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トップランカー殺人事件 第六話『罠』 -phase3-

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70 :トップランカー殺人事件(247) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2009/12/29(火) 14:55:40 ID:1Nddxnyt0
乙下の推理はこうだ。

7月16日水曜日、朝10:00。
1046の策略によりABCへとやって来たBOLCEは、早速IIDXのプレイを開始する。
選ぶのはもちろん、1046から勝負を挑まれたAKIRA YAMAOKAコース。
この時、BOLCEのイーパスはすでに1046によってすり替えられている。
BOLCEは知らず知らずの内に、1046のイーパスを使わされてしまうことになる。

ところが、1046の仕掛けた用意周到なトリックにより、BOLCEはイーパスのすり替えに気付かない。
BOLCEがAKIRA YAMAOKAコースを選び続ける限り、
BOLCEはそのイーパスが自分のものだと勘違いし続ける。


ところが、この均衡は12:00ちょうどに破られる運命にあった。


BOLCEが七回目のAKIRA YAMAOKAコースのプレイを終えたのが、11:55。
あと5分経てば、新たなWEEKLY RANKINGが始まる。

BOLCEにとって1046との勝負は大切なことだったが、それ以上に彼は習慣を重んじる性格だった。
つまり。
ここでBOLCEは一旦1046のスコアを追う作業を中断し、WEEKLY RANKINGに臨んだのだ。

12:00。
BOLCEはWEEKLY RANKINGの課題曲をプレイするために、
ようやくこの日一回目のSTANDARDモードを選ぶ。
ここでBOLCEは初めて気付いたのだ。
あらゆる曲のベストスコアが、自分の記憶にある数値と異なっていることに。


Vも、
AAも、
B4Uも、
SigSigも、
gigadelicも、
RED ZONEも、
GOLD RUSHも、
Dazzlin' Darlinも、
The Dirty of Loudnessも、
Scripted Connection⇒N mixも、
Scripted Connection⇒H mixも、
Scripted Connection⇒A mixも、
朱雀も、青龍も、白虎も、玄武も、ライオンも、烏賊も、蠍も、鷹も。

どれもこれも自分のスコアではない。


BOLCEの頭の中を、様々な思考が駆け巡る。

これは一体どういうことなんだ?
よく見るといずれも見覚えのあるスコアだ。
どの曲も全一の自分に肉薄するスコア。
いや。中には自分のスコアより高い曲もある。



――――これは、1046のイーパスだ!!!

71 :トップランカー殺人事件(248) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2009/12/29(火) 15:06:42 ID:1Nddxnyt0
おそらくBOLCEにとって、天地がひっくり返るほどの衝撃だっただろう。
自分の見ているものが信じられず、パニックを起こしかけたことだろう。

なぜ1046のイーパスがここにあるのか。
自分のイーパスはどこへ行ったのか。
なぜ今の今まで何も気付かなかったのか。
1046が企んだことなのか。
疑問が次から次へとわいてくるのに、答えを想像する余地すらない。

ともかく1046に話を聞くしかない。
そう思ったBOLCEはゲームに手をつけず、
即刻GAME OVERにしてイーパスを取り出し、一路シルバーへ向かう……これが12:02の出来事。

以上、全ては1046のシナリオ通りだったのだ。


乙下は言った。

「発想の逆転ってヤツだな。
 午前中の間はBOLCEにイーパスのすり替えを気付かれないよう、徹底して細工する。
 だがアンタはWEEKLY RANKINGを利用することで、
 『昼になった時点で敢えてBOLCEにすり替えを気付かせた』。
 それによりアンタは指一本使わず、見事にBOLCEをシルバーへ戻って来させたんだ」

続けて、空気が言った。

「1046さん。今週のWEEKLY RANKINGの課題曲が何なのか、知ってますよね?
 7月16日から7月23日までは、ANOTHERでも☆9の『マチ子の唄』っす。
 これ、今作屈指のスコアが出しやすい曲っすよね。
 こういう簡単系の曲の週だと、複数のプレイヤーが同率一位のスコアを取るケースも少なくない。
 そうなった場合、ランキングの一番上に表示されるのは、
 『一番最初にそのスコアを出したプレイヤー』の名前っす。
 BOLCEはきっと、今週のWEEKLY RANKINGが混戦になることを予想して、
 12:00ちょうどにスタートダッシュをかけた。
 1046さんはそのBOLCEの行動を見越していたんでしょう?」(※注4)

続けて、杏子が言った。

「私はBOLCEさんの行動特性をよく知っています。
 BOLCEさんは空気さんがおっしゃったような理由で、
 いつも可能な限り早くWEEKLY RANKINGに参加していました。
 水曜日の昼にゲームセンターにいた場合など、
 きまって今回のように12:00ちょうどにWEEKLY RANKINGの課題曲に手をつけていました。
 まして、今週は1046さんの得意な簡単系の曲です。
 1046さんに勝つため、BOLCEさんがスタートダッシュをかけることは必至です。
 貴方はそれを利用したんですね……」


※注4:
事実、この週のWEEKLY RANKINGは大混戦であった。
一位は1796点で単独首位だったものの、
二位の1794点を出したプレイヤーは二名。
四位の1793点を出したプレイヤーに至っては五名もいたのである。
見ての通り、同じスコアを出しても日時の早い者ほど上に掲載されているのが分かる。

ちなみに、その週の課題曲は水曜日の午前0:00に公式サイトで発表される。
よって「マチ子の唄」が課題曲になることを、BOLCEや1046は昨晩の内に知っていたのだ。

72 :トップランカー殺人事件(249) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2009/12/29(火) 15:16:48 ID:1Nddxnyt0
「ちょっと、ちょっと待った!」

1046は目を白黒させて叫んだ。

「あんたら、おかしいこと言ってる!全然辻褄が合わないじゃねーか!」

1046は乙下が拾ったイーパス使用履歴を奪い取り、
問題になっている数行を乙下の目の高さに合わせて突きつけた。


  START = 11:43, END = 11:55;
  START = 12:00, END = 12:02;
  START = 12:03, END = 12:09;
  START = 12:09, END = 12:20;


「5分のインターバルが発生した理由と、12:00からのプレイがたった2分で終わっている理由。
 この二つはその推理で通るかも知れません。
 けど、その下の二つは?
 今の話だと、BOLCEは12:02の時点でシルバーへ向かって歩き始めている。
 だったら12:03~12:09と12:09~12:20、こいつらは一体どこの誰がプレイした記録だって言うんですか!?」
「1046さん、アンタだろ」

乙下はなんでもないことのように言った。

「アンタはアリバイをより確実なものにするため、
 できるだけ長くABCでプレイしていた記録を作っておきたかった。
 だから、この時だけはこっそりシルバーからABCまで移動して来ていたんだ。
 で、12:03~12:09および12:09~12:20の二つのプレイ記録を残した。違うか?」
「馬鹿な!」

1046は思い切り振りかぶり、持っていたイーパス使用履歴と
デラ部屋予約ノートをまとめてベンチの上に叩きつけた。
パァンと抜けのよい乾いた音が、湿ったデラ部屋の空気をつんざく。

「どうしてそんな訳の分からないことを言えるんですか!?
 乙下さんの推理だと、俺のイーパスはBOLCEが持ってるんでしょう!?
 BOLCEが持ってるはずのイーパスを、どうして俺が使えるんですか!?」
「盗むんだよ。BOLCEの懐から、イーパスを盗み出すんだ」
「あのねぇ。俺は手先が器用な方だけど、スリは専門外なんですよ。
 そんなことできるわけないでしょうが?」
「できるさ」

あと一歩で破裂しそうな1046に対し、乙下はあっけらかんと言い放った。


「アンタはある方法を使って、シルバーへ向かって歩いている
 BOLCEの懐から、華麗にイーパスを盗み出してみせたんだ。
 無論BOLCEに悟られることなく、一瞬の内にごっそりとね」

88 :トップランカー殺人事件(250) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 00:40:47 ID:cv/tmJxD0
「BOLCEに気付かれずにイーパスを盗むだなんて、どう考えても不可能ですよ!」

1046は真っ向から全面否定した。

「いや、盗むどころか、そもそもBOLCEに近付くこと自体に無理があります。
 赤の他人ならまだしも、BOLCEが俺に気付かないわけないですから」
「本当にそう思う?」
「当たり前でしょう」
「本当の本当に?」
「しつこい」

乙下は「よし」と独り言のように呟いた後で、
この場の雰囲気に余りにもそぐわない提案を持ちかけた。

「1046さん、ゲームをしようか」
「ゲ……」

何を言ってるんだお前は。
そんな心の声が聞こえてきそうなほど、1046は訝しい顔つきになった。

「ルールは簡単。
 今から1046さんが持ってるイーパスを盗む。アンタがBOLCEに対してやったようにね。
 無事に盗めたら俺の勝ち。盗めなかったら1046さんの勝ちだ」
「は……ははは。ははははは。
 下らない。けど面白いじゃないですか」

1046は矛盾めいたことを言いつつ、咄嗟にジーンズのポケットを右手で覆った。
イーパスを護衛しているつもりなのだろう。

「もし俺が勝ったら。つまり、乙下さんがイーパスを盗めなかったらどうしてくれるんですか?」
「その時は即刻アンタを解放してやるよ」
「すごい自信ですね。逆にどんな方法で盗むのか楽しみになってきました」
「もう盗んだよ」
「はい?」
「もう盗み終わった。俺の勝ちだ」
「……え」

1046は呆けたようにポケットを見下ろし、
再び「え?」と小声を発して、それからまた乙下を見上げた。

「空気、見せてやれ」
「うぃっす」

反射的に1046の視線が空気に注がれる。
と、空気の指にいつの間にやらつままれている赤いイーパス。
それを見た途端、1046の目がみるみる大きく見開かれた。

「俺が盗むとは誰も言ってない。泥棒役は空気にやってもらった」

89 :トップランカー殺人事件(251) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 00:52:49 ID:cv/tmJxD0
空気はイーパスを1P側のカードリーダーに挿入し、
イチ・ゼロ・ヨン・ロクと「芸のない番号」を入力する。
それはついさっき見たものと同じ動作だったが、
IIDXの画面にはより強い既視感を覚えさせる光景が広がっていた。


   DJ NAME:1046
   IIDX ID:2012-1221
   所属エリア:岩手
   段位認定:SP ―/DP ―
   DJ POINT:109.PT
   プレイ回数:9回


どう見ても1046のサブカードだった。
見間違えるはずはない。
ほんの15分ほど前に、何度も目にしたばかりのプレイデータだ。

「ほーら見ろ。アンタが持ってるはずのイーパスだ」

勝ち誇る乙下の横で、1046は幽霊でも見てしまったかのような青白い顔色をしている。

「あり得ない……どうして……?」
「だからさっき言った通りだよ。空気はアンタに気付かれないように、イーパスを盗んだんだ」
「だって、あのイーパスはさっき乙下さんから返してもらって、確かにポケットの中に……!」

そこで1046は、思い出したようにジーンズのポケットへ右手を滑らせた。
「あれ?」という釈然としない声と同時に、
1046のポケットから顔を覗かせたのは、傷一つない赤いイーパスだった。

「ちゃんとあるぞ!?やっぱり盗まれてなんかなかったんだ!」

1046はもう一度IIDXの画面に目をやり、「はっ」と鼻で笑った。

「なーんだ、アホらし。ようやく分かりましたよ。
 トリックがどうこう言うから、どれだけ大層なことしでかしたのかと思えば……。
 『イーパスを盗んだ』なんてのは真っ赤なウソだったんだ。
 さっき乙下さんは俺にサブカードを返すフリして、実は全然関係ないイーパスを俺に渡した。
 で、肝心の俺のサブカードは、こっそり空気さんが隠し持っていた。
 それだけのことでしょ?ばっかばかしい」
「違うな」
「何ですって?」

1046は鼻に皺を寄せて乙下を睨みつける。

「俺にはイーパスをすり替える隙なんてなかった。
 だから俺がアンタに手渡したのは、正真正銘アンタのサブカードだよ」
「意味不明。じゃぁそれなら、俺のポケットに入っているこのイーパスは何なんですか?
 本当に空気さんが盗んだのなら、ポケットには何も入ってないはずです」
「カードごと盗んだのならな」
「……カードごと?」

乙下の言葉を反芻しながら、1046は頬に新たな汗のすじを作った。


「1046さんの言うように、この状況でイーパスそのものを気付かれずに盗むなんて無理さ。
 だったら最初からそんな無謀なことは考えず、
 『イーパスの中にあるデータだけを盗み出す』ことを考えればいい」

90 :トップランカー殺人事件(252) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 01:07:54 ID:cv/tmJxD0
そう言い切ってから、乙下は「ってことだろ?」と空気に話をふる。
すると空気は、

「トップランカーの1046さんならご存じかと思いますけど」

そんな風に前置きしてから喋り始めた。

「例えばほら、もし間違ってイーパスを無くしちゃったら困るでしょ?
 下手すりゃ火事で焼けちゃうなんてこともあり得るっすよね。
 だから、万が一そんなことがあっても大丈夫なように、
 『イーパスのデータは別のイーパスへ移し替えることができる』ようになってるんす。
 ボクはその機能を使って、1046さんのサブカードを『盗み』ました」

空気は颯爽とポケットから携帯電話を出して、画面を乙下と1046の方に向けた。

「このページはコナミe-AMUSEMENTサイトの
 トップページから入れる、イーパスの管理・設定画面っす。
 ここにボタンが四つ並んでるのが見えるでしょ?」

空気が言うように、画面には上から順番に

   e-A PASS登録
   e-A PASS切替
   e-A PASS切離
    データ引継ぎ

と四つのボタンが並んでいる。

「やってみたらビックリするくらい簡単でしたよ。
 手順その一。まず『e-A PASS登録』で、1046さんのサブカードをボクのアカウントに登録する」

空気は器用にも、画面をこちらに向けたままで携帯電話を操作している。

「手順その二。『e-A PASS切替』で、参照するイーパスを1046さんのサブカードに変更する。
 手順その三。『データ引継ぎ』で、あらかじめ用意しておいた
 新品のイーパスのカードナンバーを入力する。
 ここまでの操作を、皆さんがデラ部屋へ入って来る前に終わらせておきました。
 あとはカーソルを『引継ぎ』ボタンに合わせておいて、
 タイミングを見計らいつつポケットの中でこそっとボタンを押せば……」

空気は1P側のカードリーダーを指差して言った。

「それだけで1046さんのサブカードのデータは、ボクが用意した
 この新しいイーパスへ丸ごと移動するってわけっすよ。
 だから、1046さんが今持ってるそのイーパスの中身は空っぽ。
 新品と同じ状態になってるはずっす」(※注5)



※注5:
補足説明。
スコアやクリアランプ等のプレイデータは、実際はイーパスの中に保存されているわけではない。
あらゆるデータはコナミのサーバーに保存されており、
イーパスはそのデータをサーバーから引き出すための「鍵」の役割だと思えばよい。

よって、ここでいう「データ引継ぎ」とは、
「データを引き出すために必要な鍵(イーパス)を変更する」という意味合いになる。
そのため、作中のセリフにある「データを盗み出す」や「データが丸ごと移動する」といった表現は
厳密には正確でないのだが、便宜上このような形で記述させていただいているのでご了承願いたい。

91 :トップランカー殺人事件(253) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 01:17:39 ID:cv/tmJxD0
1046は下を向いた。
右手に持った「空っぽ」のイーパスを見下ろしているようにも、
空気から目を背けてうつむいているようにも見えた。

乙下は腰を屈めて、1046の顔を覗き込む。

「1046さん。アンタはこれと同じ方法で、BOLCEからイーパスを取り戻したんだろ?
 ま、アンタの場合は自分のイーパスのデータ引継ぎだから、
 手順その一と手順その二は不要だったろうけどな」

1046は何も答えない。
言葉も血の気も失い、ただ立ち尽くしている。

「1046さん、もういい加減に終わりにしよう」

1046は歯を食い縛っただけで、やはり何も言わない。

反応がないと見るや、乙下は一人で話し始めた。
ゆっくりと、神経を使い、丁寧に言葉を選んで、
事件の終着点へ向かって一歩一歩足を踏みしめるように。


「7月16日水曜日、アンタは――――」

92 :トップランカー殺人事件(254) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 01:22:40 ID:cv/tmJxD0
7月16日水曜日、1046はかねてからの計画を実行に移した。

計画の目的はBOLCEの殺害だ。



8:00。

1046は盛岡第三小学校へ通う店長の息子を、通学中に誘拐する。
速やかに睡眠薬で眠らせ、人の出入りがほとんどない倉庫で寝かせておく。



10:00。

1046はBOLCEより一足先にシルバーへやって来る。
店長に気付かれないようにデラ部屋へと忍び込み、
例の磁石のトリックを使って、BOLCEをABCへと追い払う。

こうして1046は、デラ部屋という名の誰にも邪魔されないアジト兼犯行現場を手に入れた。

それからしばらくは、BOLCEに扮してIIDXをプレイし続ける。
あらかじめすり替えておいたBOLCEのイーパスを使うことで、
『BOLCEがシルバーにいた記録』を作り続けた。



11:10。

プリペイド式の携帯から、一回目の脅迫電話を店長にかける。
普段はIIDXのポスターに隠されているが、デラ部屋の壁には小さな穴が空いている。
その穴を利用して、カウンターの内側にいる店長の様子を監視しながら。

その間もチュートリアルのトリックを使うことで、BOLCEによるIIDXのプレイ記録を捏造し続ける。



11:55。

ここで1046は大胆な行動に出る。
店長に動向に注意を払いつつ、一旦シルバーを抜け出してABCへ向かうのだ。
その際、やはりチュートリアルのトリックを使うことにより、
BOLCEのイーパスで「11:55~12:06」のプレイ記録を残した。



12:00。

1046がABCへ到着する。
この時間帯、自転車を使えば5分でシルバーからABCまで移動できることは実証済みだ。

1046は人目につかないようにABCへ入店し、物陰からBOLCEの様子をうかがう。

すると、ちょうどBOLCEはWEEKLY RANKINGに挑戦するために、
この日初めてのSTANDARDモードを選んだところだ。
ここでBOLCEはようやく、なぜかイーパスが1046のものとすり替えられていることに気付く。
当惑したBOLCEは1046を問い質すため、すぐさまシルバーへと向かって歩き始める。

93 :トップランカー殺人事件(255) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 01:28:04 ID:cv/tmJxD0
12:03。

例の「イーパスを盗む」トリックの出番だ。

1046はあらかじめ新品のイーパスを持参しておき、
e-AMUSEMENTサイトでデータ引継ぎ操作をすることで、
BOLCEの懐にあるはずのイーパスを、魔法のごとく手元に呼び寄せる。

こうして見事自分のイーパスを取り戻した1046は
ただちにIIDXをプレイして、ギリギリまでABCにいた記録を作り出す。

まずはFREEモードで12:03~12:09のプレイ記録を残し、
続いてチュートリアルのトリックで12:09~12:20のプレイ記録を残した。



12:10。

自転車に乗り、再びABCからシルバーへと戻る。
ABCを出発した時刻はBOLCEより遅いが、移動手段が自転車なので、
徒歩であるBOLCEの先回りをすることは容易い。



12:15。

BOLCEを追い越して、1046がシルバーへ到着する。
人目に触れないようにデラ部屋へと舞い戻り、二回目の脅迫電話を店長にかける。
この時もデラ部屋の壁に空いた穴を利用して、店長を監視しながら話を進める。



12:18。

脅迫電話を切り上げる。
同時に、BOLCEがシルバーへと到着する。
ABCからシルバーまでは徒歩で約15分。
計算通りのタイミングだ。

狙った通り、BOLCEと店長を鉢合わせさせることに成功する。

『一億円を払わなければお前の息子だけでなく、シルバー常連客の命も追加でいただく』
この言葉を聞かされたばかりの店長は、慌ててBOLCEに危険を告げ、家に帰れと命じる。
その指示に対して素直に従うBOLCEを見届けた店長は、デラ部屋に人が残っているとは思いもしない。

だがBOLCEはその性格上、店長の忠告など知ったことではない。
今はイーパスの件をはっきりさせることが先決なのだ。
BOLCEは帰ったふりをして、1046に会うためデラ部屋へ入る。

全ては1046の読み通り。
BOLCEを密かにデラ部屋で葬り去る準備は、こうして着々と整っていく。

まさか思い詰めた店長がシルバーを飛び出し、
銀行強盗をやらかすことまでは想像の範囲外だっただろうが……。

94 :トップランカー殺人事件(256) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 01:37:26 ID:cv/tmJxD0
12:19。

デラ部屋に入って来たBOLCEを横目に、BOLCEのイーパスでチュートリアル開始。
これにより12:19~12:30のプレイ記録を残す。

「1046、何をしているんだ?それは僕のイーパスじゃないか!
 どういうことなんだ。なぜ1046が僕のイーパスを持っている!?
 それにほら、これを見てみろ!!!」

BOLCEが財布から1046のイーパスを取り出す。

「これは君のイーパスだろう?
 なぜ僕の財布に1046のイーパスが入ってるんだ!?」

1046はその質問に答えず、BOLCEに襲いかかる。



12:20。

BOLCE殺害。
用意しておいたロープをBOLCEの首に巻き付けて、強く締め上げた。



12:23。

BOLCEの絶命後、1046は証拠隠滅を実行する。
すなわち、磁石のトリックにより
右半分がすっかり紫色になったモニタを、BOLCEの頭部で粉々に叩き割った。

続いて凶器のロープを使い、BOLCEの死体をIIDXの筐体フレームから吊るす。



12:28。

周囲に十分警戒しつつ、シルバーの事務室に侵入。
金庫から現金200万円を奪う。
金目当ての犯行に見せかけるためと推測。
ただし、金庫に50万円を残して立ち去った理由は今なお不明だ。



12:30。

チュートリアルが終了し、GAME OVERとなる。
ここで1046は自分の耳を頼りに、全神経を集中させ、
『GAME OVERの暗転からきっかり三秒後』のタイミングにイーパスを再挿入した。
認証した直後にカードリーダーからイーパスを抜き取る、例のバグ技を駆使したトリックだ。

これにより、チュートリアルで12:30~12:40のプレイ記録を残しつつ、
BOLCEの財布へ彼のイーパスを戻すことに成功。
1046は鉄壁のアリバイを築くための最重要項目をクリアした。

もちろん、BOLCEのイーパスを財布に戻すだけでなく、
自分のイーパスを回収することも忘れない。

ここまで来れば後一歩だ。
目立たないよう細心の注意を払いつつ、自転車でABCへと急ぐ。

95 :トップランカー殺人事件(257) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/01/12(火) 01:46:01 ID:cv/tmJxD0
12:35。

ABCへ到着。
トイレに向かい、わざと監視カメラに姿を映す。



12:37。

トイレから出て、もう一度監視カメラに映りつつIIDXの方へ移動。
今度は自分のイーパスを使い、『1046がABCに一日中いた記録』を作り続ける。

なお、12:00過ぎにデータの引継ぎを実行したので、
どこかのタイミングでさっきとは逆方向にデータの引継ぎを実行し、元の状態へ戻しておく。



13:18。

ABCのIIDX筐体のカーテンに隠れながら、三回目の脅迫電話。
今回は遠方にいるので店長を監視できないが、もはや関係ない。

必ず一億円用意することを約束させ、電話を切る。



16:00。

デラ部屋のタイムレンタルサービス終了時刻に伴い、ABCからシルバーへ移動。
BOLCEの死体を自ら「発見」し、第一発見者として警察に通報する。

こうして1046は、計画をやり遂げた。




「――――――――違う!!!」




それまで乙下の推理を黙って聞いていた1046が、
突然鼓膜を貫通させるほどの勢いで声を張り上げた。
驚きよりもまず、耳が痛かった。


「違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。
 信じてくれよ。俺はやってないんだよぉ!」


1046は血管がはち切れんばかりに拳を握り、デラ部屋の壁を殴打した。
悲鳴のような軋みを立てて、拳が壁にめり込む。




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