:56:51 ID:/JwPrryk0
 ユールはクーリーと共に付近の捜索をしたが、特に怪しいものは見当たらなかった。
クーリーが適当な事を言っているかもとユールは考えたが、
それは彼の性格を考えるとあり得ない事だと気づき、それに間違いだとしても彼を責める事は出来ない。
少しでもクーリーを疑った自分が恥ずかしくなり、少し高度を下げる。

「何だ!?」

ネックレスに戻ったマキナが叫んだ。
何かを見つけたのか、その声は驚きに満ちている。

「どうしたの!?」
「今、海底を高速で何かが…大きな円筒状の、何かが…」
「ログ!」
「クウ、さっき今マキナが…」
「何か見えた。海底を高速で移動する何かだ!後を追おう!!ルセさん、聞こえますか!?」
「敵が見つかったの!?」
「分かりません。確かなのは、海底を高速で移動する何かです。第四ブロックの方角へ向かっています!」
「こっちのセンサー類では何も捉えられない。
 君たちの錯覚って事になるかもしれないけど、とりあえずそっちに任せる」

ルセはそう言って無線を切り、イロンコネクションでイロンと無線で話す。

「次の敵が第四ブロックに来るみたい!」
「こっちの探査も上手くいってない。気づいたのは誰だ」
「クウよ」
「…やはり、先程話した件、当たりかもしれない」
「クウが、私達の?」
「『私達の』では語弊がある。正確には『彼等』だ」
「…本部の連中が?」
「出来れば、そっちの方で本部のデータベースを調べて欲しい。
 あと、クウの出生時の状況とか、出来ればの話だが」
「分かった。出来ればやってみる」

「すまない」この言葉を最後にイロンが無線を切った。
ルセは難しい顔をし、近くのスタッフにイロンから頼まれた事を話し、調べさせた。
彼女は自分の端末に向き直り、無意識の内に呟いていた。

「まさか彼が『例の計画』の被験者だとでもいうの…?」

265 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/13(火) 00:08:13 ID:dsjhuEj90
「もし、敵が海の底にいるのだとしたら、こちらからは攻撃できない…考えたな」

クーリーはログコネクションでユールと無線で話しながら第四ブロックへ急いでいた。
勿論、ユールもクーリーに追従し、視線は彼と同じ海の底へ向けている。

「こっちの速射砲も、レールガンも届かないよね」
「切り札の中に、何か海の底でも攻撃できるような物が無いか確認する」
「分かった。本当に私達が飛んでいる真下に敵がいるの?」
「僕の勘だ。当たってるかどうかは疑わしい。第四ブロックに僕たち以外の戦力は?」
「無いわ。でも、烏賊の装甲って薄いんでしょう?」
「でも、速いさ。今までの奴らと比べると、滅茶苦茶強いと思うよ」

クーリーはそう言ってしばらく黙った。
彼らのいる地点から第四ブロックまでの直線距離はおよそ2キロメートル。
敵は一分もしない内に第四ブロックへと到達するスピードを維持している。
 クーリーが海中への対象を攻撃する切り札が無い事を無線でユールに伝える。
そして、クーリーはユールと話を続けた。

「ユール、おかしいと思わない?」
「何が?」
「もうこれだけ距離が近いんだ」
「そろそろ戦闘開始になるかもしれないね」
「いや、そういう事じゃなくて。視覚、レーダーに対するステルス性を持っていたとしても
 必ず何か穴があるはずなんだ。その穴を突いて、そういった物を確認できるはずなんだ」
「うん。それで?」
「だから、ターミナルタワーの地下基地の探査能力ってこれほどまでに低かったかなって。
 有事の際への体制はしっかりしてなきゃいけないのに、これは無いんじゃないかと思ったんだ」
「つまり、もっと基地の探査性を上げてしっかり備えておけよって事?」
「縮めればそうなるかな。でも、本当に言いたいのはそういう事じゃなくて…」

「そういう事じゃなくて?」とユールはクーリーに聞く。数秒してクーリーが言う。

「何か…多分、ハッキングか何かを受けて、探査センサーとかがやられているのかもな…って」

266 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/13(火) 00:15:10 ID:dsjhuEj90
 ユール達が攻撃を加える事も、基地のセンサー類が何も探知できないまま、
海底を突き進む何かは第四ブロックの海底の土台に激突した。
ミサイルの類ではないようで、爆発こそしなかったが衝撃は大きい。
それでも、その衝撃で第四ブロックが傾く事は無かった。
 その後にようやくユール達全員がレーダーを通して敵の存在を確認できた。
基地のセンサーも役目を果たすようになり、状況把握が進んでいく。
それによると、烏賊型超高機動制地兵器が何かによって包まれ、
その何かが激突する前に兵器だけが脱出した事が分かる。
ユールはクーリーに呼びかけ、臨戦態勢を整える。いつでも攻撃が出来るようにだ。


 第四ブロックは摩天楼のような作りになっているが、人工的な明かりが無い。
街灯の明かりが点いていないし、何らかのライトアップ等もされていない。
普段の通常営業中では、これは全くあり得ない事だった。
いたるところに街灯が設置され、鏡張りのビル群がその光を跳ね返し、より眩しくさせるのだ。
 これを知っていたユールは停電か何かのアクシデントが発生したのだろうと思い、
ルセに第四ブロックの明かりを点けて欲しいと要請した。

「照明を?第四ブロックの照明は殆どついているはずよ」
「いや、点いていないわ。真っ暗で見通しが悪い」
「こっちの計器類では明かりはついていることを示している。
 こんな時に故障?…ノエル1、照明弾を積んでいる?」
「いつでも撃てるけど」
「こっちの方で明かりはどうにかする。
 一分もかからないはずだから、それまで照明弾で対応して」

「了解」とユールは返して無線を切り、上空に向けて照明弾を撃つ。
空中で弾体が炸裂、強烈な光によってコントラストの大きな世界が辺り一帯に広がる。
見づらい視界だなとユールが思い、そしてクーリーから無線連絡を受ける。

「結構明るくなったよね」
「ここまで光が強烈だとは思わなかった。結構見づらいよ」
「それはそうだけども、第四ブロックの方を見て。凄い事になってる」

ユールは言われた通りに視線を海面から第四ブロックの方に向ける。
摩天楼を形作るビルの鏡の窓が上空から受ける強烈な光を反射し、
反射された光がべつのビルの鏡の窓で反射される。
そんな反射の連続で、一気に第四ブロック全体が明るくなっていった。

267 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/10/13(火) 00:23:30 ID:dsjhuEj90
「まるで烏賊漁のようだ」

マキナが呟いた。ユールにとっては突拍子も無かった事なのか、
思わずオウム返しをして聞き返してしまう。マキナが少し間を開けて答える。

「烏賊の漁のやり方って、船に沢山照明を積んで光らせるんだよ。
 それで烏賊を集める。烏賊は明るい所に行く習性があるからね。
 集まった所を一気に持っていく。そういう漁のやり方なんだ」
「…待って」
「ん?」
「私達が相手にしているのは機械よね?」
「そうだね」
「機械なら、その習性は受け継がない…?」
「どうだろう、遊び心のある人が設計したなら習性もトレースさせるかも。
 でも、相手は戦闘用の機械、兵器だからね。そんなものを持ち合わせる必要がな…」

マキナの言葉が途切れる。ユールもどうしたの、と返さない。
海から大きな音が響く。それは段々と大きくなり、そして…

「ふざけているんだろうかね、アレの設計者は…」

マキナの呟きを受けながら、烏賊型超高機動制地兵器の姿が大きな飛沫の中に見えた。




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