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carnival (re-construction ver) Last Phase -day break- St.6

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274 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/20(土) 23:44:37 ID:oHKAT93Y0
 あの後、私はテーブルの上に一枚のメモ用紙とディスクを見つけた。
アヤノが書いたもののようで、家に帰ってから見るようにと注意書きがあった。
家のどこにもアヤノの気配はない。
盗難が心配だったが、彼女の事だ、盗まれてもすぐに犯人を捕まえるだろう。


 それから家に帰り、情報を整理するためにPCの電源を入れる。
ディスクを読み込み、それがアヤノが手に入れた全情報であることを確認する。
これにはジェームス・クーリーが17年前に誕生し、
その直後に置換手術を受けた事も記載されていた。
 一通りの情報を読んだ時には、既に外は真っ暗であった。
私は頭に入れた情報を整理するため、簡単なテキストを打ち込むソフトを立ち上げた。
ここでは書いたものをそっくりそのまま移したいところだが、
そうするとかなり複雑なものとなるため、ある程度省略している所がある。



 2982年 レイヴン大陸から遺跡「ピース」が発掘される。

 2983年 ジェームズ誕生、右目の置換手術を受ける(記録によると、彼が十三人目の被験者)。
     同時期にクーリーゼネラルコーポレーション(CZC)が急成長、大企業になる。  

 2987年 レイヴン大陸第五地区にて一家強盗殺人事件が発生。
     時を同じくして、クーリー家は正式な手順を踏まず
     ユールという名の女の子を養女として育て上げる。
     彼女とジェームズがこの頃から接触し、親しんでいく。

 2989年 BEMANIプロジェクトが発足。
     この裏で、WOS本部はプロジェクト本部が設置されているWOSレイヴン支部に
     置換手術による人体実験の成果をモニターする施設を
     同プロジェクト内に組み込み完成させる事を、
     プロジェクトを進めるための資金を得る交換条件として提示、WOSレイヴン支部はこれを受け入れた。


 2999年 BEMANI追体験プロジェクトNO.■■として
     巨大遊園地「カーニバル」の建造が予定される事が発表され、すぐに工事が始まる。
     どこもかしこも音楽ゲームとの繋がりを意識しており、
     一般的なアトラクションは少ない事から赤字経営になるのではないかと懸念の声が上がったが、
     同年12月19日の開園時の客の多さから、その心配は無用であると判断される。

     このカーニバルが、11年前にBEMANI追体験プロジェクト発足の交換条件として提示された
     人体実験の成果をモニターする装置の偽装であった。

275 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/20(土) 23:49:03 ID:oHKAT93Y0
 これだけ書き連ねてみたが、どうもよく分からない。
だから私は、他にも知っている情報を書き連ねていった。


 2999年 カーニバル事件発生。
     12月25日に全料金無料キャンペーンを実施したカーニバルが
     武装テロ集団による攻撃を受けて半壊する。
     WSFの鎮圧によってテロ集団は排除されたが、民間人の死者が一名出た。

     この死者はWOS側にユールと名付けられ、彼らの手によって葬られる。

     しかしそれは全て自作自演のようなものであった。
     カーニバル事件とはテロによる攻撃を受けたものではなく、
     本当はWSF総帥であるダロール・フェニルがクーデターを起こしたものだった。
     その際に彼が用いた武器はライオン、蠍、烏賊、そして鷲の形を模した大型兵器四機だった。

     これに対して存在自体が不明瞭の「マキナ」なる人物は
     ユールとジェームズ、そして友人三名を召喚して対クーデター部隊を編成する。
     何故民間人がこんな戦いに駆り出されたのかは、ユールを除いて不明。

     そのユールの理由とは、彼女が1000年前に「心の光」に選ばれた人間の血を、
     彼女の先祖が献血によって集められた血液を輸血された事で継いでしまったからだ。

     心の光とは、私達人間が誰でも持っている黒い部分、これを心の闇というのだが、
     それが1000年ごとに引き起こす人類滅亡の危機を未然に防ぐためにあるものだという。
     それの力を持ったユールは、あのカーニバル事件を引き起こしたダロールが
     心の闇によって操られているという理由で、マキナに戦うようにと指示されたらしい。

     そうしてクーデター鎮圧はユールとジェームズ、そして友人三名によって
     完全に鎮圧、カーニバルの被害は半壊に留まり、死傷者はゼロである。
     なお、ダロール・フェニルのその後の行方は全く不明。記録には何も残っていない。



 カーニバル事件が、テロ事件ではなくクーデターによるものは分かった。
ユールとその仲間達がなぜクーデター鎮圧をしたのかも分かった。
しかし、まだまだ分からない所がある。
ダロールは今も生きているかどうか、何をしているのか。それも重要な事じゃないか?

276 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/20(土) 23:54:14 ID:oHKAT93Y0
 次に、私が体験した事を書き連ねていく。



 3000年 昨年のユールの葬式に参列した私は、
     ユールの遺体を見て彼女がまだ生きている事を勘で感じ取った。

     新年、私はWOSがユールの死について深くかかわっている事を確信、
     1000年前の名探偵といわれる、オグレの子孫であり後輩である
     アヤノ・オグレに調査協力を依頼、ついでに友人のルークにも
     海底を走り偵察する機械を作ってもらう。

     海底で謎のライオン――恐らくは例の大型兵器だと思われる――によって
     機械は大破、私達はその場を離れ、カーニバルへと逃げ込んだ。
     そこで私は二人の人間に会う。その二人は同じ事を口にした。
     一人目は「J」と名乗った、恐らくはジェームズ・クーリーと同一人物の少年だ。
     二人目はコードネームで名乗った女性である。その名を「ルセ」という。
     この二人は私に「真相を知れば、あなた自身のアイデンティティが消失する」と言った。
     さらにルセは「WOSは私の命を奪う事が出来ない」と告げた。

     ファルコン大陸に帰り、ルークは機械製作のみを担当してやると
     以前より消極的な協力をするようになる。まだ世話になった事はない。
     アヤノは半年待っていて欲しいと言い、七夕がやってきた。

     七夕の日にカーニバル無料キャンペーンが実施された。
     アヤノはこの日に単身潜入をする事を告げてレイヴン大陸へと発ってしまう。
     私はアヤノの身に何かが起こるような気がして、後を追う事にする。

     七夕当日、私は第一ブロックでルセと出会う。
     彼女はWSFの最新装備の一部、バイザーを試着させてくれた。
     そして彼女は前に私に言った言葉に不備があったとしてこう言った。
     「WOS並びにWSFは、私と私に協力する全ての人間を殺せない」という。

     そして10月10日。私はアヤノがまとめてくれた真実を知る。
     映像の中にジェームズ・クーリーが登場、アヤノのインタビューに答えていた。


 そして大体の真実は分かった。しかし、まだ私は肝心な事を分かっていない気がした。

277 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/20(土) 23:57:30 ID:oHKAT93Y0
 例のインタビューの最後、アヤノはそれまでの調子を崩し、
私に一気に真実を告げ、気になる一言を残す。

「先輩、あたしは、ずっと先輩の味方です。
 ……先輩が何者であったとしても、あたしは、あたしは……」

 これが、何を意味するのかが全く分からないのだ。
もしかすると私は、何かとんでもない存在なのかもしれない。

 インタビューの中で、ジェームズは言っていた。

「今のWOSにとって心配事というか、都合の悪い事といえば
 あの時戦った僕達が、今こうして生きているという事です」

「僕の場合は『まだ殺す時期じゃない』という理由でした。
 今はもうその時期を過ぎましたが、刺客らしい人を見た事がないので、
 多分、ユールがお願いしてくれたのでしょう。まだ僕は殺されそうになっていません」

 ジェームズもまた、私と同じようにユールに助けられた人間なのだ。
だから、あの時彼が言った言葉には一応の納得がいく。

「僕とあなたは『同じ』なんです」

 1月17日にカーニバルへ調査をし、ジェームズとルセに出会った日。
あの時ジェームズは確かにそう言った。
 この「同じ」という意味は、ジェームズが殺されなかった理由と同じということなのだろうか。
確かにルセが私に言った私を殺さない理由と一致はしている。
しかし、これが同じの意味なのだとは思えなかった。

 その一方で、私の頭の中で最悪の仮説が構築されていく。
こんな事があってたまるかと思ったのは、生まれて初めてだった。

278 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/21(日) 00:03:48 ID:MWljnJJ90
 その仮説の結末は「実は私自身も置換手術を受けた人間である事が分かった」というものだ。
ジェームズと同じといえば、このくらいしか思いつかない。
それを確かめるために全記録を収めたディスクを調べてみる。
しかしいくら検索しても私の名前は出てこないし、
手作業でしらみつぶしに見ても、結果は同じであった。

 という事は、私は置換手術を受けた事がないのだろうか。
もしそうだとすると安心できる。が、見落とした点があった。
 よく考えてみると、置換手術をすれば何らかの分野が得意になるはずだ。
ジェームズの場合は義眼を埋められたという。
まるであのバイザーと同じような機能が使え、そして動体視力が非常に良いという。
しかし私には何か特筆すべき良い点があるとは思えない。謙遜とかではなく。

 そこで私はアヤノがこんな事を言っていたのを思い出した。

「この人体実験の被験者をモニターする支部は
 ターミナルタワー深部にあります。
 WOS本部には長く隠し通すことは難しかったんです」

 この発言で重要なのは場所の名前ではない。
「人体実験の被験者をモニターする施設がある」というのが重要なのだ。
アヤノはカーニバル深部でそこの全ての記録をコピーした、と言った。
そして実験の被験者をモニターをする施設は、カーニバル深部にある。
 私はすぐにディスクで記録を探した。
もちろん、カーニバル深部に関する記録を。

279 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/21(日) 00:08:42 ID:MWljnJJ90
 ディスクを調べていくと、こんなタイトルのフォルダが見つかった。

「NO.13(眼球)のモニタリングデータ 2999年1月~12月」

 来た、と心の中で呟き、このフォルダを開く。
中身は膨大なテキストファイルだった。私はこれを一つずつ閲覧していく。
ここで紹介するのは12月分の一部だけにしておこう。
これをコピーするのは容易い事だが、それをする事は出来ないからだ。

「12月17日
 朝六時起床。自分でトーストを焼き、苺のジャムを塗り食す。
 朝の七時から十時まで、高等学校の冬季休暇の課題に取り組む。
 その後二時間は地下の防音室へ移動。
 各種音楽ゲームの筐体が取りそろえられたそこで練習に精を出す。
 昼間は太陽が沈むまで冬季休暇の課題。夕食後は防音室で過ごす」

 ストーカーが一人の人間の私生活に密着しているようで怖い。
しかし彼の置換したものが眼球であるため、全てが丸見えになるようだ。
他の被験者のモニタリングデータも見てみたが、
例として鼻を置換手術された被験者のデータを挙げてみよう。

「12月17日 
 推定時刻8:00に起床。原因はどこかから流れてきた牛乳の匂い。
 その匂いが消える。恐らくは飲んだのだと推定される。
 昼間には外出していた模様。昨日は雨が降っていて、雨の匂いが強烈にしていたようだ」

 この事から、モニタリングデータというものは
被験者が置換された部位に依存して書かれているものだと分かる。
これを読んでいて、ジェームズが可哀相に思えてきた。

280 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/21(日) 00:16:46 ID:MWljnJJ90
 続けて、ジェームズのモニタリングデータを書いていく。
時間が飛んでいるのは、同じような事ばかり書かれてあるからだ。
それらの内容はどうでもいいものが多く、全く重要性を感じない。

「12月19日
 朝六時に起床。前日、彼の家に泊まっていた
 ユールという少女がいて、別室で眠る彼女を起こす。
 冬季休暇の課題を共にこなしていくためにそうした模様。
 朝食後にPCを起動、カーニバルの公式サイトを閲覧。
 昼食後にユールを呼び、同サイトのトップページを見せる。
 参考までに、このトップはカーニバル無料キャンペーンを宣伝するものだという事を記す」

「12月20日
 朝六時に起床。直ぐに着替え、外出する。
 外気温はマイナス五℃と推測。目標はユールの住む古い家。
 道中で暖かい缶コーヒーを一本購入、合鍵で家に侵入。
 ユールの状態は非常に危険。コーヒーを与え、事なきを得る。
 そしてユールを連れて自宅へ。ともに豪華な朝食を食べ、冬季休暇の課題に取り組む」

 しかし12月25日の記録の分はこう題されている。

「オーガン・リプレイスメント NO.13 モニタリング・ラストフェーズ 前・後編」

そして記録は、この二つとちょっとしたおまけを最後に途絶えている。


「オーガン・リプレイスメント NO.13 モニタリング・ラストフェーズ 前編」


「12月25日
 この日が被験者ジェームズのモニタリング・ラストフェーズ突入日である。
 朝六時に起床。朝食を食べ終え、7:30に外出。行き先は第五地区駅。
 被験者、ユールにアッパーカットされる。
 『サイ』という喫茶店に入店、暇を潰していると使用人の子供三人と出会う。
 2986年の記録に記載した通り、この三人と被験者、そしてユールは友人同士である。
 その後電車に乗り、第十地区駅に到着。当然下車する。向かう先はカーニバルである。
 送迎バスを利用せず、被験者とユールは徒歩でカーニバルへ向かう。

 カーニバルへ到着、モニタリングの精度が微妙に上がる。
 被験者はユールと別れて第二ブロックへ移動し
 IIDX15 DJ TROOPERS の超先行体験会へ参加する。

 それを終え、会場から出ると三人の友人のうち一人、アルベルトからメールを貰う。
 『アイツ』なる存在、つまりはルセWSFカーニバル基地航空部隊副部隊長の事であるが、
 それがアルベルトにユールの秘密を明かし、仲間になるよう言ったのだという内容である。
 ユールの秘密については別のファイルに記載しているので、それを参照にされたし」

281 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/21(日) 00:21:43 ID:MWljnJJ90
「その後、被験者はユールからのメールで
 ターミナルタワーに来てほしいとの連絡を受ける。
 被験者はすぐに指定の場所まで到達、
 そしてユールから彼女自身の秘密を聞かされた模様。
 被験者はユールと共に戦う事を決意、その後はルセ副部隊長の指示に従っていく。

 ブリーフィング終了後、ユールと喧嘩してしまい、一時的な不仲に。
 戦闘前の待ち合わせ時刻18:00にターミナルタワー屋上集合となっていたが
 被験者はルセ副部隊長に、被験者が受けた実験の内容を伝えられたようだ。
 これを聞いた被験者は、それによるショックは殆ど感じていない模様。予想外である」


 これで前編が終了している。
読み終わって抱いた感想といえば、
ジェームズが自分の右目が義眼である事を知っても
さほど衝撃を受けなかったという事に驚いたというところか。
彼の一番の自慢である視力が与えられたものだという事を知らされたら、
相当なショックを受けるはずなのだが……それが無いというのは妙である。
もしかするとジェームズは、自分の右目が義眼である事を勘づいていたのかもしれない。


「オーガン・リプレイスメント NO.13 モニタリング・ラストフェーズ 後編」

「その後、再集合の際にユールと和解した模様。
 18:00より箱型戦闘機の操り方を覚える。
 義眼より流入、取得する異常なほどの情報量のせいで
 擬似的な高所恐怖症に陥っていたのだが、
 ここにきて被験者は義眼の使い方を無意識下で覚えたようだ。
 無意識に流入して取得する情報量を減らし、危険を感じる要素を減らしていた模様。

 それよりも衝撃的な事実は、義眼が被験者の全体的な能力の
 底上げに貢献しているらしいという事である。
 蠍戦にて、海上を高速移動する蠍を保護するコンテナを海上で撃墜しようとした時、
 被験者はルセ副部隊長も実行する事は難しいと推測される、
 180度回転しての背面飛行をしながら猛攻を仕掛けるという荒業をやってのけた。
 どれほど戦闘機のシステムが素晴らしいとはいえ、それの戦闘力は搭乗者の力量にも左右される。
 戦闘の素人である被験者がここまでやれたのは、きっと義眼の力があっての事だろう」

282 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/21(日) 00:28:51 ID:MWljnJJ90
「そして被験者は四体の大型兵器との戦闘を終了。
 これをもってモニタリング・ラストフェーズも完了となった。
 が、謎の兵器により被験者の機体がダメージを負い、
 ユールと最後の会話を交わし、機体は大破した。

 しかし被験者はまだ生きているらしい。その裏も取れている。
 改めて我々の手で始末しようとするも、ユールの願いによりそれは取り下げられる」

 これで後半は完結している。
あとは実験結果とそのまとめ、そして謎の怪文書だけが残されている。


「オーガン・リプレイスメント NO.13 オールフェーズクリア。 以下は実験結果とまとめ」

「被験者NO.13 ジェームズ・クーリーの置換部位は眼球。
 右目を我々が作成した特殊義眼と置換、以来18年間にわたりモニタリングを続けてきた。
 この義眼により動体視力が非常に優れる事、それにより優れた身体能力を発揮できる事、
 そして物体を様々にデータ化する事が今回のモニタリングで分かった。
 これは大体仮説と合致している。身体能力向上には驚いたが、これは実用化できない。
 それでも、この実験結果及び膨大なデータ量は
 現在進められているバイザー・プロジェクトの大きな飛躍に貢献するだろう。
 しかしこの眼球には大きな欠陥がある。
 赤色を茶色、茶色を赤色と間違えてしまう事が、唯一の欠陥である。

 今後、被験者は新たな義眼の使い方を思いつくかもしれないので、
 一応はモニタリングは終了していて被験者も自身の事は気が付いているので
 早急な始末をしたいのだが、それはモニタリングが終了していない事と
 クーデター鎮圧において最大の働きを見せたユールの願いにより、始末はしないものとする」


「答え合わせをしたい場合は、この電話番号にTELせよ。○○○-▽□×-☆○×■」


 なるほど、七夕のカーニバルの赤ポップ君の件はこれだったのかと納得した。
こうしてジェームズのモニタリングは終了。
彼が「まだ殺される時期ではない」という意味も分かったし、
ユールの願いで殺されないという話も裏が取れた。
 しかし、答え合わせの意味が分からない。
この番号を調べてみたが、それを使う法人も個人も引っかからなかった。


 そういえば、私も殺す時期じゃないと言われた。
という事は、私もオーガン・リプレイスメントの被験者なのだろうか?
しかしそれはあり得ない。なぜなら、あのディスクの全記録には私のデータは一切含まれていないからだ。

283 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/21(日) 00:34:26 ID:MWljnJJ90
 しかし、それでも嫌な予感がする。
ジェームズとルセの発言は、このディスクに記録されている情報を踏まえて考えると
私も人体実験を受けたとしか考えられない。
何回もそれが違う場合を想定して考えるのだが、
やはり私も被験者なのだろうと考えざるを得ない。

 しかしそれではおかしな点が二つほど挙げられてしまう。
 一つは、カーニバル深部にある全てのデータを記録したディスクに
私のデータが受付で書いた情報以外の情報が一切入っていないという事だ。
受付では名前、住所、電話番号を書くのが決まりだ。
私のそういった個人情報以外、私のデータは入力、保存されていない。
 もう一つは、私が何かを得意とするものが全くないというところだ。
ジェームズの場合なら義眼で得た動体視力で音楽ゲームの腕を上げている。
しかし私はどの音楽ゲームも下手の横好きでやっているようなものだ。
ジェームズは大会に出るまでの実力を持っている。それも義眼を用いて……
置換手術を受けたとするなら、私もなにか得意な事の一つや二つはあってもいいはずだ。
しかしそんなものはない。得意な事とは言えないが、勘が良い事しか取り柄はない……



   勘 が 良 い 事 が 取 り 柄 ?



 もしかすると、このディスクの記録には残っていないだけで
私も何かの人体実験を受けたかもしれない。
そうでないと、あの二人の発言が不自然極まりないものになる。

 もう既に一部を除いて全ての謎は解けた。
残った一部は、私自身に秘められた謎であり、きっと明かされるであろう秘密だ。


「私に残された選択肢は、答え合わせしかないようだな……」

 そう呟き、私はMPDに手を伸ばし、怪文書に記載されてある電話番号をプッシュした。

299 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/10(土) 22:22:08 ID:cSeReRSq0
 さて、一度時間をこれを書いている私に合わせる。
ここまで読んで話の流れが分からない事はないとは思うのだが、
私がこういったものを書くのはこれが初めてなので、上手く伝わらないとは思う。
 私が怪文書に書かれてあった電話番号にアクセスした時点で
分かった真実をここに羅列してもいいのだが、それでは駄目だろう。
同じ事の繰り返しを続けていては、全く先に進む事は出来ないから。


 時間はMPDを右手に持って電話をかける私に巻き戻る。
怪文書に書かれてある電話番号にアクセス、数回のコールの後、相手が電話に出た。

「もしもし」

 相手が発したのは、ごく普通の人間が使う応答の言葉だった。
その声の調子から、相手の性別は女性だと判断できる。

「もしもし、答え合わせをしてくれる人でしょうか」

 相手が女性だと分かっていようが何だろうが、私は相手の名前を知らない。
ただ知っているのは電話番号だけだ。だからこんな言葉しか発する事が出来ない。

「あなたが、円環の異常を見る事が出来る人……ですか?」
「……え?」
「すみません、私達はこの電話番号に連絡してくる人、
 つまりあなたなんですけど、便宜上ではそう呼んでいるんです」
「円環、とは聞きなれないな……
 そんな事はどうでもいい。私が訊ねたいのは……」
「どうでもいい事じゃないんです!」

 相手はいきなりそう怒鳴った。私の言葉の何かが琴線に触れたのだろう。

「私にとってはそんなのどうでもいいし、関係がない!
 あんたが答え合わせをしてくれる人かどうかが知りたいんだ!」

 私は叫びながら、これはいつもの自分の態度ではないと感じた。
私が意識もしないで叫ぶのは、やはり不安という感情が私を支配していたからだろう。

300 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/10(土) 22:29:12 ID:cSeReRSq0
「……すみません、取り乱しました。
 あなたの質問に答えます。その答えは、イエスです。
 私はあなたの答え合わせをする役です」
「そうか……答え合わせをした後で、円環とやらについても聞かせてくれないか?」
「もちろんです。本当はそれが本題ですから」

 この相手が一体何者なのかは知らない。
しかしWOSもしくはWSFの人間、それでなくても関係者だろう。
 もし私が彼らの手により何らかの手術を受けたとして、
そして答え合わせがそれに関係していたと仮定するなら、
それが本題でないとはどういう事だろうか。
 けれども、この時はそんな思考は重要じゃない。
私はただ、相手の声に耳を傾ける事に集中した。

「それが本題……なのか」
「はい。それが一応の本題です。
 あなたは円環の抱える問題を解消するための手伝いをされたと聞いています。
 そして、そのためにあなたがされた事も、知っています」
「それが答え合わせの内容か?」
「そうです。これを話すだけならこちらの準備なしであなたに来てもらって
 それで私とあなたで……場所はカーニバルで、答え合わせをしようと思います」
「分かった。そちらが時間を指定するという事だな?」
「いいえ、違います。あなたが私といつ答え合わせをするか、
 それを一週間後に指定して欲しいんです」

 これは予想外だった。まさか私が時間を指定する事が出来るとは。
相手がどんな狙いで私にこんな条件を提示したのかは分からない。
しかし、私の頭の中である二つの計画が急速に芽生え、花を咲かせようとしていた。

「分かった。では……今から一週間後。夜の八時に連絡をする」
「分かりました。それでは」

 電話はここで切れた。相手は自分の名を明かすことなかった。
私の名前はばれているはずなのに、と不公平だと思ったが、仕方がない。

 実は、私はこの相手が誰なのか分かっていたような気がした。
はっきりとその人であるとは分からない。けれども勘がそう告げるのなら間違いはないだろう。
そしてこの相手が何を求めているのかも、大体の予想はついた。
相手が提示してきた条件を十二分に活用し、プレゼントの用意をしてやるのも良いかもしれない。

301 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/10(土) 22:34:30 ID:cSeReRSq0
 さて、なぜプレゼントなんて言う言葉を使ったのか、
その意味をここで分かる人はあまりいないだろう。
今ここでそれを明かすつもりはない。もうしばらく読んで欲しい。


 とにかく、私の頭の中である計画が動き出した。
これで相手は喜ぶ顔をしてくれるだろうか? それとも困惑の表情を浮かべるのか?
それはその時にならなければ分からない。今はただ行動を起こすしかない。
 この時の私は、今までの私とは違う行動理念で動いていた。
他人のために動くという点では同じである。しかし、そのベクトルが全く違っていた。
私は純粋に誰かを喜ばせてあげたいのだと思っていた。
この体を流れるクロイスの血がそうさせているのかもしれない。
今までにこれを何度となく呪う思いをしたが、この時に初めて許せるような気がした。


 相手との通話が終わり、次に私はアヤノに連絡を取る事にした。

「もしもし、アヤノか?」
「……先輩ですか?」
「大体の真実は分かった。だが、私自身についてはまだよく分からない」
「私も……分かりませんでした。
 どこをどう探しても、先輩の正体に関するデータは……」
「しかし私が普通の人間でないという事ははっきりしている。
 何がどう普通ではないのかは分からないというだけで。
 それを確かめるために、奴らは答え合わせの場を設けてくれた」
「あぁ、あの電話番号の……」
「一週間後にまた奴らに電話をしなきゃいけない。
 そして贈り物の用意もだ。電話の相手が、一番喜びそうなものを贈ってやる」
「贈り物ですか。先輩、それって……」
「そうだ。もう自分の名前を呪ったりしない。恨みもしない。
 なんだかなぁ、この名前を付けたのは母なんだけどな、感謝したい」
「じゃあ行ってくればいいじゃないですか。
 丁度あれですよね、レイヴン大陸の方にお母様のお墓があるって……」
「そうだな。答え合わせの時に花でも買って、置いておこう」
「それがいいですよ。きっとそれが、いい事なんですよ」
「多分な。生きているうちにまともな孝行をしたかったんだが、
 仕方がないよな……それとだな、アヤノ!」
「はいっ!?」
「ここまでしてくれてありがとう! 色々終わったら、今度どこかに食事に行こう!」
「はい、分かりました! 楽しみに待ってます!」

302 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/10(土) 22:42:43 ID:cSeReRSq0
 そこでアヤノとの通話を切る。
個人的な事は書きたくなかったので今まで伏せていたのだが、
実は私の母は死んでいる。死因が何かまでは書かなくてもいいだろう。
父は生きていて、WOSファルコン支部で働いている。公務員というやつだ。

 個人情報の公開はここまでにしよう。
次に私はルークに電話をする事にした。数コール後に彼が電話に出る。

「クロイスか、どうした?」
「今年の一月に作ってくれた機械があるだろ?」
「おい、まさかもう一度行くのか?」
「あぁ。多分、こういう目的でカーニバルに行くのはこれが最後だろう」
「俺はついていかねぇぞ」
「分かってる。あの時も、そして今も。迷惑をかけてすまなかったと思う」
「……迷惑はしてねぇよ。
 とりあえず三日後にお前の家に同じものを持っていく」
「何を報酬にすればいい?」
「お前が掴んだ真相……は要らない。俺が知っても得する事じゃないし。
 そうだ、クロイスと久しぶりに遊ぶってのは?」
「それでいいのか?」
「あぁ。お前、この一年近くずっとユールとカーニバルの事しか考えていなかったもんな。
 勉強の方は大丈夫そうだったが、人との関わりを忘れているようだったから」
「……最近まともに話をしていたのはアヤノくらいだからな。心配かけてすまなかった」
「いやいや、全然そういうのはなかった。
 やるからにはクロイス、思いっきりやれ。納得がいくまでな……」
「分かった……そのために行くんだ。じゃあな」

 私はそう言って通話を切った。
こんな事をしている間、ふと思った事がある。
別に死にに行くわけではないのに、なぜかそんな気分になってしまっていた。

303 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/10(土) 22:47:53 ID:cSeReRSq0
 それから一週間が経った。
前に宣言した通り、夜の八時に電話をかけ、相手の応答を待つ。

「もしもし」

 相手が出た。一週間前と同じ人間だ。

「時間を指定できる。言っていいか?」
「はい」
「12月25日」
「どうしてその日を?」
「これは昨年、カーニバル事件が起きた日だった。
 でも、これはそれとは関係がないんだ。何の日か分かるか」
「もちろん。クリスマスでしょう?」
「そうだ。だから……その時までにお前の準備とやらは済ませられるだろう。
 私も私で準備がある。お互い、その日を待ちわびよう。これでいいか?」
「不都合な点は何もありません。
 その日の正午、カーニバルの受付で私は待っています。それでは」

 そう言って相手は切った。
私は頭の中ですべき事を整理する。
そして、自分が言った期日までに
頭の中で練り上げられた計画の準備は終わるであろうと確信し始めていた。

317 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/16(金) 23:14:47 ID:czpj0K9y0
 あの電話から時は過ぎる。
その時から12月25日までには私の計画の準備は整った。

 計画には二つの内容がある。
一つは、カーニバル事件の真実を全て明かし、
そしてリアルな当事者の記録を取る。
そうして得られた全てのデータを元に、もう一度カーニバル事件を再現する。
 こう書くとあまりにも物騒に見えるかもしれない。
しかしこの内容は既に終了している。あなたもこれは読んだはずだ。
そう。全てのデータを元にカーニバル事件そのものを、リコンストラクトする。
言葉を直していうと「再構築する」という事である。
 しかし当時は再構築のための最後の一手を欠いていた。
それは、あの電話の相手と面と向かっての対話をする事であった。
言ってみれば、それはまさしく再構築のためプロット作成のラストフェーズであろう。

 もう一つは、3000年12月25日に実行済みだ。
今から描かれる私の物語にも、そこには焦点が合う。
大事なのはあの対話で知った真実を書く事だ。
しかしこれは物語だ。どんなアプローチでもいいから、オチをつけねばならない。

318 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/16(金) 23:20:42 ID:czpj0K9y0
 二つの計画のどちらも成功させるために、私は12月19日にファルコン大陸を発った。
20日から行動を起こしたとして、それでも余裕で計画は成功すると思ったのである。
 一つ目のカーニバル事件再構築計画は、プロットに基づき
現実に存在する登場人物の、リアルな生活態度を観察する事が
ラストフェーズ一歩手前であった。
 ここで言う登場人物とは、あの双子の姉弟、バレンタイン姉弟の事である。
ユールの友人であるという設定のキリーも、別の使用人の娘だった。

 あの双子はユールの物語で描かれたような個性をもっていた。
双子であるというのにセリフをハモれず、
しかしそれでいてお互いがお互いを信頼している所がある。
 弟のアルベルトは、かわいい女の子を見つけたら即ナンパするという女好きだ。
その時のセリフは決まってこうなのだという。

「ねぇそこのネェちゃん、一緒にお茶しない?
 あのクーリー家の豪邸の中庭でさ。
 俺、あの家の使用人の息子なんだ。それくらいは出来るのさ」

 姉のアリスは、そんな弟をいつもこんな言葉で叱るのだという。

「もう、アルの馬鹿! (バコンと殴ってから)すみません、ご迷惑をおかけしまして……」

 大体ながら、この辺りの個性は描けたとは思う。
キリーという少女も、いたずら好きそうな感じではあった。
それでいて、何かこう、妙に鋭そうな所とかもあった。

 あの三人と面と向かって話し、少し驚いた事がある。
ユールという少女がいたのだという事実を数少ないながらに知る者達の中に入っていた彼らは
WOSの記憶操作によってユールの存在自体を忘却させたのかと思ったのだが、そうではなかったようだ。

 彼ら三人の記憶はこうなっていたのだ。
ユールという少女がクーリー邸で生活をしていた事がある。
彼女と友人としての付き合いをした事がある。
2999年12月25日、カーニバルに行って現地でユールを見た事がある。
同年同日、三人はトップランカー決定戦を観戦するが、そこでユールは見ていない。
そして最後に、民間人の少女が死んだ事を知り、その少女がユールである事を知った……
3000年12月22日に、アリス・バレンタインとアルベルト・バレンタイン、
そしてキリー・トーレンに行ったインタビューで、それらは判明した。

319 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/16(金) 23:26:21 ID:czpj0K9y0
 カーニバル事件再構築の計画は、残す作業は執筆のみとなった。
それさえ完了してしまえば、私がユールの物語と呼ぶそれが完成する。
残すはもう一つの3000年12月25日に実行した計画のみだ。

 それを実行するのには「彼」の協力が必要だった。
計画実行の二日前、12月23日の晩に私は「彼」に協力をお願いした。
これを快く引き受けてくれる事は分かっていた。お互いに利益のある話だから。

 結果として「彼」はこの願いを聞き入れ、協力すると言ってくれた。
数時間の間苦しい思いをさせてしまう、とは言ったのだが
「彼」はその苦しみの先の事を考えると、そんなのはどうでもいい事だと言った。



 3000年12月25日 正午 カーニバル受付前

 その日の天気は雪だった。
何故か気温が氷点下に近かったのだ。
レイヴン大陸の気候上の例外ともいえる
カーニバル近辺の平均外気温10℃はそれをもって初めて崩れた。

 そう書くととんでもない事に聞こえるのだろうが、実を言うとそんな事はない。
季節は冬。だから、レイヴン大陸全体が寒い気候になる。
さらに書くと、各大陸からカーニバルへと直接アクセスする公共交通手段はない。
それをカーニバルの来園客やレイヴン大陸の観光客は
この事を知っているから、当然厚着をする。私も例外ではない。
黒色の長袖の服、青いジーンズ、そして白いロングコートを着て、寒さに耐えていた。

 しかし、私はレイヴン大陸のように寒い地域で長く過ごした経験がない。
したがってどんなに厚着をしようと、身にしみる寒さに長時間耐える事が出来ない。
だから私は、第十地区駅からカーニバルへ直行するバスに乗った。
これまでにバスに乗ったのは、海底でライオンを見て、
ジェームズとルセに会った日の帰りしかない。
健康のためにと歩きで移動する事にしていたのだが、寒さには敵わない。

320 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/04/16(金) 23:32:17 ID:czpj0K9y0
 この天候と外気温によるカーニバル来園客の変化は少なからずあった。
昼の正午という時間もあるのかもしれないが、
普段より受付にいる人の数が少ない。
 そう書くより、誰もいなかったと言った方が正しい。
職員である受付の人間もいなかった。はっきり言って異常な光景だった。
もしかすると、あの電話の主が人払いをさせたのかもしれない。
仮にそうだとして、そうする理由が分からなかった。
ただ一つ考えられるのは……人に見られたくない事をしたいから、なのだろうか。

 私は受付の人間に何かあったのだろうかと思い、前に進んだ、その時である。
何者かの影が一つの受付の建物から出てきたのだ。
私は思わず身構え、そしてそこで立ち止まる。
影は外の光を浴びて姿を明瞭にしていく。
 姿をあらわにした影は、少女だった。
その髪の色は白く、その長さは腰にまで達していた。
その身にまとう服は黒く、世間一般的に言っても顔立ちは良い方だった。

「誰だ、お前は……」

 私は少女の姿を見ながらそう問いかけた。

「電話の相手です」

 少女曰くそうらしい。

「約束の時間だ。この時間ならまだ受付は出来るはずなんだが……何をした?」
「ちょっとだけ人が来ないようにしました。
 どうしても、私達のためにやりたい事があるからです」
「やりたい事だと? それは何なんだ」
「言いません。すぐに分かります」




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