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ど田舎ゲーセンの怪 -中編-

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beatnovel

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273 :旅人:2008/03/25(火) 22:11:35 ID:CS1HTt7Q0
小暮が町田を助け出すと決意した時、隣でゆうが言った。

「これ、もしかして落としババアの仕業じゃないんでしょうかね」

「んなことある訳ないでしょう?PS3を一円で買えるってレベルと同等のありえない話ですよ」

ゆうの考えを小暮は否定した。そしてベンチから立ち上がって排出された町田のイーパスを取ってゆうに言った。

「この事件、僕が解決しますから。ゆうさん方は慰安旅行でしたよね?
……折角の楽しみを邪魔させるわけにはいかない。だから、あなた達にこの事件を解決するように頼む訳にはいかない」

ゆうは小暮が言ったその言葉を聞いて、少し怒ったような顔をして小暮に怒鳴った。

「何言っているんですか!こういう時に何でも屋を頼ろうとしないんですか!?」

「それは僕が探偵だからに決まっているでしょう!僕一人でも解決できますよ!」

「こんな謎、探偵一人で解ける訳ないでしょう!
助け出したMACHIさんから本名を聞きだす…それが報酬でいいですから!」

「……確かに僕一人じゃどうにもならないかもしれない………分かりました。彼女の捜索の依頼、よろしくお願いします」


小暮の依頼要請を聞いたゆうは、上着のポケットから携帯電話を取り出して何でも屋のメンバーに依頼が入った事を知らせた。
電話の向こうで一度不平不満の声が聞こえたが、ゆうが人命に関わる事だと言うと電話を受けたメンバーは文句を言わなかった。
数分後、ホテル緑泉の一階にあるゲームコーナーに八人位の様々な年齢層の人々が集まった。
この人達が何でも屋のメンバーなんだろうと小暮は確信した。事実その通りで、ゆうの依頼についての説明を彼らは集中して聞いていた。
そして散開!とゆうの号令と共に八人は動いた。半数はホテルを、もう半数は外で落としババアについて調べに行った。
探偵である小暮は自分が何をすればよいかをゆうに問うた。ゆうはこんな答えを返した。

「しばらく待って、メンバーからの報告のデータを二人で分析して…
MACHIさんが消えてしまった理由を考えましょう。気に食わないでしょうが、落としババアの関連性も考えて下さい」

274 :旅人:2008/03/25(火) 22:12:41 ID:CS1HTt7Q0
ゆうが何でも屋のメンバー達を散開させた後、小暮を自分の泊まる部屋に連れて行った。彼の部屋は大きめの和室だった。
ゆうの部屋を町田の捜査本部にするらしい。確かに、リーダーであるゆうの部屋を本部にすると決まりはいいだろう。
捜査本部で、小暮は外に出たメンバー達の報告を受けて「落としババアのまとめ」を書いていた。
小暮が自分のペンを同じく自分のメモ帳に走らせて文を書いていると、ちゃぶ台の上のゆうの携帯電話が鳴った。
ゆうはそれを取ってから、誰が電話をかけたのかを確認してから電話に出た。

「……ホテルのどこにもMACHIさんらしき人物はいない?
顔写真を見ながら捜索を続けたが、これ以上は成果は望めない…だって?分かった。今日はそこまで」

ゆうが仲間の一人からの報告を受けてから携帯電話を畳んでちゃぶ台の上に置いた。
小暮が暗い顔をしたゆうに言う。

「ホテル内の捜索は元々、駄目元でという話だったじゃないですか。そんな落ち込まないほうがいいですよ…
あとは外が頼りになると思いますが…あなたの仲間と僕を信用して下さい。必ず実りあるデータにしますから」

「そうですね…ありがとうございます」

一つの道を失った事で、ゆうのやる気が失せたような気がした小暮はゆうにIIDXをやりにいってもいいと言ったが…

「いいえ、遊んだところでこの気持ちは晴れないでしょうし…今は遊ぶわけにはいかない」

と断られた。仕事熱心な人だなと思っていると、オトバのまとめプリーズとゆうが小暮に言ってきた。
(ゆうが言ったオトバとはAUTO BASSの事ではなく落としババアの事を指す。
落としババアの縮めた言い方を決める際、前に小暮が語感が似ていると言った事から落としババアはオトバと略された)
何でプリーズ?と思いながらも小暮は手書きのまとめ数枚をまとめてゆうに渡した。
手渡しながらその疑問をゆうにぶつけてみた所、

「あぁ、それは…仕事仲間たちの間ではこういうのは普通なんですよ。
ちょっとした単語を英語に変えて喋る…○ー語をまねているつもりは無いのですが」

という答えが返った。そうなんですかと言いながら小暮が畳の床に横たわって天井を見上げ、小さなテレビの電源を付けた。
今の時刻は昼の一時半。ドロドロな展開を繰り広げる昼間のドラマがゆうの部屋のTVに映し出されていた。
何でこういうのが人気なんだろうなぁ…町田さんもこういうのが好きだったりするのかな?と思いながら修羅場シーンを彼は見ていた。

「オトバは…裏山に住み、山の洞窟で暮らしている可能性が高い…小暮さん、本当にそう思いますか?」

女が何か喚き散らしているところでゆうが小暮に訊ねた。小暮は女の台詞を聞きながら答える。

「あなたの部下達の報告をまとめて僕の考えで報告書のような形にはしましたが…
僕がオカルトの類をあまり信じていないというのはゆうさんもご存知でしょうが、今は事情が事情です。考えた結果がそうなんですから」

「そうですね…変な事を言ってすみません」

ゆうに謝られて小暮は起き上がっていえいえと答えた。ED曲とスタッフロールが流れる画面を見て小暮はTVの電源を消した。
そんなふうにしている小暮に、ゆうは一つの提案をした。

「…小暮さん、私は外へ調査に行ってきます」

275 :旅人:2008/03/25(火) 22:14:20 ID:CS1HTt7Q0
そう言った後、彼はすぐに外へ出る準備をした。
小暮がどこへ行くのかと聞くと、ゆうは行き先を答えた。

「…裏山です。裏山に洞窟があれば調べます」

「そうですか。僕もご一緒させて下さい」

「いいえ、一人で行かせて下さい。小暮さんはまとめを書かなければなりませんから。
それに、僕の方の仕事は終わりました。それが小暮さんを断る理由です。
あともう一つ。僕は何でも屋として…いつでも命を賭けて仕事しているんです。あなたも同じでしょうが、それもあるんです」

言って、ゆうは自分の部屋を出て行った。
小暮に止める権利は無かったと言いたい所だが…彼の頭の中はぐるぐる回っていた。


何だよ何だよ…これは元々自分の問題だったんだ!
何でアンタが…ゆうさんがでしゃばっているんだよ…おかしいだろう…
何でも屋として命賭けてるとか言ってたけど、ゆうさんが言ったとおり、僕も命賭けて探偵やっているんだ!
しかし…まとめを完成させる事で、町田さんを助け出せる率が高くなるのは事実だしな…


結局、裏山へはゆう一人が行った。
彼は小暮が後をつけていない事を確認し、少しは整備されている山道を登ることにした。
山を登る際に、ゆうは時々立ち止まって振り返る。小暮は探偵だから、ストーキング行為のプロだ。
それに、あたりは木々で覆われている。足場が少し雪に埋もれているとはいえ、姿を隠しながら尾行するのは不可能ではないはずだ。
三度目に振り返ったゆうはそんな事を思い、懐に手を突っ込んで仮面のような物を取り出し、装着した。
そしてすぐに四度目の振り向きをした。その時に彼はこう叫んだ。

「( ゚д゚ )彡そう!」

この振り向き厨のまねで、大いに爆笑している声が近くの木の裏で聞こえた。
ゆうは振り向き厨の仮面を外しながら誰!?とその木の裏に隠れている誰かに言った。その誰かが答える。

「いやぁ、ゆうさん。全然情報が集まらなくてですね…それでホテルに帰ろうとしたら…
ゆうさんが凄く重い雰囲気出して歩いているから、ただ事じゃねぇなと思って後をつけていたんですよ」

仕事仲間の多田という男がそう言いながら現れた。ゆうは多田に外でオトバについて調べるように命じた事を思い出した。
何だ、多田君かとゆうが答えて前に歩き出す。そんなゆうの横に多田が並んで歩いていく。
うっすら雪を被った山を登りながら、多田がゆうに話しかけた。

「ゆうさん、一体どうしてこんな山を登っているんです?
ただの散歩ではありませんよね…ここに何か手がかりでもある可能性が?」

「あぁ…小暮探偵が途中まで完成させているまとめの可能性を検証するためだ。
あの未完成のまとめによれば、この裏山に洞窟があって、そこにオトバが棲んでいるらしい」

276 :旅人:2008/03/25(火) 22:16:19 ID:CS1HTt7Q0
「オトバ?」

「ごめん違う。小暮探偵と話している時に決めた落としババアの略称だよ」

あぁそうだったのですかと多田が返して、話を変える。

「失礼な話かもしれないのですが…」

「何?言ってくれないと失礼かどうか分からないよ」

「…確かに人の命は大切ですが…決して社長に反抗する気はないのですが、
他人の事を気にかけすぎるのではありませんか?」

「…確かにそうかもしれないね」

そうゆうは返し、山登りを続けていく。
多田は彼の横についていって、その話の続きをする。

「いくら今回のターゲットが女性とか、ランカー級の腕前を持つ音ゲーマーとか…
そういうの関係無しに、社長は色々と首を突っ込みすぎていると思います。それに…」

「言わないでくれ」

「言わせて下さい!」

「黙ってくれ!」

ゆうはそう多田に怒鳴った。
山道で口論が始まるのは明白である。

「あの少年達は僕のせいで怪我をしてしまった!
それは、僕が色んな事に首を突っ込んでいるからだと言いたいんだな!周りに敵を増やしているからだと言いたいんだな!
だが、それでも僕は色んな事件に首を突っ込まなければ気がすまないんだよ!」

「それは社長の勝手でしょう!社長が動かなければ、社に大量の迷惑メールが来る事もないんだ!
連日連日寄せられる『松木死ね』のメッセージ…
あれを見て俺は腹が立つんすよ!好き勝手やってる連中にも、社長にも!」

「それでも!僕や皆、それに大勢の人達が頑張っているおかげでゲーセンの内情は少しずつでも良くなっていく!
僕がゆうさん…旅人のゆうさんから教えてもらったのはそういう事なんだよ!ゲーセンの環境を良くして行く事だ!
犠牲を出してまで、運動しようなんて思っちゃいない!でも、僕は好き勝手やってる連中をどうにかしたいんだ!」

「…社長の気持ちは分かりましたよ。
でも、この事件はゲーセン絡みのものじゃない。しかし、人命に関わっている…
社長があの探偵と女性を見捨てたくない気持ちも分かりますよ。けど、けど…」

277 :旅人:2008/03/25(火) 22:18:11 ID:CS1HTt7Q0
「けど?」

「けど…社長はやっぱりおかしいですよ。
どうおかしいかって言えないけど、おかしいですよ…
その、同じ名前の旅人が何を吹き込んだか知らないけど、感化されすぎじゃないんですか?」

多田のこの発言にゆうはこう返した。

「あの人はな、自分は何も悪くないのに、ゲーセンの環境のせいで一度は人生ボロボロになったんだ。
僕も最初にその話を聞いた時、そんなのありえねーって思っていた。思っていたんだ。
けど、港に近いデパート…分かるだろ?そこでゆうさんは態度の悪い奴を懲らしめたんだ。
それで僕は分かったよ。あ、この人の言っていた事は本当だったんだなって。
勿論、ありえねーって思っていたけど、完全に疑っていたわけじゃない。3/4くらい信じて1/4位は疑っていた。
で、その後にゲームコーナーの店員に引っ張って行かれた。何をされるんだろうと不安だった。
でも、一分も立たない内に出てきたゆうさんはこう言ったんだ」

「知ってます。社長がいつしか皆に語った話ですよね?」

「うん。『ここにいるマナー違反者を取り締まろうって話をされた。
もう、俺みたいな奴を作りたくないし見たくも無い。中で詳しい話を聞いてくれないか?』って。
その言葉を聞いて、この人は本当に人生ボロボロにされて旅をしていたんだって確信できた」

「その話をしていた時、社長はこう言いましたよね?
『僕は、旅人のゆうさんが歩んだ道を誰かに歩かせたくない』と。
しかし、社長は頑張っていたから、あの二人は危険な目に遭って、実際一人は右腕が変になった」

「だから、もう僕に頑張るなって言いたいのかい?」

「いいえ、必要以上に頑張るなって言いたいんです。
俺が社長を変だと思っていたのは、多分社長が頑張りすぎているからだと思うんです」

そうか、とゆうが言ってしばらく黙った。
そして、ゆうは多田にこう言った。

「じゃ、多田君クビね」

「え?冗談じゃねっすよ」

「冗談だよ。今のは悪い冗談だった。許してくれ。
僕はね、社員が自分に向けて口の悪い事を言ったとしても、それでクビにしようなんて思っちゃいないから」

あぁ、よかった!そう多田は言った。
ゆうはそんな多田の笑顔を見て、にっこりと笑った。
そして、心の中でありがとうと多田に言った。

そうして、二人は山歩きを続けた。
もう一時間以上は経っていたが、未だにオトバの棲んでいるであろう洞窟らしきものが見つからない。
多田がゆうに休憩を提案したが、ゆうはそれを却下した。
がっかりした多田は「靴紐を結ぶ」と言ってしゃがみこんだ。丁度その時だった…

278 :旅人:2008/03/25(火) 22:19:28 ID:CS1HTt7Q0
小暮は自分の携帯電話でゆうの部下の一人、島谷と話をしていた。
島谷が言うには、自分が見つけた古い本に落としババアの詳細が記されているらしい。
その本を今から持ち帰るから、文の所だけ読んで聞かせようという事だった。
小暮の右耳に当てられた携帯電話から、島谷の快活な声が聞こえてくる。

「落としババア。体は大きいお婆さんといった感じで、
全ての体毛が白い。髪とか、腕の毛とかが全部白いって書いてあります」

「姿は大きいお婆さんで、体毛は全て白…次は?」

「えーっと…猫背で背が結構曲がっていて、声はやはりお婆さん。
だけど、その声は人を震えさせる恐ろしさを秘める…とあります」

「声はお婆さん、その声は聞けば震える…次は?」

「後は色々…もうホテルは近いので、五分もしない内に実物をお見せできますよ」

「そうですか。では、待っています」

そう言って小暮は通話を切った。そして、島谷との会話で得た情報を元にまとめを更に詳しくしていく。
丁度五分が経って、島谷がゆうの部屋に入ってきた。
彼は小暮に古めかしく、そして小暮が想像していたよりも薄い本を手渡した。
小暮がその古本を熱心に読んでいると、部屋のドアが大きな音を立てて勢いよく開いた。
誰?と島谷が言うと、俺だ!と答えが返った。
小暮はそれじゃ分からんと思ったが、島谷はその声を聞いて、誰かが誰であるか分かったらしく、

「多田、どうしたよ?」

と玄関に立つ男に問いかけた。多田と呼ばれた男は何故か傷を多く負っている。
そんな多田は、走って小暮の座る所まで近づき、そして言った。

「大変だ。社長が落としバ…オトバにやられた」

「何だって!ゆうさんが!?」

小暮は多田に返して、そうだと返された。
一体どうしてそんな事を知っているんだ?と小暮が問うと、多田はこう答えた。

「山を登っていた社長の様子がおかしかったんで、俺はこっそり後をつけていた。
結局はバレたが、それでも二人で山登りをしていた。その時だ…
俺が目を社長から背けた隙に、社長は叫び声だけ残して、消えていた」

「……オトバの姿は見ました?」

「見た。社長が歩いていたんだろうと思う場所の近くに立っていた。
アレがオトバかどうか確証はないが、多分オトバだと思う」

ならこれを見てください、と小暮は島谷が渡してくれた古本を多田に渡した。
多田が本を開き、数ページめくった所にある、オトバの筆で描かれたイメージ図を見て言った。

「間違いない…確かにコイツだ。コイツは、俺が見た奴とそっくりだ…」

279 :旅人:2008/03/25(火) 22:20:57 ID:CS1HTt7Q0
「でもよ、何で多田はそんなに傷をつけているんだ?」

島谷が多田にそう聞いた。その問いに多田が答える。

「歩いてきた道をそのまま帰るのでは時間がかかり過ぎるから、
ホテルに一番近い道を選んで帰ってきた。
勿論、道と呼べるルートじゃないし、俺も急いでいたから、こんなに傷をつけちまった」

そうだったのかと島谷が返して、小暮にこれからどうしようかと聞いた。
小暮は、島谷と多田に仲間を全員ホテルの前に集合させるようにと言った。
二人はすぐに自分の携帯電話で仲間達と連絡を取り、小暮と共に1階へ降りていった。

ホテル前に、小暮とゆうの部下全員が集合していた。
小暮が時刻を確認するともう16:30を回っていた。日が暮れてゆくのも当然といえる。
小暮はゆうの部下達に言った。

「皆さん。僕の依頼のせいであなた方の社長は行方不明となってしまいました。
本当に申し訳ないと思っています。それで…この依頼を無効にして頂きたいのです」

「何だって?」

「これからは僕一人でターゲットを探し出します。
勿論、社長さん…ゆうさんも探し出して助け出します。ですから、
もう誰も犠牲にしたくないから…それに、あなた方は慰安旅行の途中だ。迷惑をかけて本当にすm・・・」

「迷惑だと!?誰がそんな事を言った!」

ゆうの部下達が集まってできた固まりから、小暮の話を中断させる声が上がった。

「そうだよ!俺たちは迷惑なんかしてない!
むしろ、働きたいんだよ!あんたの連れと、俺らの社長を助けるために!」

その声に続いて、同じ意見を主張する声がどんどん上がった。
小暮はその声を聞いて、両目に涙を浮かべていた。

小暮は、とりあえず今日の捜索はこれまでにして、今日は休みましょうと提案した。
ゆうの部下達も流石に疲れていたので、それに賛同し、それぞれの部屋へと戻っていった。
小暮も自分の部屋へ戻ろうとした時、ホテルの従業員に呼び止められた。
何故か、従業員の手にはポップンミュージックキャラクターイラストブックがある。
小暮はそれを気にしながらも従業員に言った。

「何でしょうか?」

「あなたが小暮様ですね?」

「そうですが、それがどうかしましたか?」

「あなたにと預かった物がございます」

280 :旅人:2008/03/25(火) 22:22:43 ID:CS1HTt7Q0
「預かり物?」

「ええ。松木様からこれを」

従業員はズボンのポケットから何かの鍵を取り出した。
そして従業員は小暮に手渡す。小暮は一体これは?と問うと、

「松木様のお車の鍵だそうです」

という答えが返った。ゆうさんの?と小暮は疑問に思ったが、表の駐車場でゆうの車の鍵を使おうと思った。
何か、ゆうが車の中に残したメッセージか何かそんな物が…そんな物があるのかもしれない。
そう思った小暮は外へ出ていこうと思ったが、引っかかりを感じて従業員に尋ねた。

「何で、その本を持っているの?」

「これは、松木様が私に下さった物で…
小暮様の特徴をお尋ねした際に、松木様はこういったのです…
『この本に載っている{文彦さん}というキャラクターに似た格好をしているから、多分分かると思う』と…」

言われて見れば、確かに似ているかもしれない…
イラストブックを見た小暮は、初めて自分の服装がその「文彦さん」に似ている事に気がついた。
そうか、ありがとうねと小暮は従業員に言ってホテルを飛び出した。

ホテルの駐車場に駐車してある沢山の車の中から、松木の車を見抜くのは相当困難だと思われたが、
ゆうは丁寧にも、キーホルダーに自分の車のナンバープレートの番号を書いていたのだ。
几帳面な正確なのか、はたまたこのような事態を予測してか。番号を書いた理由がどちらかは分からないが…
小暮はそれに感謝し、すぐにゆうの車を見つける事ができた。高級車。とても羨ましいなと小暮は思った。
小暮が運転席のドアの側に立った時、後ろから二人の男の声がした。

「探偵さーん!」「何やってるんすかー?」

小暮が振り向くと、自分に話しかけたのは島谷と多田の二人である事が分かった。
小暮はすぐに二人に言った。

「いや、違うんだよ?決してゆうさんの車を盗もうとか、そんなんじゃないから」

「そんな事分かってますよ。俺達、探偵さんがあの従業員から社長の車のキーを受け取るの見てましたから。
多分、社長はこの車の中にメッセージか何か残していたんじゃないんですかね?多分、ですけどね」

僕もそう思っていたんだ、と小暮は島谷に返して、運転席のドアを開ける。
そして、反対側の助手席側に回ってドアを開けた。
小暮から見て、左側にあるダッシュボードを小暮は開けた。するとそこには…

「メモ用紙?」

小暮が呟いた通り、ダッシュボードの中にはメモ用紙が一枚置いてあるだけだった…





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