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みんなのパーティー 第二章 -後編-

最終更新:

beatnovel

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293 :旅人:2008/10/22(水) 23:05:10 ID:e3JTrxlU0
 中井が田中にそう言った頃、小暮と町田はスタッフルーム前の見張りを気絶させてから縛りあげ、
ロッカーに押し込んでから一息ついた。
 スタッフルームには、店員の白で統一された制服が壁に掛けられていたり店員のロッカーがあったり、
白壁中に設置されてある監視カメラが映し出す映像を投影しているモニターや他にいろいろな物があった。
少々雑な場所だなと小暮は思ったがそこはぼやかないことにした。自分の事務所はもっと汚いからだ。

 二人は店員のロッカーから武器になりそうな物を探した。結果、小暮は秘密探偵道具(とてもそうとは呼べないが)
のままで、町田は彼女と親しくしていた女性店員の護身具であるスタンガンを手にした。
 小暮は自分と町田の装備を確認した後、町田に閃光拳銃を二挺与えてから監視カメラのモニターを眺めた。
白壁に設置されている監視カメラの数は異常なほどある。総計50はあるとモニターを観察した小暮は考えた。
これを全部使えれば…と小暮は期待したが、武装勢力も馬鹿ではなかった。監視カメラの大半が使えないようになっていた。
壊されたか、ガムテープでも張られたのかは分からないが、とにかく使用不可の状態であった。
 だが、それでも使えるカメラはあった。見つかりにくい場所にあったのか、手を出される事がなかったのだ。
それも運のいい事に、使える計7つのカメラは武装勢力の一人一人の動きを完全に捉える事が出来た。
これで奴らの巡回ルートが割り出せる、と考えた小暮は部屋の真ん中にある事務机を調べた。
引き出しを調べると、白壁の地図を見つけ出した。非常口がどこにあるとかが非常にわかりやすいように
デザインされているものである。それに小暮は赤いボールペンで色々と書き込んでいく。途中、別の色のペンも使った。
そしてそれをカラーコピー機にかけ、複製した分を町田に手渡して小暮が言った。

「町田さん、一番難しいって思うIIDXの譜面は?」
「え?穴冥だと思うけど、それが?」
「ごめんなさい、言い忘れましたがDPの話です」
「ポンデステーン?あれは誰もクリアできないよねぇ」
「町田さんでも?」
「私でも。ってか私、DPは八段よ。無理よ。そう言えばアレ、クリア者出たの?」
「知りません。でもDP八段を持ってるなら監視カメラの映像を複数見るのなんて簡単でしょう」
「そうかな、次元が違うと思うんだけど…」
「僕は人質の解放と奴らの戦闘能力を奪うためにここに来ました。あ、誰にも口外しないでくださいね」
「別にいいよ。言っても得しないもの」
「この依頼では誰一人殺してはいけないんです。例えが何ですが、M○Sの非殺傷プレーをやるようなものです。
 だから、奴らには見つかってはいけないんです。でも僕は、サバイバル経験もなけりゃ老衰したら寝たきりに
 なってしまうだろうし、禿になってもカツラを被る気はない人間です。サポートがなけりゃ見つかって……」
「見つかって?」

町田が小暮にそう聞いた。町田の問いに小暮は、少し間を開けて答えた。


         「逃げ切れるか分からないし、最悪の場合殺されるかもしれません」

326 :旅人:2008/11/08(土) 00:18:46 ID:oLt5FyAE0
町田の表情が変わった。まるで、自分が殺されてしまったかのように顔を青白くさせている。
徐々にこみあげてくる恐怖からか、体が震え始めた。少しして町田の震える唇が開いた。

「で、私は何をすればいいの?」
「簡単です。監視カメラのモニターのチェックをお願いします。
 というかさっき言ったじゃないですか。しっかりして下さい」

お願いはされた記憶がないんだけど…という言葉を飲み込んで、
小暮から渡されたカラーコピー印刷の白壁の地図を手に取りながら質問する。

「もう小暮君が巡回ルートを割り出して、この地図に書き入れちゃっているじゃない。
 だから、私がやる事はないんじゃない?」
「そんな事はないですよ。奴らが巡回ルートからズレた行動を見せたら…
 あぁ、お互い携帯電話を通話状態にしておきましょう。それで連絡をください。
 あと、分かっているとは思いますが……音量は最低レベルで。話すときはひそひそ声で」





白壁前で待機していた田中は、再び小暮からの連絡を受けた。
田中の携帯電話が知らせたのは、電話ではなくメールだったという事だった。田中はそれを閲覧した。

「これから、人質が監禁されている休憩スペースまで行こうと思います。
 お仲間の方々には僕の姿を見たとしても何一つ反応しないで下さいとお願いします。
 敵を見張る人が何らかの反応を示したら、僕が見つかってしまいます。
 絶対に隠密行動を取らなければならないので、そのように伝えてください。
 すでに侵入者(僕の事です)の存在は発覚していますが…」

誰からだよ、といつの間にか隣にいた中井が田中に声をかけた。
お前か、と返してから探偵からだよと田中が答える。
そうかと中井は返し、それから白壁を見上げる。


 ……またしても、彼の手を借りなければならなくなったのか。

二人の刑事の顔に申し訳ない気持ちが現れ、そして、それは刑事の顔に戻っていった。

327 :旅人:2008/11/08(土) 00:21:02 ID:oLt5FyAE0
 カチャ、と音をたてないようにドアを開け、小暮はスタッフルームを出た。
彼の後姿に、町田が小声で「頑張って」と声援を送った。
小暮が振り向かずに町田に親指を立てて、それから素早く音をたてないようにドアを閉めた。

 取るべきルートとして考えられるのは、小暮の中で二通りあった。
一つ目が、現在地のランドからエントランスルームに行き、そこから休憩スペースに侵入する方法。
二つ目がランド東側にある階段(屋上から侵入した時に使った階段。一階、二階、屋上を繋いでいる)
を登って二階に行き、そこから休憩スペースに侵入する。
 先に武装勢力の無力化を図るか、それとも人質の解放を優先させるかを小暮は考えた。
休憩スペースには数人の敵がいるのは侵入前に視認したので、そこの敵を無力化するために行こうと考え、
小暮は休憩スペースに侵入するためのルートを考えていたのだ。
 結局、小暮は二つ目のルートを取る事にした。
そして、こんな状況だというのに音を立てるゲーム機の成す一種のジャングルに足を踏み入れ始めた。
 侵入者(小暮の事だ)がいるのは知られているから、
警戒の為に巡回する敵二人がもう一段階キツいレベルの警戒態勢を敷いていた。
小暮が最後にどこに行ったかは発覚されていないので、白壁全体に散らばるようにして敵が配置されている。
それが、小暮に町田が危険な目にあう心配を与えなかった。
(余談だが、ロッカーに閉じ込めておいた敵には、後で睡眠薬をたっぷり浸透させたハンカチを
 鼻に押し当てておいたので、目が覚めるのは夕方あたりだろうと小暮は考えていた)

 普通、ゲーセンというのはうるさい所である。まず、自分の足音は聞こえないだろう。
人と話すのも大声でないと伝わらない。まぁ夜中に暴走族とかがパラリラやっているよりはマシだが。
 だから、小暮は事前に熟読した巡回ルート予測地図で見当をつけたランドの警戒をしている
二人の敵の目を欺くのは簡単だと考えた。足音は聞こえないはずだし、ゲーム機で音を立てて
敵の注意を引く事が出来れば階段までたどり着くのは容易である。
 小暮はトイレ側に一番近いゲーム機がある所まで移動した。
そのゲームとはIIDXであった。百円を投入し、ズキューンとコイン投入音をたてさせた。
それからイーパスを1P側のスロットに差し込み、適当にテンキーを押す。
突然、周囲の音に変化が現れた事に気づいた一人の敵が、何だ?と独り言を言ってからIIDXの筐体へ近づいた。
小暮は気配を感じ取って敵との距離を測り、2P側に移動してランドの階段の方へしゃがみながら走った。
 小暮が走っていると、大きめなコインゲームの近くを巡回している敵の姿が小暮の視界に入った。
小暮から見て、敵は左を向いていた。長方形コインゲーム筐体…ルーレットゲームを囲むように
設置されている椅子を一つ、わざとガタンと倒して小暮はルーレットゲームの筐体の周りをしゃがみ走りした。
敵が驚いた様子で後ろを振り返り、音の正体を探るために音の発信源に近づいた。
その後ろから小暮が睡眠ハンカチを敵の顔に押し当て、素顔を隠すマスク越しに睡眠薬を吸引させた。
ハンカチを顔に押し当てられた敵は、体から力を失ってドサッと倒れこんだ。
それを確認した小暮は、素早く袋からロープを取り出し、手首と足首を固定して周りから見えなさそうな場所に引きずり、
IIDX筐体の警戒を解いた敵にも、小暮は同じような手段を用いて自由を封じた。
 こうして、ランド内の敵の排除は完了した。(とはいっても睡眠的な意味で眠らせただけだが)
突撃銃や手榴弾、拳銃を奪ってそれらを見つからないような場所に隠して、小暮は周囲を警戒しながらランド東側の階段へと歩を進めた。

328 :旅人:2008/11/08(土) 00:22:53 ID:oLt5FyAE0
 小暮は階段で二階へあがり、踊り場の壁に張り付いて二階の敵の様子をうかがった。
ランドの上のギャラリースペースに(町田はそう呼んでいる。以下、そのように記載する)
休憩スペースとギャラリースペースを巡回する敵が一人いる事に気がついた。
小暮の携帯電話から少し漏れてきた町田の声が、小暮に緊張をもたらす。

「ヤバいよ。二階の休憩スペースとギャラリースペースを巡回している敵が
 ランドの巡回の姿が見えないのに気がついたよ。階段の方に向かってきている…」

カツ、カツと足音が聞こえるのはそれか。今まさにピンチと言った状況じゃないか。
小暮は頭を回転させ、突破口を考えていく。一つ目のプランを考え、切り捨てる。
二つ目も切り捨てる。三つ目のプランを考えついて、これしかないと小暮は考えた。
 袋の中から直径三センチくらいの円盤を取り出し、それのスイッチをオンにして
小暮は壁に張り付きながら地面にスライドさせるようにして投げた。
敵がそれに注目すると、直後にうめき声が聞こえた。





 またしても小暮はここで問いを投げかけてきた。
この円盤は一体何でしょうか?と。さっぱり分からん。
そう松木は思った。そんな小さい円盤に何を細工するって言うんだ?
エロ本でもおいて注意を引くというのならば分かるが、小さい円盤…?
 そう松木が悩んでいると、優が口を開いた。

「あの…」
「優ちゃん、分かったかい?」
「もしかしたらそれ、煙玉の類のものですか?」

小暮は近いなぁ、本当に近いよと答えた。
その時、松木は閃いた。身を乗り出して答えを言う。

「発光したんだ!」
「発光したんだろ!」

坂井も同じ事を考えたらしく、松木と坂井は思わぬところでハモった。
小暮はニヤニヤしながら言う。

「正解。流石、名前が同じなだけはありますね」

そして、小暮は話を続けていった。

329 :旅人:2008/11/08(土) 00:25:46 ID:oLt5FyAE0
 ピカッと光が走った。敵はその光をまともに両眼に受けて呻いた。
その一瞬の隙を小暮はついて、ダッと駆け寄って押し倒し、例のハンカチを顔に押し付け、敵を眠らせた。
 小暮の探偵道具「閃光円盤」は本来暗い所を照らすために作ったものだった。
そう、閃光円盤は懐中電灯のように使うものであったのだが、
懐中電灯より強い光を放つために、小暮はこれを武器として使ったのだった。
 敵が眠ったのを確認した後、小暮はすぐに円盤のスイッチを切り、敵を引きずって階段の隅に置いた。
巡回ルートを予測した地図によれば、そこは誰も見に来る事がない場所だった。
 そして敵を縛り、小暮はずっと町田の携帯電話と通話状態にしておいた自分の携帯電話を取り出して町田と通話を始めた。

「町田さん?」
「何、どうしたの?やられたの?大丈夫?」
「大丈夫です、無事です。さっきの奴はハンカチで眠らせました。
 ちょっと気になる事を思いだしたので、刑事さんに連絡を取りたいのですが…」
「分かった。じゃあ私が切るね。じゃ、次は小暮君が私に電話してね。それじゃ、頑張って」

町田はそう言って通話を切った。小暮は通話が切れたことを確認してから、田中に電話をかけた。
すぐに田中は電話に出て、小暮と話をし始めた。



 自分の携帯電話が着メロを流している事に気がついた田中は
小暮から電話がかかってきている事を知った。一体何だ?と思いながら電話に出る。

「刑事さん、犯行グループから何か追加の要求はありましたか?」

小暮はそんな事を聞いてきた。田中はその問いに直ぐに答えた。

「いや…ないが?」
「何かおかしいんですよ…最初は犯行グループ、奥田氏の秘密金庫から金を持ちだすように要求していたんですよね?
 それで、僕の作戦で中井刑事には○×銀行に行ってもらって、支店長に会って番号を聞き出してほしいって頼んだんですよ。
 でも、スタッフルームに居た時に彼から送られたメールには、支店長は彼らとグルで、
 でも彼らを止めに行くために白壁に行って、恐らくは人質にされているらしいんです。でも、そうだとしたらですよ。
 支店長が番号を知っているんだから、『警察に金を持ってこさせて自分たちに渡すように要求』すればいいんです。
 でも、奴らはそうはしていない。 何が言いたいか分かりますか?」
「つまり、『支店長は白壁にいるが、犯行グループに見つかっていない』って事か?」
「そうです。話が変わるかもですが『早く金庫を開けて金を寄越さないと、人質を一定時間の間隔をあけて殺す』
 と奴らが宣言するのを考えていましたが、それは無いようですね…奴らは人を殺す気はないのかも。撃っても威嚇程度かな」
「…………」
「これらから言える事が一つあります」
「何だ」
「僕が成すべき事です。今人質を解放しようと行動を起こしていますが、それを続行します」

330 :旅人:2008/11/08(土) 00:28:54 ID:oLt5FyAE0
「何だって?支店長はどうする」
「彼は白壁のどこか、見つからない場所にでも隠れているんでしょう。
 放っておいても心配はいらないはずです。このまま、人質救出作戦を続行s…
 いや、待って下さい。奴ら、どうやってここから脱出するんでしょうか」
「お前がやったように、マンホールじゃないか?」
「それは無理があると思いますよ。刑事さん、自分達警察を過小評価してませんか?
 あれだけ包囲されていれば、外へ出てどこかへ行けば即、お縄ですよ。
 屋上に上がった時に見ましたけど、凄かったですよ、警察の包囲網は」
「そうか。それが理想であり、当然の事だからな…で?」
「だからどこか、包囲の外から犯行グループは『迎えが来る』みたいな感じで
 脱出を図るんじゃないんでしょうか。あり得ないですが、空飛ぶ絨毯と契約みたいなのをして、
 この時間に白壁の屋上に来てくれ、みたいな」
「まぁ、それはあり得ないにしても『迎え』か。それで、どうしろって言うんだ?
 辺りを捜索して、何が迎えに来るのかを見つけてそれを封じるのか?」
「そうです。犯行グループは全員が白壁に集結しているわけじゃない。
 必ず一味の誰かが外に居て、 仲間を回収する時を待っているはずです。
 迎えの手段を持っているはずです。迎えの時が何時かは分かりませんが…とにかく急いで探して下さい」

そう小暮は言って、電話を切った。
田中は小暮の言葉を要約して反芻して、中井を呼んで小暮から電話があった事を話し、その内容をしっかりと正確に伝えた。
中井は直ぐに余り気味な警官に指示し、彼らに「迎えの人」を捜索させ、そして自分も探しに走った。
自分の愛車、プリウ○で。「ハイブリット!レッツゴォー!」中井はそう叫びながら車を発進させた。





小暮はそこまでを語って、そこで休憩を入れた。
優が、いつの間にか五人に淹れられているコーヒーに驚きながら小暮に質問した。

「で、その『迎えの人』って、結局誰だったんですか?」
「あ、その人が誰か、分かる要素も入れながら喋ったんだけどな…分からない?」
「少なくとも私には。松木さん、坂井さん、誰だか分かりますか?」
「薄々、な…あの人かもしれないなってのは分かるんだけど。ゆうは?」
「僕も薄々…って感じです。もしかしたら、ゆうさんが考えている人と同じ人かもしれないですね」

松木がそう言った後で、小暮が笑いだした。町田も、何かのネタムービーを見た後のような顔をしている。
笑った後で小暮が言う。


「松木さん。坂井さん。もしかしたらあなた達、正解しているかもしれませんよ」

言って、小暮が自分に淹れられているコーヒーを一口飲み、「熱っ!」と小さくリアクションを取った。




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