創作小説with音ゲー 臨時まとめWiki
トップランカー殺人事件 第三話『☆12のトリック』 -phase4-
最終更新:
Bot(ページ名リンク)
-
view
| 6 :トップランカー殺人事件(102) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/11/30(日) 21:17:36 ID:G6oQ0RFf0 |
その少女は白いブラウスにチェックのスカートという身なりだった。
靴下は紺のハイソックス、胸元にはリボン。
靴下は紺のハイソックス、胸元にはリボン。
要約すれば、女子高生だ。
乙下の感覚で「女子高生」と言えば、
カラフルな髪の毛とバサバサのつけ睫毛で街を闊歩し、
暇さえあればケータイ電話をいじり倒しているイメージだった。
実際はそうでない女の子も多数存在しているのだろうが、
職業柄これまでに乙下が相手にしてきた、
言い換えればこれまでに乙下が補導をしてきた田舎の女子高生とは
大概がそんな生き物だ。
カラフルな髪の毛とバサバサのつけ睫毛で街を闊歩し、
暇さえあればケータイ電話をいじり倒しているイメージだった。
実際はそうでない女の子も多数存在しているのだろうが、
職業柄これまでに乙下が相手にしてきた、
言い換えればこれまでに乙下が補導をしてきた田舎の女子高生とは
大概がそんな生き物だ。
ところが今シルバーの前に立っている彼女は長い黒髪と白い肌のコントラストが映えており、
その自然な顔立ちの表面に異物感は露ほども感じられない。
ツヤのある革製の黒いカバンを両手で持っている。
今時の女子高生がよく持ち歩いているナイロン製のスクールバッグではなく、
昔ながらの学生カバンであり、それが彼女自身にどこか古風な印象を与えた。
スカートも極端に短くしているわけではなく、不必要に自分の素肌を衆目に晒していない。
まるで学校のパンフレットからそのまま抜け出てきたかのような、
優等生タイプの装いだった。
加えて不動で直立しているものだから、
そのまま制服販売店でマネキンの仕事が務まってしまうのではないかと思わせるほどだった。
その自然な顔立ちの表面に異物感は露ほども感じられない。
ツヤのある革製の黒いカバンを両手で持っている。
今時の女子高生がよく持ち歩いているナイロン製のスクールバッグではなく、
昔ながらの学生カバンであり、それが彼女自身にどこか古風な印象を与えた。
スカートも極端に短くしているわけではなく、不必要に自分の素肌を衆目に晒していない。
まるで学校のパンフレットからそのまま抜け出てきたかのような、
優等生タイプの装いだった。
加えて不動で直立しているものだから、
そのまま制服販売店でマネキンの仕事が務まってしまうのではないかと思わせるほどだった。
そんな彼女へ近付いた乙下が最初にとった行動は、
とても可愛らしい女の子だと見とれることでもなく、
どうしてこんな場所に一人で立っているのかと疑問を差し挟むことでもなく、
実に刑事らしい真っ当な職務遂行であった。
とても可愛らしい女の子だと見とれることでもなく、
どうしてこんな場所に一人で立っているのかと疑問を差し挟むことでもなく、
実に刑事らしい真っ当な職務遂行であった。
「学校は?」
前置きもせず声をかけた乙下に、少女は振り向いた。
間近で見ると、やはりその表情には陰があることに気付く。
その一方で彼女の目に何か揺るぎの無い決意がこもっているようにも見えたのは、
徹底して表情を変えようとしないからだろうか。
間近で見ると、やはりその表情には陰があることに気付く。
その一方で彼女の目に何か揺るぎの無い決意がこもっているようにも見えたのは、
徹底して表情を変えようとしないからだろうか。
「今は授業の時間でしょ。
君、どこの学校?ちょっと学生証見せてよ」
君、どこの学校?ちょっと学生証見せてよ」
乙下は変に不審がられないよう、警察手帳を胸のポケットからチラリと覗かせた。
逆に畏縮されても困るので、すぐに引っ込める。
逆に畏縮されても困るので、すぐに引っ込める。
しかし驚いたことに、
少女はまるで名刺を差し出して自己紹介をするかのような自然さで
学生証を乙下へ手渡してきたのだった。
その限りなく従順な態度に、乙下は気後れしてしまいそうになる。
少女はまるで名刺を差し出して自己紹介をするかのような自然さで
学生証を乙下へ手渡してきたのだった。
その限りなく従順な態度に、乙下は気後れしてしまいそうになる。
プラスチックの学生証には、冬服のブレザーを着てはいるが
間違いなく彼女本人の写真が貼り付けられていた。
その隣には「盛岡中央女子高等学校 一年三組 円樹 杏子」の文字がエンボス加工されている。
小さく印刷された振り仮名を頼りに、乙下は名前を読み上げた。
間違いなく彼女本人の写真が貼り付けられていた。
その隣には「盛岡中央女子高等学校 一年三組 円樹 杏子」の文字がエンボス加工されている。
小さく印刷された振り仮名を頼りに、乙下は名前を読み上げた。
「ツブラギ アンコちゃん……でいいのかな?」
| 7 :トップランカー殺人事件(103) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/11/30(日) 21:23:04 ID:G6oQ0RFf0 |
「はい、ツブラギ アンコと言います」
円樹杏子はわざわざ名乗り直し、軽くお辞儀をした。
しとやかで品のある声だがまだ子供っぽさが中に残る、そんな声だった。
しとやかで品のある声だがまだ子供っぽさが中に残る、そんな声だった。
「真っ昼間からこんなとこいちゃダメっすよ。
それに、いつまで待っててもこのゲーセンは開かないからね」
それに、いつまで待っててもこのゲーセンは開かないからね」
空気は面白いことを言ったつもりなのか、続けて一人で愛想笑いをしている。
その声はいつもに比べて明らかに気取ったものだった。
本当に分かりやすいヤツだな、と乙下は鼻の下を伸ばしている空気を横目で冷ややかに見た。
その声はいつもに比べて明らかに気取ったものだった。
本当に分かりやすいヤツだな、と乙下は鼻の下を伸ばしている空気を横目で冷ややかに見た。
だがと言うべきかやはりと言うべきか、杏子は表情を変えずに言う。
「すみません。今日はちょっと用事があったもので」
「どんな用事?」
「貴方が来るのを待ってました」
「……何言ってんの?」
「どんな用事?」
「貴方が来るのを待ってました」
「……何言ってんの?」
思わず乙下は声に出してしまった。
冗談にもほどがある。
だが杏子の視線は真剣そのものであり、乙下の目をじっと捕らえたまま外そうとしない。
どうしていいのか分からず、先に目を逸らしたのは乙下の方だった。
突きつけるように学生証を返し、
冗談にもほどがある。
だが杏子の視線は真剣そのものであり、乙下の目をじっと捕らえたまま外そうとしない。
どうしていいのか分からず、先に目を逸らしたのは乙下の方だった。
突きつけるように学生証を返し、
「おかしなこと言ってないでさっさと学校行きなさい!」
と盛岡中央女子高の方角へ手をかざした。
すると、杏子はまたも従順に
すると、杏子はまたも従順に
「貴方がそう言うのなら学校行きます」
とだけ言い残し、乙下の示した方角へ歩き始めるのだった。
わけも分からずに乙下と空気は顔を見合わせ、互いに目を瞬き合うしかない。
わけも分からずに乙下と空気は顔を見合わせ、互いに目を瞬き合うしかない。
「ポスターに注意して下さい」
唐突にそう聞こえ、二人は声のした方へ一斉に顔を向けた。
どうやら杏子が去り際に発した声らしいのだが、
すでに彼女は背中を向け、長い髪を左右に揺らしながらこの場を離れていくところだった。
どうやら杏子が去り際に発した声らしいのだが、
すでに彼女は背中を向け、長い髪を左右に揺らしながらこの場を離れていくところだった。
| 8 :トップランカー殺人事件(104) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/11/30(日) 21:30:04 ID:G6oQ0RFf0 |
乙下と空気はまたも顔を見合わせてしまう。
「何だって?ポスター?」
「……に注意しろ、って言いましたね」
「どういうこと?」
「こっちが聞きたいっすよ」
「……に注意しろ、って言いましたね」
「どういうこと?」
「こっちが聞きたいっすよ」
空気は呆れ顔で万歳をしてみせた。
「あの娘、可愛いんだけどなんか変ですね」
「お前に言われるくらいだから相当だな」
「どういう意味っすか!」
「お前に言われるくらいだから相当だな」
「どういう意味っすか!」
威勢のいい空気を適当になだめすかしつつ、
乙下はつい一分前まで杏子が立っていた場所に移動し、
つい一分前まで杏子が見ていた方向へ体を向けた。
ガラス窓の外装を通して、暗いシルバーの店内にうっすらと扉が見える。
見覚えのある扉だった。
乙下はつい一分前まで杏子が立っていた場所に移動し、
つい一分前まで杏子が見ていた方向へ体を向けた。
ガラス窓の外装を通して、暗いシルバーの店内にうっすらと扉が見える。
見覚えのある扉だった。
「デラ部屋だ」
今乙下が立っている場所と方向は、
デラ部屋を真正面に見据えるための場所と方向だったのだ。
デラ部屋を真正面に見据えるための場所と方向だったのだ。
「あの娘、ずっとデラ部屋を見てたんだ」
空気は乙下の真似をして隣に立ち、店内の様子を探った。
ガラス窓に映り込んだ空気の顔が頷く。
ガラス窓に映り込んだ空気の顔が頷く。
「あの娘、もしかして死んだBOLCEの友達だったんじゃないっすか?」
「俺も同じこと考えてた」
「俺も同じこと考えてた」
今更ながら、杏子の暗く無表情な顔色が悲しみに満ちたものだったように思えてくる。
彼女は何時間もここに立ち尽くしながら、BOLCEの死と向き合っていたのだろうか。
それともBOLCEの死と向き合うことが出来ず、
ともすればあの部屋からひょっこりとBOLCEが姿を現すことでも期待していたのだろうか。
彼女は何時間もここに立ち尽くしながら、BOLCEの死と向き合っていたのだろうか。
それともBOLCEの死と向き合うことが出来ず、
ともすればあの部屋からひょっこりとBOLCEが姿を現すことでも期待していたのだろうか。
「だからボク達を待ってたのかなぁ」
「まさか」
「まさか」
そうは言ったものの、杏子の真剣な眼差しは乙下の瞼に焼き付いてしまい、
空気の発言があながち的外れではないように思えて仕方ないのだった。
空気の発言があながち的外れではないように思えて仕方ないのだった。
| 55 :トップランカー殺人事件(105) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 01:33:19 ID:OdXSrrBH0 |
乙下は空気の提案により、盛岡警察署捜査一課のオフィスへ戻って来た。
空気曰く、AKIRA YAMAOKAコースの件でどうしても調べたいことがあるらしい。
どのみち乙下が考えても埒の明かないことだ。
「餅は餅屋」のことわざに従い、乙下は快諾した。
どのみち乙下が考えても埒の明かないことだ。
「餅は餅屋」のことわざに従い、乙下は快諾した。
空気は早速自デスクのノートPCに向かい、どこかへメールを書き始めている。
IIDXの運指を彷彿とさせる軽やかなタイピングに精を出す空気。
その隣で、乙下はデスクワークに取りかかることにした。
昨日から事件の捜査に掛かりきりだったため、雑務の処理が遅れている。
空気が調べものをしている間にこれらを片付けてしまい、
すっきりとした心持ちでまた捜査に専念したかった。
IIDXの運指を彷彿とさせる軽やかなタイピングに精を出す空気。
その隣で、乙下はデスクワークに取りかかることにした。
昨日から事件の捜査に掛かりきりだったため、雑務の処理が遅れている。
空気が調べものをしている間にこれらを片付けてしまい、
すっきりとした心持ちでまた捜査に専念したかった。
とは言ったものの、今すべき雑務はおしなべてルーチンワークの類であり、
乙下の思考回路は暇を持て余していた。
暇は退屈へ、退屈は眠気へと形を変え、時間をかけて少しずつ乙下の意識を浸食する。
乙下は何度も目薬を差して睡魔に抵抗するが、
やがて心地良いまどろみの中へ落ちて行くのを止められない。
乙下の思考回路は暇を持て余していた。
暇は退屈へ、退屈は眠気へと形を変え、時間をかけて少しずつ乙下の意識を浸食する。
乙下は何度も目薬を差して睡魔に抵抗するが、
やがて心地良いまどろみの中へ落ちて行くのを止められない。
乙下は夢を見た。
BOLCEと1046が向かい合って座っている。
体は向かい合っているが、二人とも下を向いており、顔を見合わせていない。
体は向かい合っているが、二人とも下を向いており、顔を見合わせていない。
1046はたがが外れたように泣きじゃくっていた。
顔をくしゃくしゃにして、動物のような声を上げて。
その嗚咽の合間に、日本語らしき言葉が挟まれる。
顔をくしゃくしゃにして、動物のような声を上げて。
その嗚咽の合間に、日本語らしき言葉が挟まれる。
「本当は殺したくなんてなかったんだよ。
分かってくれ、本当なんだ」
分かってくれ、本当なんだ」
理性を失っている1046とは対照的に、BOLCEは表情なくただ俯いている。
「分かってるよ。僕は君のことを恨んじゃいない。
全部僕のせいだったんだ」
「そうだよ、全部お前のせいじゃねーか!
俺は悪くない、俺は悪くない、俺は悪くないんだ」
全部僕のせいだったんだ」
「そうだよ、全部お前のせいじゃねーか!
俺は悪くない、俺は悪くない、俺は悪くないんだ」
BOLCEは眉一つ動かさず、悟ったように話す。
「そうだ。1046は悪くない。
悪いのは僕だ。
僕は殺されたって文句を言えない」
悪いのは僕だ。
僕は殺されたって文句を言えない」
その言葉を聞いた1046は、我に返ったように顔を上げた。
そしてどうにか嗚咽を喉の奥に押さえ込み、
ひくひくと小刻みに震える呼吸に遮られつつも、言った。
そしてどうにか嗚咽を喉の奥に押さえ込み、
ひくひくと小刻みに震える呼吸に遮られつつも、言った。
「BOLCE、ごめんよ……」
| 56 :トップランカー殺人事件(106) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 01:42:02 ID:OdXSrrBH0 |
オトゲ先輩、と呼ばれて乙下は現実に引き戻された。
見ると、隣のデスクで作業をしていた空気が椅子に座ったまま乙下へ声を掛けたようだった。
見ると、隣のデスクで作業をしていた空気が椅子に座ったまま乙下へ声を掛けたようだった。
「どうしたんすか、難しそうな顔して」
空気は乙下が居眠りしていたことに気付いていない様子だった。
だらしなく頭や体を揺らさずに済んだのが幸いしたのか、
目を閉じて何か考え事をしていると勘違いされたのだろう。
だらしなく頭や体を揺らさずに済んだのが幸いしたのか、
目を閉じて何か考え事をしていると勘違いされたのだろう。
乙下は慌てずに時計と自分の感覚を確認し、
うたた寝していたのがほんの一分程度の時間だと知った。
まだぼうっとピンボケ状態の視界に、その一分で見た奇妙な夢の映像が残滓のようにこびり付いていた。
うたた寝していたのがほんの一分程度の時間だと知った。
まだぼうっとピンボケ状態の視界に、その一分で見た奇妙な夢の映像が残滓のようにこびり付いていた。
「1046がBOLCEを殺したのは、やむを得ない理由からだった」。
そんな仮説を立てた乙下の無意識下で、どうやら想像上の1046とBOLCEが勝手に一人歩きを始めたらしい。
そんな仮説を立てた乙下の無意識下で、どうやら想像上の1046とBOLCEが勝手に一人歩きを始めたらしい。
乙下はおかしな幻覚を拭い去るようなつもりで、
大きく伸びをしながら目をこすった。
急速に視界がクリアになる。
そうしてからあらためて空気を見ると、彼はいつもの得意気な微笑を浮かべている。
大きく伸びをしながら目をこすった。
急速に視界がクリアになる。
そうしてからあらためて空気を見ると、彼はいつもの得意気な微笑を浮かべている。
「何か進展があったみたいだな」
「はい、1046の意図が分かったんすよ。
彼の言う通り、AKIRA YAMAOKAコースが
1046のアリバイをより確かなものにしていたんです」
「はい、1046の意図が分かったんすよ。
彼の言う通り、AKIRA YAMAOKAコースが
1046のアリバイをより確かなものにしていたんです」
言いながら空気はノートPCの画面に目を移した。
「まずはこれを見て下さい」
| 57 :トップランカー殺人事件(107) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 01:49:40 ID:OdXSrrBH0 |
乙下が画面を覗くと、ちょうどブラウザが起動されるところだった。
空気はブックマークの中から「DJ TROOPERS公式スペシャルサイト」を選ぶと、
見慣れたロゴや深緑色のイメージカラーと共に、バンダナ男の鋭い視線が現れた。
どうして仕事で使うノートPCのブックマークにこんなサイトが
登録されているのか不思議でならないが、乙下は敢えて何も言わない。
空気はブックマークの中から「DJ TROOPERS公式スペシャルサイト」を選ぶと、
見慣れたロゴや深緑色のイメージカラーと共に、バンダナ男の鋭い視線が現れた。
どうして仕事で使うノートPCのブックマークにこんなサイトが
登録されているのか不思議でならないが、乙下は敢えて何も言わない。
空気はサイトのメニューから「INTERNET RANKING」を選び、
さらにいくつかあるコースの中から
「MILITARY SPLASH」「SINGLE PLAY ANOTHER」と書かれたバナーをクリックした。
ランカー達の名前が次々と表示されていく。
左から順位、DJ NAME、県名、スコア、店舗名、日時と情報が並び、
人によってはコメントも入力されている。
この「MILITARY SPLASHコース」においては
DJ BOLCEがトップへ座しており、その下にDJ 1046の名前が位置していた。
二人の名前がランキングの頂上に並ぶこの風景は、
IIDX界においてはさながら朝に東から上った太陽が夕方に西へ沈むことのような、
自然で疑いようのない構図なのかも知れない。
さらにいくつかあるコースの中から
「MILITARY SPLASH」「SINGLE PLAY ANOTHER」と書かれたバナーをクリックした。
ランカー達の名前が次々と表示されていく。
左から順位、DJ NAME、県名、スコア、店舗名、日時と情報が並び、
人によってはコメントも入力されている。
この「MILITARY SPLASHコース」においては
DJ BOLCEがトップへ座しており、その下にDJ 1046の名前が位置していた。
二人の名前がランキングの頂上に並ぶこの風景は、
IIDX界においてはさながら朝に東から上った太陽が夕方に西へ沈むことのような、
自然で疑いようのない構図なのかも知れない。
「で、これがどうかしたの?」
「EXPERTコースとか段位認定とかWEEKLY RANKINGの課題曲とか、
そういうのをプレイするとスコア・店舗名・日時なんかのデータがまとめて保存されるんすよ。
例えばIR開催期間中にEXPERTの表コースをプレイすると、
こんな風に公式サイトのランキングへ掲載されます。
IRが終わった後でもプレイデータの保存はきちんとされてるんで、
表コースの自己べストスコアは携帯サイトの『DJ data』から閲覧することができるわけっすね」
「EXPERTコースとか段位認定とかWEEKLY RANKINGの課題曲とか、
そういうのをプレイするとスコア・店舗名・日時なんかのデータがまとめて保存されるんすよ。
例えばIR開催期間中にEXPERTの表コースをプレイすると、
こんな風に公式サイトのランキングへ掲載されます。
IRが終わった後でもプレイデータの保存はきちんとされてるんで、
表コースの自己べストスコアは携帯サイトの『DJ data』から閲覧することができるわけっすね」
空気はそこまで説明すると、一つ呼吸を置いてから、ゆっくりと尋ねた。
「ではここでクイズっす。
今言ったように表コースのスコアは必ずサーバーへ保存されますが、
裏コースのスコアは保存されるのでしょうか?
それともどこかに消えてしまうのでしょうか?」
今言ったように表コースのスコアは必ずサーバーへ保存されますが、
裏コースのスコアは保存されるのでしょうか?
それともどこかに消えてしまうのでしょうか?」
| 58 :トップランカー殺人事件(108) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 02:03:12 ID:OdXSrrBH0 |
幼稚園のお遊戯じゃあるまいし、と乙下は馬鹿馬鹿しくも感じたが、
空気に試されているような気がしてしまい、
とりあえずは「クイズ」に乗ってみることにする。
空気に試されているような気がしてしまい、
とりあえずは「クイズ」に乗ってみることにする。
乙下は午前中のABCでの出来事を思い返す。
空気がAKIRA YAMAOKAコースをプレイした後、
IIDXのモニタは「今回のスコアを登録しますか?」と問いかけてきた。
そして空気が「はい」を選択すると、順位と登録者数が表示された記憶がある。
と言うことは。
空気がAKIRA YAMAOKAコースをプレイした後、
IIDXのモニタは「今回のスコアを登録しますか?」と問いかけてきた。
そして空気が「はい」を選択すると、順位と登録者数が表示された記憶がある。
と言うことは。
「答えは『保存される』。
みんなのデータが保存されてなきゃ、
順位や登録者数の表示なんてできるわけない」
みんなのデータが保存されてなきゃ、
順位や登録者数の表示なんてできるわけない」
空気は満足そうに含み笑いをした。
「さすがはオトゲ先輩、正解っす。
ボクもそう思って、昨日と同じようにコナミへ問い合わせてみたんですよ。
するとです、やはりEXPERTコースのプレイデータは
最終的に『はい』さえ選べば、裏表関係なく保存されていることが分かりました」
ボクもそう思って、昨日と同じようにコナミへ問い合わせてみたんですよ。
するとです、やはりEXPERTコースのプレイデータは
最終的に『はい』さえ選べば、裏表関係なく保存されていることが分かりました」
そう告げるや否や、空気はA4用紙一枚の印刷物を乙下へ差し出した。
昨日空気が作成した報告書と似た体裁で、文書の最初に
「beatmaniaIIDX15 DJTROOPERS EXPERT MODE DATABASE
ID = 4649-5963; DATE = 08/07/16 の検索結果」と書かれており、
続いてアルファベットと数字と記号の細かな組み合わせが羅列されていた。
昨日空気が作成した報告書と似た体裁で、文書の最初に
「beatmaniaIIDX15 DJTROOPERS EXPERT MODE DATABASE
ID = 4649-5963; DATE = 08/07/16 の検索結果」と書かれており、
続いてアルファベットと数字と記号の細かな組み合わせが羅列されていた。
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 10:39, SCORE = 7269;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 10:52, SCORE = 7275;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:03, SCORE = 7278;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:16, SCORE = 7272;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:29, SCORE = 7278;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:42, SCORE = 7277;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:55, SCORE = 7280;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 10:52, SCORE = 7275;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:03, SCORE = 7278;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:16, SCORE = 7272;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:29, SCORE = 7278;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:42, SCORE = 7277;
COURSE = "AKIRA YAMAOKA", DIFFICULTY = HYPER, TIME = 11:55, SCORE = 7280;
「なるほど、これがその保存されていた
一昨日の1046によるAKIRA YAMAOKAコースのプレイデータってわけだな」
一昨日の1046によるAKIRA YAMAOKAコースのプレイデータってわけだな」
色眼鏡を掛けずにこのデータを読み取ると、
1046は一昨日の午前中の間ずっとAKIRA YAMAOKAコースの
HYPER譜面でスコアアタックをしていた、ということになるのだろう。
彼の証言と一致している。
1046は一昨日の午前中の間ずっとAKIRA YAMAOKAコースの
HYPER譜面でスコアアタックをしていた、ということになるのだろう。
彼の証言と一致している。
乙下はこの履歴に不自然な点はないか念入りにチェックしようと試みたが、
すぐ観念して空気に助けを求めた。
すぐ観念して空気に助けを求めた。
「あのさ、ちょっとよく分かんないんだけど。
どうしてこの履歴が1046のアリバイと繋がるわけ?」
「すんません、このままじゃちょっと分かりにくかったっすね」
どうしてこの履歴が1046のアリバイと繋がるわけ?」
「すんません、このままじゃちょっと分かりにくかったっすね」
空気は乙下の手から紙を奪い取ってデスクに置いたかと思うと、
「簡単な話っすよ。『スコアが高過ぎる』ってことっす」
とだけ言ってから、赤いボールペンで次々と新しい情報を書き加えていった。
| 59 :トップランカー殺人事件(109) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 02:11:27 ID:OdXSrrBH0 |
AKIRA YAMAOKAコース(HYPER)
①昭和企業戦士荒山課長 → 752個
②ライオン好き → 600個
③システムロマンス → 901個
④マチ子の唄 → 662個
⑤ヨシダさん → 728個
②ライオン好き → 600個
③システムロマンス → 901個
④マチ子の唄 → 662個
⑤ヨシダさん → 728個
総ノート数 → 3643個
EXスコア理論値 → 3643×2 = 7286点
EXスコア理論値 → 3643×2 = 7286点
TIME = 10:39, SCORE = 7269;(MAX-17)
TIME = 10:52, SCORE = 7275;(MAX-11)
TIME = 11:03, SCORE = 7278;(MAX-8)
TIME = 11:16, SCORE = 7272;(MAX-14)
TIME = 11:29, SCORE = 7278;(MAX-8)
TIME = 11:42, SCORE = 7277;(MAX-9)
TIME = 11:55, SCORE = 7280;(MAX-6)
TIME = 10:52, SCORE = 7275;(MAX-11)
TIME = 11:03, SCORE = 7278;(MAX-8)
TIME = 11:16, SCORE = 7272;(MAX-14)
TIME = 11:29, SCORE = 7278;(MAX-8)
TIME = 11:42, SCORE = 7277;(MAX-9)
TIME = 11:55, SCORE = 7280;(MAX-6)
空気は一度も手を止めずにここまで書ききった。
「お前、こういう計算と記憶力は大したもんだよな」
「こんなのただの引き算じゃないっすか。
それより見て下さい、これどう思います?」
「こんなのただの引き算じゃないっすか。
それより見て下さい、これどう思います?」
どうもこうもない。
理論値マイナス一桁など、文字通り桁違いの高得点ではないか。
しかし乙下は自分のレベルと差があり過ぎるため、
これらのスコアにどういった評価を下せば良いのか判断がつかず、
ただ口をつぐむことしかできない。
理論値マイナス一桁など、文字通り桁違いの高得点ではないか。
しかし乙下は自分のレベルと差があり過ぎるため、
これらのスコアにどういった評価を下せば良いのか判断がつかず、
ただ口をつぐむことしかできない。
そんな乙下の横で、
空気は最初から回答を待つ気などなかったかのように解説を加えた。
空気は最初から回答を待つ気などなかったかのように解説を加えた。
| 60 :トップランカー殺人事件(110) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 02:18:45 ID:OdXSrrBH0 |
「この日1046は朝からずっとAKIRA YAMAOKAコースのHYPER譜面をプレイしてました。
最初のプレイからいきなり理論値17点落ち。
そこからもどんどん記録を伸ばし続けて、最終的には理論値6点落ちまで詰めちゃいました」
「ごめん、一応聞くんだけど、これって凄くスゴいことなんだよな?」
「凄くスゴいなんてもんじゃないっす。
ノート数が3684個あって、黄グレが6個しか出てないんすよ。
こんな人知を越えたスコアを出せるプレイヤーなんて、1046以外にいますか」
「待て、あれならどうだ?
『和尚』って言うんだっけ、
そこそこ上手い人が数人がかりで協力してプレイすれば
1046並のスコア出せちゃったりしないの?」
「ないない」
最初のプレイからいきなり理論値17点落ち。
そこからもどんどん記録を伸ばし続けて、最終的には理論値6点落ちまで詰めちゃいました」
「ごめん、一応聞くんだけど、これって凄くスゴいことなんだよな?」
「凄くスゴいなんてもんじゃないっす。
ノート数が3684個あって、黄グレが6個しか出てないんすよ。
こんな人知を越えたスコアを出せるプレイヤーなんて、1046以外にいますか」
「待て、あれならどうだ?
『和尚』って言うんだっけ、
そこそこ上手い人が数人がかりで協力してプレイすれば
1046並のスコア出せちゃったりしないの?」
「ないない」
乙下はほとんど思いつきで喋ったが、
検討の余地すら与えられず一笑に付されてしまった。
素人発言だったらしい。
検討の余地すら与えられず一笑に付されてしまった。
素人発言だったらしい。
「もしこれが高難度曲のフルコンボとかDPとかだったら
多人数による不正スコアって可能性もあるんすけどねぇ。
山岡コースのHYPERは☆6~9の簡易譜面でして、
この程度の難易度のスコア勝負となると人数が多いことは大して有利に働かないんす。
ましてや簡易譜面が得意な1046とためを張るスコアを出すなんて、
例えそこらの皆伝が100人がかりで挑んでもまず無理っすね」
多人数による不正スコアって可能性もあるんすけどねぇ。
山岡コースのHYPERは☆6~9の簡易譜面でして、
この程度の難易度のスコア勝負となると人数が多いことは大して有利に働かないんす。
ましてや簡易譜面が得意な1046とためを張るスコアを出すなんて、
例えそこらの皆伝が100人がかりで挑んでもまず無理っすね」
鍵盤と皿の担当を除いた残りの92人はどんな役割なんだ、と
突っ込みたいのをぐっと堪え、乙下は考えをまとめた。
突っ込みたいのをぐっと堪え、乙下は考えをまとめた。
「ってことはつまりだ。
『1046は一昨日の午前中の間、ずっとABCでデラをプレイしていた』。
これはもう絶対に動かしようのない決定事項ってことになるんだな」
「悔しいけどそうなってしまうっすね」
「でも逆に言えば、コースのプレイ記録が
残っていたのは11:55までなんだろ?
これ以降に関しては、1046本人がプレイしていたとは限らないよな」
「まぁ、それはそうなんすよねー」
『1046は一昨日の午前中の間、ずっとABCでデラをプレイしていた』。
これはもう絶対に動かしようのない決定事項ってことになるんだな」
「悔しいけどそうなってしまうっすね」
「でも逆に言えば、コースのプレイ記録が
残っていたのは11:55までなんだろ?
これ以降に関しては、1046本人がプレイしていたとは限らないよな」
「まぁ、それはそうなんすよねー」
乙下は少し拍子抜けをした。
確かに、1046が11:55までABCに居続けたことは認めざるを得ない。
しかしそれ以降はスコアの記録がないのだから、
別の人間が1046とすり替わっていた可能性は捨てられないではないか。
つまり、共犯者がいた可能性は必ずしもゼロではないのだ。
しかしそれ以降はスコアの記録がないのだから、
別の人間が1046とすり替わっていた可能性は捨てられないではないか。
つまり、共犯者がいた可能性は必ずしもゼロではないのだ。
1046が「共犯者がいないことを100%証明できる」などと大それたことを言うものだから
一体どれほどの証拠が飛び出して来るのかと乙下は身構えていたのだが、どうということはなかった。
100%どころか、てんで証明できていない。
一体どれほどの証拠が飛び出して来るのかと乙下は身構えていたのだが、どうということはなかった。
100%どころか、てんで証明できていない。
その事実に突き当たったとき、乙下は違和感を感じずにいられなかった。
「……何かおかしいな」
| 61 :トップランカー殺人事件(111) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 02:28:37 ID:OdXSrrBH0 |
乙下は胸の前で腕を組み、眠りから覚めた脳細胞を総動員して考える。
なぜ1046は「共犯者がいないことを100%証明できる」などというはったりを口にしたのか。
それが乙下には分からなかった。
それが乙下には分からなかった。
例えばだが、もし12:09~12:20のプレイ記録にも
普通のプレイヤーには逆立ちしても出すことができないような
高スコアの記録が残っていたとしたら、また話は別だ。
普通のプレイヤーには逆立ちしても出すことができないような
高スコアの記録が残っていたとしたら、また話は別だ。
何せ、その場合1046は12:20までABCにいなければならないのだ。
それからシルバーに移動してBOLCEを殺害し、
12:35までにまたABCへ舞い戻って監視カメラに映り込む必要がある。
芸能人ばりの過密スケジュールだ。
これだと1046一人にかかる負担が大き過ぎるため、
仮に共犯者の協力があったとしても現実的に犯行は難しくなる。
「共犯者がいたとしても、1046による犯行はほぼ不可能」ということは、言い換えれば
「共犯者など存在していないし、そもそも1046は犯人ではない」という結論を意味する。
それからシルバーに移動してBOLCEを殺害し、
12:35までにまたABCへ舞い戻って監視カメラに映り込む必要がある。
芸能人ばりの過密スケジュールだ。
これだと1046一人にかかる負担が大き過ぎるため、
仮に共犯者の協力があったとしても現実的に犯行は難しくなる。
「共犯者がいたとしても、1046による犯行はほぼ不可能」ということは、言い換えれば
「共犯者など存在していないし、そもそも1046は犯人ではない」という結論を意味する。
つまり1046の言う通り、AKIRA YAMAOKAコースが1046の新たなアリバイを証明し、
同時に共犯者の不在も証明することになる。
そうなれば、さすがに乙下も1046への疑いを晴らしていたかも知れない。
同時に共犯者の不在も証明することになる。
そうなれば、さすがに乙下も1046への疑いを晴らしていたかも知れない。
だが、実際にはそうならなかった。
AKIRA YAMAOKAコースによる1046のアリバイは11:55までだった。
11:55~12:20は共犯者が身代わりとなってIIDXをプレイし、
その間1046は悠々とシルバーへ移動しつつ犯行の準備をする。
そんな可能性がしっかりと残されてしまっているのだ。
AKIRA YAMAOKAコースによる1046のアリバイは11:55までだった。
11:55~12:20は共犯者が身代わりとなってIIDXをプレイし、
その間1046は悠々とシルバーへ移動しつつ犯行の準備をする。
そんな可能性がしっかりと残されてしまっているのだ。
にも関わらず、1046はどんなつもりで
「共犯者がいないことを100%証明できる」と言い切ったのか。
それとも、乙下や空気には考えつかなかった別の意味合いが
このプレイデータには含まれているのだろうか。
「共犯者がいないことを100%証明できる」と言い切ったのか。
それとも、乙下や空気には考えつかなかった別の意味合いが
このプレイデータには含まれているのだろうか。
乙下にはそれが分からなかった。
「分かったぁぁぁ!」
| 62 :トップランカー殺人事件(112) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2008/12/22(月) 02:37:51 ID:OdXSrrBH0 |
空気が吠えた。
一目見て彼の様子が尋常ではないと分かった。
口をポカンと開け、一方でそれに負けないくらい目を大きく見開いている。
かと思えば、両手で髪の毛を掻き毟りながら
法律で禁じられている薬の中毒者のような恍惚の表情へシフトさせた。
口をポカンと開け、一方でそれに負けないくらい目を大きく見開いている。
かと思えば、両手で髪の毛を掻き毟りながら
法律で禁じられている薬の中毒者のような恍惚の表情へシフトさせた。
「分かりました、分かりましたよオトゲ先輩!
ボク分かっちゃいましたフヒヒヒ」
「落ち着けバカ」
ボク分かっちゃいましたフヒヒヒ」
「落ち着けバカ」
乙下は空気の手首を掴み上げ、人体の構造上正しくない方向へ捻った。
空気は一転して悶絶し、じたばたと全身で白旗を上げているので、解放してやる。
手加減したとは言え空気を黙らせるには十分な効果を発揮したかと思いきや、
空気はまるでバネのように元の顔つきへ戻っていた。
空気は一転して悶絶し、じたばたと全身で白旗を上げているので、解放してやる。
手加減したとは言え空気を黙らせるには十分な効果を発揮したかと思いきや、
空気はまるでバネのように元の顔つきへ戻っていた。
「分かったんすよ、オトゲ先輩。
共犯者の正体が今はっきりと分かりました!」
共犯者の正体が今はっきりと分かりました!」
興奮冷めやらぬ空気は、舌を噛みそうなほどの勢いで捲し立てている。
仕方がない。
乙下は諦めて、未曾有のテンションに取り憑かれた空気に付き合うことにする。
仕方がない。
乙下は諦めて、未曾有のテンションに取り憑かれた空気に付き合うことにする。
「えーと、空気君。
本当に共犯者の正体が分かったの?」
「分かりました!」
本当に共犯者の正体が分かったの?」
「分かりました!」
空気はAKIRA YAMAOKAコースのスコアデータを眺めながら、揚々とした口調で話す。
「よく考えたら、このスコアを出すことができるのは
1046だけじゃないんすよ」
「1046以外に?こんなスコアを出せる人間がいるのか?」
「います。
1046どころか、BOLCEでさえ太刀打ちできなかった、
紛れもなく世界最強のランカーがいるんです。
ボクは今の今まですっかり忘れてました……あの伝説のランカーの存在を。
共犯者はヤツしか考えられません」
1046だけじゃないんすよ」
「1046以外に?こんなスコアを出せる人間がいるのか?」
「います。
1046どころか、BOLCEでさえ太刀打ちできなかった、
紛れもなく世界最強のランカーがいるんです。
ボクは今の今まですっかり忘れてました……あの伝説のランカーの存在を。
共犯者はヤツしか考えられません」
乙下は固唾を呑んだ。
「そ、そんなに上手いのか、そいつは」
「ええ。BOLCEや1046が表の世界のトップなら、
ヤツはまさに裏世界のトップと言えますね」
「誰だ?そいつは誰なんだ、勿体ぶらずに教えろ」
「ええ。BOLCEや1046が表の世界のトップなら、
ヤツはまさに裏世界のトップと言えますね」
「誰だ?そいつは誰なんだ、勿体ぶらずに教えろ」
空気は共犯者と思しき人物であるにも関わらず、
どこか誇らしげにその名を告げた。
どこか誇らしげにその名を告げた。
「彼の名前は『DJ AUTO』」