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ど田舎ゲーセンの怪 -前編-

最終更新:

beatnovel

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246 :旅人:2008/03/03(月) 00:47:19 ID:C4cIBIXX0
冬のおかげで日が昇るのが遅くなった朝、そこに差す光は暗闇の中で何本かの筋を残すばかりだった。
その中でもそもそと動く影が一つ…影は人間のようだ。当然だ、布団の上に横になるのは人間に決まっている。
その影を見ると、男である事が分かる。彼は頭をボリボリ掻き、数本の光の筋を通すブラインドを開ける。
ブラインドがシャッと音を立てて開き、太陽光が一気に入り込んだ。光が目に入り、彼はまぶしっと呟いて窓に背を向けた。
そして目の前にある事務机に両手を置く。彼は机の前にあるイスに座って一息ついた。

「正月の間に届いた年賀状はたったの二通。田中刑事と町田さんからだけだとかさ、もう終わってるよねぇ…
勉強を教えてる子供達からは一通もないとか、家族や親戚からも来ないとか、誰も来ないとか、嫌われているんだろうかねぇ…」

彼はそう呟いて溜め息をついた。それは長く弱々しいものであり、まだ二十歳代のそれとは到底思えない物だった…


去年の秋、音ゲーの市として有名な市の警察署にBEMANIシリーズのCSやサントラ等の商品が送られた事があった。
警察側は単なるプレゼントかと思って嬉しがっただろう…その中にある一通のメッセージを読む事がなければ。

「今日この日にこの市のどこかを爆破する。それを食い止めたくばクロスワードパズルを解いて阻止してみろ」

こんなメッセージが送られれば警察は大忙しだ。それに、事件を解く鍵として犯人は親切にもクロスワードパズルを作成したが
そのパズルは音ゲーに焦点を当てて作られた物だった。警察側に音ゲーを好む者は一切居らず、警察は途方に暮れるしかなかった…
が、田中という刑事の提案が警察で通った。その提案とはこういうものだった。

「この市のはずれに住む、塾と私立探偵業をやっている小暮という奴にこの事件の捜査を依頼しよう」

なんとも他力本願な提案だが、警察だけではこの事件を解決するのは不可能と言えた。
よって、田中刑事が直々に小暮の私立探偵事務所のもとを訪れ、捜査を依頼したのだった…
が、小暮探偵は音ゲー未経験者であった。田中刑事はこの事件を解決するのは奇跡でも起きない限り無理だと思ったのだが…

「じゃあ知人に協力を仰いで見ます」

というまたも他力本願なパズル回答法を小暮は導き出したのだ。その回答法で事件は解決、犯人は死体で発見された。
小暮はその知人…町田という女性の超一流音ゲーマーに報酬(約百万円!)を後日渡したのだった。


「あーあー、そんな事もあったよねぇ…あれから探偵業の方で仕事が来ないんだよなぁ。
塾の方の収入だけで一応は生活できるけど、これだけじゃ豊かな暮らしとはいえないよなぁ…」

彼は長い溜め息の後にそう呟いた。そう、この男は小暮私立探偵事務所の主である小暮探偵である。
…貧乏臭い寝巻きを身に纏ってイスに座り、事務所机に足を掛ける様はどう見ても探偵には見えないが、探偵である。
探偵業だけでは生活が出来ないので、個人経営の小さな塾をやっている。小暮の主な収入は塾の方がメインだったりする。
この探偵は上述の通り警察の捜査に協力、町田に事件の事を隠してクロスワードパズルを解かせて
その回答を元に犯人が爆破しようとした場所を導き出した経験を持つ。ちなみに、小暮にとって事件らしい事件はこれが初めてだった。

247 :旅人:2008/03/03(月) 00:49:04 ID:C4cIBIXX0
懐かしき過去を回想した小暮は玄関へ赴いた。壁時計を見た限りでは朝刊が届いていなければおかしい時間だったからだ。
もっとも、朝刊というものは早朝に届けられる物であるが…小暮が起きたのは朝の九時であった。休日でもないのに。
期待通りに玄関の新聞受けには厚い朝刊が挟まっていた。当たり前の事だが、これは結構重要な事でもある。
普段TVをニュース番組等を見る物ではなく、娯楽番組を見る物としている小暮にとって新聞という物は大切な物だ。
TVで情報を得る気がなく、それでいて世情を知りたいと思うなら新聞を読むしかない。そのための購読料も必要だ。

「はぁ…今日もあんまりいいニュースが無いねぇ……また人死にかい、日本も終わったなぁ。
…………?これは年賀状の番号のくじの番号の公開のアレか。ちょっと照らし合わせてみるかな。たった二通しかないけど」

小暮は呟いて机の引き出しの中から「手紙収納」と黒字のマジックペンで書かれた引き出しを見つけ、それを引いた。
その引き出しの中には数少ない便箋が大事そうに保管されている。
人との付き合いの数は少ないが、その仲を大切にしようとする小暮らしさがその引き出しを見ただけで窺える。
そこから二通の年賀はがきを取り出し、その引き出しを押し戻してからその二通のはがきの番号を見る。

「田中刑事からの年賀状は…………ハズレか。じゃ、町田さんのは…………おっ、当選してる!
しかもこれ、一等じゃないか!一等は…緑泉村のペア旅行券!?緑泉村といえば、温泉で有名なあの村か!」

やっほーいと貧乏臭い寝巻きを着た二十歳代の兄さんが子供のようにはしゃいでいる姿を、先程開けたブラインド越しに近所に住む子供が見ていた。
こういうところを子供に見られるから探偵だって信じてもらえないんだよね…と振り向いた小暮は子供と目を合わせながら思った。
子供は変な人…と言いたそうな目をして小暮を見ていて、それを否定するように小暮は必死に手を振るが…
やはり子供はどこかへ駆け出していってしまった。小暮は首をガクリと落とし、弱く長い溜め息をついた。
やたらと長い溜め息を吐き終わった小暮はもう一度新聞を見て驚きの声を上げた。

「これ…『ペア』旅行券だ。どうしよう…これこそ猫に小判、豚に真珠って奴か…?はぁ………………そうだ!田中刑事に聞いてみよ!」

思い立った小暮は机の上に乗っている、どこの事務所でもよく見かけそうな白い電話を手に取った。
自分の携帯電話に記録している田中の携帯電話の番号を頭で思い返しながら小暮の右手は数字ボタンをプッシュしていく。

テュルルルルル……テュルルルルル……

ケチャッ

「もしもし?」

「あ、刑事さん?お久しぶりです、小暮です。別の人が送ってくれた年賀状があの例のくじで一等だったんですよ!
でも、その人女性ですし…ね?だから刑事さんと温泉旅行に行こうと思いまして…予定、どうですか?」

「あ、悪い。これから暫くはちょっとな…仕事が忙しいから無理だ。
それに……送ってくれた人が誰であれ、当選したからにはその人に恩を返すという事でその人と一緒に行けばいいだろう?」

「そうですね、分かりました。じゃあ切ります。お仕事頑張って下さいね!それじゃ!」

言って小暮は受話器を一度戻し、また手に持ってダイヤルしていく。勿論、電話を掛ける相手は町田だ。

248 :旅人:2008/03/03(月) 00:51:41 ID:C4cIBIXX0
テュルルルルル……テュルルルルル……

ケチャッ

「もしもしー?」

「町田さん?小暮です。あの、送ってくれた年賀状がですね…年賀状のくじに当選しまし…」

「当選したの!?わーい!で、何等?」

「一等です。一等は…」

「知ってるよー?緑泉村へのペア旅行チケット二泊三日の旅とかいうあれでしょ?
けどあれ、ツアーとかじゃなくて自分達の思うように動けるんだよねー。ただ行く時間と帰る時間が決められているだけで」

「そうなんですか。初めて知りました。で、用の方なんですが…」

「だから、小暮君が当たったんだから一緒に行こう?それとも他に相手さんが決まったりした?」

「いいえ。町田さんを誘おうと思って電話したんです。では、当日に駅でお会いしましょう。それじゃ」

「じゃーねー、バーイ」

町田はそう言って先に電話を切った。小暮は相変わらず元気な人だなと町田にそんな評価をつけていた。




三日後。小暮が住む市の中心にある駅に古風な探偵の格好をした男が立っていた。
茶のロングコートに茶の帽子。僕は探偵ですよと主張しているのと同じである。探偵は誰かを待っているようだった。

「遅いなー町田さん…あと少しで時間から五分遅れるのに…
プライベートならいいけど、こういう時に遅れられると僕が文句を言われるんだけどな…」

探偵…小暮はそう呟いて左90℃に首を曲げた。そこには黒色の制服を着て、黄色い旗を持って険しい顔をした若い女性が立っている。
勿論、あたりのベンチに座っている団体様も険しい顔をしている。当然、視線の先は今は探偵らしい探偵をしている小暮である。
それから数分後、やっと町田が駅前に到着した。普通の女性が着るような普通の外出用の上着を着た彼女に反省の色は見えない。
友人としてそれなりの付き合いがある小暮は、彼女から謝らせる事はたとえ神でも難しいと考えていた。
何故なら、彼女はどこか欠落している部分があって、それが人に謝る事であるからだ…それを小暮は知っていた。

「すみません、僕の連れが遅くなってしまって!」

町田が謝らないのをみかねて、小暮は自分から土下座をした。
電車の旅一行に小暮の土下座で町田の遅刻は許されたようで、
町田が一行に入った電車の旅一行は駅のプラットフォームへと駆けた。
町田が合流した時には電車が出るまで後五分程度しかなかった。正直言って間に合うかどうか微妙だと小暮は思った。

三十分後に小暮が居たのは乗る予定であった電車の中だった。あの電車に間に合ったのは奇跡じゃなかったかと誰もが思っていた。
この旅行参加した人々は…背もたれのあるイスに身を任せてすやすやと眠っている町田を見ていた。いや、睨んでいたのだ…
小暮は旅行者達に申し訳ないと思い一度深く礼をしたが、彼らの目はこう言っているようだった。


「いや、アンタに謝られても私達の怒りは収まらないのですが?」



一行が予定の電車に乗ってから約二時間して、その電車は予定されていた駅「緑泉」で停車した。
電車から降りる人々の目にはまだ怒りの色が残っている。しかし、最後に下車した二人は別の顔色を見せていた。
一人は古風な探偵の格好をした男。彼にとって下車した電車で過ごした時間は、苦しみの時間と言えるほど辛かった。
もう一人は一見すると普通の女性。この場では彼女だけが笑顔を浮かべている。その笑顔は、この集団の中では異端と言えるだろう。

「町田さん…次の集合とかの時、絶対に遅れないで下さいよ?僕が酷い目に遭うんですから」

古臭い格好の探偵が隣に立つ笑顔の女性に言った。その言葉は真昼間に放つ言葉とは思えないほど暗く、そして淀んでいる。
町田さん、と呼ばれた笑顔の女性は古臭い探偵にこう返した。

「ゴメンゴメン、次からは気をつけるよ。そんなに落ち込まないでよ小暮君…ほら、皆行っちゃうよ?」

謝って少し頭を下げた町田の姿からは反省の色が見える。頼みますよホント…と小暮君と呼ばれた探偵風の男は町田にそう言った。
それから二人は小走りで一番後ろにいる、緑色の暖かそうな上着を着たおじいさんの後を追った。


「はい皆様!こちらのお宿が今回の旅行の宿泊地でございまーす!」

バスガイドさんが持つところをよく見る黄色い旗を右手に持った引率の若い女性が、そんなよく通る綺麗な声でツアーの客全員に言った。
引率者によると、緑泉駅から2km程離れた所にある「ホテル緑泉」がこの旅での宿になるという。
それはその場にいた旅行者全員が把握していたであろう事だが、町田は小暮に確認を求めた。

「だから、この旅行でお世話になる宿がこのホテル緑泉なんですよ。分かりました?」

「分かった。そのホテル緑泉がここにある建物で、私達はここに泊まるんだよね?」

「そうです。その通りです」

町田は皆より一度遅れて宿泊先の事を理解し、前に進む約二十名の後についていった。当然、小暮もその後についていく。


このホテル緑泉には緑泉村の名物である温泉がある。源泉を引いてくる都合上か、このホテルの裏には大きな山があった。
ホテルはこんな田舎に似合わず高級感を漂わせている。全10階。宿泊部屋では雪に埋もれた畑か、うっすらと雪を被った裏山が見える。
もっとも、こんな場所にオーシャンビューなどを求める方が悪いのだが。まぁそれは置いておいて解説を続けよう。
このホテル、1階に小規模ながらゲームコーナーを置いており、そこには数台のクレーンゲーム、一昔前のシューティングとかがある。
そこに異質なゲームが一台あった。皆様ご存知のbeatmaniaIIDXである。緑泉村唯一の音楽ゲームの筐体がこのホテルにあるのだ。
ホテルにチェックインをしてから三日目の朝までが自由行動を認められているので、町田は部屋に荷物を置くなり、すぐさま1階へ降りてIIDXをやっていた。
田舎だというのに新型の筐体を導入しているらしく、一曲目に走馬灯を選んだ町田は…

「走馬灯いいねー。良曲過ぎるねぇ。けど、全ッ然スコアが出ねぇeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!11111111」

と嘆いていた。小暮はその後ろ姿を見て液晶モニターって恐ろしいなと思っていた。

250 :旅人:2008/03/03(月) 00:55:32 ID:C4cIBIXX0
「いやぁ、全然スコアが出ないねぇ液晶モニターは…リズム打ちしかないかねぇ」

「それでも町田さんいいじゃないですか。殆どA評価でしょう」

「そうなんだけどね…白壁の環境に慣れすぎちゃったのかな」

モヤモヤした様子で町田が順番待ち用の安いベンチに腰を下ろした。続いて小暮が筐体にイーパスを通す。
テンキー入力して、SPのスタンダードを選択した。そしてLEVEL7フォルダを開いてアビ天を選曲した。

実は小暮、大桟幕橋爆破未遂事件(音楽ゲームクロスワードパズル事件参照)
を解決した後に町田からプレステ2とメモリーカード、IIDX専用コントローラー、CSDDを誕生日(12/16)プレゼントとして貰ったのだ。
小暮は暇な時(探偵業の方の仕事は全然入らなかったので、子供達が来ない午前中がそれに当たる)にちまちまとプレーしていて、
その成果として、この時点でCSDDでの五段を取っていた。これは小暮のちょっとした証だ。
段位は何かの証明としては七級も皆伝も変わらない。そう小暮は思っていたし、これからも思い続けると彼自身は思っている。

小暮は町田にこんな事を教えられた事がある。

「実力者が自分より下の力を持つ者を傷つけてはいけない。自分より実力がある者を傷つけてはいけない。
 自分と同程度の実力を持つ者を傷つけてはいけない。相手が誰であろうと、馬鹿にしたり暴力を振るってはいけない」

当たり前の事だ。もしかしたら当たり前じゃないかもしれないが、少なくとも小暮と町田はこれを当たり前の事だと考えている。
そして、この精神は白壁の常連全員が共有している…とも町田は小暮に言った。
白壁というゲーセンが平和なのは、殆ど全員がそんな精神を持っているからなんだな…小暮はそう思っていた。
もしかしたらあの時ゆうと名乗った男も、この精神を感じたのかも知れないな。いいゲーセンを作れているといいな。

町田にとってすればスカスカなアビ天(N)だが、小暮にとっては指を動かす準備運動の曲であった。
評価はA。BPは10台。小暮からすれば満足のいく結果である。彼はスコアラーではなくクリアラーであるので。
小暮は二曲目、三曲目もLEVEL9フォルダから選曲、EXTRAではミリタリースプラッシュフォルダを開ける事無く走馬灯(A)を選曲した。
この優しいメロディー。これがワンモアとかならいいのにな…と旅行前に町田が小暮に話した通りの良曲。
難しいばかりがゲームじゃないよね。この曲をエコー5をかけて演奏する小暮は心で町田にそんな風に返した。
ラスト、もうノーツが降ってこない所で小暮はゆっくりとスクラッチを回す。エコー5をかけられた銃声がホテルの一角で響いた。

「やっぱいいですよね、走馬灯」

「だよね。こういう、ゲームに慣れた人なら誰でも手を出せる良曲って結構重要だよね」

小暮はお立ち台から降りながらそうですよねと返し、町田が座っていたベンチにまた座る。
町田が白壁でやるような感じでLEVEL12フォルダを開いてスクラッチを回している。その様子を見ていた小暮に、

「久しぶりですね」

と男の声がかかった。驚いてばっと振り向いた小暮が見た誰かはクロスワードパズルの事件の時に会った、ゆうと名乗った男だった。

「あ、何ヶ月ぶりでしたっけ…いやいいや、そんな事。…あなた、ゆうさんですよね?」

「はい」

「久しぶりですね!こんな所で会えるなんて…そうだ、ゆうさんは一体何用でここに?」

251 :旅人:2008/03/03(月) 00:57:22 ID:C4cIBIXX0
「何でも屋家業の社長みたいな職についているのは知ってますよね?」

「えぇ、あの時渡された名刺で知りましたよ」

「僕もその時に小暮さんが探偵業をやっていると知ったのですが…その何でも屋家業の慰安旅行のような物でここに来ています」

「という事は、ゆうさんの仲間さん方もここにいるんですか?」

「そうですね…そういう事です。ところで、あの女性は?穴嘆きやって殆どミスしていないから皆伝の人かと思いましたが…」

「あぁ……DJ MACHIです。本名は彼女から聞いてください」

そうですね、あとで聞いてみますとゆうは言って小暮の隣に座り、話を続けた。

「ところで小暮さん、緑泉村にいると言われている妖怪を知っていますか?」

「妖怪?」

「はい。何でもその妖怪というのは落とし穴を作って人を殺すのが趣味だそうで」

「うわっ、怖いですね」

「でしょう?言い伝えではその妖怪はこのホテルの裏山に住んでいるそうで」

「本当ですか?」

「言い伝えの話ですがね。その妖怪の名前は『落としババア』というそうで」

「落としババア?何かオトバと響きが似ていますね」

「あ、言われれば確かに…その落としババアというのは、今でもこの地方では信じられているそうですよ」

「でも、架空の存在でしょう」

「近年でもこのあたりで神隠しが起きる事があるんですよ。地元の子供達が被害に遭うそうで」

「…本当ですか」

「本当です。今でも行方不明のまま…だから、その落としババアは今でも恐れられているんだそうです」

そうなんですか、と小暮が返した後に彼が聞いたものは嘆きの樹の曲に混じった女の…町田の悲鳴だった。
町田さん!と叫びながら小暮がIIDX筐体に向き直ると、町田がいるはずの所にいなかった。
ただ、恐ろしい程の量のノーツが判定ラインを通り過ぎ、すぐに見逃しPOORを50カウントして曲が終了した。

「…………町田さん?」

お立ち台から消えたDJにブーイングを流す筐体に向けて、小暮は呆然としたまま呟くしかなかった…
「……MACHIさん、消えましたね…………」

ゆうが小暮と同じように、何が起きたのか理解出来ないような顔をしながら呟いた。
そして、小暮の頭は今の事態をどうにかして整理し、理解しようとフル回転していた。


…………どういうことだよこれ。何で町田さんがいないんだよ。
あれか?グランドIIDXか?人食い筐体か?…そんな事がある訳ないだろう…
……………これがあれか?落としババアとか言う妖怪の仕業か?っていうか妖怪なんて存在するのか?
ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ~じゃないんだ、考えられない。オカルトの要素は絶対に考えられないんだ…証拠はないけどさ…
………こりゃ、骨の折れる仕事になりそうだなぁ…町田さんの為だ、タダ働きでもするさ。

消えてしまった町田を必ず探し出す。そう探偵としての自分自身に小暮は誓ったのだった…





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