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carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle- St.6

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beatnovel

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286 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/19(月) 00:01:02 ID:tSVlN2XO0
「嘘でしょ!?あの兵器に烏賊漁の方法が通じちゃったのッ!?」

ユールが海面から飛び上がった烏賊に向けて叫ぶ。
そんな驚きを見せる彼女に、クーリーから無線連絡が入った。

「ノエル2よりノエル1」
「何?」
「烏賊が海面から出てきたけど、これって…」
「マキナが教えてくれた。烏賊漁のやり方にそっくりだって!」
「僕もそう思った。それで…」
「海面での戦いかもと思ったけど、島の上での戦いになりそうね!」
「海上の機動力がどれ程のものかは見れないけど、ハンデを貰ってる内に倒そう。
 陸上なら幾らかは戦いやすくなるはず。僕が先に行くよ!」

クーリーは叫び、眩い第四ブロックへ向かう烏賊の後を追う。



 ここで烏賊型超高機動制地兵器についておさらいしておく。
これについては、ブリーフィングの回を見て頂ければお分かりになると思われるが、
この場で改めて説明しておいた方が便利だろうと考え、ここに書く事にする。

 これまでの獅子型、蠍型は元となる動物をある程度再現していた。
烏賊型も八本の腕を持つなどのある程度の再現こそなされているものの、
あの軟体性は再現されていない。それに、様々な点が違ってくる。
 烏賊の体を思い出してほしい。頭の中でイメージして頂いたであろうか。
これの体はあなたの想像した烏賊の体とは全く違うのである。
例えるなら、鳥の足のような形をしている。全く、不可思議な形をしている。
 そして、三又に分かれた体の先に正四面体が載っている。それらは全てジェネレータだ。
海上での圧倒的な機動力をもって優位に立とうとするコンセプトを持つこの兵器は
構造上機体内部にジェネレータを積むことが出来なかったのだ。

 弱点は外部取り付けのジェネレータ、そして他の三機に比べると最も薄い装甲を持つボディ。
長所はそれを補うに余りある海上での機動力、そしてそれをもってしての攻撃力である。
八本の腕の先端にある高威力レーザー砲。浮遊する一対の分厚い板。
これらをもってして、烏賊は地上への破壊と自身に迫る脅威を排除行為を為すのである。

287 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/19(月) 00:07:36 ID:tSVlN2XO0
 そんな烏賊には元となる生物の習性が継承されていた。
先にも書いた「明るい場所への接近」がその習性に相当する。
烏賊はその習性通り、今この場で一番明るい第四ブロック中心地を目指す。
八本の腕の先からレーザーを放ち、浮遊する一対の板を飛ばして辺り一帯を破壊していく。
 地上での動きはかなり遅い。そのスピードは時速10km/hにも満たないかもしれない。
ノエル航空部隊の接近を許さないのは、圧倒的な破壊力だけだった。
その破壊力を前に、遠く離れた所から撃ち続けるユールが声を上げる。

「敵のレーザーの威力、ライオンが積んでたのと桁が違う!」
「…こっちも近づいて分かったんだけど、
 あの烏賊、しっかり対象を狙って攻撃してくる。接近は禁物ぅわぁっ!」
「大丈夫!?」
「危なかった、これから離脱する!」

烏賊に接近して行動パターンの分析を試みていたクーリーが烏賊から離れる。
その間にも容赦ない追撃がクーリーを襲うが、彼の操縦が上手いのからか擦りもしない。
クーリーはユールの横に並んで烏賊を撃つ。鍵盤を連打しながらユールに無線連絡する。

「切り札で一気に削ろうと思う」
「そんな簡単に使って大丈夫なの?」
「起動までに時間がかかるだけだと思う。
 機体に滅茶苦茶な負荷がかかる訳でもないし、僕がダメージを負うわけでもない」
「じゃ、時間稼ぎが必要ね?」
「そうなるね。今向いている方向を12時の方向として、2時の方向に照明弾を撃って。
 弾を破裂させる場所は陸地の上が好ましいけど、やってくれる?」

「任せて!」ユールが言い、両側の白ボタンを押す。
ユールの機体から照明弾が発射され、陸地の上で破裂し、強烈な光を放つ。
クーリーの読み通り、照明弾の輝く場所へと烏賊は進む。
辺り一帯を破壊しつつ光に向かうその姿には後光が差して見えていた。

288 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/19(月) 00:14:58 ID:tSVlN2XO0
「マキナ、奴を一気に破壊できるような切り札を頼む」

クーリーは亀のように遅く動く烏賊を見つめながら無線でそう言った。

「それだけの切り札を要求してくるとはね。
 君、そのゲームは上手いかもしれないけど、これはどうだい?
 ……『誰も辿り着けなかった、今や仲間外れの惑星』……
 処理の程度が90%程でも十分な攻撃力は期待できる」

その言葉を受けたクーリーの顔が、瞬時に真っ青になっていく。
マキナが何の曲を認証させたかが分かってしまったのだ。

「ちょ、待て…待てって、それ無理だって!!
 せめてさ、ホラ、桜とかで良いじゃん!!若しくは⇒(A)の穴!
 アレのあの縦連とかでも良いじゃん!!!アレなら完璧に出来…」
「もう認証は終わった。帰還する事が出来ない旅だったらしいが、そんなのは間違いだ。
 過去の先人達がそれを証明している。君にだって出来る」
「…これ、処理が90%を切ったら?」
「加速度的に威力は下がる。白壁以下の攻撃力になるのは70%辺りを下回ってからだ」
「処理の定義って、一体何だった?」
「(全ノーツ数)÷(有効ノーツ数)だよ。九割の1800ノーツを処理すりゃいいんだ。簡単でしょ?」
「1800ノーツの処理か…最悪でもBPは200までに抑えなければ真価を発揮しない……
 あぁ畜生、この曲、初めてやるんだぞ?しかも史上最悪のワンモア…やるしかないのかぁ……」

289 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/19(月) 00:23:45 ID:tSVlN2XO0
 その頃、ダブルエース地上迎撃部隊は、ターミナルタワーの基地へ帰還していた。
二人は負傷した体の手当てを受け、司令室のルセの前に現れた。

「良くやってくれました。ありがとう」
「まだだ、まだクーリーとユールがいる!」
「そうよ、彼らだけ見殺しになんか出来ない。私達に何かできる事は!?」

ルセが労をねぎらうと、二人は何故か怒った様子でルセに言った。
アルベルトがルセに怒鳴るようにして続ける。

「もうやる事は無いのかもしれないが、
 あいつらの力になれる事が何かあるはずだ!!」
「ただ黙ってじっとしているなんて嫌!
 何でもいいから、二人の手助けがしたいの!!」

二人は熱心に自分の意思をルセに伝える。
ユールとクーリーを助けたい。見殺しにするようなことは出来ない。
二人の目が熱く語り、その熱意に押されたルセは言った。

「じゃ、私の代わりに私の仕事をして」
「は?」「え?」
「何でもいいんでしょ?ここで色んな指示を出したりして欲しいの。
 サポートなら、ここのスタッフがきちんとやってくれるから安心して。
 私は私でやる事があるから、ここを出ていかなきゃ」

ルセはそう言いつつ、腰かけていた椅子から腰を浮かす。
アルベルトが納得いかない表情でルセに問うた。

「なぁ、どうしてアンタがここを出なきゃならない?」
「あなた達も見たでしょ?ユール個人の圧倒的な力を。
 あの支援機に乗せておいたままだったらもったいない。だから、私が支援機を乗り継ぐ。
 その旨を無線で伝えておいて。連絡班!兵器廠の人にタワー屋上に
 フライングプラットフォームの手配をお願い!あなた達は直ぐに無線でユールにこのことを伝えて!」

ルセはそう言うと司令室を飛び出し、そこに残されたのは熱心に自分の仕事を処理するスタッフと
何が何だか分からなくなった双子がいるだけであった。

290 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/19(月) 00:29:33 ID:tSVlN2XO0
「こちらターミナル基地。ノエル1に告ぎます。
 ルーズ特殊部隊のルセがそちらへ出向くそうです」
「え、ルセがこっちに来る?」
「そうです。今からあなたの飛行位置を指定します。
 時間が来たら、レーダーに点滅されるポイントへ急行して下さい」
「でも、どうしてです?私、そんなに使えませんか?」
「使えるからこそ、あなたはそれから降りて欲しいのだと思います。
 あの蠍の時のように、十分過ぎる戦力になってくれればと彼女は思っているのでは…」
「でも、あれはマキナが……いえ、分かりました。それまで戦闘を続けます」

切り札の準備をしているクーリーのために時間稼ぎの戦いをしている
ユールの元にいきなりの無線連絡が入った。それもログコネクションで。
烏賊が近くの建物の破壊に夢中になっているので、
ユールにはある程度の余裕が出来ており、落ち着いて応答する事が出来た。
だから、クーリーにこの事を知らせるのも、また余裕をもって知らせる事が出来る。

「ノエル1よりノエル2。クウ、聞こえる?」
「あぁ聞こえてる……え?何だこの加速!!うわあぁぁああ!!!」
「低速からの加速は全力をもって処理に徹するしかない。
 それで、彼女の代わりに僕が言うよ。今からルセがこっちに来る。
 つまるところ、ログとルセで交代するって事だね」
「分かった…お?だいぶ楽になった!ウィニングロード!!ヤホーィ!!!」
「…ログ、彼ってこんな性格していたっけ?」
「時々、ノッてくるとこういう感じになるかな」
「意外な二面性を発見…ってとこだね
 そうだ、そろそろ切り札入力は終わるはずだけど、どうだった?」
「待ってくれ……81%。81%だ!」
「という事はフルパワーに近い威力で撃てるな…決めてやれ!」

オーケイを返事に、クーリーが白鍵を押す。
それが切り札「2000ノーツ」のトリガーとなった。

291 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/19(月) 00:36:48 ID:tSVlN2XO0
 クーリーの機体から物凄い勢いで大量の弾が発射される。
回避する間もないスピード、そして必中の命中率。
それらを有するバルカンでもライフルでもない弾は全て烏賊の全身に着弾する。
 30秒もの切り札による猛攻が終わり、立ち上る黒煙が晴れていく。
その先に烏賊の姿は見えた。その姿は装甲の大部分を削られてボロボロである。
ユールは傷ついた烏賊に接近、迎撃すらできない烏賊にレールガンを何発も浴びせる。
 六発目の弾体が着弾した時、勝敗は決していた。
烏賊の体が鈍く軋む金属音を立てながら後方へ大きく傾き、
そのまま浮遊する。その途中、高度は下がっていく。
第四ブロックの陸地から離れた所でとうとう着水。その場で烏賊は沈んでいった。
 烏賊を見送ったユールが言う。

「終わった…んだよね」
「もう終わった。勝ったんだよ」

クーリーがそう答える。その声には疲れが見え隠れしていた。
良かったとユールが呟くが、それに水を差すようにマキナが言う。

「終わるもんか。奴はまた現れる」
「どうして」
「今までそうだった。ライオンの時を思い出して。
 一度行動不能に追い込んだけど、その後復活したでしょ?」
「あ…」
「蠍だってそうだ。全部の脚を使えなくしたら
 移動手段をキャタピラとブースターに換えて復活した」
「そういえば…」
「だから、烏賊だって何かしらの方法で復活する。
 それを倒すまで油断は出来ない。二人とも、十分な高度を取っておいた方が良い」

297 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/24(土) 23:45:40 ID:7xRok8oN0
 ここで一度舞台を変える。総帥がヘリコプターで降り立ったとされる島だ。
そして時間も少し遡る。そうでないとこの話を進められないからだ。


 島の攻撃部隊は五人で一チームを組む。
そのチームが三つであったのと、ヘリコプターの操縦者なども考えると
攻撃部隊の総員はおよそ20人はいたのではないかと思われる。
 捜索班、突撃班、工作班の三チームに分けて島へ向かったらしい。
そう言った事が、私の手元にある資料に記載されている。


ここで話を変える。進行上読まなくても差し支えは無いが、一度読むことを勧める。
進行の阻害にならないようにこれを挿話できれば良かったのだが、それが出来ないほど私は無力なのだ。


 僅かな人間しか知らなかった事だが、この島には研究施設があった。
この島でカーニバルを襲う四機が製造され、それに立ち向かう兵器が製造された。
元々、カーニバル防衛のための軍事研究という名目で秘密裏にこれらの開発が進められていった。

 しかし、研究が順調に進んでいっていた中で研究中止命令が出た。
予算の関係上これ以上は無理という事で、これに関わっていた多くの人間が悔やむところとなっただろう。
 ちなみに、この時点で既に完成していた代物がある。
バレンタイン姉弟の持つギター型の銃と、ユールとクーリーの搭乗する最新鋭戦闘機である。
余談だが、キリーが踊るDDRのアレはカーニバル建造時に
同時進行で製造されていたので、この件とは関わりが全く無い。

 研究と開発がストップして以来、放置されたプロジェクトがあった。
カーニバル防衛の最終兵器。四つの動物を想起するそれらは、この時は未完成であった。
そこに目を付けたのが総帥だった。彼はその島に自らの部下を忍ばせ、
四つの兵器の完成を進め、クーデターの準備をしていたのだ。
 そのクーデターは「総帥」が推し進めていたものではない事は理解していると思う。
あくまで、彼にとりついた「闇」がそうさせているのだという事を
彼の名誉のために付け加えておく。もっとも、過去の時代に彼の名誉も何も無いと思うのだが。

298 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/24(土) 23:55:09 ID:7xRok8oN0
 島の攻撃部隊は目標の島へ到着し、既に捜索班、突撃班の役割は終わっていた。
これにかかった時間は推定5分とされており、かなり手早い仕事ぶりであったと思われる。
 その後、工作班の班長、ウィーグル(コードネーム。本名は不明)は
捜索班、突撃班から得た情報をフェニックスへの報告で伝える。

「こちらフェニックス。イロン応答」
「こちらウィーグル、島の調査を完了。
 総帥を乗せたと思われるヘリを一機確認。
 海底搬入口に最近稼働した形跡あり。
 島内における生存者は不明。総帥も確認できない。こちらの発砲なし」
「大型兵器は?」
「『人型可変機動型制空兵器』のポッドのみ確認」
「それの解体は可能?」
「短時間での各パーツの解体、パージは不可能と推測。
 爆破による処理が最善と判断」
「必要な爆薬の種類と使用量は?」
「Xタイプを1トン。こちらで用意できる」
「島が吹き飛びそうだな。一応、そちらに任せる。
 ルセに報告を中継するので、彼女からの指示を待て。以上」

ウィーグルはその言葉を受け「了解」とだけ返し、班員に通達する。

「工作班、これからルセ司令からのご命令があるまで待機とする!」

四人の班員の「了解!」の言葉が夜空に響く。
その後、次の無線連絡が来るまで五人は暇つぶしにでもと話を始めた。

「そう言えば、指令はどうして『今日だけくだけた応答をして欲しい』って言ったんだろう」
「あのスピーチか。今日の朝の8時にいきなり呼ばれたから何かと思ってびっくりしたよ」
「多分アレじゃないの。ホラ、カーニバル防衛隊の子供達に対する配慮じゃ…」
「それか…そうだな!いつもの指令は怖いからなぁ…そっすよね、ウィーグル班長?」
「だろうな。指令が普段の態度であの子たちに接していれば、
 あそこまで円滑に事は進まなかっただろうし、何より作戦が遂行できない。
 俺としても、いつもとは違う指令の姿を見れて得をしている。中々良い事だと思うぞ」

そんな会話をして暇を潰す工作班の五人。
雑談から数分後、ウィーグルの無線に連絡が入る。彼はそれに応答した。

299 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/25(日) 00:08:37 ID:lE0syfvS0
「こちらウィーグル」
「こちらイロン。ルセから代理で通達だ。『島は吹き飛ばすな』」
「復唱する。『島は吹き飛ばすな』」
「これの狙いは恐らく目標へのダメージと、
 島内に現存する資料等の隠蔽だと思われる」
「了解。これより工作班活動。通信を終了する…その前に一つ」
「どうした」
「どうして指令が直接指示しない?」
「ルセだって、スイッチの切り替わりが難しいと感じているんだろう。
 彼女らの前ではああでも、お前らの前ではああは出来ないだけなんじゃないか?」
「そうか…分かった」

そう言ってウィーグルは無線を切り、部下たちに告げる。

「これより『人型可変機動型制空兵器』の爆破に移行する。
 工作班五名は研究施設内部へ侵入、Xタイプ爆弾500キログラム設置して
 同兵器の損傷、若しくは一部破損を試みる。行くぞ!」



 工作班は研究施設の最下層へと向かっていた。
最下層には烏賊を安置していた「ステルスポッド」の射出装置があり、
また、四つの大型兵器の研究、開発を進めていた場所でもある。
 大きいコンテナのような形をした、頑丈な直方体のケースに
ターゲットである人型可変機動型制空兵器は保存されている。
工作班はその直方体に爆弾を仕掛け、時限装置を設置してそこから脱出した。

 爆弾による爆発が島全体の地形に影響を及ぼす可能性があるとして、
島の攻撃部隊の全員がヘリコプターに搭乗、そこから離れた。
時限装置のカウントダウンが完了、研究施設を粉々に吹き飛ばすだけの爆発と
それに見合うだけの爆音と光が展開する。
 これだけの爆発であれば、ターゲットも無事では済まないだろう。
カーニバル防衛にあたる子供たちに与える危険性も無くなる…
ウィーグルはヘリの窓から爆発を見てそう考えていた。
すると、彼の無線に連絡が入る。

「こちらウィーグル」
「こちらイロン。ノエル航空迎撃部隊が烏賊の撃墜に成功。そちらの首尾は?」
「たった今研究施設を爆破。『人型可変機動型制空兵器』の爆破と共に
 もう一つの目的である『資料等の隠蔽』も果たした」
「分かった。ではそちらを迎える用意をする。こちらへ戻ってくれ…ん!?」
「どうした」
「烏賊が…烏賊が復活した!!」
「そうか。こちらの受け入れは可能か?」
「戦闘はそこまで広がっていない。恐らくは可能だと思われる…いや、無理だ!
 烏賊の戦闘能力が飛躍的に上昇した!ヘリの一機程度、簡単に墜されてしまう!!」

300 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/25(日) 00:15:58 ID:lE0syfvS0
「落ち着け。アンタが慌ててどうする。
 俺達が求めているのはアンタの指示だ。どうすればいい?」
「とりあえず、そこで待機!指示があるまでは動くな!!」
「了解。待機するよう伝える…伝えた。
 今のところこちらに異常は……何だ、アレは………」
「どうしたウィーグル、応答せよ!」
「アレは俺が受けたブリーフィングでは見たことが無い…」
「何を言っている!?」
「とりあえず画像データを送る。恐らくは『人型可変機動型制空兵器』を保存していた
 ポッドから現れたもののようだが、姿がまるで違う。
 先の獅子、蠍の時もブリーフィングの時と微妙にデータが違っていた。
 どういう事なんだ…まさか、偽物のデータを掴まされていたとでも?」
「ルセもそれを危惧していた。それより、そこは危険領域では?」
「大丈夫だ。現在安全圏へ飛行中。事態が事態だ。通信を切る」

ウィーグルは無線を切り、爆破された研究施設から現れた兵器をもう一度見る。
…黒く巨大な鷲だった。一見、機械的な挙動をするものかと思われたが、
あまりにも生物的な動きをするのでウィーグルは驚いた。
機械であそこまで再現するのは不可能に近い。
その分野に関しては素人の彼にもそう悟らせるほど、黒い鷲の動きは凄かった。



 イロンはウィーグルから送られた画像データを確認していた。
月の光に若干照らされる、黒く巨大な鷲。その姿は明らかにブリーフィングのとは違う。
彼女はすぐにルセへこれを報告、データを転送し、そのまま短い会議を始めた。

「何よこれ…」
「私だってそう言いたい。だが、これは本当に起きている現実だ」
「ウィーグルがタチの悪い冗談を言うはずがないしね。そっちでも捕捉してるの?」
「してる。あと五分もしない内に高高度から襲来してくる」
「分かった。あと、私はタワーの屋上にいる。
 フライングプラットフォームで彼らの手助けをする」
「フ…パーソナルユーフォー(※5)だな?その古い呼称を使うのを止めてくれないか」
「いいじゃない、私が気に入っているんだから」
「そうだ、どんな火器を所持している?」
「携行型レーザー砲を右手に。3つのPSCRに同タイプの武器を、
 2つのPSCRには携行型ロケットランチャーを収めておいてる。弾切れにはならない」
「分かった。絶対に彼らを死なせるな。お前も死ぬな」
「大丈夫。私が死ぬような女に見える?」


(※5…空中を浮く円盤。略称はP-UFO。主に定員一名を乗せて空中を移動するのに使われる。
 ルセの乗るこれは、敵からの攻撃を防ぐため、前面に盾となる分厚い鉄板が溶接されている)

301 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/25(日) 00:28:11 ID:lE0syfvS0
 ようやく話を元に戻せる。復活した烏賊とノエル航空迎撃部隊の再戦だ。

 マキナの見通した通り、烏賊は海面から復活を遂げた。
必要最低限の装甲のみを身にまとい、ジェネレータが一つしか残らなかったためか
浮遊板をパージし、八つの脚に擬態したレーザー砲は五本までに減り、
一本一本の砲身が細くなっている。攻撃力に悪影響はあるだろう。
それでも徹底的に軽量化に拘り、スピードにのみ特化した機体に進化したのだ。
もっとも、切り札によって全パーツを破壊し尽くされかけ、やむなくそうした可能性も否定できない。

 ユールは第四ブロック上空で光り輝いている照明弾を見る。
その光は弱々しくなり、それに合わせて第四ブロックの明度も落ちていく。
これを見たユールは慌ててルセへ無線連絡した。

「ルセ!第四ブロックへの電力供給は!?」
「確か…あと60秒もあれば、多分!」
「60秒!?遅いよ!!」
「大丈夫!地上部隊の双子が私の代役をやってくれている!!
 スタッフのサポートもあるから、復旧は本当にあと少し!!!」
「今どこにいるの!?」
「そっちに向かってる!レーダーに反応は無い!?」
「この光点ね、分かった」
「私と合流するようにと言われたと思うけど、今は烏賊との戦いに集中して。
 あと、もう一つ悪い知らせよ。総帥が着陸した島から最後の兵器が姿を現した。
 それだけじゃない。ブリーフィングで紹介した奴じゃないらしいの」
「え?…それは、あとどの位で?」
「二分もあれば」
「分かった。通信状態はオールだから、クウにも聞こえているよね…ありがとう」

そう言ってユールは無線を切り、照明弾を第四ブロック上空へ撃つ。
半壊している摩天楼において、照明弾による輝度増加効果は
初期の頃と比べると半分程度は落ちたが、それでも眩しいことには変わりない。
 烏賊は光につられて第四ブロックへ向かうと思っていたユールだが、
その予想を裏切らずに、烏賊は海面上の超高機動という特性を活かして
一気にトップスピードで接近、そのまま突っ込んでいくかのように思えたのだが…

 ユールの予想は当たっていた。ただ、その後を予測出来なかったという意味で、予想は外れていた。

302 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/25(日) 00:31:42 ID:lE0syfvS0
 烏賊は第四ブロックと海の境目の10メートル前で急停止、全身を横にスピンさせた。
何かが脚部レーザー砲から放たれたが、それはレーザーで無い事は誰もが見て分かった。
レーザーで無い謎の攻撃手段は、綺麗に摩天楼を形成するビルを横に一閃して切断する。
あまりにも綺麗な烏賊の破壊活動。ユールはそれを見て、
まるで奇術を見ているような錯覚に陥っていくのが分かった。
そんな錯覚からユールを呼び覚ましたのはマキナの声であった。

「聞いて。あの烏賊、攻撃手段を水に変えた」
「……水?」

信じられない話だった。長い時間をかけて水が川を浸食していく話なら学校で習った。
だが、水が建造物を綺麗に斬り裂くなんて話は聞いた事が無い。

「水が、どうして?」
「別におかしいことなんて何も無い。
 考えてみて。雨が降っていたとしよう。雨に打たれて死ぬ人っていると思う?」
「いいえ…」
「でしょ?でも、この地球上のある要素を抜きで考えれば、
 決してそうは言い切れなくなる。雨が降れば人は死んでしまうんだ」
「その要素って?」
「抵抗力だよ。抵抗力があるから雨粒の速度は一定に保たれる。
 だから、雨粒が当たっても『あ、降ってきたな』程度にしか思わない。
 その抵抗力が無くなったら。雨粒はどんどん加速していって
 考えられない威力で地上にぶち当たる。
 人体に当たれば、当たり所が悪ければ死ぬ。もしかすると貫通するかもしれない」
「それが一体どういう…あれ、まさか……」
「分かったと思うけど、勢いがあれば水でだって物は斬れる。
 千年前にも水圧を調節して水で切断する『水カッター装置』みたいな物はあったよ。
 そして、烏賊はグラビティコアを有しているんでしょ?
 水圧を調節して重力を操作してさらに威力を上げる…考えられなくは無いよ」

ユールの頭の中でジクソーパズルが埋められていく。
マキナの発言がピースで、完成する絵は烏賊の攻撃手段の「水」である。
勢いさえあれば、水でさえ凶器になる。マキナの一例を繰り返すが、
抵抗がない、重力にのみ従って落下する雨粒は考えただけでも恐ろしかった。
そんな雨粒が水流に変化し、そして加えられる重力が変更され、さらに勢いを増したらとしたら。
途轍もない威力を有する近接戦最強の兵装になるのは間違いなかった。

303 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/25(日) 00:40:22 ID:lE0syfvS0
 クーリーもマキナと同様、先の烏賊の攻撃は水によるものと判断していた。
彼もマキナと同じような考えであり得ない話ではないと納得し、だからこそ接近を躊躇っていた。
 先の攻撃に使った砲身は二本。たったの二本であれだけの威力を発揮するのだ。
こちらに向けて五本も撃ってきたらどうなるのだろう…間違いなく撃墜される。
それは間違いなく、自分の死亡を意味する。正直なところ、まだ死にたくは無い。
本当は死ぬわけにはいかないというのが正しいのだが、それは置いておく。

 クーリーがリスクを冒してまで接近し、烏賊に残された
最後のアンチグラビティコアを破壊さえしてしまえば、浮遊する事は出来なくなる。
だから烏賊はもう一度水没して、そのまま泡でも吐きながら浮かび上がってくる事は無いのだ。
 簡単な話だ。攻撃を全て回避して接近、弱点だけを突いて離脱。
しかしそれは、今の烏賊の破壊力を前にすれば自殺行為と言えるだろう。
いや、そうなのだ。自殺行為という言葉以外、当てはまるものが無い。
 クーリーはそれを為そうかどうか迷っていた。
成功すれば自らの活躍によって烏賊は撃墜。失敗すれば自分は死ぬ。
どう見積もっても失敗する確率が高いこの賭けを、クーリーは為そうとしていた。
烏賊の水による破壊行為を見つめながら、クーリーは「死ぬわけにはいかない」と呟き続け、
その呟きの音量は次第に大きくなっていき、不意に呟きを止め、一呼吸置いてからクーリーは、

「死ぬわけにはいかないんだ!ユールのために、まだ死ぬわけにはッ!
 まだまだ生きて彼女の近くにいなければッ!!だから死ぬわけにはいかないッ!!
 リスクを幾ら背負いこんだって、奴を墜としてそれで終わり!!!
 次の奴の相手をして、そいつも墜とす!!!簡単じゃないかッ!!!!
 これからもずっと、ユールと一緒に生きていくんだ!!!!!!」

自らを鼓舞するために叫んだ。叫ぶという行為は、人の恐怖心を払拭する役目もある。
路上の喧嘩で相手を震え上がらせ、無用な戦いを避けるための叫びもある。
自分の意思を大きく伝えるための叫びもある。闘争心を強めるための叫びもある。
人にとって、叫ぶという行為はこれだけの意味を持つのだ。

 叫びの次は雄叫びをあげ、鬼のような形相を浮かべるクーリー。
この表情は彼を知る全ての人間が見た事も無い恐ろしいものであった。

304 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/25(日) 00:51:44 ID:lE0syfvS0
 クーリーが烏賊の周りに展開する危険領域へ機体の出し得るトップスピードで突入。
烏賊がクーリー機を探知、砲身を向ける。
クーリーは射線上から左にズレて攻撃を回避、烏賊の弱点であるグラビティコアを目指す。
烏賊が向けた砲身をクーリーの方へ追いかけさせる。
それを回避しつつ弱点へ一気に上り詰めるクーリー。
クーリーの攻撃の瞬間、烏賊が一気に海側へ移動して距離を開け、クーリーに五本の砲身を向ける。

「ジ・エンドってかい…」

クーリーの高揚は一気に冷めた。銃殺刑を執行されるのはこんな気分なのかもしれない。
そんな事を考えつつも、これは死刑ではないのだから
どうにかして避ける方法があるはずだと頭を必死に働かせる。
だが、追いかけてくる水の刃を完全に回避する方法が見つからない。
せめて悪あがきでもとクーリーは来るべき攻撃に備えた、その時だった。

「ユール…?」

烏賊とクーリーの機体を結ぶ直線上に、ユールの機体が割り込んだのだ。

「私が助けてあげる!だから、早くコアを壊して!!」

無線で叫ぶユール。クーリーはユールの言う事の意味を理解出来なかったが、
とにかく今は彼女を信じるしかないと考え、次の瞬間には烏賊のコアへと向かう。
 そのままいけば、ユールは水によって機体を切断されてしまう。
だから、ユールの記憶力が自身を救った事は評価せざるを得ないだろう。

「音声認証、アード展開!!」

この合言葉が彼女の命を五秒保証する事となる。
ユールが言い終わった時には、迫る水の刃がユール機から逸れて飛んでいく。
この状態でクーリー機に近づき、僅かな時間ながら彼を守る事が出来るとユールは考えた。

(今、何を言っているのか分からない読者がいればの話で補足するが、
 ユール機にはチートじみた機能が備わっている。
 「絶対に敵の攻撃が当たらない装置」だ。それを積んでいる。
 これを別の言葉に直し、その頭文字を書くと「AAD」となる。
 それの読みが「アード」だ。詳しくはこの記述部分を参考にして欲しい)

305 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/10/25(日) 01:00:22 ID:lE0syfvS0
 アードを展開させたユール機の無敵時間は残り三秒も無かった。
この三秒というあっという間の時間は、本当にあっという間に過ぎる。
この短すぎる時間で、全ての決着がついた。

 烏賊のグラビティコアに接近するクーリー。
そんな彼を守るためにアードを展開させ、彼に追従するユール。
彼女は烏賊の動きを封じるため、兵装「バインドランス」を撃った。
黄色のエネルギー体の槍状の弾体が、烏賊の胴体と脚部の砲身を貫き、固定する。
それによって作られる隙は一瞬。まさに瞬き一つするだけでその硬直は解かれるのだ。
 その一瞬の隙を逃さず、クーリーはグラビティコアに射撃した。
展開される雨のようなバルカンによる弾幕。
それは敵の接近を許さない目的のために張られるたものではない。
敵の破壊を目的に張られた弾幕であった。


 こうして、烏賊との決着はついた。


 空中で烏賊は胴体から爆発、徐々に求心力が衰え、次第に高度が下がっていく。
そのスピードは遅い。しかし、爆発が起こる度に落下スピードが速まっていく。
その様子を見るクーリーはユールに無線連絡する。

「今度こそ終わりだと思う?」
「多分、ここまでやったらね…マキナはどう?」
「ここまでやれば、動く事や攻撃行為をするのは無理だとは思う」
「予想を当てた人が言うんだから、間違ってはいないと思うけど…」

九回目の爆発が起き、この時誰も予想しなかった事態が発生した。
烏賊がスミのような液を吐いたのである。
誰もが全く備えをしていなかったため、誰もが命中してしまう恐れがあった。
その可能性はクーリーに当てはまった。彼は大量の烏賊の墨を浴びてしまったのだ。
 ただのスミなら何て事は無いだろう。
だが、これは兵器としての烏賊が最後のあがきとして残した最終攻撃である。
これがどんな効果を持つのか、ユール達はすぐに理解していく……




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