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旅人さんの話 -St.1-
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| 251 :200:2007/09/02(日) 01:30:33 ID:qNUdP3890 |
俺が遠くへぶらり旅をしていた頃の話。
町へ町へと流れてゆき、ただひたすら旅をしていた頃の話。
俺はある港町で人の良い老夫婦にしばらくの間この町に留まらないか?と誘われた。
部屋も貸してくれる、食事も3食出してくれる。
この滞在期間に何か仕事をしておけば、そのお金で後々の旅が楽になるだろう。
そう思った俺はその老夫婦に感謝して、しばらくの間お世話になることになった。
町へ町へと流れてゆき、ただひたすら旅をしていた頃の話。
俺はある港町で人の良い老夫婦にしばらくの間この町に留まらないか?と誘われた。
部屋も貸してくれる、食事も3食出してくれる。
この滞在期間に何か仕事をしておけば、そのお金で後々の旅が楽になるだろう。
そう思った俺はその老夫婦に感謝して、しばらくの間お世話になることになった。
老夫婦の家に滞在して4日目になった。
俺はちょっとしたお使いを頼まれたので、近くのデパートに足を運んだ。
俺はちょっとしたお使いを頼まれたので、近くのデパートに足を運んだ。
デパートの近くには海があった。
潮の香りが俺は苦手だった。
足早に自動ドアを抜けた。
そのドアのすぐ右手にはゲームコーナーがあった。
平日の昼間近くだというのに、若者たちが群がっているコーナーがあった。
そのコーナーに俺は近寄った。
潮の香りが俺は苦手だった。
足早に自動ドアを抜けた。
そのドアのすぐ右手にはゲームコーナーがあった。
平日の昼間近くだというのに、若者たちが群がっているコーナーがあった。
そのコーナーに俺は近寄った。
予想は当たっていた。
少し派手な格好をした怖そうな兄ちゃんという言葉がしっかり当てはまる者たちの集団が
あのギターとドラムの演奏シュミレータのようなゲーム、あれは確か、
少し派手な格好をした怖そうな兄ちゃんという言葉がしっかり当てはまる者たちの集団が
あのギターとドラムの演奏シュミレータのようなゲーム、あれは確か、
「ホント、音楽ゲームやってる人たちって、品がないわよねぇ」
「特にあのギターとドラムのやつ、いつゲーム機が壊れるか分からないわよねぇ」
「特にあのギターとドラムのやつ、いつゲーム機が壊れるか分からないわよねぇ」
そうだった。
音楽ゲーム。略して音ゲー。
あのゲーム2つの名前はギターフリークスと、ドラムマニアだ。(2つ合わせたのを略してギタドラだったか)
不意に後ろからした、UFOキャッチャーに興じている子供たちの親であろう2人の女の声で思い出した。
確かに、ドラマニ(単体の略し方はこんな感じだったはず)をプレーしているモヒカン男はガシガシとパッドをスティックで強烈に叩きつけていた。
ギタフリ(略し方はこれであっているはず)をプレーしている所謂オタクという感じの男は筐体を思いっきり蹴飛ばしていた。
見るとゲームオーバーしたらしかった。
男はギターコントローラーを床に激しく叩きつけて、どこかへ去っていった。
音楽ゲーム。略して音ゲー。
あのゲーム2つの名前はギターフリークスと、ドラムマニアだ。(2つ合わせたのを略してギタドラだったか)
不意に後ろからした、UFOキャッチャーに興じている子供たちの親であろう2人の女の声で思い出した。
確かに、ドラマニ(単体の略し方はこんな感じだったはず)をプレーしているモヒカン男はガシガシとパッドをスティックで強烈に叩きつけていた。
ギタフリ(略し方はこれであっているはず)をプレーしている所謂オタクという感じの男は筐体を思いっきり蹴飛ばしていた。
見るとゲームオーバーしたらしかった。
男はギターコントローラーを床に激しく叩きつけて、どこかへ去っていった。
このゲームコーナーは4種、5台の音ゲー筐体が円を作るように設置された「音ゲーコーナー」があった。
ギタドラがそれぞれ一台、ポップン2台、弐寺筐体が1台。
ギタドラの方は先程見た感じでは相当マナーが悪い奴が多いらしい。
弐寺はスクラッチで遊んでいる奴が多いだけで、マナーが悪い奴は殆どいなかった。
(ササ、三倍アイスクリーム!とか、トゥットゥーディーエックスゴールド!とかを多く聞いた)
ポップンの方だが、これは俺が旅に出る前に唯一遊んだ事のある音ゲーだった。
ギタドラがそれぞれ一台、ポップン2台、弐寺筐体が1台。
ギタドラの方は先程見た感じでは相当マナーが悪い奴が多いらしい。
弐寺はスクラッチで遊んでいる奴が多いだけで、マナーが悪い奴は殆どいなかった。
(ササ、三倍アイスクリーム!とか、トゥットゥーディーエックスゴールド!とかを多く聞いた)
ポップンの方だが、これは俺が旅に出る前に唯一遊んだ事のある音ゲーだった。
…いや、以前別の「とある機種」を触ったことがあるので、正確には「唯一」ではないのだが…
結局その機種は数回やっただけでやめたので、ほぼポップンのみと言っても間違いではないだろう。
結局その機種は数回やっただけでやめたので、ほぼポップンのみと言っても間違いではないだろう。
俺から見て右の筐体でプレーしてる奴が、見た感じlv30台前半が適正lvだと思われた。
左の筐体には、エンジョイモードを5ボタンでプレーしていて、ゲージが常に最低のところにあった全くの初心者がいた。
左の筐体には、エンジョイモードを5ボタンでプレーしていて、ゲージが常に最低のところにあった全くの初心者がいた。
| 253 :200:2007/09/02(日) 22:53:03 ID:qNUdP3890 |
俺は何となくポップンをプレーしたくなってきた。俺は左の初心者の後ろに並んだ。
お使いは急なものではなかったので、少し遅れてもよいだろうという気持ちも手伝っていた。
お使いは急なものではなかったので、少し遅れてもよいだろうという気持ちも手伝っていた。
俺にとってのポップンは10作目で終わっていた。
その訳は、とある曲の存在にある。
その訳が、俺の旅のきっかけでもあるのだが、今のところでは話せない。
だが、この旅もこの1プレイで終わるのかもしれないと思うと、気が楽になった。
が、この1プレイで終わらないのかもしれないとも思うと、気が重くなった。
その訳は、とある曲の存在にある。
その訳が、俺の旅のきっかけでもあるのだが、今のところでは話せない。
だが、この旅もこの1プレイで終わるのかもしれないと思うと、気が楽になった。
が、この1プレイで終わらないのかもしれないとも思うと、気が重くなった。
物思いにふけっていると、突然
「ぎゃはははは!オメェそんなのも出来ませんってか?ウヒャハハハ!」
男の声が聞こえた。
馬鹿にした笑い声。
あの曲と、アイツのことを思い出す。
あの曲と、アイツのことを思い出す。
吐き気がする。
どうやら右の筐体の男がプレーを終えたらしく、先程残念なことに2ステージ目も落とし、
しょんぼりしている初心者を思い切り心から馬鹿にしていた。
しょんぼりしている初心者を思い切り心から馬鹿にしていた。
「うるさい人ですね。…気分が悪い!」
初心者はそう言って足早に音ゲーコーナーから出て行った。
見下した男は帰り行く初心者をまだ馬鹿にしながら笑い声を立てている。
あの初心者の姿に、あの時の俺の心情が重なりつつあった。
見ず知らずの男に 強烈な怒りを感じてきた。
右手を力をこめて握った。
見下した男は帰り行く初心者をまだ馬鹿にしながら笑い声を立てている。
あの初心者の姿に、あの時の俺の心情が重なりつつあった。
見ず知らずの男に 強烈な怒りを感じてきた。
右手を力をこめて握った。
笑う男の伸びて指差す右腕を
「失礼」
と言って左手で掴み、右のストレートをぶち込んだ。
笑う男の右腕の骨が砕けた感覚がした。
笑う男の右腕の骨が砕けた感覚がした。
「うあああああああ!!!痛い、痛いいぃぃぃ!!!」
のた打ち回りながら泣き叫んでいた。
俺はすぐに音ゲーコーナーから走り去った。
店員に捕まることを恐れたからではない。
あの初心者が心配だったからだ。
俺はすぐに音ゲーコーナーから走り去った。
店員に捕まることを恐れたからではない。
あの初心者が心配だったからだ。
俺の横を通り過ぎる時に、俺は初心者の顔を盗み見ていた。
初心者は泣いていた。
初心者は泣いていた。
俺はお使いのことをすっかり忘れていた。あの後、すぐにデパートから出て行った。
遠くに、俯きながら家に帰るのであろう初心者の背中が見えた。
俺は、初心者の後を追って、駆け出していた。
遠くに、俯きながら家に帰るのであろう初心者の背中が見えた。
俺は、初心者の後を追って、駆け出していた。
| 279 :200:2007/09/05(水) 01:37:53 ID:cNwoSpA40 |
少年は涙ぐみながら自宅へと通じる緩やかな坂を歩いていた。
あの時の嫌な気分。どうすれば晴れるのだろうか。
見下したあの男を 越すことが出来れば、晴れるのだろうか。
そんなことを思っていた時に、 後ろからゼーゼーハーハーした激しい吐息が聞こえた。
少年は振り向いた。
あの時の嫌な気分。どうすれば晴れるのだろうか。
見下したあの男を 越すことが出来れば、晴れるのだろうか。
そんなことを思っていた時に、 後ろからゼーゼーハーハーした激しい吐息が聞こえた。
少年は振り向いた。
俺は坂を上り、帰宅途中であろうあの初心者の背中を追いかけた。
「ま、待て!」
声に出そうとしても息が苦しくて、のどで言葉が止まってしまっていた。
初心者は俺の立てる吐息か、足音かで立ち止まり、こちらへ振り向いた。
初心者は相当驚いたようだった。後ろから猛スピードで走り寄られたのだ、無理はなかった。
初心者は俺の立てる吐息か、足音かで立ち止まり、こちらへ振り向いた。
初心者は相当驚いたようだった。後ろから猛スピードで走り寄られたのだ、無理はなかった。
「何ですか?あなたも僕を笑いに来たんですか?」
初めて初心者の顔をゆっくり見た。額に少しニキビのある、目が少し大きめな少年だった。
俺はその問いを否定して、逆にこう聞いた。
俺はその問いを否定して、逆にこう聞いた。
「今、君はどんな気持ちだ?」
「は?」
「今、君はどんな気持ちかって聞いてるんだ」
俺はもう一度聞いた。少年は怒鳴りながらこう答えた。
「凄く気分悪いですよ!あの男、人をゲーム如きで見下すなんて…最悪だ!
あなたに分かるわけがないでしょう!?」
あなたに分かるわけがないでしょう!?」
「いや、分かるんだな、君の気持ちは。細かいところは知らないけどね」
俺はそう答えてこう続けた。今となっては少々キツイ言葉かもしれなかったが
少年を俺のような人間にはしたくなかったから、こんな事が言えたのだろうと思う。
少年を俺のような人間にはしたくなかったから、こんな事が言えたのだろうと思う。
「あんな奴の言う事は放っておけばいい。ゲームなんかで馬鹿にしている奴なんてね」
「そんなの間違っているじゃないですか!何であんな男を放っておくんですか!?」
当然、少年は反論してきた。俺はこういって少年を絶望させたと思う。
「そんな奴をかまった所で反省するとでも思っているのかい?」
少年は黙っていた。俺は続けた。
「悔しいと思っただろ?馬鹿にされたくないと思っただろ?
もしそうなら、たった一つだけ方法がある。…奴を越えることだ」
もしそうなら、たった一つだけ方法がある。…奴を越えることだ」
言いながら、俺の話を聞き入る少年の姿と、あの時の俺の姿が重なった。
あの時の、ひどい有様だった俺のような奴にはなって欲しくなかった。
あの時の、ひどい有様だった俺のような奴にはなって欲しくなかった。
逃げては欲しくなかった。
| 280 :200:2007/09/05(水) 01:47:34 ID:cNwoSpA40 |
突然、少年は俺に
「…もしかして、あなた旅人さんですか?」
と聞いてきた。
何故それを…と俺の顔が言っていたのか少年は続けた。
何故それを…と俺の顔が言っていたのか少年は続けた。
「やっぱりそうなんですね。あなたに頼みたい仕事があるんですよ。
それも、今日の20時から。待ち合わせは…19時30分にここで。
あと、住み込みでやってもらう仕事なんで。お願いします」
それも、今日の20時から。待ち合わせは…19時30分にここで。
あと、住み込みでやってもらう仕事なんで。お願いします」
そう一方的に少年は言って俺に背を向けて坂を上っていった。
確かに、俺はこの町で仕事にありつけてなかった。
もうこれ以上あの老夫婦には迷惑はかけられないと思っていた頃だったので
俺の頭の中では一瞬で答えは決まっていた。
確かに、俺はこの町で仕事にありつけてなかった。
もうこれ以上あの老夫婦には迷惑はかけられないと思っていた頃だったので
俺の頭の中では一瞬で答えは決まっていた。
| 288 :旅人さんの話の作者:2007/09/09(日) 01:23:45 ID:6zFcxVr30 |
あの後、俺はあのデパートで手短にお使いの品を買い、老夫婦の家に帰った。
俺の右手はナイロン袋を持ち、その中にはごく普通の醤油が入っていた。
玄関の引き戸を引くと、
俺の右手はナイロン袋を持ち、その中にはごく普通の醤油が入っていた。
玄関の引き戸を引くと、
「お帰りなさい。遅かったから心配しましたよ。さぁ、あがりなさいな」
とお婆さんが出迎えてくれた。
はい、と言って俺は靴を脱いで家に上がった。
はい、と言って俺は靴を脱いで家に上がった。
そしてお爺さんも帰ってきた。
どうやら俺が外に出ている間に釣りをしたらしく、 肩にかけたアイスボックスを開けると、
氷が敷き詰められた上に新鮮な魚が何匹か入っていた。
どうやら俺が外に出ている間に釣りをしたらしく、 肩にかけたアイスボックスを開けると、
氷が敷き詰められた上に新鮮な魚が何匹か入っていた。
その日の夕食はお爺さんの釣った魚を焼いて、醤油をつけて食べるだけだった。
何かと貧乏しているのがこの夕食の有様から分かった。それでも俺を泊めてくれた事が嬉しかった。
俺は次第に涙目になっていった。潤んだ視界で古ぼけた壁がけ時計を見る。19時丁度だった。
何かと貧乏しているのがこの夕食の有様から分かった。それでも俺を泊めてくれた事が嬉しかった。
俺は次第に涙目になっていった。潤んだ視界で古ぼけた壁がけ時計を見る。19時丁度だった。
俺は老夫婦に言った。
「お爺さん、お婆さん、今日、俺…仕事が見つかったんです。それでこの家を出て行く事になりました。
こんなに貧乏してるのに、俺の面倒を見てくれて本当にありがとうございました。あと、ご馳走様でした」
こんなに貧乏してるのに、俺の面倒を見てくれて本当にありがとうございました。あと、ご馳走様でした」
お爺さんとお婆さんはどこか物悲しそうにしながら、俺を送り出してくれた。
泣きながら玄関の所で 手を振って送ってくれたのを今でも覚えている。
今でも、あの老夫婦のことは忘れない。
泣きながら玄関の所で 手を振って送ってくれたのを今でも覚えている。
今でも、あの老夫婦のことは忘れない。
19時30分。少年が指定した時刻の少し前から俺は坂の上で待ち続けていた。
何分かの後 少年が俺に走り寄って来た。
とりあえず僕の家に、と言って俺を案内した。
よくテレビ放送で有名人の豪邸が流れるが、案内された先はまさしく豪邸だった。
俺は驚いていた。
何分かの後 少年が俺に走り寄って来た。
とりあえず僕の家に、と言って俺を案内した。
よくテレビ放送で有名人の豪邸が流れるが、案内された先はまさしく豪邸だった。
俺は驚いていた。
| 343 :旅人さんの話の作者:2007/09/17(月) 01:37:32 ID:tZlWIkwH0 |
俺は少年に連れられた先の豪邸で口をポカーンと開けていたと思う。
少年がそんなに驚かないでくださいよ と言って俺を豪邸の中に連れ込んでいった。
まず、玄関から感じる無駄な材質の高級感が 癇に障った。
何でだろう?と思ったがそれをこの少年に悟られてはなるまいとして平静を装った。
靴を脱ぎ、揃えて置いてから廊下へと足を踏み込む。
また、床の高級感が癇に障った。 昔は豪邸に腹を立てたことなどなかったのに。
そのまま「食事室」に俺は少年に連れられていった。
少年がそんなに驚かないでくださいよ と言って俺を豪邸の中に連れ込んでいった。
まず、玄関から感じる無駄な材質の高級感が 癇に障った。
何でだろう?と思ったがそれをこの少年に悟られてはなるまいとして平静を装った。
靴を脱ぎ、揃えて置いてから廊下へと足を踏み込む。
また、床の高級感が癇に障った。 昔は豪邸に腹を立てたことなどなかったのに。
そのまま「食事室」に俺は少年に連れられていった。
そこで俺を待っていたのは最高級の食事だった。
山の幸、海の幸、高級そうな牛肉のステーキ。
その他諸々の料理の皿が、やたら大きい薄緑のテーブルクロスを被せられた円形のテーブルに数枚置かれている。
山の幸、海の幸、高級そうな牛肉のステーキ。
その他諸々の料理の皿が、やたら大きい薄緑のテーブルクロスを被せられた円形のテーブルに数枚置かれている。
「…これを食べるのが仕事なんて言わないよな?」
俺は少年に冗談めかして聞いた。勿論と少年は答えた。
その後に続けて少年が言った。
その後に続けて少年が言った。
「自己紹介が遅れました。僕の名前はゆうといいます。親が富豪なんでこういう家に住まわせてもらってます。
あなたの…旅人さんのお名前は?」
あなたの…旅人さんのお名前は?」
俺は驚いていた。
この少年の名前はゆう。俺と同じだ。
その事を返すと少年も大変驚いたようだった。
この少年の名前はゆう。俺と同じだ。
その事を返すと少年も大変驚いたようだった。
「で、早く仕事のことについて話してくれないかな?」
俺はゆうに言った。
同時に、もう料理には頂きますと言っていたので、俺はまず牛肉のほうにナイフとフォークを伸ばした。
同時に、もう料理には頂きますと言っていたので、俺はまず牛肉のほうにナイフとフォークを伸ばした。
「はい。…ポップンミュージック、僕に教えてください」
あの時の俺の心の声は、は?である。
聴覚がおかしくなったのだろうか、とも思った。
俺は確認した。
聴覚がおかしくなったのだろうか、とも思った。
俺は確認した。
「ポップンミュージック?」
はい。とゆうは言った。
…ポップンについて何を教えろと言うのか。
あれは教える教えないではなく 自分のレベルの範囲で好きな曲を演奏するゲームだと今でも俺は思っている。
いや、そもそも腕前なんて関係のないはずなのだ。
…あの、ゆうを見下した男のことを気にしているのだろうか。
…ポップンについて何を教えろと言うのか。
あれは教える教えないではなく 自分のレベルの範囲で好きな曲を演奏するゲームだと今でも俺は思っている。
いや、そもそも腕前なんて関係のないはずなのだ。
…あの、ゆうを見下した男のことを気にしているのだろうか。
あの時、俺は言い過ぎたのではないかと思っていた。
俺はその仕事を断ろうとしてこう言った。
俺はその仕事を断ろうとしてこう言った。
「いや、俺はlv36台が限界の…」
「それでもいい。あの男、lv30辺りが限界なんでしょう?
僕、選曲画面を見ていてクリアーマークがハイパー譜面のlv30,31が多いことが分かっていたんです。
お願いです、絶対にあの男を越したいんです。」
僕、選曲画面を見ていてクリアーマークがハイパー譜面のlv30,31が多いことが分かっていたんです。
お願いです、絶対にあの男を越したいんです。」
| 345 :旅人さんの話5-2:2007/09/17(月) 02:04:39 ID:tZlWIkwH0 |
ゆうはそう懇願した。
俺も、あの男が(その時、腕を折ったか砕いたかのパンチを思い出した)
lv30辺りで壁に当たっているとするなら、俺がアドバイスするだけでもゆうは彼を追い越すかもしれない。
俺も、あの男が(その時、腕を折ったか砕いたかのパンチを思い出した)
lv30辺りで壁に当たっているとするなら、俺がアドバイスするだけでもゆうは彼を追い越すかもしれない。
「分かった。…俺も、あの時あぁ言ったからな。自分の好きなことが仕事になるんだ。
正直断ろうと思ったけど、君が俺なんかを本気で頼ろうとするなら、俺も全力で応える」
正直断ろうと思ったけど、君が俺なんかを本気で頼ろうとするなら、俺も全力で応える」
俺はゆうの仕事を請け負った。
が、俺が気になったことがあった。
家で練習するのなら必要な物が、ここにあるかという事だ。
家で練習するのなら必要な物が、ここにあるかという事だ。
「ねぇゆう君。ポップンコントローラーとポップンのCS作品、何か持っている?無ければ今から…」
「大丈夫ですよ。料理のほうを一旦残して外へ付いて来て下さい」
買いに行こう。と言おうとしたところをゆうが遮った。
俺はゆうの後についていった。
俺はゆうの後についていった。
外はもう暗かった。
ゆうは豪邸の敷地内の森の中へ歩いていった。
その先には木造の小屋があった。
ゆうは豪邸の敷地内の森の中へ歩いていった。
その先には木造の小屋があった。
俺はその小屋の戸を開けた。
そして俺はまた驚き、そしてある種の怒りがこみ上げてきた。
小屋の中には、役目を終えたポップン14の筐体が置いてあった。…それは稼動していた。
そして俺はまた驚き、そしてある種の怒りがこみ上げてきた。
小屋の中には、役目を終えたポップン14の筐体が置いてあった。…それは稼動していた。
「ゆう君。君はこうまでしてあの男を越したいのか?」
「はい。こうでもしないと短期間ではレベルアップ出来ないでしょう?」
ゆうは平然、といった感じで答えた。
その時だった。
なぜ俺が大金が絡む物に腹を立てているのかが分かった。
なぜ俺が大金が絡む物に腹を立てているのかが分かった。
この町にたどり着くまで粗末なテントで寝泊りし、老夫婦の生活の質を見て自分に近いものを感じていたから。
ゆうの家は豪邸で、出してくれた料理は老夫婦の出すそれの質をはるかに超えていたから。
筐体を買って此処に置いているから。
…自分に近いものを、感じることが出来なかったからだ。
俺はそう思っていた。
ゆうの家は豪邸で、出してくれた料理は老夫婦の出すそれの質をはるかに超えていたから。
筐体を買って此処に置いているから。
…自分に近いものを、感じることが出来なかったからだ。
俺はそう思っていた。
「とりあえず、エンジョイモードで9ボタンの配置をなるべく早く感覚でつかんで。その後の話はそれからだ」
あの時、俺は感情を入れずにゆうに言った。
| 366 :旅人さんの話の作者:2007/09/24(月) 01:32:07 ID:/lLXLi0N0 |
「とりあえず、エンジョイモードで9ボタンの配置をなるべく早く感覚でつかんで。その後の話はそれからだ」
旅人ゆうは少年ゆうに言った。
分かりました、と少年ゆうは言った。
そしてポップン14筐体の映すタイトル画面で 赤ボタンを叩いた。
分かりました、と少年ゆうは言った。
そしてポップン14筐体の映すタイトル画面で 赤ボタンを叩いた。
この筐体は少々改造されているらしい。
恐らくは技師が手を込んだのだろうが、少年ゆうが赤ボタンを叩くと
恐らくは技師が手を込んだのだろうが、少年ゆうが赤ボタンを叩くと
「セッッイエエェェェーイ!」
と筐体から声がし、モード選択画面に移行した。
勿論、ポップン世界の神とされているMZDというキャラで表示されているNET対戦の項目は選択できないようになっていた。
旅人ゆうは筐体の前でエンジョイモードを選ぶ少年ゆうを少し見つめてから、仕事の準備をしてくる、と言って小屋を出た。
勿論、ポップン世界の神とされているMZDというキャラで表示されているNET対戦の項目は選択できないようになっていた。
旅人ゆうは筐体の前でエンジョイモードを選ぶ少年ゆうを少し見つめてから、仕事の準備をしてくる、と言って小屋を出た。
旅人ゆうは豪邸にある、情報室と呼ばれているPCとプリンターが何台かある部屋に居た。
すでに使用人からこの部屋の機材すべての使用の承認を旅人は得ていたので、手近のPCとプリンターの電源を入れた。
部屋の明かりを付けつつ、PCが起動するまで椅子に座って旅人は待っていた。
何分か経ってから旅人はインターネットを開始した。
そして、検索を始めた。
すでに使用人からこの部屋の機材すべての使用の承認を旅人は得ていたので、手近のPCとプリンターの電源を入れた。
部屋の明かりを付けつつ、PCが起動するまで椅子に座って旅人は待っていた。
何分か経ってから旅人はインターネットを開始した。
そして、検索を始めた。
キーワードをポップンで検索すると、譜面サイトなどがあったりする。
それらのデータを旅人は印刷しようとしていたのだった。
プリンターに大量にセットしたA4用紙が次々文字が散りばめられたポップン攻略情報紙となっていった。
それらのデータを旅人は印刷しようとしていたのだった。
プリンターに大量にセットしたA4用紙が次々文字が散りばめられたポップン攻略情報紙となっていった。
俺は、両手に持った大量に印刷したA4用紙を持って小屋に入った。
外は寒かったが、小屋の中は当然だが暖かった。
するとゆうが、
外は寒かったが、小屋の中は当然だが暖かった。
するとゆうが、
「大体のボタン配置はつかめました。次は何をすればいいですか、ゆうさん」
と聞いてきた。
俺はゆうにポップン用語について印刷したA4用紙を差し出した。
勿論、これからの俺の話はこのA4用紙にある用語の意味が分からないとついていけそうにないからだ。
俺はゆうにポップン用語について印刷したA4用紙を差し出した。
勿論、これからの俺の話はこのA4用紙にある用語の意味が分からないとついていけそうにないからだ。
| 367 :旅人さんの話6-2:2007/09/24(月) 02:03:59 ID:/lLXLi0N0 |
「これは…?」
ゆうが俺に聞いてきた。
この訳の分からない単語は一体なんだというような顔をしていた。
この訳の分からない単語は一体なんだというような顔をしていた。
「ポップンで使われている用語。とりあえず今日はそれを覚えてお終い。
ちょっとさ、俺にも遊ばせてくれないかい?
何年かもうポップンやってなくてね。そのブランクを埋めたいんだ」
ちょっとさ、俺にも遊ばせてくれないかい?
何年かもうポップンやってなくてね。そのブランクを埋めたいんだ」
分かりました、と言ってゆうは小屋を出た。
俺は、ゆうは豪邸の自室であのA4用紙とにらみ合いをするのだろうと思った。
俺は、ゆうは豪邸の自室であのA4用紙とにらみ合いをするのだろうと思った。
俺は筐体の前に立ち、赤ボタンを叩いた。
やはり「セッッイエエェェェーイ!」としか聞こえない男の声を聞き、モード選択に入った。
先程の検索でポップンの公式サイトを見て予習したかいがあった。
超チャレンジモード(超チャレと略されるらしい)なんて知らなかったからだ。
俺は超チャレを選び、lv30台前半の曲をクリアーしていこうとした。
…やはり数年のブランクというのは辛いものだ。全然ボタンが押せなかった。
頭の中ではどうボタンを叩けばよいのか分かるのに、手が追いつかなかったりした。
そもそもどうボタンを押せばよいかも分からなくなっていたのだ。
やはり「セッッイエエェェェーイ!」としか聞こえない男の声を聞き、モード選択に入った。
先程の検索でポップンの公式サイトを見て予習したかいがあった。
超チャレンジモード(超チャレと略されるらしい)なんて知らなかったからだ。
俺は超チャレを選び、lv30台前半の曲をクリアーしていこうとした。
…やはり数年のブランクというのは辛いものだ。全然ボタンが押せなかった。
頭の中ではどうボタンを叩けばよいのか分かるのに、手が追いつかなかったりした。
そもそもどうボタンを押せばよいかも分からなくなっていたのだ。
…こんな俺が、初心者相手に指導する…?出来るのだろうかと悩んだ。
だが、一度引き受けた仕事は果たさなくてはならない。
それは当然の義務であろう。
ならば、急いでこのブランクを埋めなくてはならない。
俺は筐体の前に立ち続けた。
だが、一度引き受けた仕事は果たさなくてはならない。
それは当然の義務であろう。
ならば、急いでこのブランクを埋めなくてはならない。
俺は筐体の前に立ち続けた。
しかし現実は厳しかった。
一番ショックだったのが、同時押しが得意な俺がにょろロック(H)を落としたことだった。
しかし一時間後にはそれをクリアーできるまでに俺は回復していた。
そうして、俺は昔の実力を徐々に取り戻していった。
そして深夜になろうというときには
しかし一時間後にはそれをクリアーできるまでに俺は回復していた。
そうして、俺は昔の実力を徐々に取り戻していった。
そして深夜になろうというときには
「あなた~に会えて、良かったぁ~と~」
俺はその歌詞に涙しながらラメント(H)がボーダーながらクリアー出来るようになっていた。
ふと時計を見る。
もう0時を回っていた。
俺は小屋から出て行き、豪邸で指定された来客専用の寝室、つまりは客室のドアを開け、無駄に豪華に飾ったベッドに俺は倒れこんで、寝た。
明日、何の曲をゆうにプレーさせようと考えながら…
もう0時を回っていた。
俺は小屋から出て行き、豪邸で指定された来客専用の寝室、つまりは客室のドアを開け、無駄に豪華に飾ったベッドに俺は倒れこんで、寝た。
明日、何の曲をゆうにプレーさせようと考えながら…
| 405 :旅人さんの話7-1:2007/10/02(火) 01:33:05 ID:WcWFAhue0 |
「この曲のH譜面、絶対lv15なわけないじゃないか!何この詐欺っぷり加減は!」
次の日のこと、俺はゆうと共に朝食を取った。
そしてすぐにポップン筐体のある小屋に走って、ゆうがlv15台を埋めにかかった。
この時、ゆうはテラピー(H)を不幸なことに選曲してしまったようだった。
俺も初心者の頃、この曲の詐欺っぷりには驚いた事を覚えている。
この時のゆうの発言が俺に向けてなのか単なる独り言なのかは分からなかったが、俺はこう返した。
そしてすぐにポップン筐体のある小屋に走って、ゆうがlv15台を埋めにかかった。
この時、ゆうはテラピー(H)を不幸なことに選曲してしまったようだった。
俺も初心者の頃、この曲の詐欺っぷりには驚いた事を覚えている。
この時のゆうの発言が俺に向けてなのか単なる独り言なのかは分からなかったが、俺はこう返した。
「はいはい文句言わない。普通にクリアーできているじゃない。上出来だよ。それに、結構成長早いじゃないか」
「多分、ポップンやり始める前はIIDXやっていたからじゃないですかね」
ゆうのこの一言で彼の成長の早さの理由が分かった。
他の音楽ゲームを既にプレーしていたなら、譜面認識力も最初からある程度付いてくるのだろうと思った。
他の音楽ゲームを既にプレーしていたなら、譜面認識力も最初からある程度付いてくるのだろうと思った。
「初耳だねぇ。俺、あのゲーム苦手なんだよね。指先器用じゃないし。ゆう君は段位どのくらいだい?」
「GOLDから初めて何ヶ月か前に五段取りましたよ。けれど、IIDXの技術がポップンにそのまま流用できるわけでもないでしょう?」
五段。
IIDXの世界においてどのくらいの実力かは分からないが、これをポップンのlvで直すとどうなるのだろう。
多分、lv30台の真ん中くらいかなと思いながら俺は言った。
IIDXの世界においてどのくらいの実力かは分からないが、これをポップンのlvで直すとどうなるのだろう。
多分、lv30台の真ん中くらいかなと思いながら俺は言った。
「そうかもしれないけど、ある程度は流用できると思うよ?…んじゃ、次はフェアリーテイルね。その後は自由に選曲して」
俺の仕事といえば、こんな感じでゆうに何の曲をプレーするように指示したり、手本として俺がプレーする事ぐらいしかない。
だが、そんな位のお手伝いしか出来ないのに、ゆうは心から俺に感謝しているようだった。
俺がありがとうと言いたいくらいだった。
だが、そんな位のお手伝いしか出来ないのに、ゆうは心から俺に感謝しているようだった。
俺がありがとうと言いたいくらいだった。
時計の針が秒針短針長針共に12を指した頃、単に言えば正午になった頃にはゆうはlv20台に手を付け初めていた。
そろそろお昼ごはん食べましょう、とゆうが言った。
俺はゆうの後についていきながら、小屋を出た。
そろそろお昼ごはん食べましょう、とゆうが言った。
俺はゆうの後についていきながら、小屋を出た。
| 406 :旅人さんの話7-2:2007/10/02(火) 02:02:09 ID:WcWFAhue0 |
豪邸の食事室で出された昼食は朝食に比べれば質素に見えるが、
一般人から見れば真昼間からこんなもの食べやがって畜生と言いたくなるかもしれない。
ここで出る食事の品目を言い表すことが出来ないが、それはこの話を聞いてもらっている皆様の想像に任せてもらうより他は無い。
一般人から見れば真昼間からこんなもの食べやがって畜生と言いたくなるかもしれない。
ここで出る食事の品目を言い表すことが出来ないが、それはこの話を聞いてもらっている皆様の想像に任せてもらうより他は無い。
昼食を食べた後、俺はゆうに少し散歩しないかと切り出した。
ほぼ1日中筐体の前で立たせているのは辛いだろうと考えてのことだった。
ゆうは快く承諾し、広大な庭を散歩することになった。
ほぼ1日中筐体の前で立たせているのは辛いだろうと考えてのことだった。
ゆうは快く承諾し、広大な庭を散歩することになった。
秋なので、秋桜が柵のなかで一面に咲いていた。正直、綺麗だった。
歩きながら俺がゆうにこう切り出した。
歩きながら俺がゆうにこう切り出した。
「仕事の話なんだけど、日給どのくらいだったか聞いていなかったよね?どのくらい出るの?」
いやらしい質問かもしれないが、こういうことはハッキリさせなければならない、と俺は思っている。
ゆうがこう答えた。
ゆうがこう答えた。
「日給ですか。…三万円を考えているのですが…どうです?」
三万円?今三万円って言ったか?
あの時の俺の心はこう言っていた。
あの時の俺の心はこう言っていた。
「もしかして、昨日の分も入る?」
「半額ですが、考えようと思います」
なんて事だろう。
この少年は社会というものを知っているのだろうか。
馬鹿じゃないのかと一瞬思ってしまったが、俺はこう言った。
この少年は社会というものを知っているのだろうか。
馬鹿じゃないのかと一瞬思ってしまったが、俺はこう言った。
「じゃ、明日の昼で俺はこの仕事を辞めるから、そのつもりで」
ゆうは言葉ではなく、顔でどうして?と言ってきた。
おれはその質問に答えた。顔ではなく言葉で。
おれはその質問に答えた。顔ではなく言葉で。
「金は旅をする上でどうしても必要な物だ。けど、大金は旅をしている者にとっては少し邪魔なんだ」
「…盗人とか、ですか?」
それもある。
だが、ゲームのみで日給三万円をもらうのも気が引けるし、それに…
だが、ゲームのみで日給三万円をもらうのも気が引けるし、それに…
「それに、大体にしてその給料はどこから出て来るの?親が出すの?」
俺の質問にゆうは首を横に振った。
違う?違うなら、一体どこから…と考えていた俺にゆうが言った。
違う?違うなら、一体どこから…と考えていた俺にゆうが言った。
「僕、会社というか、小さな事務所を持っているんです。使用人数名と僕が活動していて…何でも屋をやっているんです。そこの儲けから給料が出ます」
「それなら、明日俺が仕事を下りたほうがいい。せっかくの儲けを、言い方悪いけどゲーム如きで使うより、こんな旅人にやる必要は無い。
それよりは少し貯金しておいたほうがいい」
それよりは少し貯金しておいたほうがいい」
俺はゆうにこう諭した。
ゆうは少し黙っていたが、分かりましたと言って小屋に駆けていった。
ゆうは少し黙っていたが、分かりましたと言って小屋に駆けていった。
| 407 :旅人さんの話7-3:2007/10/02(火) 02:16:58 ID:WcWFAhue0 |
少年ゆうは小屋の戸を開け、中に入った。
続いて旅人ゆうが中に入り、戸を閉めた。
そして少年はポップン筐体の前に立ち、赤ボタンを叩き、チャレンジモードを選び選曲画面へ進み、
緑ボタンを叩いてカテゴリ移動させていた。
lv順に整理されるカテゴリのところで少年は手を止め、6番目のボタン、右の青ボタンを叩いていく。
旅人は小屋の中においてあるゆりかごのような椅子に座っていた。
曲を聴きつつ、ゆうの動きに注意しながら座っていた。
続いて旅人ゆうが中に入り、戸を閉めた。
そして少年はポップン筐体の前に立ち、赤ボタンを叩き、チャレンジモードを選び選曲画面へ進み、
緑ボタンを叩いてカテゴリ移動させていた。
lv順に整理されるカテゴリのところで少年は手を止め、6番目のボタン、右の青ボタンを叩いていく。
旅人は小屋の中においてあるゆりかごのような椅子に座っていた。
曲を聴きつつ、ゆうの動きに注意しながら座っていた。
少年が三曲目の選曲に入った。
旅人からの指示は自由に選ぶ事だったので、曲の短い試聴を聞きつつ何を選ぶか迷っていた。
少年がこの曲にしようと選んだ曲のデモが旅人の耳に聞こえたとたん、旅人が口に手を押さえた。
苦しそうな顔をしていた。
旅人からの指示は自由に選ぶ事だったので、曲の短い試聴を聞きつつ何を選ぶか迷っていた。
少年がこの曲にしようと選んだ曲のデモが旅人の耳に聞こえたとたん、旅人が口に手を押さえた。
苦しそうな顔をしていた。
少年がその曲をプレーし始めた。
旅人は静かに立ち上がり、静かに歩き、静かに戸を開け、近くの茂みにしゃがみこんだ。
旅人は静かに立ち上がり、静かに歩き、静かに戸を開け、近くの茂みにしゃがみこんだ。
そして吐いた。
旅人の両目からは涙が流れていた。
泣きながら吐き続けていた。
豪華な昼食の中身が原型をとどめず胃液と共に草の上に被さっていった。
泣きながら吐き続けていた。
豪華な昼食の中身が原型をとどめず胃液と共に草の上に被さっていった。
少年がその曲をクリアーし終えた後、旅人がいない事に気づき外へ飛び出した。
少年が見たのは、ただひたすら泣きながら吐き続ける旅人の後ろ姿だった。
少年が見たのは、ただひたすら泣きながら吐き続ける旅人の後ろ姿だった。
少年が声を掛けた。
| 439 :旅人さんの話8-1:2007/10/07(日) 00:45:14 ID:u8U4BZKF0 |
俺は泣きながらしばらくの間吐いていた。
自分の口から吐き出される異物の放つ悪臭も気にならないほど泣いて、更に吐きまくった。
…それだけのショックを俺は受けていたと思う。
自分の口から吐き出される異物の放つ悪臭も気にならないほど泣いて、更に吐きまくった。
…それだけのショックを俺は受けていたと思う。
「ゆうさん」
不意に後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。
ゆうの声だった。
ゆっくり振り返ると、ゆうが立っていた。
ゆっくり振り返ると、ゆうが立っていた。
「大丈夫ですか?いきなり吐き出して…」
「あ、…あぁ、腹が元々弱くてね。旅しているときもこんな感じなんだ」
ゆうの質問に俺はこう答えた。
嘘だった。
俺の腹は結構丈夫なほうだと思っている。
吐いた理由は、決して誰にも語りたくないものだ。
たとえ目の前の同じ名の少年相手でも。
吐いた理由は、決して誰にも語りたくないものだ。
たとえ目の前の同じ名の少年相手でも。
その少年が言った。
「嘘ですね。僕がカドルコアを…mur mur twinsを選曲してからあなたは吐きに外に出た。そうでしょう?
…何か、あの曲の事で嫌なことがあるんでしょう?」
…何か、あの曲の事で嫌なことがあるんでしょう?」
ゆうが俺の嘘を看破した。俺は絶対にあの時の事を話したくはなかった。
別に、と俺は返したが、ゆうが続けてこう言ったことで、俺は話してみようかという気になった。
別に、と俺は返したが、ゆうが続けてこう言ったことで、俺は話してみようかという気になった。
「嫌な事を話すだけでも、十分気持ちが晴れると思いますよ?」
「…今まで誰にも話したくなかった事なんだけどね。ちょっと暗い話で、俺にも非がある話だ。
…続けるよ?」
…続けるよ?」
ゆうは、はい。と返した。
俺はあの時の事を語っていった。
俺はあの時の事を語っていった。
| 440 :旅人さんの話8-2:2007/10/07(日) 01:04:25 ID:u8U4BZKF0 |
あれは、もう2,3年も前の話だ。
俺は普通のサラリーマンで、普通の一人暮らしの生活を営んでいた。
ポップンミュージックを知ったのは、友人の誘いで近くのゲームセンターに遊びに行った時だった。
何年もゲーセンに遊びに行ったことがなかった俺は、その風変わりな筐体デザインに目を奪われていた。
台の上に、九つのボタンがある。
それだけで俺に100円玉一枚を投入させるのには十分だった。
俺は普通のサラリーマンで、普通の一人暮らしの生活を営んでいた。
ポップンミュージックを知ったのは、友人の誘いで近くのゲームセンターに遊びに行った時だった。
何年もゲーセンに遊びに行ったことがなかった俺は、その風変わりな筐体デザインに目を奪われていた。
台の上に、九つのボタンがある。
それだけで俺に100円玉一枚を投入させるのには十分だった。
友人が当時そのゲーセンで注目される存在だった。彼はlv36,7位の曲を軽くクリアーしていたからだ。
当時結構凄い人として有名だった彼のアドバイスもあり、俺はどんどんポップンの腕を磨いていった。
当時結構凄い人として有名だった彼のアドバイスもあり、俺はどんどんポップンの腕を磨いていった。
時は流れ、ポップンは9から10へと進化した。テーマも一新、カフェからマジカルへと変わった。
隠し曲の解禁作業に俺も参加したかったが、丁度その時は仕事が山場であったのでどうしてもゲームセンターに遊びに行けなかった。
仕事が一段楽した後、俺はそのゲームセンターに遊びに行った。
俺が仕事で忙しい時、ここの常連さん達が頑張って解禁作業を進めたらしく、隠し曲の大半の解禁に成功していた。
俺はその時のプレーが初ポップン10であったので、隠し曲よりデフォルトの新曲を遊んでいた。
三曲目にせっかく解禁してくれた隠し曲を遊んでみようと思い、何にするかを選んでいった。
アンセムトランス、エレジィ、フェアリーテイル…多数の隠し曲の中からこれだ!と思い選んだのは、カドルコアだった。
その時、EXステージを出す気でいたのと、未知の難易度への好奇心からその曲のEX譜面をプレーした。
プーリンアラーモー!としか聞こえない最後の常盤さんの歌声に癒されながら、余裕でノットクリアーをかました。
さ、家に帰って寝ようかと思ってゲーセンから出ようとした時、俺の後ろにいた順番待ちの男が俺にこう言った。
隠し曲の解禁作業に俺も参加したかったが、丁度その時は仕事が山場であったのでどうしてもゲームセンターに遊びに行けなかった。
仕事が一段楽した後、俺はそのゲームセンターに遊びに行った。
俺が仕事で忙しい時、ここの常連さん達が頑張って解禁作業を進めたらしく、隠し曲の大半の解禁に成功していた。
俺はその時のプレーが初ポップン10であったので、隠し曲よりデフォルトの新曲を遊んでいた。
三曲目にせっかく解禁してくれた隠し曲を遊んでみようと思い、何にするかを選んでいった。
アンセムトランス、エレジィ、フェアリーテイル…多数の隠し曲の中からこれだ!と思い選んだのは、カドルコアだった。
その時、EXステージを出す気でいたのと、未知の難易度への好奇心からその曲のEX譜面をプレーした。
プーリンアラーモー!としか聞こえない最後の常盤さんの歌声に癒されながら、余裕でノットクリアーをかました。
さ、家に帰って寝ようかと思ってゲーセンから出ようとした時、俺の後ろにいた順番待ちの男が俺にこう言った。
| 441 :旅人さんの話8-3:2007/10/07(日) 01:26:29 ID:u8U4BZKF0 |
「お前、こんな簡単な曲クリア出来ねってか!だっせぇなぁ!順番待ちの時間の無駄だから
お前みたいなザコはさっさと消えろよ!ってか死ね!二度と来るなよ!蛆虫以下だから!」
お前みたいなザコはさっさと消えろよ!ってか死ね!二度と来るなよ!蛆虫以下だから!」
やたら大きい声で(そうしないと声が届かないからだろうとは思ったが)俺を罵って来た。
俺は何だコイツ、といった目で見て、歩き去ろうとしていた。
しかし、その男ではない男の手が俺の腕を掴んだ。
俺は掴んだ奴の方を見た。そいつが言った。
俺は何だコイツ、といった目で見て、歩き去ろうとしていた。
しかし、その男ではない男の手が俺の腕を掴んだ。
俺は掴んだ奴の方を見た。そいつが言った。
「あいつの言うとおりだよ。前々から下手糞はさっさとやめて帰って欲しいと思っていたんだ、俺らは。
お前は自分で上手いなんて思っているのかも知れないがな、下手糞だからさっさとここから消えてくれよ」
お前は自分で上手いなんて思っているのかも知れないがな、下手糞だからさっさとここから消えてくれよ」
俺はそいつの手を振り払って、走り去ろうとした。
しかし、近くにいたポッパー全員に俺は囲まれてしまった。
しかし、近くにいたポッパー全員に俺は囲まれてしまった。
何なんだ、こいつらは。
俺は恐れと怒りの半分入り混じった目で彼らを見ていた。彼らが動いた。
いきなり、後ろから羽交い絞めにされた。
そして目の前の男がこう言ってきた。
いきなり、後ろから羽交い絞めにされた。
そして目の前の男がこう言ってきた。
「下手糞は、消えないとなぁ?」
そして前の男が、がら空きの俺の腹に拳を突き出してきた。
俺はぶへっだか何とか言って、体勢を崩した。
そして横になった俺の体に、彼らが蹴りを入れてくる。
俺はぶへっだか何とか言って、体勢を崩した。
そして横になった俺の体に、彼らが蹴りを入れてくる。
物凄く痛かった。
俺は何とかしてこの状況から抜け出そうと、顔面に入りそうになった誰かの足を掴み、転倒させた。
周りのポッパーたちが一瞬黙ったところを俺は立ち上がり、次々にぶん殴っていった。
その後、近くにあった灰皿台の灰皿を手に取り、彼らの後頭部に叩きつけまくった。血が出るほどに。
周りのポッパーたちが一瞬黙ったところを俺は立ち上がり、次々にぶん殴っていった。
その後、近くにあった灰皿台の灰皿を手に取り、彼らの後頭部に叩きつけまくった。血が出るほどに。
散々灰皿で殴りまくった後、俺は正気を取り戻し、自分が怒りに任せて何をしたのか分かった。
店員がもう通報したかもしれない。
今は仕事が、何か問題を起こしただけで一気に水の泡となりそうなところなのだ。
捕まるわけにはいかなかった。俺は、そのゲーセンから逃げた。
そして、会社に辞表も出さず俺は遠く逃げ去った。
逃げて逃げて、この港町にたどり着いた次第である。
店員がもう通報したかもしれない。
今は仕事が、何か問題を起こしただけで一気に水の泡となりそうなところなのだ。
捕まるわけにはいかなかった。俺は、そのゲーセンから逃げた。
そして、会社に辞表も出さず俺は遠く逃げ去った。
逃げて逃げて、この港町にたどり着いた次第である。
| 442 :旅人さんの話8-4:2007/10/07(日) 01:44:47 ID:u8U4BZKF0 |
そんな事を俺はゆうに話していた。
ゆうはそうだったんですか、と言った。そして続けた。
ゆうはそうだったんですか、と言った。そして続けた。
「そいつら、許せないですね…今までそんな事を黙っていたなんて、よっぽど辛かったでしょう?
…ゆうさんは、悪くないのに…」
…ゆうさんは、悪くないのに…」
俺は、いつの間にかまた泣いていた。俺はゆうにこう言った。
「君の言ったとおり、過去をぶちまけてみるとスッキリするものなんだな。
…んじゃ、もう一回やってみて、カドルコア。君の手の動きを見ていなかったからさ」
…んじゃ、もう一回やってみて、カドルコア。君の手の動きを見ていなかったからさ」
ゆうは、分かりました!と言って小屋に飛び込んでいった。俺もそれに続いた。
カドルコアのN譜面はlv21である。このレベル相応の階段、同時押しが盛り込まれた、良譜面と言える。
ゆうはプーリンアラーモー!の後もしっかりポップ君を取っていき、ミスらしいミスもせずにクリアーした。
カドルコアのN譜面はlv21である。このレベル相応の階段、同時押しが盛り込まれた、良譜面と言える。
ゆうはプーリンアラーモー!の後もしっかりポップ君を取っていき、ミスらしいミスもせずにクリアーした。
「お、ゆう君凄いじゃん。BADあんまり出していないね」
俺はそう言ってゆうを褒めた。ゆうは少し照れていたみたいだった。
ゆうはその後1プレーを終え、少し休憩に入りたいと言った。俺はいいよ、と返した。
ゆうはその時俺が座っていた椅子と同じような椅子に座っていた。不意にゆうが口を開いた。
ゆうはその後1プレーを終え、少し休憩に入りたいと言った。俺はいいよ、と返した。
ゆうはその時俺が座っていた椅子と同じような椅子に座っていた。不意にゆうが口を開いた。
「あの曲って、IIDXからの移植だって知ってます?」
「あの曲って、mur mur twinsかい?知っているよ」
ゆうのその問いに、おれはそう返した。ゆうが続けた。
「常盤さんの歌う歌って、いいですよね…」
「うん。俺もそう思う。…今更だけどさ、常盤さんの名前って、俺たちと同じなんだよな」
「あ、言われてみればそうですね。…嬉しい偶然ですね」
俺はそうだね、と答えた。
全く、嬉しい偶然だ。今でも俺はそう思っている。
全く、嬉しい偶然だ。今でも俺はそう思っている。